2022/08/12

🇩🇪急性心不全

心臓のポンプ機能が急速に低下し、体に十分な血液を供給できなくなるとともに、肺や全身にうっ血が起こる病態

急性心不全とは、心臓の血液を送り出すポンプ機能が急速に低下することによって、体の血液循環が維持できない状態と、肺や全身に血液が滞るうっ血状態とが短期間のうちに起こる病態。

急性心不全の原因として最も多いのは、突発的に発症する急性心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患です。心臓を動かす心筋に栄養分や酸素を運ぶ冠動脈が動脈硬化などで閉塞(へいそく)して、心臓の機能が低下したり、心筋に壊死(えし)が起こることに起因します。

一方で、慢性心不全を抱えている場合に、安定した状態から急激に悪化して、急性心不全が起こる場合もあります。例えば、心臓に余分な負担がかかる高血圧症、心臓内の血流を制御する弁に障害を生じる心臓弁膜症、心臓を動かす心筋に障害を生じる心筋症や心筋炎が原因となります。

そのほかにも、先天性心疾患や甲状腺(こうじょうせん)機能高進症、不整脈、糖尿病などが原因となって慢性心不全を抱えている場合に、精神的・肉体的ストレスを受けたり、暴飲暴食をしたり、風邪などの感染症にかかったり、あるいは貧血や妊娠などを切っ掛けになって、急性心不全を起こすことがあります。

急性心不全の症状は、軽症のものから命にかかわるわるものまで多彩です。代表的な症状としては、激しい呼吸困難、せき込み、血たん、胸部の痛みや圧迫感、脈拍数の増加、動悸(どうき)、乏尿、腹部膨満、冷や汗、顔面の皮膚蒼白(そうはく)、冷感、浮腫(ふしゅ)、腹水で、全身が酸素不足に陥いると唇(くちびる)や爪先(つまさき)、皮膚や粘膜などが青紫色に変色するチアノーゼ、さらに意識障害が現れることもあります。多くの場合、血圧は低下します。

急性心不全では、急速に進行して死亡するケースも少なくありません。症状に気付いたら一刻も早く、専門医のいる救急病院に入院することです。呼吸の状態が悪い場合は、救急車による搬送を依頼します。

急性心不全の検査と診断と治療

循環器科、循環器内科、心臓血管外科、心臓血管内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断は、一刻を争う場合が多いため、治療と同時に行います。まず行う検査は、胸部X線検査、心電図、心臓超音波検査(心エコー)、血液検査、カテーテル検査です。

循環器科、循環器内科、心臓血管外科、心臓血管内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療は、まずは呼吸困難の改善と臓器のうっ血状態の改善、いわゆる救命救急措置を早急に行います。

一般的に行われる初期治療は、酸素療法と薬物療法です。酸素療法によって、呼吸の安定化とともに動脈血の酸素含量を高め、臓器虚血の改善を図ります。鼻カニューレ、フェイスマスク、リザーバーマスクなどを使用して酸素を投与し、呼吸の状態が非常に悪い場合は気管内挿管をして人工呼吸を行います。また、投薬によって、臓器のうっ血状態の改善、血液循環の改善を図ります。

急性心不全を起こした際に、心臓が収縮した際の収縮期血圧が100mgHg以下と低い場合には、血圧を上げる昇圧薬や強心薬を用います。収縮期血圧に異常が認められない場合や高い場合には、硝酸薬やカルペリチドなどの血管拡張薬を投与し、血液の臓器循環の改善を図ります。うっ血の改善には、体内水分貯留を防ぐ利尿薬を使用します。

これらの措置により急性期の発作的症状が治まった後は、入院安静の状態を保ちながら心不全の原因特定のための精密検査を行い、その後の治療方針を決めていきます。

すなわち、心不全に至った原因となる基礎疾患によっては、心筋梗塞、狭心症に対する風船治療や冠動脈バイパス術、心臓弁膜症に対する弁形成術や弁置換術、不整脈に対するペースメーカの植え込みなどを検討します。場合によっては、心臓移植を検討することもあり得ます。

内科的治療も重要で、特定された原因や、高血圧、糖尿病、高脂血症などの基礎疾患によって、継続的な投薬治療を行っていきます。

退院後は、再発予防のために食塩と水分の過剰摂取や飲酒は避け、過食に気を付けます。さらに、休養と睡眠を十分にとります。

🇩🇪急性腎不全

急激に尿毒症の症状を起こす腎不全

 急性腎(じん)不全とは、急激に尿毒症の症状を起こす腎不全。何カ月、あるいは何年かの経過を経て、次第に腎不全となるのは、慢性腎不全です。

 腎不全は、腎臓の機能が極端に低下して、正常な体の調節機能が働かなくなった状態をいいます。この腎不全がさらに進行して、消化器系や心臓血管系、あるいは神経系にいろいろな症状が出てくる状態を尿毒症といいます。

