2022/08/15

🇳🇨中足骨骨頭痛

足の甲の部分に5本存在する中足骨の頭の太くなっている部分に痛みが出る症状

中足骨骨頭(ちゅうそくこつこつとう)痛とは、足の甲の部分に5本存在する中足骨の骨頭の太くなっている部分、特に真ん中の中足骨骨頭に痛みが出る症状。

中足骨骨頭痛を起こす原因としてまず挙げられるのは、開張足(かいちょうそく)です。 開張足は、足の前半分の前足部が扇状に広がって足の指同士が広くなり、足の甲の幅が普通より広くなった足。

足の裏にはアーチと呼ばれる緩やかな盛り上りがあり、内側の縦アーチ、外側の縦アーチ、横アーチ(メタタザールアーチ)の3つから構成されています。内側の縦アーチは土踏まずとして知られていますが、3つのアーチのうち、足の親指の付け根から小指の付け根までを結ぶ横アーチの機能が低下したものが、開張足に相当します。

横アーチの機能低下により、横アーチの盛り上がったラインが下がって落ちるため、ラインの中央部に、くぼみがなく、ベタッとした平らな足になります。

この開張足の人は、横アーチのラインの中央部が靴底の圧迫を受け、たこや魚の目ができやすくなります。開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。足指の第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。最近、足の幅が広くなって、スリムな靴が履きにくくなったと感じることがあれば、それは開張足かもしれません。

生まれ付き関節や靭帯(じんたい)などの結合組織が弱いために、開張足になりやすいという先天的な原因もあります。後天的な開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、足の甲に5本ある中足骨をつなぐ靱帯が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のために靱帯が伸び切った状態になり、横アーチを支える筋肉である横アーチ筋の緊張が衰えることで、開張足を起こします。

体重が重すぎたり、足に合わない靴や高いヒールの靴、底が固い靴を履いていたり、急激な運動によって足に高負荷がかかったりした場合は、それが増悪因子となります。

開張足になると、足の甲に5本ある中足骨の間が均等に広がるのではなく、特に第1中足骨と第2中足骨の間と、第4中足骨と第5中足骨の間が広がります。また、横アーチの機能が低下すると、第1中足骨と第5中足骨が持ち上げられ、第2中足骨と第3中足骨の骨頭で体重を支えるようになりますので、足指の第2指と第3指の付け根に、たこや魚の目ができやすくなります。

同時に、第2中足骨と第3中足骨の骨頭の太くなっている部分に、痛みが出ることもあり、これが中足骨骨頭痛です。

初めは違和感を覚える程度ですが、徐々に痛みが強くなります。特に、歩く際のけり出しの時に痛みを感じることが多く、ひどくなると、歩くたびに足指の付け根に痛みが走り、歩くことがとてもつらくなります。

同じ部分に、繰り返し刺激が加わると、中足骨頭の周辺にある腱(けん)や腱鞘(けんしょう)が炎症を起こして、はれたり、足指の第2指と第3指の近くを通る神経が押しつぶされて、趾間(しかん)神経痛(モートン病)を起こし、足指や足指の付け根にしびれ、痛みを生じます。

さらに、開張足になると、横アーチの機能低下が2つの縦アーチの機能低下を誘発して扁平足(へんぺいそく)を起こしたり、外反母趾(がいはんぼし)も起こしやすい傾向もあり、中足骨骨頭痛を悪化させることになります。

中足骨骨頭痛の検査と診断と治療

整形外科、ないし足の外科の医師による診断では、外観上の変形から容易に判断できます。骨の状態を把握して重症度を判定するためには、X線(レントゲン)検査が必要で、通常、立って体重をかけた状態で撮影します。

整形外科、ないし足の外科の医師による治療は、専ら保存的に行われ、下がって落ちた横アーチをできるだけ正常な状態に近付けるために、横アーチの補正パッドやパッド付き中敷(インソール)を靴に装着したり、横アーチの形をつけるように足底に装具を入れた治療靴を用いたり、足の筋肉の強化などを行います。

なお、中足骨骨頭の原因となる開張足は、自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。

また、足に負担をかけないためにも適切な体重を維持するとともに、自分の足に合った靴を選ぶことも大切です。お勧めの靴は、つま先に1~1・5cmくらいの余裕があり、靴紐(ひも)かマジックベルトが付いていて、靴底は硬めで、ある程度の重さのあるタイプ。

🇳🇨中足骨短縮症

足の甲の部分に5本存在する中足骨が先天的に短縮する疾患

中足骨(ちゅうそくこつ)短縮症とは、先天性足部疾患の一つで、足の甲の部分に5本存在する中足骨が先天的に短縮する原因不明の疾患。足趾(そくし)短縮症、足趾骨短縮症とも呼ばれます。

比較的まれな疾患で、女児に多く認められます。先天的に短縮する骨は足の甲の部分の中にあって外観ではわからない中足骨ですが、実際には足指が短縮して、引っ込んでいるように見えます。

