2024年度から本格的に始まる医師の働き方改革を前に、全国医学部長病院長会議は18日、全国の81大学病院の医師の勤務実態に関する調査結果を公表しました。医師の3割に「過労死ライン」を超える時間外労働が見込まれることが判明。同会議は労働時間を短縮するための待遇改善や人材確保、業務の移管・削減が必要だと訴えています。
文部科学省の委託事業として昨年、全国の81大学病院にアンケートを行いました。
医師の働き方改革では、医師の休日・時間外労働は原則年960時間まで、地域医療に貢献する病院などは特例として年1860時間までとする残業規制が2024年度から始まります。
アンケートでは、各大学病院に勤務実態の把握状況や、そのための対策などを聞きました。その結果、大学病院に勤務する医師の約3割に当たる最大約1万5000人について、2024年度の時間外労働が年960時間を上回る見込みとなりました。過労死ラインとされる「月80時間」を超える水準で、すべての大学病院が特例の適用を求める申請を予定しているといいます。
医師の多くは、大学病院以外でも週数日勤務するなどして地域医療を担っています。一方、労働時間の実態把握は十分ではなく、長時間勤務が常態化していました。医師の睡眠時間が減ることなどで、医療事故が増える懸念もあります。
また、労働時間の短縮が教育・研究の質の低下や成果の減少などにつながる懸念も示されました。大学病院の医師981人への調査では、研究の中心となる「助教」の医師の15%が、研究に割く時間が週0時間、約半数が1~5時間程度にとどまっていました。少ない人数で当直を回すため、診療の時間が多くなる一方、教育・研究に充てる時間が不足する状況になっています。
調査を行った全国医学部長病院長会議の横手幸太郎会長は、「働き方改革を進める上で医療機関だけで解決できない問題も多く、大学病院の機能を維持するため、医師も行政も国民も一緒になって取り組む必要がある」と話していました。
2023年4月18日(火)