2022/08/14

🇬🇾変形性肘関節症

肘の関節内の軟骨が擦り減ったり、骨の変形が生じたりして、痛みが起こる疾患

変形性肘(ちゅう)関節症とは、長年の使用や肘(ひじ)に繰り返される過度の負担によって、肘の関節内の軟骨が擦り減ったり、骨の変形が生じたりする疾患。

肘の関節は上腕骨と橈(とう)骨と尺(しゃく)骨という3骨の間に生じた複関節であり、その周りは靭帯(じんたい)や腱(けん)などによって支えられています。関節を形成している骨の先端は、関節軟骨に覆われており、骨にかかる衝撃を和らげるクッションのような役割を果たしています。

変形性肘関節症を発症すると、肘の関節の軟骨部分が擦り減って、肘に変形や痛みなどが起こってきます。

中には、骨折、脱臼(だっきゅう)などの外傷後や血友病、先天異常などに伴って起こるものもありますが、ほとんどは、肘の長年にわたる使いすぎが原因で起こります。そのため、変形性肘関節症は中高年に多く、しかもその大半が大工などの仕事や、野球などの激しいスポーツで、肘を酷使し続けてきた人たちに起こります。

左右両方の肘の関節に起こることもありますが、一般には利き腕側の肘に発症することが多いようです。

肘の酷使によって、骨の軟骨部分が擦り減ると、硬い骨同士が直接接触することになり、関節の安定性が悪くなります。さらに、骨と骨とが擦れ合うため、骨の端には骨棘(こっきょく)という骨のとげができてきます。また、骨の一部がはがれ、その欠けらが関節遊離体(関節ねずみ)となって、関節内を移動する場合もあります。こうした骨棘や関節遊離体が、肘の関節の障害を引き起こす原因になります。

変形性肘関節症を発症すると、関節の変形に伴って、肘の痛みが、徐々に現れてきます。しかし、肘の関節には体重があまりかからないため、肘を使わなければ痛むことはあまりなく、主に仕事やスポーツなどで肘を使った後に痛みが起こります。

放置していると、肘の関節の変形が進み、肘を十分に曲げ伸ばしすることが難しくなってきます。そのため、洗顔や食事、衣服の着脱などの日常生活に支障を来すようになります。

また、肘の変形や骨棘、関節遊離体などによって、肘の内側の皮膚表面近くを通る尺骨神経が障害される肘部管(ちゅうぶかん)症候群が引き起こされる場合もあります。

肘部管症候群を併発すると、小指と小指側の薬指半分がしびれたり、触った感じが鈍くなったりし、それに引き続いて、手の筋肉の委縮や握力の低下などが起こってきます。こうした指のしびれや手の筋肉の委縮によって、異常に気が付く場合もあります。

肘の関節に痛みがあり、反対側の肘と比べて動きが悪く日常生活に支障がある場合や、手にしびれがある場合には、変形性肘関節症の可能性もあるため、整形外科を受診することが勧められます。

変形性肘関節症の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、肘の動きや痛みの部位の診察と、X線(レントゲン)検査を行います。X線検査では、ひじを前後方向と側方向から撮影し、関節軟骨の擦り減り、骨棘、関節内遊離体がないかなどを調べます。骨棘、関節内遊離体の位置、大きさなどを把握するには、CT(コンピューター断層撮影)検査が有用です。

また、手や指を筆や針で刺激して感覚障害の有無を調べ、肘部管症候群を鑑別します。握力測定を行って握力が低下していれば、肘部管症候群を起こしている可能性が高くなります。

整形外科の医師による治療では、まずは痛みに対して安静、ホットパックや電気治療などの理学療法、湿布や痛み止めの内服薬を用いた保存的治療を行います。

関節の動きが悪く、肘を曲げて口に手が届かない、トイレの始末ができないなど日常生活での支障がある場合には、直視下での切開または関節鏡を用いて、関節の動きをじゃましている関節内の骨棘、関節内遊離体の切除を行う関節形成術を行います。

