2023/10/03

🟧武田薬品のワクチンをWHOが推奨 デング熱流行地域の6~16歳に接種を

 世界保健機関(WHO)は2日、武田薬品工業が開発したデング熱ワクチン「QDENGA(キューデンガ)」について、デング熱が大規模流行している地域で6~16歳の子供への接種を推奨すると発表しました。QDENGAはヨーロッパ連合(EU)やインドネシア、ブラジルなどではすでに承認済み。

 蚊が媒介するウイルス感染症のデング熱は近年、感染者が増加しており、地球温暖化も要因となって確認地域も拡大しています。QDENGAは初回接種の3カ月後に、2回目を受けるようWHOは求めています。9月下旬に開かれた専門家による諮問委員会の協議結果を踏まえて決定しました。

 デング熱はアフリカやアジア、中南米での流行拡大が懸念されており、専門家はQDENGAについて「幅広い使用の可能性を秘めた最初のデング熱ワクチンだ」と述べました。 

 WHOはまた、イギリスのオックスフォード大が開発したマラリアのワクチン「R21」の子供への接種を推奨すると発表しました。

 蚊が媒介するマラリアは、アフリカの幼い子供を中心に毎年50万人もの死者を出しています。マラリアのワクチンは、すでにWHOによって承認されたものがありますが、現在世界的な需要に供給が追い付いていないということで、WHOとしては新たなワクチンの承認によって普及を後押ししたい考えです。

 2023年10月3日(火)

🟧フランスでトコジラミ大発生 政府、オリンピック向け駆除作戦

 フランスの公共交通機関や空港などで「南京虫」の名前で知られる害虫の「トコジラミ」の発生が相次いで報告され、社会問題となっています。殺虫剤への耐性が高まったことなどが背景とみられます。国内外からの多くの観客が予想される来年7月のパリ夏季オリンピック開催まで1年を切る中、政府は深刻な問題だとして駆除作戦に乗り出しました。

 地元メディアによると、ここ数週間、パリの地下鉄や高速列車TGV、空港の待合室、映画館、病院などでトコジラミの発生が報告されました。すべてが確認されたわけではないものの、ソーシャルメディア上に列車や地下鉄をはい回るトコジラミの映像が公開され話題となっています。

 事態を重く見たパリのエマニュエル・グレゴワール副市長は9月下旬、エリザベット・ボルヌ首相に書簡を送り「来年にオリンピック・パラリンピック開催を控える中、国はこの災いに見合った行動計画を早急に策定する必要がある」と訴えました。

 これを受け、クレマン・ボーヌ交通担当相は9月29日、対策を話し合うため近く交通事業者と面会すると約束しました。

 トコジラミはフランスでは1950年代までにほとんどいなくなっていましたが、ここ数十年は、人口密度の上昇と大量輸送機関での移動の機会が増えたことなどで再び増加しています。

 トコジラミの問題が生じた世帯はここ数年、全体の10分の1に上っているとみられます。通常、駆除には数百ユーロかかり、多くの場合、何度も行う必要があります。

 トコジラミは、マットレスに卵を産み付け、生息する習性があることから名付けられましたが、衣服や荷物の中にも入り込み、夜になると出てきて人の血を吸います。

 フランスの衛生当局は、旅行の際はホテルのベッドを点検し、中古の家具やマットレスを自宅で使用する時は注意するよう呼び掛けています。また、自宅で発見した場合は、直ちに影響を受けた部屋の駆除作業を行わなければならないとしています。

 血を吸われると、皮膚に赤みや水疱(すいほう)、大きな発疹ができ、場合によって激しいかゆみやアレルギー反応を起こします。精神的苦痛や睡眠障害、不安、うつ病を引き起こすこともあります。

 フランス当局によれば、トコジラミの発生は衛生状態とは関係ありません。

 2023年10月3日(火)

2023/10/02

🟧7月、8月に続いて9月も平均気温が過去最高 平年を2・66度上回る

 気象庁は2日、今年9月の平均気温が、平年値(1991~2020年の平均)を2・66度上回り、1898年の統計開始以降で最も高くなったと発表しました。これまで最高だった2012年のプラス1・51度より1度以上高くなっています。今年は7、8月もそれぞれ過去最高気温を記録しており、3カ月連続の更新となった。