 急性腎不全の原因は、腎前性、腎性、腎後性の3つに分けられます。

 腎前性は、ショックや出血などで血圧が下がり、腎臓へ血液が流れなくなることから起こるものです。例えば、心臓や消化器、産婦人科の手術の後や、大きな外傷、やけどによる脱水などが原因となります。

 腎性は、急性腎炎や急性腎盂(じんう)腎炎、あるいは腎毒性物質や薬物などで、腎臓の働き自体が一時的になくなることから起こるものです。近年では、病原性大腸菌による溶血性尿毒症症候群(HUS)が注目されています。

 腎後性は、結石や腫瘍(しゅよう)、前立腺(せん)肥大など、尿路の通過障害から起こるものですが、今日では著しく減少しています。

 急性腎不全の症状は、乏尿期と利尿期に分けられます。

 乏尿期では、尿量が急激に減少して、1日の尿量が400ミリ以下となり、血液の中の尿素窒素、クレアチニン、尿酸などが蓄積して、尿毒症の症状が現れます。すなわち、食欲不振、吐き気などの消化器症状、心臓肥大、高血圧、呼吸困難などの心臓血管症状、頭痛、不安感などの神経症状などです。また、口臭がアンモニア臭を帯び、皮膚は乾燥して黒みがかってきます。そして、意識がもうろうとなって、昏睡(こんすい)状態に陥ります。

 利尿期は、乏尿期が数日から数週間続いた後、幸いに尿が出るようになった時期をいいます。腎臓の機能は次第に回復に向かい、尿量も増加します。

急性腎不全の検査と診断と治療

 乏尿期と利尿期では治療法が多少違いますが、いずれの場合も入院治療が必要です。

 乏尿期では、まず水分の管理が大切です。血液中のカリウムが増加しているので、この管理も重要です。乏尿期が長引くようであれば、早めに透析療法を行うほうが安全です。

 利尿期に入ると急激に尿量が増えますので、脱水にならないように注意が必要です。カリウムなどの電解質のバランスを保つことも重要です。

 以前は重篤な症状を呈して死亡するケースもみられましたが、今日では人工透析療法が広く普及したため、著しい効果を上げています。急性腎不全そのものだけでは、死亡例はほとんどみられません。

🇬🇱急性膵炎

腹痛を伴って急激に起こる炎症

急性膵(すい)炎とは、酒の飲みすぎや胆石などの要因により、膵臓に急激な炎症が起こる疾患。持続的で、激しい上腹部の痛みを伴います。

比較的軽症で膵臓が腫(は)れるだけで容易に回復する浮腫(ふしゅ)性膵炎、膵臓や周囲が壊死を起こす壊死性膵炎など、さまざまな症状があります。重症の場合には、他の臓器にも障害を来す多臓器不全となったり、重篤な感染症を合併して、ショック状態に陥って死に至る場合もあります。軽症の場合は、2~3日で腹痛はやみ、1週間ほどで治ります。

厚生労働省では、原因不明の難病の一種で、難病対策推進の調査研究の対象となる特定疾患に、重症急性膵炎を指定しています。

発症頻度は男性が女性の2倍で、男性では30~60歳代に多くみられ、女性では50~70歳代に発症しやすい傾向がみられます。

膵臓は胃の後ろに位置する消化腺(せん)であり、外分泌と内分泌という二つのホルモン分泌を行う機能があります。外分泌機能は、消化液である膵液を分泌して十二指腸へ送り込み、食物の消化、吸収を助けるもの。膵液には、炭水化物を分解するアミラーゼ、蛋白(たんぱく)質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼといった消化酵素が含まれています。

一方、インシュリン(インスリン)やグルカゴンなどのホルモンを分泌して、血糖値を調節するのが内分泌機能です。インシュリンは血糖値を下げ、グルカゴンは血糖値を高くします。

急性膵炎は、膵液中の消化酵素の働きが異常に高まって、自己の膵臓組織を消化してしまうために起こると考えられています。これを自己消化(自家消化)といいますが、ほかの病気にはみられない現象です。