変形と痛みが強い場合には、人工関節で関節を置き換える手術も行います。 神経の症状がある場合には、尺骨神経への圧迫を取り除く手術を行います。

手術後は、無理をすると再び変形性肘関節症が進行し出す場合もあるので、肘を酷使しないようにすることが大切です。また、肘の関節にかかる負担を軽くするために、事前に医師と相談の上、腕の筋力アップを図ったり、肘の動きをよくするための運動を積極的に行うことも大切です。

🇬🇾フライバーグ病

思春期ころの女子に多くみられ、足指の付け根部分の骨が壊死する疾患

フライバーグ病とは、足の中足骨(ちゅうそくこつ)の骨頭部の組織が血液の循環障害により壊死(えし)し、痛みが起こる疾患。1914年にフライバーグにより初めて報告されましたが、1915年にケーラーも報告しているため第二ケーラー病と呼ばれることもあります。

このフライバーグ病は、成長期の子供の成長軟骨に障害が起き、痛みを伴う疾患である骨端症の一つでもあります。骨端症の多くは男子に現れますが、フライバーグ病に関しては女子に多くみられます。好発年齢は12~18歳の思春期ころで、女子は男子より3~4倍ほど多くなっています。

足の第2中足骨に最も多く起こる傾向があり、次いで第3中足骨に多く起こり、まれに第4中足骨にも起こります。第2中足骨に多く起こるのは、中足骨の中で最も長いため、靴を履くことによって長軸上のストレスがかかりやすいためと思われます。足の両側に起こる例が、10パーセント程度にみられます。

症状の最初は、運動をすると足の前の部分の不快な感じがあり、体重が掛かると痛みが出ます。数年間、無症状の時期があり、運動を機に痛みが再発します。中足骨の骨頭部がある足指の第2指(中指)や第3指(薬指)の付け根を押すと痛みがあり、はれが出ることもあります。進行すると、歩く際の踏み返しの時に足指の付け根の関節に痛みがあるため、その部位への荷重を避けた歩き方になります。関節の可動域制限もあります。

外傷に続発することもありますが、発症の原因にはいろいろな説があり、確定したものはありません。幅の狭い靴を長期間使用することで、持続的な負荷がかかって中足骨の骨頭部への血行が一時的に障害されて生じるともいわれています。

🇧🇷フラットフット

足の裏の土踏まずのくぼんだ部分がなくなり、扁平化した足の変形

フラットフットとは、足の裏の土踏まずのくぼんだ部分がなくなって、足の縦、横の軸とも扁平(へんぺい)化した足の変形。扁平足、ローアーチとも呼ばれます。

起立時や歩行時には足の裏のアーチがつぶれていて、足の裏全体が地面にくっつきます。

乳幼児では足底の脂肪が多いため、土踏まずがないのは当たり前のことで、8歳ごろで形成される足の裏のアーチができていないものをいいます。遺伝によるフラットフットもありますが、生活の中で改善していけるものでもあります。スポーツ選手などでも土踏まずがなく、フラットフットに見える人もいますが、足の裏にも筋肉がついているのでそう見えるだけです。

本当のフラットフットは、立ち仕事を長時間する人に最もよくみられます。体重をかけていない時には土踏まずがある軟らかいフラットフットと、体重をかけていない時にも土踏まずがない硬いフラットフットがあり、多くの場合は前者です。前者では体重をかけて立ったり、歩いたりすると土踏まずがなくなります。

フラットフットの障害としては、起立時や歩行時の足の痛みが主なものです。 ほかに、歩きにくい上に変な歩き癖がついてしまい、すぐに疲れやすいという難点があります。足の裏のアーチがないために、歩く際の足の一連の動きの中で地面をけり上げるという行為が足への負担となって、疲れやすくなるのです。

歩き癖によって、膝(ひざ)が痛くなったり、腰痛や外反母趾(がいはんぼし)を招く場合もあります。足の裏のアーチがないために、足の裏全体の血管が圧迫されることになり、血流も悪くなります。結果的には、むくみや冷えなどの症状も出てきます。神経も立っている間中、圧迫されるために、痛みが出ることもあります。

痛みがあって、歩行が困難な場合もあります。土踏まずの上にある舟状骨が出ている場合で、靴が土踏まずの部分に当たり、痛みが生じます。ひどい症状になると、骨が離れて出っ張った状態になって、激しい痛みが生じます。