 今年は春(3~5月)、夏(6~8月)も過去最高で、年間でも1位のペースで推移。気象庁は10月から冬(12月~来年2月)にかけても高温傾向が続くと予想しています。

 9月の高温の原因は、「偏西風」と「太平洋高気圧」です。日本の上空には「偏西風」と呼ばれる、西から東に向かう風の流れがあり、寒気と暖気の境目になっています。9月はこの偏西風が平年より北側にあったため、暖気が北上し全国的に暖かい空気に覆われやすくなっていました。また夏には日本の南に温暖な「太平洋高気圧」がありますが、9月はこの張り出しが強かったため暖気が日本の上空に、より流れ込みやすくなっていました。

 地球温暖化により平均気温は上昇傾向にありますが、9月はさらに気温上昇を強める条件が重なっていたということで、気象庁の担当者も「これほどの高温になるのは信じられない。温暖化を背景に、たくさんの要因が重なり記録的な現象となった」と語りました。

 2023年10月2日(月)

🟧ノーベル生理学・医学賞にアメリカのカリコ氏ら2人 mRNA研究で新型コロナワクチン開発に貢献

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日、2023年のノーベル生理学・医学賞を「メッセンジャーRNA」(mRNA)ワクチンの基盤技術を開発したハンガリー出身でアメリカ・ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授(68)と同大のドリュー・ワイスマン教授(64)に贈ると発表しました。新型コロナウイルス禍で普及したmRNAワクチンで、多くの人命が救われたことが評価されました。

 mRNAという遺伝物質を使ったワクチンや難病の治療薬として応用しようとする研究は約30年前からあったものの、mRNAを人体に投与すると免疫が攻撃して強い炎症が起きるため、安全性で難点がありました。これを解決したのがカリコ氏とワイスマン氏で、2人がペンシルベニア大で研究していた2005年、mRNAの一部の化学物質(ウリジン)を別の化学物質(シュードウリジン)に置き換えると、免疫の攻撃が抑えられることを発見しました。

 この研究がmRNAを医薬品化する最初の足掛かりとなって、ドイツの製薬企業ビオンテックやアメリカのモデルナなどのバイオ企業が注目し、がんやインフルエンザなどに対するmRNAを使った次世代の創薬研究が盛んになりました。

 2020年初頭、新型コロナの感染が世界に拡大すると、アメリカのファイザー、モデルナがmRNAワクチンの開発を進め、同年12月に世界で初めて実用化しました。

 授賞式は、アルフレッド・ノーベルの命日に当たる12月10日にスウェーデンの首都・ストックホルムで開かれます。

 2023年10月2日(月)

🟧果物を食べない日本人、20歳以上の38%は1日摂取量が0グラム 目標は1日200グラム

 春から夏にかけてはイチゴにサクランボ、スイカにメロン、秋になれば梨、ブドウ、柿、栗。冬にはリンゴとミカン。日本では四季折々の果物が楽しめますが、日本人は驚くほど果物を食べていません。厚生労働省の国民健康・栄養調査の最新結果では、20歳以上の38%は、果物の1日摂取量が0グラムです。若い世代ほどその割合が高く、20歳代は61%、30歳代は55%、40歳代は53%となっています。

 この調査は、ある特定の1日の食事内容を調べるため、1年を通して全く食べない人の割合とはいえないものの、果物を食べる習慣のない人が相当数いることを示しています。

 ただ、果物は野菜と同じように生活習慣病のリスクを減らし、健康維持に大きな役割を果たしています。

 厚労省は今年、2024年から開始する「健康日本21(第三次)」で、果物摂取量の目標値を1日200グラムと定めました。

 健康日本21は、生活習慣の改善、社会環境の質向上といった健康づくりの各種指標を定めたもの。食生活に関して品目別に挙げられているのは、果物のほか、野菜と食塩の摂取量のみです。「疾患予防に寄与する科学的根拠がそろっている項目を、指標に設定した」と担当者は話しています。

 2023年10月2日(月)

🟧保管温度が不適切なコロナワクチンを170人に接種 滋賀県草津市

 滋賀県草津市は9月22日、冷凍庫での保管温度が適正に保たれていなかった新型コロナウイルスのワクチンを170人に接種していたと発表しました。冷凍庫の異常が原因とみられます。健康被害の報告はないといい、市は対象者全員に連絡し、抗体検査を実施するとともに抗体のない人には追加接種する、としています。