成長するに従って、中足骨に生じる成長障害が顕著となるために、ほとんどは小学校高学年や中学生のころに自覚します。

両側性にみられることが多く、特に足指の第4指に多くみられます。第4指以外の足指に生じることもあり、また1つの足指のみならず複数の足指に生じることもあります。

一般に、短縮が軽度であれば、機能的な障害はほとんどなく、歩行自体が障害されることも、スポーツ活動に支障を来すことも、痛みが生じることもありません。

短縮が顕著であれば、隣接する足指の外反変形や内反変形を引き起こし、隣接する足指が短くなった足指の透き間に倒れ込むような現象がみられます。時には、隣接する足指の中足骨骨頭に一致して、足裏に有痛性のたこができることもあります。

中足骨短縮症は、美容上の問題で発症者を悩ませる深刻な疾患といえます。特に、思春期を過ぎた多感な時期の男女においては、水泳授業や海水浴などで素足になることの多い季節になると、ついつい人目が気になり行動が消極的になってしまい、有意義な日常生活を送ることに支障を来すという場合は、整形外科、ないし足の外科を受診することが勧められます。

中足骨短縮症の検査と診断と治療

整形外科、ないし足の外科の医師による診断では、視診により足指の短縮が明らかで、時に隣接する足指の変形が認められるため、容易に判断できます。

X線(レントゲン)検査を行うと、短縮した足指に相当する中足骨が短縮していること、それによって足指の付け根に位置する中足趾節関節(MTP関節、母趾球)がほかの足指に比べて近位に位置していることを認め、時に隣接する足指が軽度に変形していることを認めます。

整形外科、ないし足の外科の医師による治療では、発症者や家族の希望、学業や仕事の都合を参考にして手術時期を決定し、中足骨を延長する手術を行うことが第1選択となります。

実際に手術している年齢は5歳前後から30歳前後とかなりの幅があり、早い時期に手術を行った場合、まだ足が小さいため高度な手術操作が要求される一方、骨の再生のスピードが速いという利点があります。逆に、骨の成長が終了した成人で手術を行った場合、足が大きく手術は比較的容易である一方、骨の再生のスピードがやや緩慢で治療期間が長くなりがちという問題が生じます。

中足骨を延長する手術には、骨移植法(一期的延長法)と骨延長法(仮骨延長法)の2つがあります。

骨移植法は、短縮した中足骨を骨切りし、一期的に骨切り部を延長した後に開いた透き間に、腰の部分などから取った骨を移植する方法です。一期的に延長するため、神経血管障害が生じる恐れがあるので、延長可能な距離が10ミリまでと制限されます。

骨延長法は、5〜6センチ程度の長さの創外固定器というものを用いて、短縮した中足骨をゆっくりと延長させてゆく方法です。骨本来の再生機能を利用して、骨切り部をゆっくりと延長させてゆくことによって、延長された透き間に少しずつ新たな骨(仮骨)が形成されてゆきます。骨移植法と比較すると、創外固定器の装着期間がやや長い面はありますが、別の部分から骨を取る必要がないという長所のため、近年では広く選択されるようになっています。

🇬🇫中足骨痛

足の指の付け根に位置する中足趾節関節の周囲に、痛みnterを生じる疾患

中足骨(ちゅうそくこつ)痛とは、足の指の付け根に位置する中足趾節(しせつ)関節(MTP関節、母趾球)の周囲に、痛みを生じる疾患。

足の甲の内部には中足骨が片足に5本ずつ入っていて、それぞれ1本ずつの足指の根元の基節骨という趾節骨(指節骨)の1つと中足趾節関節を作っています。中足趾節関節とは、中足骨と趾節骨との間の関節という意味です。

中足骨痛を生じる原因としては、趾間神経痛(モートン病)、中足趾節関節痛、種子骨炎があります。

趾間神経痛は、足先への過度の荷重が原因で、足指や足指の付け根にしびれ、痛みが生じる疾患

趾間神経痛は、体のバランスを保つ中足骨の間の神経がはれて、足指や足指の付け根にしびれ、痛みを生じる疾患。モートン病、モルトン病、モートン神経腫(しゅ)とも呼ばれます。

古くから靴の文明が発達していた欧米人に多くみられた足指の神経痛の一種ですが、1876年にトーマス・モートンが足指の第3趾と第4趾の間の付け根にある神経の炎症であると、初めて報告しました。

日本では第2次世界大戦中に、多くの陸軍の歩兵がこの趾間神経痛に悩まされたといわれており、行軍腫とも呼ばれています。戦後は、おしゃれな靴が好まれるようになり、多くの女性が悩まされることとなりました。

足先への過度の荷重が発症の原因とされていて、ハイヒールや窮屈な靴の常用、中腰の姿勢での作業などで、足指の付け根の関節でつま先立ちをする格好が長時間続く人に、起こりやすくなります。幅の狭い靴、底が薄くて硬い靴を履くことの多い人、硬い床の上でダンスをする人、硬い路面の上でランニングなどの反復性の運動をする人に、起こることもあります。

また、趾間神経痛は足底の横アーチの崩れとも関係していて、足が徐々に偏平になってくる中年以降の女性に多く発症します。

足の中足骨は深横中足靭帯(じんたい)によってつなぎ止められていて、その間を指神経(固有底側指神経)と呼ばれる感覚の神経が通っています。そして、足指の第3趾と第4趾の間の付け根には、指神経が交錯する神経腫と呼ばれる神経の塊があります。

