2024/02/13

🟧東京医科歯科大など、「ミニ胎盤」の作製に成功 医薬品開発への活用期待

 東京医科歯科大学や東北大学の研究チームは、妊娠時に胎児と母体をつなぐ胎盤の構造の一部を再現した「オルガノイド(ミニ臓器)」の作製に成功したと発表しました。胎盤を通過しにくい薬を見付けやすくなり、妊婦が服用しても胎児に影響しにくい医薬品の開発につながるとみています。研究成果をまとめた論文が8日、イギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されました。

 母体と胎児をつなぐ胎盤には、妊婦の体内に存在する薬やウイルスが胎児に移動するのを防ぐバリアーとしての機能があります。ただ一部の薬は胎盤を通過して胎児に影響を与えてしまうため。妊婦には使えません。薬が胎盤を通過するか効率的に調べる方法が求められています。

 研究チームは胎盤の基になる「胎盤幹細胞」を培養し、バリアー機能を担う「じゅう毛」という構造を再現したミニ臓器を作りました。これまでに別の研究チームもミニ胎盤の作製に成功していたものの、実際のじゅう毛の構造とは違っていました。今回、培地の成分を変えるなどして実際の構造に近付けました。

 じゅう毛を構成する細胞をシート状に培養することにも成功し、胎盤を通過しないタンパク質などを使って検証して、実際の胎盤と同様の性質を持つことを確認しました。このシートを大量に培養すれば、多数の薬について胎盤の通過しやすさを効率よく検証できるとみています。

 今後、高品質のシートを作れるように培養条件などを改良して、実用化を目指します。東京医科歯科大の堀武志助教(医工学)は、「妊婦特有の病気である妊娠高血圧症候群の治療薬を始め、妊婦が安心して使える薬の開発に役立てたい」と話しています。

 従来は人の胎盤などを使って薬の性質を調べていました。ただ、人の胎盤の供給は限られ、人と動物では胎盤の構造が異なるため動物実験だけでは不十分です。

 ミニ臓器は臓器を構成する細胞を立体的に培養したもので、これまでに腎臓や腸などさまざまな臓器で作製例があります。臓器の性質を再現でき、有望な薬の候補を見付けるのに活用されます。

 2024年2月13日(火)

🟧思春期の身体不調、死を望むリスク要因に 東大などが研究 

 東京大学と東京都医学総合研究所の研究チームは、引きこもり症状の持続や身体不調の増加が思春期児童の希死念慮(死にたいと思う気持ち)を抱くリスクになることを見いだしました。研究成果を生かせば、児童の異変を周囲の人間が意識することで自殺予防につながる可能性があります。

 児童2780人を対象に数年間、追跡調査しました。引きこもり症状、身体不調、不安抑うつ症状など8項目の有無や強弱について、10歳、12歳、16歳の時点で調べました。その上で、16歳時点で希死念慮を抱いているかも調べ、データを解析しました。

 引きこもり症状が持続している場合と身体不調が増加している場合、希死念慮のリスクが高まることがわかりました。引きこもり症状の持続はそれがない場合と比べて希死念慮を持つ割合が約2・4倍、身体不調の増加はそれがない場合と比べて約3倍高くなりました。

 身体不調とは、身体的な病気がないにもかかわらず、痛み、疲労感、吐き気、めまいなど身体の不調が生じること。引きこもり症状も身体不調も心理的なストレスがかかわっていることが多く、それが希死念慮を招くとみられます。

 研究に携わった東大医学部付属病院精神神経科の安藤俊太郎准教授は、「軽視されがちな児童の身体不調が実は大きなリスクとなることがわかった」と話しています。不安抑うつ症状などと比べれば周囲が見付けやすいため、自殺予防の支援につながる可能性があります。

 2024年2月13日(火)

🟧新型コロナウイルス蔓延下の2022年度、死を望む20歳未満が2019年度から1・6倍に増加 国立成育医療研究センターが調査

 新型コロナウイルスの感染が蔓延(まんえん)していた2022年度に、生活環境の変化などで死にたいと強く思う「希死念慮」の状態だと医師に判断された20歳未満の初診外来患者は214人で、コロナ流行前の2019年度の135人に比べ約1・6倍だったことが9日までに、国立成育医療研究センターの調査でわかりました。

