神戸市東灘区の「甲南医療センター」で勤務していた男性専攻医(旧後期研修医)が昨年5月に自殺し、西宮労働基準監督署(兵庫県)が、長時間労働で精神障害を発症したのが原因だとして、労災認定していたことがわかりまし。男性は医師になってから3年目で、自殺するまで約3カ月間休日がなく、直前の時間外労働は、国の労災認定基準を大幅に超える月207時間に上っていたといいます。
労災が認められたのは、高島晨伍(しんご)さん(当時26歳)。神戸大卒業後の2020年4月からセンターで研修医として勤務し、2022年4月から消化器内科の専攻医として研修を受けながら診療していました。5月17日の退勤後、神戸市の自宅で亡くなっているのを訪ねた家族が見付け、兵庫県警が自殺と断定しました。
労災認定は今年6月5日付。認定によると、高島さんの死亡直前1カ月の時間外労働は207時間50分で、3カ月平均でも月185時間を超えていました。いずれも国が定める精神障害の労災認定基準(月160時間以上、3カ月平均100時間以上)を大幅に上回っていました。また、休日も2月を最後に取得していなかったといいます。
センターは昨年、外部の医師や弁護士で作る第三者委員会を設けて亡くなったいきさつなどを調査し、委員会は今年1月、「長時間労働によってうつ状態になり、自殺したのではないか」とする報告書をまとめました。
これについて労基署が電子カルテの記録などを調べ、「専攻医になったばかりで先輩医師と同等の業務量を割り当てられ、指示された学会発表の準備も重なり、長時間労働となった」と判断。長時間労働で精神障害を発症したことが自殺の原因と結論付けました。
センターはマスコミの取材に「病院にいた時間がすべて労働時間ではなく、『自己研さん』の時間も含まれている。学会発表も当院からの指示ではなく、当院が指示した範囲では業務量は適切だった」と長時間労働の指示を否定。一方で、労基署が認定した労働時間に基づき、遺族に未払い残業代130万円余りを支払ったといいます。
医師の働き方を巡っては、2018年に成立した改正労働基準法に基づき、2024年4月から時間外労働に罰則付き上限が設けられるため、各地の病院で働き方の見直しが進められています。
センターは救急対応も行う中核病院で、地域の診療所などを支援する「地域医療支援病院」として兵庫県に承認されており、病床数は約460床。
2023年8月17日(木)