この神経腫が深横中足靱帯と地面の間で圧迫されて、足指や足指の付け根にしびれ、痛みを生じるほか、第2趾と第3趾の間の付け根にある滑液包と呼ばれるクッションが繰り返される刺激によって炎症を起こして、指神経を圧迫し、足指や足指の付け根にしびれ、痛みを生じることもあります。

症状として、前足部に体重がかかったり、ハイヒールや窮屈な靴を履くと、足指や足指の付け根にしびれ、痛みや、異物感を感じます。歩くだけで激しい痛みを感じる場合があり、足指にかけての知覚障害が発生する場合もあります。時には、痛みが下腿(かたい)まで及ぶこともあります。一般的には、障害部位は第3趾と第4趾にまたがって起き、第2趾と第3趾、第4趾と第5趾にまたがることもあります。

通常は片側の足だけに生じるものの、時には両足に同時に障害が起こることもあります。圧迫部の近位に仮性神経腫といわれる有痛性の神経腫が形成される場合は、足底から第3趾または第4趾の付け根を圧迫すると痛みがあったり、前足部を手で両側から締め付けるようにすると痛みが誘発されます。

中足趾節関節痛は、足の指の付け根にある中足趾節関節に痛みを生じる疾患

中足趾節関節痛は、足の指の付け根に位置する中足趾節関節に、痛みを生じる疾患。中足指節関節痛とも呼ばれます。

中足趾節関節痛は一般に、ハイヒールやサイズの合わない靴を履いているのが原因となって関節表面がずれることから生じ、それにより関節亜脱臼(だっきゅう)、関節内壁の圧迫、関節軟骨破壊(変形性関節症)を起こし、痛みが現れます。

関節表面のずれによる関節内壁の圧迫が進行し、関節包の内側にある滑膜が炎症を起こすと、痛みとともに、軽度の熱感とはれを生じることもあります(変形性関節症の滑膜炎)。

さらに、関節表面のずれは、関節リウマチのように関節に炎症を起こすリウマチ性疾患で起こることもあり、痛みとともに、熱感、はれ、発赤が複数の中足趾節関節にみられます。

関節リウマチの発症者には、槌趾(つちゆび、ハンマートゥ)が発現することがあり、関節表面のずれや関節の痛みを悪化させる場合があります。結果的に、体重を支える時に関節のクッションの役割を担う滑液包と呼ばれる脂肪組織が、足指の下の前方に押されることがあり、クッション作用が失われます。クッション作用がなくなると、足の中足趾節関節の内部にある神経も損傷し、趾間神経痛(モートン病)を起こすこともあります。

中足趾節関節痛が感染症で生じることもあり、この場合は単数の中足趾節関節に、痛み、熱感、はれ、発赤がみられます。

中足趾節関節痛を発症すると、体重を支えたり、歩いたりする時に、足に異常な動きがみられ、痛みとこわばりが生じて支障が出ます。

種子骨炎は、第一中足骨の骨頭下部にある種子骨の周囲に炎症が起き、足の親指の裏側に痛みが生じる疾患

種子骨炎は、足の甲にある第一中足骨の骨頭下部にある種子骨の周囲に炎症が起き、足の親指の裏側に痛みが生じる疾患。母趾種子骨炎とも呼ばれます。

種子骨は、足や手の関節の付近の靱帯や腱(けん)の中にあるアサガオの種のような形の小さい骨。隣接の骨とともに関節を構成し、滑車のような役目をして靱帯や腱の滑りを助けたり、これらが骨の面から脱臼するのを防いでいます。人体では、足の裏に2~5個、手のひらに5個の種子骨があります。

足の裏の第一中足骨の骨頭下部にある種子骨は、内側と外側に1個ずつあります。内側の骨は脛側(けいそく)種子骨、外側の骨は腓側(ひそく)種子骨に相当し、靱帯や腱の滑りを助けたり、足の裏に体重の負荷がかかる時にクッションの役割を果たしていますが、そのいずれかに圧力がかかることで炎症が生じ、痛みが生じます。

種子骨炎の症状としては、軽いうちは長く歩いた時、ハイヒールなど特定の靴を履いた時に、足裏の親指の付け根の部分が痛みます。重症になると、常に痛くなります。

触ってみると、5ミリから10ミリの種子骨が皮膚の下に触れ、痛みます。時に炎症のために軽度の熱感を生じたり、内側に広がる発赤を引き起こすことがあり、はれることもあります。たこや魚の目が足裏にできることもあり、この場合、たこや魚の目を削っても一時的になくなるだけで再発します。

足の親指の付け根が外側を向き、親指の骨頭が内側に向いた状態になる外反母趾のために、種子骨炎が起こることが最も多くみられます。また、足裏に過度の負荷がかかるランナーやダンサー、サッカー選手、ハイヒールをよく履く人に多く起こっている傾向があります。靴を変えた際に今まで以上に足に負荷がかかって起こったり、直接的な外傷、骨折などで種子骨の位置が変化して起こることもあります。

生まれ付き内側と外側の種子骨の大きさに違いがあったり、種子骨が分裂していることもあり、これらの場合には片方の種子骨に体重が集中して起こることもあります。

中足骨痛の検査と診断と治療

中足骨痛を生じる原因となる趾間神経痛(モートン病)、中足趾節関節痛、種子骨炎では、それぞれ治療方法が異なります。

趾間神経痛の検査と診断と治療

整形外科、あるいは神経内科、足の外科の医師による診断では、障害神経の足指間に感覚障害、中足骨骨頭間の足底に有痛性の仮性神経腫があり、仮性神経腫をたたくとその支配領域に痛みが放散するチネルサインがあれば、診断は確定できます。また、足指を背屈するか、つま先立ちをしてもらうと痛みが強くなります。