 センターの小枝達也副院長は、「コロナ禍の感染症対策や行動制限などの制約が、子供の心に長期的な影響を及ぼした」と指摘しています。

 調査は2023年4~6月、子供の心の診療を行う全国31病院にアンケートをし、2019~2022年度に希死念慮のほか、死ぬつもりで自殺を図る「自殺企図」(希死念慮との重複も計上)と判断された20歳未満の患者数を調べました。

 希死念慮は2019年度135人、2020年度184人、2021年度191人、2022年度214人と毎年増加。自殺企図も2019年度の63人から2020年度に105人と増え、2021年度112人、2022年度110人と高止まりしています。

 2024年2月13日(火)

2024/02/12

🟧酵素の老化抑制機能を解明、亜鉛と結合し活性酸素分解 京都産業大

 人などの細胞内にある酵素「ERp18」が老化を抑制する機能を持っていることを、京都産業大の研究チームが解明しました。細胞内にある亜鉛イオンと結合して、老化を進める活性酸素の1つである過酸化水素を分解します。細胞の老化や酸化ストレスを原因とする病気の予防や治療法開発につながる可能性があるといいます。論文は8日付のアメリカの科学誌「セル・リポーツ」電子版に掲載されました。

 ERp18は、細胞内にある小器官「小胞体」に含まれます。炎症やアレルギーを抑制する酵素「チオレドキシン」とよく似た構造ですが、詳しい役割はわかっていませんでした。

 研究チームはERp18を持つさまざまな生物のアミノ酸配列を調べた結果、亜鉛イオンと結合するとERp18が3個つながり、活性酸素の1つである過酸化水素を水と酸素に分解することを確認しました。

 さらに、人の細胞でERp18を作る遺伝子の働きを抑えると、過酸化水素が蓄積することが判明。また、長さ約1ミリの線虫でも同様に過酸化水素が体内にたまり、遺伝子操作していない通常の線虫と比べて寿命が1割ほど短くなりました。

 ただ、細胞内でどのように亜鉛イオンと結び付くのかは解明できていません。研究チームの京都産業大生命科学部の潮田亮准教授は、「小胞体の中は元々亜鉛が少なく、食事で亜鉛を取るだけでは効果がない。亜鉛を小胞体に取り込ませ、効率よくERp18に亜鉛を結合させる薬剤を開発できれば、老化が原因の病気の予防や治療法開発につながることが期待される」と話しています。 

 2024年2月12日(月)

🟧成人女性の冷え症に関係する遺伝的要因を発見 慶応大研究チーム、1111人を解析

 冷え症に関係する遺伝的要因を発見したとして、慶応大漢方医学センターの呉雪峰(ごせっぽう)研究員らの研究チームが、イギリス科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表しました。将来的に、遺伝子検査結果を踏まえて効果的な治療法を提示できる可能性がある成果だといいます。

 民間会社の遺伝子検査を利用した20~59歳の日本人女性のうち、研究に同意を得た1111人を対象に解析しました。アンケートで「冷え」の症状や負担感を調査した上で、冷えの症状がある599人とない人について、ゲノム上の塩基を比較しました。

 その結果、冷えの症状を抱えた人では、温度の感じ方に関係するタンパク質「TRPM2」「KCNK2」などの遺伝子で塩基の異なりがみられました。この違いが、冷えに関連するタンパク質の発現量を変化させ、冷えのリスクを高めていると考えられるといいます。また、一部の生薬がこのタンパク質に作用するとのデータがあり、治療方法の選択に役立つ可能性があるといいます。

 これまで、冷えにより日常生活に苦痛を感じ支障を来す冷え症が生じるメカニズムについては、女性ホルモンの乱れや自律神経の失調などが指摘されていました。一方、過去の研究で、冷えの症状のある女性の6割以上で、その母親も冷えの症状があることから遺伝的要因が示唆されてきましたが、これまで冷えに関する網羅的な遺伝子解析の研究はなかったといいます。

 研究チームの吉野鉄大・同センター特任講師(漢方医学)は、「冷え症はただ冷えるだけでなく、痛みを伴って生活の質を低下させたり、他の疾患の引き金になったりすることがある。今回の研究では遺伝的背景があることを示せた。つらい症状を抱えている場合は気兼ねなく受診してほしい」と話しました。