通常、膵液は胆のうから分泌された胆汁と混ざり合って十二指腸に流れ込み、そこで初めて活性化されます。ところが、何らかの原因で膵液の流れが滞ると、膵臓の膵管内に膵液がたまるようになり、そこに十二指腸から逆流してきた胆汁が混ざって、膵臓内で活性化してしまうのです。

急性膵炎を引き起こす主な要因の一つは、胆石です。胆のうから流れ出た胆石が、胆管と膵管の合流地点であるファーター乳頭に詰まると、膵液がうまく流れなくなって、膵臓内にたまります。その結果、膵臓が自己消化を起して急性膵炎を発症します。

酒の飲みすぎも、急性膵炎を招く大きな要因です。アルコールによる急性膵炎の発症メカニズムは、完全には明らかになっていませんが、多量の飲酒の影響で膵臓にむくみが生じ、膵管が狭くなって膵液の流れが滞ると考えられています。一説によると、アルコールの作用によって、膵臓の細胞そのものがダメージを受けるとされます。

このほか、ウイルスの感染や、血液中の中性脂肪が高い高脂血症などが引き金となったり、原因不明で突発的に起こるケースもみられます。内視鏡的膵胆管造影(ERCP)や上腹部の手術後、あるいはステロイド剤など特殊な薬剤によって引き起こされるケース、膵臓の腫瘍(しゅよう)、特に膵がんによって起こるケース、消化酵素の遺伝子異常によって起こるケースなどもまれにあります。

急性膵炎の最も典型的な症状は、上腹部に生じる突然の激しい痛みで、多くのケースでは吐き気や嘔吐(おうと)を伴います。痛みの場所はみぞおちから左上腹部で、背中や腰、腹部全体に痛みが広がることもあります。

胆石などによる腹痛は嘔吐すると和らぐケースが多いのに対し、急性膵炎の痛みは逆に強まりやすいとされています。また、上を向いて寝ると腫大した膵臓が脊椎(せきつい)に圧迫されて痛みが強くなりますが、背中を丸めて横になったり、膝(ひざ)を抱えて前にかがむ姿勢をとると、痛みが軽減する点も特徴です。

何の前触れもなく痛みが起こることもありますが、食事後、特に油分の多い食事をした後や、アルコールを多く飲んだ後に起こることも少なくありません。そのほかの症状としては、食欲不振、全身倦怠(けんたい)感、腹部膨満感、発熱などがあります。

激しい腹痛で発症することがほとんどですが、中にはさほど痛みを覚えない場合もあります。こうしたケースは、痛みに対する感受性が低下している高齢者に多いもの。まれに、かなり重い炎症を起こしているにもかかわらず、全く腹痛が現れないこともあり、急性無痛性膵炎と呼ばれます。

急性膵臓の検査と診断と治療

急性膵炎では、早期発見、早期治療に努めることが大切。重症になると生命にかかわりますので、軽症のうちにできるだけ早く治療を行う必要があります。

医師による診断では、まず血液検査と尿検査が行われます。膵臓に炎症があると、膵液に含まれている消化酵素のアミラーゼやトリプシンなどが、血液や尿の中に流出してきます。従って、血液と尿を採取して調べ、アミラーゼなどの消化酵素の量が増えていれば、ほぼ診断が付きます。

診断を確定するためには、腹部超音波(エコー)検査やCT(コンピューター断層撮影)検査が必要です。特にCT検査は病変の広がり具合、腹部や胸部の変化などを正確に捕らえることができるため、急性膵炎の診断と重症度の判定には欠かせません。

急性膵炎は、病変の進み具合によって、軽症、中等症、重症の三つの段階に分けられます。

軽症では、医師による触診の際に左上腹部を押すと痛みが生じ、また押されておなかが硬くなる筋性防御もあります。病変は膵臓の周囲にとどまっていて、腹部超音波検査を行うと膵臓全体に腫れが認められます。血清アミラーゼと尿中アミラーゼの値も上昇します。

中等症になると、発熱や全身倦怠感が起こり、病変が腹膜組織や腹腔全体に広がります。血液検査の異常値も高くなります。また、血液中に流出した消化酵素のために、さまざまな臓器や組織の壊死が起こることがあり、わき腹や下腹部に皮下出血による出血斑(はん)が現れるケースもみられます。

重症になると、全身に病変が及び、消化管障害や腹膜炎、急性腎(じん)不全、呼吸不全、意識の低下といった重い症状が現れます。検査数値にみられる異常も、顕著になります。胸部X線検査を行うと胸水の貯留がみられ、腹部X線検査を行うと小腸内にガスがたまっているのがわかります。