X線(レントゲン)検査、筋電図検査、MRI検査、超音波検査なども、必要に応じて行われます。

整形外科、あるいは神経内科、足の外科の医師による治療では、まずハイヒールの使用や中腰での作業を禁止して局所の安静を図り、消炎鎮痛剤などの薬剤内服、足の横アーチを整える足底板の靴底への挿入、筋肉の伸びを制限することで痛みの緩和を図るキネシオテーピング 、靴の変更、温熱療法、運動療法、痛みを和らげるブロック注射などを用いた保存的療法を行います。

発症から治療までの期間が短ければ短いほど、保存療法で治る割合が高くなっています。鍼灸(しんきゅう)治療が有効な場合も

3カ月ほど様子をみて保存療法で症状が回復しない場合や、日常生活に支障を来す場合は、手術が必要になることもあります。手術には、神経剥離(はくり)、神経腫摘出、深横中足靱帯の切離などがあります。しかし、神経腫を切除しても痛みが楽にならないこともあるので、仮性神経腫状態にしないことが肝心です。

そのためには、足指と足底筋を鍛えて足のアーチを維持する必要があり、足じゃんけん、ビー玉拾いエクササイズ、歩行運動などが勧められます。足じゃんけんは、指全体を曲げてグー、親指だけ立ててチョキ、全部広げてパーをするもので、風呂の中などでするのも一案です。

また、足に負担をかけないためにも適切な体重を維持するとともに、自分の足に合った靴を選ぶことも大切です。お勧めの靴は、つま先に1~1・5cmくらいの余裕があり、靴紐(ひも)かマジックベルトが付いていて、靴底は硬めで、ある程度の重さのあるタイプ。

中足趾節関節痛の検査と診断と治療

整形外科、あるいは神経内科、足の外科の医師による診断では、通常、症状に基づいて判断しますが、関節炎やリウマチ性疾患、感染症が疑われる場合は検査を実施します。

整形外科、あるいは神経内科、足の外科の医師による治療では、足のアーチを整える足底板を靴底へ挿入して、最も重度に侵されている中足趾節関節に体重がかからないようにします。

変形性関節症の滑膜炎で炎症がある場合、痛みを和らげるコルチコステロイド麻酔薬の局所注射が有用なことがあります。

保存療法で効果がない時は、手術を行うこともあります。

種子骨炎の検査と診断と治療

整形外科、あるいは神経内科、足の外科の医師による診断では、症状や問診で種子骨炎と確定できます。足部と親指を背屈させた状態で中足骨骨頭部を調べ、種子骨を触診することもあります。圧痛は、種子骨、それも通常は脛側種子骨に限局化されます。

炎症によりはれを生じている場合、痛風や感染性関節炎と区別するために関節穿刺(せんし)を行うこともあります。

骨折、変形性関節症、骨折による転位が疑われる場合は、X線(レントゲン)検査を行い、種子骨の形状や位置関係、分裂の有無などを確認します。X線検査ではっきりしない場合は、MRI検査を行うこともあります。

整形外科、あるいは神経内科、足の外科の医師による治療では、痛みを生じる靴やスポーツシューズを単に履かないことを勧め、それで十分であることもあります。痛みが持続する場合には、厚底の靴や矯正装具を処方し、種子骨への圧迫を減らします。

炎症がみられる場合は、治療には保存的な処置に加えて、コルチコステロイド麻酔薬の局所注射を行うと、症状の軽減に有効です。

ずれ(転位)のない骨折がある場合、保存療法で十分であり、平らな硬性矯正靴を用いて関節の固定化をすることもあります。歩けないほど強い痛みが持続する場合、種子骨を取り除く手術が有効であることもありますが、足部の生体力学や歩行運動を侵害する可能性があるため、医師により意見の分かれるところです。一般的には、運動選手やプロ・ダンサーなどに対して、保存療法ではよくならない時だけ手術を行います。

🇬🇫中足骨疲労骨折

足の甲の部分に位置する中足骨に、小さなひびが生じた状態

中足骨(ちゅうそくこつ)疲労骨折とは、通常は骨折を起こさない程度の負荷が繰り返し加わることで、足の甲に5本ある中足骨に小さなひびが生じた状態。

中足骨疲労骨折は第2、第3中足骨の骨幹部に最も多く起こり、軍隊の訓練で兵士に多く起こったことから行軍骨折ともいいますが、最近はまれで、ランニングやサッカー、ラグビー、バレーボールなどのスポーツを行う人の発症が大多数を占めます。

また、第5中足骨の足首に近い基部に起こる骨折を第5中足骨基部骨折といい、下駄(げた)履き骨折とジョーンズ骨折に大きく分けられます。そのうちジョーンズ骨折が中足骨疲労骨折に相当し、足首をひねった捻挫(ねんざ)と同じ形で受傷し、サッカーやラグビーなどのスポーツをを行う人によくみられます。

