消費者庁・農林水産省・環境省の3省が9日発表した2021年度の食品ロス量(推計値)によると、事業系・家庭系を合わせた食品ロス量は前年度から1万トン増の約523万トンとなりました。コロナ禍の影響により、製造業や小売業で需要の見通しが立たず、事業系の食品ロス量が増加しました。
2021年度の食品ロス量の内訳は、事業系(製造・卸・小売・外食)が前年度から4万トン増の279万トン。家庭での食べ残しや消費期限・賞味期限切れによる廃棄といった家庭系が3万トン減の244万トン。合計で1万トン増の523万トンと推計されます。国民1人当たりに換算すると、1日に茶わん1杯の量に近い約114グラム、年間で約42キログラムの食品ロスが発生しています。
事業系については、コロナ禍に伴う行動制限を背景に、事業者側の需要予測が困難だったことから、前年度から製造業が4万トン増、小売業が2万トン増となりました。
製造業では、大学の休校が繰り返されて注文が取り消されたことや、内食の需要が拡大した影響も考えられるといいます。小売業については、内食需要の変化を読み切れなかったことが主な原因とみられます。
外食産業は営業自粛や客足が遠のいたため、市場の縮小に伴って食品ロス量も1万トン減少しました。
家庭系の詳細をみると、未開封のまま捨てる「直接廃棄」は、前年度と同じ105万トンで推移。食材の皮をむきすぎるといった「過剰除去」は1万トン増の34万トン、「食べ残し」は4万トン減の105万トン。
このうち「直接廃棄」はここ数年、横ばいで推移。削減に向けて、「消費期限」「賞味期限」に対する消費者の理解を深める取り組みなどが課題に上っています。
政府は、2000年度比で2030年度までに食品ロス量を半減させるという目標を掲げています。2000年度は事業系547万トン、家庭系433万トンで、2021年度時点の削減率はそれぞれ約49%、約44%となりました。
目標達成にはさらに30万トン余りの削減が必要ですが、今後の経済状況の改善によっては食品ロス量が増加する懸念もあり、国は引き続き周知や啓発活動に力を入れたいとしています。
河野太郎内閣府特命担当大臣(デジタル改革、消費者及び食品安全)は、「2030年度までに半減させるという目標を着実に達成するにはさらなる努力が必要で、達成に向けて消費者庁として施策のパッケージを年末までに策定したい」と話していました。
2023年6月9日(金)