フラットフットの検査と診断と治療

整形外科、ないし形成外科、足の外科の医師による診断は、外観上の変形から容易です。骨の状態を把握して重症度を判定するためには、X線(レントゲン)検査が必要で、通常、立って体重をかけた状態で撮影します。

整形外科、ないし形成外科、足の外科の医師による治療は、もっぱら保存的に行われ、土踏まずの形をつけるように足底に装具を入れた治療靴を用いたり、足の筋肉の強化練習などが行われます。舟状骨が出ている場合には手術が必要になりますが、こうしたケースはごくまれです。

乳幼児のフラットフットを改善するには、靴下や靴を履かせずに、裸足(はだし)で砂場を歩かせて足の裏を刺激するという方法があります。子供、大人に限らずに、望ましいのは部屋の中では裸足でいることです。

大人のフラットフットを改善するのにも、足の裏を刺激することが最善の方法であり、痛みがあるからといって歩くのをためらっていてはいけません。靴の中敷きに、アーチサポートという、土踏まずが当たる部分の盛り上がっているものを使うと、歩行が楽になります。近年では、矯正するためのテーピングが内蔵された靴下も販売されています。

歩く時は、足の指をしっかり使って歩くようにして、足の裏の筋肉を鍛え、血行促進を図ります。日ごろの生活の中で、意識してつま先立ちをするのもお勧めです。

🇦🇷プランマー病

腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に分泌

プランマー病とは、機能性甲状腺(こうじょうせん)腫瘍(しゅよう)により甲状腺ホルモンの過剰分泌を来し、甲状腺機能亢進(こうしん)症を生じる疾患。機能性甲状腺腺腫という別名で呼ばれています。

なお、このプランマー病(機能性甲状腺腺腫)と、ほぼ同じ意味で、自律機能性甲状腺結節、過機能性甲状腺結節(単発)、中毒性多結節性甲状腺腫(多発)という別名が用いられることもあります。

プランマー病の日本における発生頻度は極めて低く、甲状腺機能亢進症全体の0.3パーセントにすぎません。これに対して、アメリカでは約2パーセント、イギリスでは約5パーセント、ドイツとスイスでは33パーセントを占めています。世界的にみると、地域差が非常に大きく、ヨーロッパ、特にアルプス地方に発症者が多いため、ヨード摂取量の低い地域での発生頻度が高いと見なされています。

機能性甲状腺腫瘍は、甲状腺内の部分的組織の異常成長です。普通の甲状腺腫瘍は甲状腺ホルモンを分泌しないのですが、この異常組織は甲状腺を正常に制御するメカニズムから逸脱し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)がなくても甲状腺ホルモンを必要以上に産生、分泌します。腫瘍が甲状腺ホルモンを過剰に分泌するため、脳下垂体で甲状腺刺激ホルモンの分泌が抑制される結果、甲状腺の正常組織が機能しなくなります。

プランマー病は、若年期や青年期には少なく、加齢とともに増える傾向があります。眼球突出を除いてバセドウ病と同じ、甲状腺機能亢進症の症状が現れます。

体のいろいろな機能が過剰になり、心拍数の増加、血圧の上昇、心拍リズムの異常(不整脈)、多汗、手の振戦(震え)、イライラ感、情緒不安定、神経過敏、睡眠困難(不眠症)、多飲多尿、食欲の増進にかかわらず体重が減る、疲労や虚弱にかかわらず活動量が増える、いつも腸の働きが活発だが時々下痢をする、などの症状がみられます。

検査と診断と治療

医師による診断では、症状からプランマー病の見当をつけ、診断を確定するために血液検査を行います。血液中の甲状腺ホルモンの値や、血清中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値を測定します。

次に、放射性ヨードによるシンチグラフィーが用いられます。この画像検査であるシンチグラフィーによって、腫瘍の部分にヨードが強く集積する、甲状腺の正常部分にヨードが取り込まれないなどが判明すれば、プランマー病と診断されます。