一般的な中足骨疲労骨折は、第3中足骨骨幹部が半数を占め、以下第2、第4の順。第5、第1はまれです。第1、すなわち足の親指の根元に位置する中足骨は他の中足骨に比べて太く強いため、あまり骨折しません。ランニングで地面をける際に最も力がかかるのは第1と第2なので、第5、すなわち足の小指の根元に位置する中足骨の疲労骨折もあまり起こりません。

ただし、第1、第5に疲労骨折が生じた場合には、他の足指の中足骨に比べて完治するまでに時間がかかります。

主な症状は、足の甲の前部の痛みで、通常は長時間の運動中、あるいは激しい運動中にみられます。初めのうちは、運動をやめれば数分で痛みはなくなります。しかし、そのまま運動を続けていると練習中に早く痛みが現れるようになり、運動をやめた後も長く痛みが続きます。

最終的には、激しい痛みで走れなくなったり、安静にしても痛みが続くことがあります。骨折部の周囲は、はれることがあります。

中足骨疲労骨折を起こす危険因子としては、土踏まずのアーチが高い、衝撃の吸収が不十分なランニングシューズを履いている、運動量や運動強度が急に増大するといった要因があります。骨が細く薄い人は、骨の強度も弱いので、疲労骨折を起こしやすくなります。

閉経後の女性も、骨粗鬆(こつそしょう)症のために、疲労骨折を起こしやすくなります。また、若い女性の運動選手も疲労骨折を起こしやすく、これは激しい運動によって卵巣の機能が低下して月経が止まり、骨粗鬆症と同じ状態になるためです。

一方、第5中足骨基部骨折は、足の小指の根元、足の甲の部分に位置する第5中足骨の足首に近い基部に起こる骨折。

第5中足骨基部はよく骨折を起こす部分で、骨折しても歩けることも多く、足首をひねった捻挫と同じ形で受傷するので捻挫と思われがちですが、痛みのある部分や、はれのある部分が違いますので、よく観察すると区別が付きます。

骨折による症状は、足の甲の外側や小指の付け根の痛み、はれ、押すと痛む圧痛、歩行障害です。

骨折を起こす部分により、下駄履き骨折とジョーンズ骨折の2つに、第5中足骨基部骨折は大きく分けられます。2つの骨折部の違いはわずか1センチほどですが、治療法や予後は大きく異なります。

下駄履き骨折は、ジョーンズ骨折より足首に近い基部での骨折で、かつて高下駄を履いている時に足をひねるとよく生じていました。現在は下駄を履く機会があまりありませんので、なくなったかというとそうではありません。下駄は履かなくても、裸足やサンダル履きの時、普通の靴を履いている時にも足をひねると発生することがあります。特に、厚底靴やハイヒールを履いている時は要注意です。

しかし、骨折に至っても、周辺に靭帯(じんたい)や腱(けん)が残存していて骨片の動きが少ないため、ある程度以上ずれることはあまりありません。比較的よく治り、ギプスがいらないこともあります。骨癒合しないこともありますが、動きがほとんどないため、関節部ではないのに関節のようになる偽関節になっても、症状を来すことはほとんどないとされます。

一方、発見者の名前に由来して称されるジョーンズ骨折は、下駄履き骨折より小指に近い第5中足骨基部での骨折で、前足部でみられる骨折の中でも難治性であるといわれています。サッカーやラグビーなど、カットプレーやステップターン、サイドステップやスワーブを行うスポーツをする人によくみられます。

つま先立ちの姿勢で足をひねり、一回の外力でこのジョーンズ骨折が生じる場合もありますが、一般には疲労骨折であると考えられています。カットプレーやステップターンなどで足の外側に体重がかかり、それを繰り返すことによって、第5中足骨基部にストレスがかかり、折れてしまうと考えられています。

中足骨は真っすぐな骨ではなく、丸くアーチ状になっていて、第5中足骨基部には3方向のストレスが常にかかります。最も足の外側にあるために地面からの力を直接受けやすいという条件下にあり、カット動作などを行う時、アーチがたわみ、ストレスがさらにかかり、針金が何度も曲げられると折れてしまうように、骨が疲労骨折してしまいます。

偏平足の人やアキレス腱の硬い人などがジョーンズ骨折を生じやすいといわれていますが、擦り減ったシューズを長年使用していたり、床が硬いところでプレーを続けることでも生じます。

疲労骨折は症状が急激に現れるのではなく、少しずつ痛みが慢性化していき、発生当初はレントゲンにも映らないため、痛みがあるままスポーツを続ける人も多くなってしまいます。

痛みがあるままプレーをすることで、疲労骨折が完全骨折になってしまったり、偽関節になってしまうこともあるので、痛みが続く場合は原因となるスポーツをしばらく休むことが必要です。

また、疲労骨折の場合は癒合に時間がかかる上、ジョーンズ骨折が生じる部分は血行が他の部分に比べて少ないので、骨が癒合しにくく、治りにくくなります。

中足骨疲労骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による一般的な中足骨疲労骨折の診断は、症状についての問診と足の診察に基づいて行われます。骨折部分に触れると、痛みがあります。疲労骨折による骨の変化はごくわずかなので、骨折直後のX線(レントゲン)検査による画像では異常が見付からないこともよくあります。しかし、2〜3週間後には、骨の回復とともに骨折部位の周囲に新たな組織である仮骨が生じ、この変化がX線画像でも検出されます。