なお、軽症の死亡率は10パーセント以下であるのに対し、重症では50~70パーセントに上ります。急性膵炎全体の死亡率は、20パーセント前後と推定されています。

急性膵炎の治療には、薬物療法、外科的療法、食事療法などが挙げられます。経過が比較的良好な軽症と、死に至る危険が高くなる重症とでは、治療方法が異なります。

軽症、中等症の場合は、まず絶飲、絶食をして消化酵素の分泌を抑え、膵臓に負担がかからないようにします。その際、炎症のために失われている水分を補い、一定の栄養状態を維持するために、点滴で水分と電解質を十分に補給します。

腹痛や背部痛などに対しては、痛みを取る抗コリン剤や中枢性鎮痛剤が用いられますが、痛みがあまりに激しい場合は、麻薬性鎮痛剤のモルヒネが使用されるケースもあります。

血液中に消化酵素が流出すると、呼吸不全や腎不全といった合併症を引き起こすことがあるので、外分泌を抑える膵臓素阻害剤が使用されます。感染症を防ぐために、抗生物質の投与も行われます。

こうした治療によって、軽症、中等症のほとんどは、1週間前後で軽快します。

しかし、重症の場合は、さまざまな臓器に障害が起こるので、集中治療室での全身管理が必要になります。特に、ショック状態に陥って脈拍が増加し、血圧が下降したケースでは、膵臓酵素の活性を抑える働きのある蛋白分解酵素阻害剤のアプロチニン製剤と並行して、抗炎症剤の副腎皮質ホルモン製剤が大量に投与されます。

このほか、重症の急性膵炎に対して行われる特殊な治療法として、腹膜かんりゅう法が挙げられます。腹膜かんりゅう法は、カテーテルという細い管からおなかの中に腹膜透析液を注入し、腹腔内の有害物質を排除する方法です。

このような治療によって、悪化していた全身状態がかなり回復してくることがあります。

急性膵炎では、こうした内科的治療が基本となりますが、胆石が原因で病状が改善されない場合は、内視鏡を用いた胆管結石の除去や、管を挿入して、たまった液を吸引する胆管ドレナージが必要になることがあります。胆石を取り除くために、開腹して胆管を切除したり、胆のうを摘出する手術が必要になることもあります。

また、中等症や重症で、内科的治療を試みても病状が改善しない場合のほか、膵のう胞や膵腫がんといった合併症が起こっている時も、膵臓の切除手術などの適応となる場合があります。

膵臓の安静を図り、症状を改善するためには、食事療法も重要な治療の一つです。病状に応じて、適切な食品と摂取量を選択して、栄養状態を良好に保ち、禁酒を原則とします。

脂肪は膵臓への刺激が最も大きく、膵液の分泌量や濃度が増すことがわかっています。病状が落ち着いても、脂肪を多く含んだ食品を食べると痛みが再発することがあるので、完全に治癒するまでは1日の脂肪摂取量を20~30グラム以下に抑えます。

蛋白質の多い食品は膵液の分泌を高めるため、症状が著しい時は摂取量を厳重に制限します。回復するに従って、白身魚や豆腐といった良質の蛋白質食品から摂取を開始し、膵臓の機能回復を図ります。

糖質は、脂肪や蛋白質と違って膵液分泌の刺激とはなりません。また、膵臓から分泌される消化酵素が減少しても、十分に消化、吸収されるので、おかゆやうどんなどで栄養を補給するとよいでしょう。ただし、症状が激しい時期は、1回に摂取する量を少なめにします。

コーヒーなどのカフェイン飲料、炭酸飲料、香辛料は、食欲を増進させる半面、膵液の分泌を促進させるので、量に注意して摂取します。また、味付けを濃くすると膵液の分泌が高まるので、薄味を心掛けましょう。

脂肪を控えると脂溶性ビタミンが不足しがちになるので、必要に応じてビタミンA、D、E、Kを含んだ総合ビタミン剤を服用します。

このような薬物療法、食事療法で早期に適切な治療が行われれば、膵臓にほとんどダメージを残さずに、軽症、中等症の急性膵炎のほとんどは完治します。しかし、大量飲酒を続けたり、胆石を放置するなど、急性膵炎を発症した原因をそのままにしておくと、再発することがあります。再び腹痛が起こった時は、早めに受診しましょう。

