乳がん患者一人ひとりの再発リスクを数値で示す遺伝子検査「オンコタイプDX」が9月、公的医療保険で認められました。脱毛などの副作用がある抗がん剤治療が、手術後に必要かどうかの判断材料となります。検査はこれまで、約45万円かかる自費診療でした。保険適用で費用負担が軽減され、望む患者が受けやすくなりました。
乳がんは日本の女性に最も多いがんで、2019年には新たに9万7142人が診断されました。女性の9人に1人が生涯にかかるとされています。
治療の基本は手術となります。さらに、再発予防のため薬物治療を行います。
どの薬を選ぶかは、がんのタイプで異なります。女性ホルモンと、「 HER2(ハーツー )」と呼ばれるタンパク質が、それぞれがんの増殖にかかわる「陽性」かどうかで、大きく4つに分かれます。
ただ、その分類だけでは選択しづらいこともあります。特に、ホルモン陽性でHER2陰性の場合は悩む例が多いです。
このタイプは、ホルモン療法のみか、抗がん剤を併用するかを選びます。抗がん剤は脱毛や吐き気などの副作用があります。このため、再発を防ぐ効果があると見込まれる患者にのみ併用するのが望ましいですが、その見極めが難しい患者が少なからずいます。
新たに保険適用になった遺伝子検査「オンコタイプDX」は、このタイプのうち、わきの下のリンパ節転移が0~3個の患者が対象です。がん組織を調べて、再発に関わる21種類の遺伝子を解析、結果は0~100の数値「再発スコア」で示されます。点数が高いほど再発しやすく、抗がん剤の併用が勧められます。25以下は抗がん剤の効果はないため、原則、併用の必要性は低いと判定されます。
検査費(公定価格)は43万5000円。3割負担だと13万500円です。所得によっては、医療費の自己負担に上限を設ける高額療養費制度が適用され、さらに負担が抑えられます。製造販売元のエグザクトサイエンス(東京都千代田区)は、乳がん患者の約半数がこの検査の対象になるとみています。
相良病院(鹿児島市)院長の大野真司さんは検査について、「再発のリスクや抗がん剤の効果を予測するものです。再発するかが確実にわかるわけではありませんが、病理検査と組み合わせて、より正確に抗がん剤治療の必要性を判断できます」と話しています。
2023年9月30日(土)