骨スキャン検査を行えば、X線検査よりも早い段階で骨折を確認できますが、必要となることはまれです。

整形外科の医師による第5中足骨基部骨折の診断は、足の小指の根元の中足骨に明らかな圧痛を認め、内反ストレス(内返し)を加えると激痛を生じます。X線検査の前後像と斜位像の2方向撮影で、確定診断されます。

しかし、ずれ(転位)のないケースでは、受傷した足部の状態を再現したストレスX線撮影を行わないと、骨折が発見できないことがあります。従って、自覚症状と診察所見で第5中足骨基部骨折が疑われる場合は、必ずストレスX線撮影を行うことが大切です。

整形外科の医師による一般的な中足骨疲労骨折の治療では、ほとんどは保存治療が行われ、手術治療はまれです。ランニングなどの荷重トレーニングは約4週間は禁止し、患部の固定、骨癒合の促進、筋肉の緊張緩和、痛みの軽減などを目的に、テーピング、ギプス、装具、包帯固定、松葉杖(づえ)による免荷、アイシング(冷却)、低周波治療、温熱療法、マッサージなどが行われます。

加えて、骨癒合や症状の状況に応じて、ストレッチング、筋力増強訓練などが行われます。

骨折が治った後は、足をしっかりサポートし衝撃を適度に吸収するシューズを履き、芝生や柔らかい地面を走ることが、再発の予防に役立ちます。また、ストレッチによる足関節、膝(ひざ)関節、特に股(こ)関節の柔軟性を獲得することが、ランニングによる足部への負担軽減に役立ちます。

ただし、足の親指や小指の根元の中足骨にも疲労骨折が生じることはあり、その場合には他の足指に比べて完治するまでに時間がかかり、長期間の固定を必要としたり、手術が必要になる場合もあります。

整形外科の医師による第5中足骨基部骨折の治療では、下駄履き骨折の場合、骨折部のずれが少ないか亀裂(きれつ)骨折であるため、実際に手術の対象となる場合はまれです。ずれがなく痛みやはれが少ない場合は、湿布と弾力包帯だけを使用することもあります。厳重に固定をしなくても、骨折部の骨膜や靭帯(じんたい)の連続性が保たれているため、骨折部のずれが大きくなることはほとんどありません。

骨折の状態によって、ギプス療法や装具療法で経過観察します。ギプス装着の期間は1~4週間と状態によって異なり、また、取り外しができる足部だけの簡単なシーネなどで固定することもあります。 シーネやギプスをしない場合の注意事項は、痛みの出る動作を極力しないことです。一般的には、痛みがほぼなくなるには約1カ月、はれがなくなるには2~3カ月を要します。

ずれが著明なケースでは、経皮的骨接合術や内固定術などの骨接合術を検討します。

ジョーンズ骨折の場合、骨癒合が悪い部分であるため、保存治療を行っても治りにくい場合には、骨接合術を行うことがあります。

骨癒合や症状の状況に応じて、ストレッチング、筋力増強訓練なども行われます。治療後にサッカーやラグビーなどのスポーツを続ける人には、外側縦アーチを守るため、足底板をシューズに入れることを勧めることもあります。アーチを支える構造になってる足底板は、外側縦アーチにかかるストレスを小さくすることができます。足全体で体重を支えることを目的として、親指側にも足底板を追加することもあります。

🇬🇫中足趾節関節痛

足の指の付け根にある中足趾節関節に痛みを生じる疾患

中足趾節(ちゅうそくしせつ)関節痛とは、足の指の付け根に位置する中足趾節関節(MTP関節、母趾球)に、痛みを生じる疾患。中足指節関節痛とも呼ばれます。

足の甲の内部には中足骨が片足に5本ずつ入っていて、それぞれ1本ずつの足指の根元の基節骨という趾節骨(指節骨)の1つと中足趾節関節を作っています。中足趾節関節とは、中足骨と趾節骨との間の関節という意味です。

中足趾節関節痛は一般に、ハイヒールやサイズの合わない靴を履いているのが原因となって関節表面がずれることから生じ、それにより関節亜脱臼(だっきゅう)、関節内壁の圧迫、関節軟骨破壊(変形性関節症)を起こし、痛みが現れます。

関節表面のずれによる関節内壁の圧迫が進行し、関節包の内側にある滑膜が炎症を起こすと、痛みとともに、軽度の熱感とはれを生じることもあります(変形性関節症の滑膜炎)。

さらに、関節表面のずれは、関節リウマチのように関節に炎症を起こすリウマチ性疾患で起こることもあり、痛みとともに、熱感、はれ、発赤が複数の中足趾節関節にみられます。

関節リウマチの発症者には、槌趾(つちゆび、ハンマートゥ)が発現することがあり、関節表面のずれや関節の痛みを悪化させる場合があります。結果的に、体重を支える時に関節のクッションの役割を担う滑液包と呼ばれる脂肪組織が、足指の下の前方に押されることがあり、クッション作用が失われます。クッション作用がなくなると、足の中足趾節関節の内部にある神経も損傷し、趾間神経痛(モートン病)を起こすこともあります。

