熊本市は1日、予期せぬ妊娠に悩む女性らの相談に匿名でも応じる「妊娠内密相談センター」を開設しました。同市の慈恵病院は全国で唯一、身元を病院にだけ明かして出産する「内密出産」に取り組んでいるものの、匿名では行政の支援が受けられません。妊娠内密相談センターは専門家のチームで課題を解決し、内密出産以外の選択肢も示していく考えです。
熊本市によると、妊娠に関する相談は年々増加し、虐待や配偶者の暴力、貧困などが絡み合うケースも増えています。妊娠内密相談センターの職員は保健師、社会福祉士、心理士ら6人。多職種の専門家がチームを組むことで、複雑な課題に対応します。学校や児童相談所など外部機関とも連携し、対面だけでなく、電話とメールでも相談に応じます。
慈恵病院は、1月末までに9例の内密出産があったと明らかにしています。妊娠内密相談センターは同病院とも協力し、福祉分野で母子の生活をサポートする方針。全国から妊婦らが集まるため、母親が出産後に戻る自治体との橋渡し役になることも想定しています。
匿名を求める妊婦に対しては、名前を明かせない理由や、直面している悩みをしっかりと聞き取り、問題を解きほぐしていきます。その上で母子生活支援施設への入居など、さまざまな支援策を示したい考えです。
ただ、同病院の蓮田健理事長は「内密出産を希望する母親の多くは、行政に対して苦手意識を持っている」と指摘。行政の介入によって相談にこない人が生じることを懸念しています。
自身も保健師として母子を支援してきた坂本まゆ所長(50)は、「相談者に対してお姉さんのように寄り添い、時間をかけて信頼関係を築きたい」とし、「命を守りたいという思いは慈恵病院と一緒だ。母子が共に幸せになる手立てを一緒に考えたい」と話しました。
妊娠内密相談センター(熊本市中央区大江5の1の1、ウェルパルくまもと2階)の対面での相談は、平日午前8時半~午後5時15分。電話(096・366・3060)は24時間対応。メール(naimitsusoudan@city.kumamoto.lg.jp)は24時間受け付けるものの、夜間・土日・祝日に受け付けた場合は、翌営業日に対応します。
2023年4月2日(日)