腫瘍が良性か悪性かきちんと鑑別するために、甲状腺エコー、CT、甲状腺腫瘍生検も行われます。

医師による治療では、手術による腫瘍の切除が基本となり、アイソトープ(放射性ヨードの内服薬)治療も行われます。手術前には、甲状腺ホルモンを低下させておくために、抗甲状腺剤を服用する必要があります。手術後も、残った甲状腺の正常組織が小さくなり、長期間働かない場合には、甲状腺ホルモン剤の服用が必要になることもあります。

日本では一般に手術が、欧米ではアイソトープ治療が第1選択となっています。高齢者で、手術やアイソトープ治療が選択できない場合は、抗甲状腺剤の服用が行われます。

医療施設によっては、腫瘍にアルコールを注入するPEITという治療法が行われます。ただし、PEITは医師側の技術を要し、腫瘍が大きいケースには適しませんが、2002年4月から、一部の施設で高度先端医療として保険適応になりました。

🇧🇷プランマーズネイル

爪の甲が爪床から離れて、浮いてくる状態

プランマーズネイルとは、爪(つめ)の甲が爪床(そうしょう)からはがれる状態。爪甲剥離(はくり)症、オニコライシスとも呼ばれます。

爪の先端から半分くらいまでははがれてくることがありますが、爪が全部抜け落ちることはありません。

爪は本来、先端部以外は爪の下の皮膚とよく付着しているものですが、プランマーズネイルでは爪が下の皮膚である爪床から遊離します。爪が爪床から離れて、浮いてくる状態は爪の先端から始まり、根元に向かって徐々に進行して、剥離した爪は白色ないし黄色に変化します。

また、指と爪の透き間にゴミが入り、しばしば部分的に汚い褐色調を呈することもあります。こういう状態の時、爪の下をつまようじなどで掃除するのはよくありません。皮膚を痛めて、ますます悪化することになります。

プランマーズネイルの原因としては、ごくまれに先天性ないし遺伝性のプランマーズネイルもありますが、多くは後天性で、外因、感染症、薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患などに伴って生じます。最も多いのは、原因のはっきりしない特発性のもので、この場合、症状は軽くあまり進行するということもありません。

外因によるものとしては、爪と爪床の間にトゲや鉛筆の芯(しん)などが入るなどのけが、あるいは、指先の細かい操作を必要とする職業によるものがあります。職業は、料理人、理髪師、美容師、庭師、パソコンのオペレーター、ギタリスト、ピアニストなど。また、マニキュアや洗剤、さらには有機溶剤やガソリンなども原因になります。

極めて軽い湿疹(しっしん)やかぶれが起こった場合、手の皮膚ではわずかに皮がむけるだけで治っていきますので、気付かずにすむことが多いのですが、爪の下ではほんのわずかに皮がむけた状態でも、爪ははがれて浮いた状態となります。

感染症によるものは、カンジダという真菌、一種のカビの爪床部への感染によるものがほとんどです。この場合は、爪の下の皮膚がガサガサした感じになります。

薬によるものとしては、内服するだけでプランマーズネイルを起こす薬もありますが、多くの場合は薬だけではなく、薬を内服した人の爪に日光の紫外線が作用することで生じる薬剤性光線過敏症、ポルフィリン症などの光線過敏症に伴うものです。多くは日光によるものですから、夏に悪化し、冬に軽快するのが特徴です。

皮膚疾患に伴うものは、乾癬(かんせん)、接触皮膚炎、掌蹠(しょうせき)多汗症、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、尋常性天疱瘡(てんぽうそう)、薬疹などがあります。

全身疾患に伴うものとしては、甲状腺(せん)機能高進症(バセドウ病)に伴うプランマーズネイルが最も有名です。この場合、爪は平らになることが多く、時に反り返ったようになることもあります。最初1本の指から始まり、次第に他の指にも進行していきます。

甲状腺機能高進症以外にも甲状腺機能低下症、ペラグラ(ニコチン酸欠乏症、ナイアシン欠乏症)、糖尿病、鉄欠乏性貧血、さらには黄色爪症候群、肺がんなどの肺疾患、強皮症、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、梅毒などの感染症でみられます。

念のために、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科で診察を受けます。特に、1カ所または数カ所の爪だけが剥離を起こす通常のプランマーズネイルと異なって、手足すべての爪に変化がある場合は、甲状腺機能高進症を始めとする全身的な疾患が原因かもしれませんので、早めに受診するようにしましょう。