 市によると、ワクチンはアメリカのファイザー社製のオミクロン型派生型「XBB・1・5」対応品で、9月11日に冷凍庫の適正温度(零下60~90度)を確認して保管を始めたものの、18日に一時的に零下28・4度まで上昇していました。冷凍庫は警報アラームが鳴るものの、同日は祝日で職員が不在でした。

 その後、保管温度は適正値に戻っていたといいます。22日朝に零下54度に上がり、職員が警報に気付きました。この際、冷凍庫のログを調べ、18日にも保管温度を超えていたことが判明しました。

 保管温度が不適切だったワクチンは、20日に始まった秋接種で7医療機関と1集団接種会場で計170人に使われていました。市は未使用だった約9100回分を廃棄する予定で、ほかの自治体からワクチンの融通を受けるなど接種に影響が出ないようにするといいます。

 市は冷凍庫の故障の可能性もあるとみて、メーカーに原因調査を求めています。

 橋川渉市長は、「市民の皆様にご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げる。確認体制の強化や再発防止策を講じる」とコメントしました。

 2023年10月2日(月)

2023/10/01

🟧肝臓の線維化を血液で手軽に検査できる試薬を発売 シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス

 シーメンスヘルスケア傘下で診断薬事業を手掛けるシーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス(東京都品川区)は、慢性肝疾患を持つ患者の肝臓の線維化(肝線維化)の程度を診断する血液検査用試薬「ケミルミTIMPー1」を発売しました。国内では初の製品。これまでは患者から病理組織を切り取って診断していたものの、より手軽に検査できるようになります。

 肝線維化とは肝臓が損傷した細胞を修復する過程で起き、組織が固くなって機能しなくなる状態。ウイルス性肝炎や過度のアルコール摂取、脂肪性肝疾患などで起こり、進行すると肝硬変や肝不全、肝細胞がんになる可能性があります。同社が発売したケミルミTIMPー1は、血清中の「組織メタプロテアーゼ阻害物質」を測定する試薬で、同社の免疫自動分析装置「アテリカ シーアイ1900」と組み合わせて使用します。

 組織メタプロテアーゼ阻害物質とヒアルロン酸数値、プロコラーゲンⅢペプチドの値を組み合わせて「強化肝線維症(ELF)スコア」と呼ばれる数値を算出し、線維化の程度を示します。

 肝線維化の診断には患者の体内に針を入れ、肝臓の一部を切除して検査する「肝生検」という手法が主流なものの、対応できる病院が限られていることや、入院する必要があるなどの課題がありました。

 切り出す組織によっても、肝臓の線維化が進んでいるかどうか判断が分かれる可能性があるといいます。同じ症例であっても、検体を見る医師によって約4割の確率で診断が異なるなど正確な診断ができないリスクも加わります。

 血液で検査できるため、開業医などでも検査できるようになります。従来の肝生検の手法では入院が必要なため、7万円から8万円ほどかかるのに対して、安価に抑えられます。

 肝生検の検査では痛みや合併症のリスクがあるなど患者の体にも負担がかかるため、一度しか検査できません。血液による検査では同じ患者でも複数回検査ができるため、早期の病状把握につながるほか、病状の改善なども数値で追いやすくなります。

 国内ではB型肝炎やC型肝炎などウイルス性による肝疾患の割合は減少しているものの、アルコールの摂取が少ないにもかかわらず肝臓の病気が進行する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の患者数は増加傾向にあります。

 国内の有病率は男性が3〜4割で、女性は1〜2割ですが、検査し切れていない潜在的な患者も多く、全体では2000万人以上の患者がいると推定されています。

 非アルコール性脂肪肝炎については現在は治療薬がなく、生活習慣の改善などで進行を遅らせる対応が主流。そのため手軽な検査のニーズが低かったものの、アメリカなどでは治療薬の開発が進んでおり、実用化に向けて血液による検査の需要が高まっています。

 横浜市立大学大学院・医学研究科の中島淳主任教授は、「肝生検以外の方法でハイリスク患者を拾い上げる方法の確立が急務だった。新薬が登場した際には治療効果の評価にも使える」と期待を寄せています。

 2023年10月1日(日)

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...