 2024年2月12日(月)

🟧北海道でインフルエンザが猛威、一時449校が休業 冬休み明けで再び増加の兆し

 北海道内で今冬、インフルエンザウイルスが猛威を振るっています。小中学校を中心に感染が拡大し、学級閉鎖は全道で最大で288件に上りました。昨年12月にピークを越えたものの、冬休みが終わった1月下旬以降、再び増加の兆しがあります。

 道の統計によると、インフルエンザは昨年8月末ごろに流行入りし、10月下旬に定点医療機関当たりの患者数が19・58人になりました。それから1カ月弱で定点医療機関当たり30人の警報レベルを超えました。12月初旬になると、週の症例数が1万3779人とピークに達しました。道感染症対策課の担当者は、「例年より拡大のペースが速かった。定点当たりの患者数も多い」と話しています。

 目立ったのが、インフルエンザの集団感染による学校と幼稚園の休業で、学級・学年閉鎖を含めて一時、449校に上りました。その後、12月下旬に幼稚園や学校が冬休みに入ったこともあり、定点医療機関当たりの患者数は警報レベルを下回り、1月半ばには10人の注意報レベルを下回りました。

 ただし、冬休みが明けてから再び感染拡大の傾向にあります。1月29~2月4日は症例数が2581人(前週比998人増)で、定点医療機関当たりの患者数も注意報レベルを突破。1月15~21日に6校のみだった学級閉鎖は1月29~2月4日に学年閉鎖・休校と合わせて90と15倍になりました。

 2022年12月の定点医療機関当たりの患者数は、2人以下でした。道医師会常任理事の三戸和昭医師(73)は今冬のインフル流行の理由を2つ挙げます。1つは人々の免疫の低さで、新型コロナ感染拡大以降、インフルエンザが流行せず、抗体を持つ人が減ったといいます。もう1つは、2種類のインフルエンザウイルスが同時に広まったことで、「A型の2つの亜型が拡大し、その両方にかかったという人がかなりいた」と指摘します。

 インフルエンザの感染再拡大とともに気になるのが、新型コロナの状況で、1月29~2月4日のコロナの定点当たりの患者数は15・4人。昨年9月以来、4カ月ぶりに15人を超えました。三戸医師は、「流行スピードは速いが、重症例はあまりない。今後も変異を繰り返して流行は続くだろう」と分析。「手洗いうがいなどが一番の予防策。感染したと思ったら早期に受診してほしい」と呼び掛けています。

 2024年2月12日(月)

2024/02/11

🟧富山県、アクティブファーマに業務改善命令 原薬の不適切製造で

 富山市に工場がある医薬品の原薬製造メーカー「アクティブファーマ」(東京都千代田区)が、国が承認していない方法で製品を製造していたとして、富山県は9日、原因の究明や再発防止を求める業務改善命令を出しました。

 アクティブファーマは富山市八尾町に工場があり、医薬品の原薬の開発や製造、販売を行っています。

 県によりますと、工場では原薬の製造工程で、粉をふるいにかける際、手作業で行うべき作業を機械を用いたり、加熱工程の温度が承認されたのとは異なっていたりなど、10品目で国が承認していない不適切な方法がとられていたということです。

 昨年7月、県の無通告の立ち入り検査で発覚しました。

 承認されていない方法での製造は約10年前から行われ、虚偽の製造記録も作成していたなどとして、県は9日、医薬品医療機器法に基づき原因の究明や改善計画の策定などを求める業務改善命令を出しました。

 これについて親会社の「三谷産業」は「地域住民や国民の皆様にご心配とご不安をおかけして申し訳ない」とコメントする一方、品質には問題がなく健康被害の報告もないとして自主回収や出荷停止の予定はないとしています。

 富山県内の医薬品メーカーではほかにも品質管理などに問題があったとして、2019年以降、ジェネリック医薬品大手の「日医工」など5社に業務停止命令や業務改善命令が出されています。 

 2024年2月11日(日)

🟥医療機関の受診、原則マイナ保険証の利用に 従来の保険証も3月までOK

 12月2日から、会社員やその家族が加入する健康保険組合の健康保険証に代わって、マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」の利用が原則となった。1日までですべての健康保険証の有効期限が切れたため。厚生労働省は患者が期限切れの保険証を提示しても、来年3月末まで...