プランマーズネイルの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲の剥離を起こし得る外傷や外的物質、薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。一般的には、角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合もあります。爪の治療には、非常に時間がかかります。

甲状腺機能高進症などの全身疾患に伴うものは、その治療を行えばよくなります。

日常では、保湿剤などのスキンケア、ネイルケアにより予防することが、重要となります。爪も皮膚の一部であり、角質を構成するケラチンという蛋白(たんぱく)質が変化したものですから、マニキュア、除光液、洗剤などを使いすぎるとダメージを受けるので、その使用を控えます。進行中は、水仕事の際にはゴム手袋の着用を心掛けます 。

🇧🇷びまん性汎細気管支炎

気道と肺胞の境界に当たる呼吸細気管支を中心に、慢性の炎症が発生

びまん性汎(はん)細気管支炎とは、気管支末梢(まっしょう)部の細気管支が枝分かれして、肺胞につながる部分の呼吸細気管支が侵される疾患。呼吸細気管支の病変が両方の肺の全体に広がって、強い呼吸器障害を起こします。

この疾患は近年になって、慢性気管支炎や気管支拡張症とは別個の1つの疾患として扱われるようになりました。明らかな原因は、不明です。原因としては、発症者のほとんどが慢性副鼻腔(びくう)炎(蓄膿〔ちくのう〕症)を合併しており、欧米に少なく、日本、韓国、中国などアジアに多いことなどから、気道の防御機構に関連する遺伝子や体質的要因の関与が考えられています。

男女差はほとんどなく、発症年齢は40~50歳代をピークとして、若年者から高齢者まで各年代層に渡ります。喫煙とは特に関係はありません。

主な症状は、せき、たん、運動時の息切れで、ゼーゼーする喘鳴(ぜんめい)音が聞こえることも多くみられます。初期には、たんの量は少ないものの、時に細菌感染が加わると、たんの量が増え、黄色から緑色の膿性(のうせい)になります。

症状が進行すると、さらにたんの量が増加し、安静にしている時にも息切れが出現するようになり、呼吸不全になることもあります。重症になると、頭痛や不眠を覚え、心不全を合併すると1分間の脈拍数が100以上になる頻脈になり、尿の量が減って、脚の裏にむくみが現れます。

びまん性汎細気管支炎の検査と診断と治療

特に慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を持つ人で、せきや膿性のたんが長く続く場合は、びまん性汎細気管支炎の可能性があるので、呼吸器内科、呼吸器科の専門医を受診します。

肺機能検査(スパイロメトリー)では、1秒率(全体呼気量に対する1秒量の比率)が70パーセント未満の気流制限が認められます。低酸素血症は比較的早くから認められ、重症になると高二酸化炭素血症を伴います。血液検査では、白血球の増加、CRPの陽性がしばしば認められ、寒冷凝集素値の持続高値が高い頻度で認められます。

胸部X線写真では、肺の過膨張とびまん性の小粒状影が認められます。症状が進行すると、気管支拡張や輪状陰影、線維化陰影も認められます。胸部CT検査では、びまん性の粒状影、分岐した線状陰影、気道の壁の肥厚や拡張像がはっきりと描き出され、診断上重要です。

喀(かく)たん検査では、初期〜中期にはインフルエンザ桿菌(かんきん)や肺炎球菌が検出されますが、進行すると緑膿菌が検出されます。たんが多く、喘鳴音も現れることがあるため、気管支喘息との鑑別が紛らわしい場合があります。

治療には、抗菌薬の一種であるエリスロマイシンの少量、長期療法が行われます。以前は、慢性気道感染により呼吸不全が進行し予後不良となることが多かったのですが、 1985年以降、エリスロマイシンなどの14員環系(いんかんけい)マクロライド薬の少量、長期療法が登場したことで、生命予後は著しく改善されています。

エリスロマイシンが効かない場合には、クラリスロマイシンなどの他の14員環系マクロライド薬が有効な場合もあります。いずれも、気道炎症を改善させる効果を目的に使用されます。