中足趾節関節痛が感染症で生じることもあり、この場合は単数の中足趾節関節に、痛み、熱感、はれ、発赤がみられます。

中足趾節関節痛を発症すると、体重を支えたり、歩いたりする時に、足に異常な動きがみられ、痛みとこわばりが生じて支障が出ます。

中足趾節関節痛の検査と診断と治療

整形外科、あるいは神経内科、足の外科の医師による診断では、通常、症状に基づいて判断しますが、関節炎やリウマチ性疾患、感染症が疑われる場合は検査を実施します。

整形外科、あるいは神経内科、足の外科の医師による治療では、足のアーチを整える足底板を靴底へ挿入して、最も重度に侵されている中足趾節関節に体重がかからないようにします。

変形性関節症の滑膜炎で炎症がある場合、痛みを和らげるコルチコステロイド麻酔薬の局所注射が有用なことがあります。

保存療法で効果がない時は、手術を行うこともあります。

🇻🇺中途覚醒

夜中に寝ている途中で2回以上、目が覚めるタイプの不眠症

中途覚醒(かくせい)とは、いったん寝付いても朝まで睡眠が持続できないで、何度も目が覚めるタイプの不眠症。不眠症の中で、最も多くの人がかかりやすいタイプです。

この中途覚醒は、睡眠の途中に2回以上目が覚めるものをいいます。途中で目が覚めても、すぐにまた眠れる人もいれば、なかなか次の眠りに入れない人もいます。高齢者の場合は、この中途覚醒が不眠症の大きな症状となります。

寝付きが悪いわけではないのに夜中に目が覚めてしまう、目が覚めた後もう一度眠るまでに時間がかかるといった状態になるのが、典型的な症状です。全体的に浅い眠りになっていることが多く、何度も繰り返し起きてしまったり、眠っても疲れが取れない、睡眠時間の割に日中眠くなったり集中力が低下するという症状も現れます。

実際、眠っている途中に一度起きてしまうと、入眠から浅い眠りのレム睡眠へ、さらに深い眠りのレム睡眠へと続く眠りのリズムを初めからやり直さなければならないために、脳も体もしっかり休息することができません。

睡眠と覚醒のリズムを生み出す脳の仕組みそのものの不調が原因で起きるほか、実にさまざまな原因で起きます。例えば、さまざまな精神的な病気の部分症状として起きるほか、さまざまな病気に起因する体のあちこちの痛み、ぜんそくなどによる呼吸困難やせき、消化器系の病気による腹痛、前立腺(ぜんりつせん)肥大症によって高頻度に起こる夜間の頻尿などが挙げられます。

また、睡眠薬代わりに寝酒をする人は少なくありませんが、少量のアルコールは寝付きをよくするものの、大量のアルコールを長期に渡って飲み続けていると、深い眠りであるレム睡眠を減らしてしまうために、浅い眠りであるレノンム睡眠ばかりになってしまい、しばしば中途覚醒を起こします。

中途覚醒の原因として近年、注目を浴びているものに睡眠時無呼吸症候群もあります。この病気は、睡眠中に10秒以上に渡って呼吸が止まり、1時間に5回以上みられる場合に診断されます。

すなわち、深い睡眠に入ろうとすると呼吸が止まり、息苦しくなって目が覚めてしまうために、一晩中深い睡眠に入れなくなります。全体として一晩に6~7時間眠ったとしても、常にウトウトしたような浅い睡眠でしかないために、昼間に眠気を催して居眠りばかりして、上司に叱責(しっせき)されるという事態に陥ってしまいます。

睡眠時無呼吸症候群では、本人が息苦しさを翌日に覚えていないために、自覚的には昼間の眠気だけしかないことが少なくありません。もっとたくさん寝ようと早くからベッドに入る努力をしても、睡眠の質が不良なためにいくら長時間寝ても昼間の眠気や、集中力の低下、活力の喪失は改善されません。

意外と知られていないが決して少なくない中途覚醒の原因として、周期性四肢運動障害という病気もあります。この病気は睡眠時無呼吸症候群と同様に、深い眠りに入ろうとすると、周期的に反復する瞬間的な手足、特に下肢の運動が現れます。

つまり、まどろみから深い睡眠に移行しようとすると、足がピクンと動いてしまうのです。通常、20~30秒周期で足の動きを繰り返し、悪化すると回数が増え、多い人では1時間に100回以上起こる場合もあります。足が動いても、多くの場合本人は気付きませんが、足がピクンと動くと、脳は目覚めてしまうので眠りが妨げられます。このために深い睡眠に入れずに、昼間に眠気を催します。

中途覚醒の裏側には他の病気が隠れていることが非常に多いので、常日ごろから体の状態をチェックしておくとよいでしょう。また、どんな病気が絡んでいるにせよ、精神的ストレスがたまっている状態だと、中途覚醒が起きやすいことがわかっています。

精神的ストレスがかかった状態で眠ると、眠っているつもりでも脳はリラックスして休むことができません。浅い睡眠状態で眠ることになるため、途中で何度も目が覚めたり、ささいな刺激で覚醒することになります。

精神的ストレスからくるイライラや緊張を鎮めるためにには、リラックスできる音楽や読書、入浴や食事など生活面での工夫をしてみることも必要です。眠りやすい環境を作ることも心掛け、騒音や温度調整、明るさの調整をするのもよいでしょう。