また、急性膵炎を繰り返していると膵臓の壊死を招き、やがては慢性膵炎に移行します。暴飲暴食を避け、禁酒をして、再発を防ぐように、自己管理を心掛けることが大切です。

🇬🇱急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)

精巣に付着している精巣上体に、急性の炎症が起こる疾患

急性精巣上体炎とは、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている精巣の上面、および後面に付着している精巣上体に、急性の炎症が起こる疾患。急性副睾丸(こうがん)炎とも呼ばれます。

精巣上体、すなわち副睾丸は、精巣から出た精子を運ぶ精管が精巣、すなわち睾丸のすぐ近くで膨れている部分に相当します。精管はこの精巣上体から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。炎症の多くは、精巣の上面に付着している精巣上体に起こります。

尿の中の細菌などが精巣上体に入り込んで、感染を起こすことが原因です。通常、尿には炎症を起こすほどの細菌はいませんが、前立腺肥大症、尿道狭窄(きょうさく)、膀胱(ぼうこう)結石などの疾患があると、尿は汚れて細菌が増殖しますから、急性精巣上体炎を起こしやすくなります。これらは高齢者に多く、大腸菌などの一般的な細菌が原因菌となります。

一方、青年層にみられる場合は、性行為感染症(STD)の1つである尿道炎から引き起こされます。尿道炎の原因であるクラミジアや淋菌(りんきん)が精巣上体に至ることによって、炎症を起こします。

症状は、陰嚢内の精巣上体の一部の軽い痛みで始まります。自覚症状としては、精巣そのものの痛みのように感じるかもしれません。徐々に陰嚢全体に痛みが広がり、陰嚢が硬くはれ上がり、皮膚が赤みを帯びてきます。

歩行時に激しく痛んだり、はれているところを圧迫すると強い痛みを感じ、38度以上の発熱を伴うことがしばしばあります。さらに悪化すると、陰嚢の中にうみがたまり、破れて出てくることもあります。精管に沿って炎症が広がっていると、大ももの付け根の鼠径(そけい)部や下腹部の痛みを感じることもあります。

普通は、膿尿(のうにょう)、細菌尿を伴って症状が全般的に強いのですが、クラミジアの感染では症状が軽度で膿尿もみられないことがあります。精巣に炎症がおよぶことはまれで、精巣にはれ、圧痛は認められません。

急性精巣上体炎の検査と診断と治療

適切な抗生剤を早期に使用することによって比較的治りやすい疾患ですが、悪化すると治療が困難になり慢性化してしまったり、精巣を摘出しなければならないことがあります。早めに泌尿器科の専門医を受診することが大切で、治療中は激しい運動や飲酒は控えます。

医師の側では、尿検査で尿中の白血球や細菌を検出します。クラミジア感染が疑われる場合も、尿で検査できます。細菌については、その種類とどのような抗生剤が効くかを同時に調べますが、細菌が検出されないこともまれではありません。また、全身への影響をみるため、血液検査で炎症反応などをチェックします。精索捻転(ねんてん)症や精巣腫瘍(しゅよう)との区別が難しい場合もあります。

治療は、局所の安静と冷湿布、抗生剤の経口投与が主体となります。抗生剤は、尿路感染症に有効なユナシンなどのペニシリン系、セフゾンなどのセフェム系、クラビットなどのニューキノロン系が用いられます。また、サポーターなどで陰嚢を持ち上げることで、症状が和らぎます。発熱などの全身症状がみられる場合は、消炎鎮痛剤の投与とともに、入院した上で安静を保ち、抗生剤の点滴による治療が必要になります。

発熱を伴う急性期の炎症は、1〜2週間で治まります。精巣上体のはれや鈍い痛みは、数カ月続く場合が多く、時には精巣上体に硬いしこりが残ってしまうことがあります。初期の治療が不十分だと炎症が悪化してうみがたまり、陰嚢を切開してうみを出さなければならなかったり、精巣を含めて精巣上体を摘出しなければならないこともあります。

後遺症として、慢性精巣上体炎に移行したり、精巣上体部の精子通過障害をもたらすことがあります。精巣にも炎症が波及し、両側性であれば男性不妊につながることもあります。

🇩🇰急性大腸炎

細菌が原因で大腸に起こる炎症

急性大腸炎(大腸カタル)とは、急性胃腸炎の中で、主として赤痢、大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクターなどの細菌が原因となって、嘔吐(おうと)を伴わずに、炎症が大腸に限局しているような疾患を指します。

