新型コロナウイルスに繰り返し感染すると、その後で新たな症状が出たり、長期間続いたりするリスクが高くなるとの研究結果が、アメリカで報告されました。
セントルイス・ワシントン大学の臨床疫学者ジヤド・アリー博士らの研究チームがこのほど、査読前論文(プレプリント)として公開しました。新型コロナ再感染による健康上のリスクを調べた初の研究とされます。
研究チームは新型コロナに1回感染したことのある25万人余りと、2回以上感染した3万8000人余りの健康記録を比較。対照グループとして、感染記録のない530万人のデータも使用しました。繰り返し感染した人の内訳は、2回が3万6000人、3回が約2200人、4回が246人でした。
その結果、2回以上感染したグループは1回だけのグループに比べ、直近の感染から6カ月以内に死亡するリスクが2倍以上、入院のリスクが3倍にも上ることがわかったといいます。
2回以上感染した人は、肺または心臓疾患や倦怠(けんたい)感、消化器と腎臓の不調、糖尿病、神経系疾患のリスクが高まることも明らかになりました。
ヨーロッパやアメリカでは最近、オミクロン型の新たな系統「BA・5」による感染が主流になり、感染者や入院患者が増加しています。「BA・5」には過去の感染やワクチン接種でできた抗体を回避しやすい変異がみられ、多くの人が再感染する恐れがあります。
アリー博士は自身の患者の間で再感染が増えていることに気付き、この研究を思い立ったといいます。「もし1年半ほど前に再感染のことを聞かれたら、たまにそういう患者もいるが極めてまれだと答えていたかもしれない。だが今は違う」と、同博士は説明。
再感染後の症状で多いのは胸痛、不整脈、心臓発作、心筋炎や心膜炎、心不全、血栓など。肺に関係する問題として、息苦しさ、血中酸素濃度の低下、胸水なども挙げられます。
症状が出るリスクは再感染したころが最も大きいものの、その後少なくとも6カ月間、ワクチンを打っているかどうかにかかわらず高リスクの状態が続きます。また感染を繰り返すと、そのたびにリスクが上昇することもわかりました。
アリー博士は「過去にかかったことがあれば次は軽くすむ」といった考え方が、新型コロナには通用しないと指摘。
同博士によれば、高齢者や基礎疾患のある人は特に再感染しやすく、その後に健康上の問題が生じるリスクも高い可能性があるといいます。
2022年11月12日(土)