昼間の眠気や、集中力の低下、活力の喪失など日中の生活に支障が出るような場合には、午前中など早い時間に10~20分の仮眠を取ることも効果的です。仮眠を取る場合には、夜眠れなくなるほど長時間寝てしまうと意味がありません。夕方など遅めの時間に仮眠を取るのも、夜の睡眠に支障が出ることがあるので、遅くても昼の休憩くらいまでの間に仮眠するようにしましょう。

生活面での工夫をしても中途覚醒が続くようであれば、医師に相談することが必要です。

医師による不眠症治療では、精神的な療法を行ったり、薬による治療を行うことになります。一般的には睡眠薬による治療ですが、人それぞれ原因やタイプも違ってきますから、睡眠薬の服用については医師に相談しながら治療を進めていくことが大切です。

最近の睡眠薬は安全性が高くなったものの、病気を併せ持つ人が他の薬と併用する場合は副作用などの恐れもあるため、使用には医師の診断が必要で、症状に合った薬を処方によって服用します。

すべての薬にあるように、睡眠薬にも副作用はあります。最大の特徴は、薬が効いている間に布団から起きてしまうと、効果がすべて眠気、ふらつき、頭重感などの副作用に変わってしまうこと。従って、服用したらすぐ布団に入ること、増強作用のあるアルコールと一緒に服用しないこと、用量用法は医師の指示を守ること、突然、服用を中止すると症状が悪化する場合もあるので、医師と相談しながら漸減することなどが必要となります。

睡眠薬は、作用時間により超短時間型、短時間型、中間型、長時間型に分類されます。頻繁に目を覚ます中途覚醒では、長時間型の睡眠薬が処方されることが多く、作用時間が長いため昼間の不安抑制効果も期待できます。

主な睡眠薬としては、ソメリン(成分名・ハロキサゾラム、ベンゾジアゼピン系)、インスミンやダルメートなど(成分名・フルラゼパム、ベンゾジアゼピン系)、ドラール(成分名・ベンゾジアゼピン系)があります。

🇻🇺中毒性ニューロパチー

中毒が原因となって、体中に分布する末梢神経に障害が起こった状態

中毒性ニューロパチーとは、重金属、薬剤、有機溶媒、アルコールなどによる中毒が原因となって、体中に分布する末梢(まっしょう)神経に障害が起こった状態。

末梢神経には、筋肉を動かす運動神経のほか、感覚神経(知覚神経)、自律神経の3種類があります。感覚神経は、熱さ、冷たさ、痛さといった温痛覚や触覚を伝え、また、手足の位置、運動変化、振動などを認識する深部感覚も伝えます。自律神経は、体のさまざまな組織や器官の働きを調節します。

その末梢神経に中毒性ニューロパチーによって障害が起こる症状は、原因となる物質によって異なり、また多彩で、複雑です。

腕や足のしびれ、痛み、脱力感、貧血、嘔吐(おうと)、垂れ手、けいれん、胃腸障害、視力障害、難聴、言語障害、歩行障害、意識障害、頻脈、高血圧、下痢、発汗、縮瞳(しゅくどう)、運動まひ、呼吸筋まひ、頭痛、めまい、認知症、昏睡(こんすい)、心不全などがあり、命にかかわるものがあります。

重金属では、鉛、有機水銀、砒素(ひそ)、タリウムなどが原因となります。鉛中毒は、日本では職業に関連して発症することが多く、腕を持ち上げても手首から先が垂れ下がる垂れ手が現れます。また、ニューロパチーのほかに、貧血やけいれんを起こすことがあります。

有機水銀中毒は水俣(みなまた)病に代表されるように、視野が狭くなり、難聴、言語障害、歩行障害のほか、ニューロパチーとして、障害部が一見して手袋をはめたり、靴下を履いたように分布する手袋靴下型の感覚障害が現れます。 

砒素は殺虫剤に含まれ、慢性中毒になると感覚優位の多発性神経炎が現れます。タリウムも殺鼠(さっそ)剤に含まれ、中毒になると脱毛が起こり、特に感覚神経と自律神経が障害されます。

職業柄、重金属や化学物質などとの接触が日常的に多い人は、危険性が高くなります。

薬剤では、イソニアジド、ビンクリスチン、シスプラチンなどが原因となります。イソニアジドは核治療薬として広く用いられており、ビタミンB6欠乏をもたらすので、ビタミンB6を補充しながら用いないと、多発性神経炎を起こします。ビンクリスチン、シスプラチンは抗がん剤として用いられており、感覚優位の多発性神経炎を起こします。

有機溶媒では、シンナー、接着剤(ボンド)などが原因となります。その吸入遊びは、それらに含まれるn‐ヘキサンによって末梢神経障害を起こします。

また、アルコール依存症の人では、低栄養やビタミン不足とあいまって、運動および感覚障害が現れます。

 内科、神経内科などの医師にによる中毒性ニューロパチーの治療では、いずれの場合も原因除去が最優先です。

救急の場合は、症状に応じて経鼻的気管内挿管や人工呼吸器の装着などを行います。その後、胃洗浄、下剤の使用、胃や腸から未吸収の重金属や薬剤などを取り除きます。痛みやしびれに対する治療、薬物治療、神経線維の回復に対する治療を行います。

末梢神経は再生する能力が高いので、症状の改善や回復をあきらめないことが大切です。

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