市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)で救急搬送された患者100人余りを調べたところ、平均年齢は25・8歳で8割近くが女性だったことが、国の研究班の調査でわかりました。
多くの人は家族などと同居していて、研究班は「周囲とつながりがあっても、いいだせないような悩みや生きづらさを抱えているとみられ、周りの人は目を配ってほしい」と話しています。
この調査は埼玉医科大学病院などが参加する厚生労働省の研究班が実施したもので、2021年5月から2022年12月までの1年8カ月間に、解熱鎮痛剤などの市販薬を過剰に摂取して全国7救急医療機関に救急搬送された122人について調べました。
その結果、年代は20歳代の50人(41・0%)、10歳代の43人(35・2%)が多く、平均年齢は25・8歳で最年少は12歳だったほか、男女別では女性が79・5%、男性が20・5%でした。
職業別では、最も多いのが学生で33・6%、次いでフルタイムで働く人が26・2%などとなっており、8割以上の人が家族やパートナーと同居していました。
122人は、吐き気や意識障害、錯乱などの症状で搬送されました。死亡例はありませんでした。使われた市販薬は189品目で、解熱鎮痛剤47(24・9%)、せき止め35(18・5%)、風邪薬34(18・0%)など。
また、救急搬送された人のほとんどが入院したほか、集中治療が行われた人は半数を超え、後遺症で通院が必要になった人もいたということです。
研究班の埼玉医科大学臨床中毒センターの喜屋武玲子医師は、「家族と同居したり働いたりしていて周囲とつながりがあっても、いいだせないような悩みや生きづらさを抱えているとみられ、周りの人はそのことを知って目を配ってほしい。身体的な治療だけでなく、過剰摂取の背景に何があるのか、考える必要がある」と話していました。
新宿・歌舞伎町で若者に話を聞くと、市販薬の過剰摂取を「OD(オーディー)」と呼び、自分や友人が経験したことがあると話しました。
神奈川県の15歳の女性は、「ODやったことあります。人間関係に悩んで市販の風邪薬を30錠くらい飲んでしまいました。薬を飲むと考えたくないことを考えなくてよくなります。病んでしまったらすぐにODをしてしまうので、これまで何回やったか覚えていないです」と話していました。
埼玉県の18歳の女性は、「友達6人くらいはODしています。若い人が多くて中高生もやっています。リストカットと違って痛くないので、思い詰めてしまった時にやってしまうのだと思います」と話していました。
SNSにも、「OD」を巡る投稿が相次いでいます。
「ODする時みんな何を使っている?」、「ODってどんな感じなのだろうか?」などと参考情報を求める投稿のほか、「負けました。オーバードーズした」などと使用済みの市販薬のケースの写真とともに投稿されたものもあります。
そして「オーバードーズして死ぬところだった」とか、「肝臓にも負荷がかかるしやめる」など、過剰摂取の危険性を感じている投稿もあります。
国立精神・神経医療研究センターは、全国の入院施設がある精神科の医療機関と連携し、薬物依存の患者の実態について調査を行っています。
薬物の依存や乱用で治療を受けている10歳代の患者が、主にどういった薬物を使用していたかを調べたところ、せき止めや風邪薬などの「市販薬」が占める割合は、2014年にはゼロでしたが、その後急増し、2022年は65%と突出して多くなっています。
厚労省はエフェドリン、ブロムワリレル尿素、プソイドエフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、メチルエフェドリンの6つの成分を含む製剤を「乱用などの恐れがある医薬品」に指定しています。
これらの成分が含まれる医薬品を、高校生以下の若者が購入したり、譲り受けようとする場合は、学生証などで名前や年齢、使用状況の確認を求めているほか、購入者が同じ薬をほかの店で買っていないかなどの確認も求めており、複数の購入を希望している場合は、その理由や使用状況を確認し、適正と判断した場合に限って販売するよう求めています。
2023年9月6日(水)