実際には、急性胃腸炎と急性大腸炎の区別は、臨床症状だけでは付きにくいものです。

急性大腸炎の症状としては、急性胃腸炎と同じように腹痛、下痢、発熱を伴います。特に下腹痛があり、しばしば渋り腹で、便意を催したりもします。下痢の便には、粘液、うみ、時には血液が混じります。

血便が出る腸炎について、かつては「血便すなわち赤痢」という考えが強かったのですが、近年では赤痢菌による血便はほとんどみられなくなりました。現在、血便を出す下痢症で頻度の高いのは、サルモネラ菌とカンピロバクターによるもの。食中毒の原因菌として有名なサルモネラ菌とカンピロバクターは、腸炎の原因菌となることも多いのです。ほかに、病原大腸菌による血便もあります。

細菌に有効な抗生物質で治療し、食事制限

サルモネラ菌は抗生物質を使っても使わなくても、全身状態の管理さえしっかり行えば、その効果はほとんど変わらないと見なされています。

カンピロバクターには、抗生物質のエリスロマイシンが効果的。そのほかの原因菌による場合も、その細菌に有効な抗生物質が用いられます。

全身状態の管理は、胃腸炎と同じで、食事制限を行い、水分を十分に摂取します。下痢が少し治まったら、流動食から普通食へと移行していきます。なお、口から食べ物が取れない場合は、輸液を行う必要があります。

🇩🇰急性中耳炎

急性中耳炎とは、ウイルスや細菌の感染によって、耳の鼓膜と内耳との間にある中耳が炎症を起こした状態です。成人より小児に多い疾患で、風邪やアレルギーが誘因となります。

耳と鼻の奥をつなぐ耳管から、鼻やのどの細菌などが中耳に入って炎症が起こると、耳が痛み、耳の詰まった感じ、難聴に加え、発熱、全身倦怠(けんたい)、頭痛が起こり、鼓膜が赤く腫(は)れます。

鼻を強くかまない、安静にする、入浴を控えるなどを心掛ければ、急性中耳炎のほとんどは、一週間くらいで治ります。急性中耳炎のうちによく治療し、耳だれを主症状とする慢性中耳炎にならないように、心掛けたいものです。

治療に当たる多くの医師は、全例にアモキシシリンなどの抗生物質による治療を行っています。自然に治癒するか、悪化するかどうかを予測するのが、難しいためです。アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬は、痛みを和らげます。フェニレフリンが入ったうっ血除去薬も、効果があります。抗ヒスタミン薬は、アレルギーによる中耳炎の場合は有効ですが、風邪には効果はありません。

痛みや熱が激しかったり、長引く場合、また鼓膜の腫れがみられる場合には、鼓膜切開を行って、耳だれを中耳から排出します。鼓膜を切開しても聴力に影響はなく、切開した穴も普通は自然にふさがります。

中耳炎を繰り返し起こす場合は、鼓膜を切開して、耳だれを排出する鼓膜チューブを設置する必要があります。

🇩🇰急性虫垂炎

急性虫垂炎とは、一般に盲腸炎といわれるもので、盲腸下部にある小突起の虫垂が炎症を起こす疾患をいいます。

ミミズのような形をした虫垂の中に、ブドウの種や、石炭塩が沈着して結石となった糞石(ふんせき)などの異物、あるいは細菌が入り込むのが原因ともいわれ、過労、暴飲暴食、家族内の体質が誘因となると考えられていますが、まだ確実なことはわかっていません。

消化管の外科的な病気としては最も多いものの一つで、10~20歳代の青少年期に多く、全体的には約5パーセントの人がかかると推定されます。

典型的な症状は、突発的に腹痛が起こるのが特徴で、最初は上腹部が痛み、時間の経過とともに、右下腹部へ痛みが移動し、その場所が限定されてきます。また、多くは吐き気、嘔吐(おうと)、発熱を伴い、便秘がちになるのが普通です。発症した場合には、患部を氷のうなどで冷やして救急車を呼びましょう。

血液検査をすると、白血球の増加が認められます。初期で軽度の場合には、抗生物質の投与などの内科的治療も行われますが、虫垂炎は再発の可能性が高いため、ほとんどは外科的手術により、虫垂の摘出を行います。

早期手術の予後は良好で、約1週間ほどの入院で退院可能です。発症後放置して、手術が遅れてしまうと、虫垂の穿孔(せんこう)や腸管の癒着、腹膜炎を併発する可能性があるので、なるべく早めに医師の診断を受けることが大切です。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...