アメリカ軍厚木基地(神奈川県大和市、綾瀬市)で昨年9月下旬、発がん性が指摘される有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」を含む泡消火剤約7000リットルと、水約25万リットルが交ざった計約25万7000リットルが放出されがた問題で、神奈川県などは10日、泡消火剤が流入した基地内の調整池の水を調べた結果、最大で国の暫定目標値(1リットル当たり50ナノグラム)の18倍ものPFASが検出されたと発表した。
検査は日米地位協定の環境補足協定に基づき、県などが昨年10月上旬に実施。調整池は基地の南側に位置し、PFASの一種であるPFOSとPFOAの合計値は、入水側で暫定目標の17倍に当たる1リットル当たり最大850ナノグラム、排水側で18倍の同910ナノグラムでした。調整池は基地内を流れる蓼川(たてかわ)につながっており、汚染された水の一部は基地外に漏れたとみられます。泡消火剤の流出量は、防衛省から7000リットルと説明されたといいます。
県によると、検査結果の発表には日米両政府による協議が必要で調整に時間がかかり、10日に防衛省から県に連絡がありました。
一方、アメリカ軍横須賀基地(同県横須賀市)の排水処理施設からPFASが流出した問題で、横須賀市は10日、昨年12月の国と市、アメリカ軍による基地の常時立ち入り禁止区域の海上サンプリング調査の結果が、日本の暫定目標値を下回ったと発表しました。市によると、PFOSとPFOAの合計値は最大で1リットル当たり3・2ナノグラムでした。アメリカ軍は市に対し、今後は結果を提供する考えがないほか、流出した原因の特定は困難との見解を示しました。
流出の原因究明を求めている市民団体「原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会」共同代表の呉東正彦弁護士は、「PFAS汚染が全国的に問題化している今、市民の安全や海洋環境に背を向けた幕引きは許されない」と批判しました。
2023年7月12日(水)