せき、たんや、気道のけいれんに対しては、喀たん調整薬の投与やネブライザーなどによる吸入療法、ベータ刺激薬、キサンチン製剤などの気管支拡張薬が使用されます。たんが非常に多い場合は、体位ドレナージやタッピングなどにより、たんの排出を促すことも重要です。気道感染に対しては、ベータラクタム薬やニューキノロン系抗菌薬、抗緑膿菌抗菌薬などが使用されます。

また、症状が進行して呼吸不全になった場合には、長期在宅酸素療法が行われます。

🇦🇷百いぼ

幼児に多いウイルス性のいぼで、他人にも移りやすい疾患

百いぼとは、6歳以下の子供の皮膚に多くできる小さな、丸い突起物。でき初めは水っぽく見えるので、水いぼ、あるいは伝染性軟属腫(しゅ)とも呼ばれています。

ポックスウイルス科に属する伝染性軟属腫ウイルスの感染が原因で起こり、自分の皮膚に移って広がるだけでなく、プールなどで肌と肌が触れ合うことにより他人にも移りやすい疾患です。

背中や首、ひざの裏など皮膚の薄いところにできやすく、直径1~3ミリほどで、肌色や白色、赤みがかったものがあります。半球状に盛り上がり、表面は滑らかで光沢があり、成長したものでは中央にへそのようなくぼみができるのが特徴です。

自覚症状は少ないものの、時に多少のかゆみを伴うこともあります。気になって絶えずいじることも多く、このため自分の体に次々と移して数を増やすことになります。

放っておいて自然治癒することもあります。しかし、半年から2年、長いと4年ほどかかりますし、その間にいぼの数が増えてしまう恐れもあります。早めに皮膚科、ないし小児科の専門医を受診することが勧められます。

百いぼの検査と診断と治療

皮膚科、小児科の医師による治療では、先が輪っかになった特殊なピンセットで、いぼをつまみ取るのが、最も早く効果的な方法です。軟属腫小体という、いぼの中にあるウイルスの白い塊を取り除くのです。ただ、痛みがあるので、泣いたり暴れたりする子供もいます。痛みを和らげるために、事前に局所麻酔剤付きのテープを張った後に行うこともあります。

一部の医師では、痛くない治療として、いぼを液体窒素で凍らせウイルスを死滅させる方法や、硝酸銀溶液を塗って焼き取る方法などをしています。しかし、治療期間が長くなったり、効果が出にくかったり、硝酸銀の場合、患部回りの皮膚にまで薬剤がついてしまい、軽いやけどの跡が残ってしまうこともあるなど一長一短です。治療内容を問い合わせてから、受診するとよいでしょう。

百いぼの周囲が湿疹(しっしん)化した場合には、保湿外用剤や非ステロイド系抗炎症剤を使用します。かゆみがあると、引っかくことで皮膚が傷付き、いぼの数が増え、さらにかゆみも増すという悪循環を生じてしまうので、かゆみ止めの飲み薬を処方することもあります。

外科的な治療法以外では、漢方薬の服薬を勧めることもあります。よく使われるのは保険適用の「ヨクイニン」という生薬で、飲んでいるといぼの増加が抑えられたり、いぼの消失が早まるといった効果がみられます。しかし、1回に飲む量が多く、治るまで時間がかかるため、少し負担感があるかもしれません。

「ヨクイニン」は薬局などに売っている「はと麦茶」に含まれており、それをお茶にして飲むと効果があるようです。

家庭での注意としては、軽いかゆみを感じることがあっても、いじって、いぼをつぶさないこと。ウイルスが散って症状が広がったり、他人に移すことになります。 水を介して移ることはなく、裸同士の接触で感染すると考えられています。治るまで入浴は兄弟姉妹と別々にし、タオルも使い分けます。保育園などのプールは、治療がすむまで控えることが望まれます。

また、乾燥肌の子供やアトピ―性皮膚炎の子供は百いぼの感染を生じやすいので、肌が乾燥しないように保湿のスキンケアが重要です。乾燥した肌は傷などないように見えても、皮膚のバリヤー機能が低下しています。スキンケアをおろそかにすると、感染が拡大して極端にいぼがたくさんできたり、難治化してしまうことがあります。乾燥肌の部分には、ふだんから保湿効果のあるクリームや乳液で手入れをしましょう。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...