世界保健機関(WHO)は、エムポックス(サル痘)の感染がアフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で拡大し、アフリカ以外にも広がる恐れがあるとして、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。
これは、WHOのアダノム・テドロス事務局長が14日、記者会見を開いて発表したものです。
エムポックスは、発熱や発疹などの症状が現れるウイルス性の感染症で、2022年7月にも1度欧米を中心に感染者の報告が相次ぎ、緊急事態が宣言されました。
その後、感染者数が減少し、緊急事態宣言は1年足らずで終了が発表されましたが、WHOによりますと、アフリカ中部のコンゴ民主共和国を中心に、ブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダなど近隣諸国で、再び感染が拡大しているということです。
2022年と比べて重症化しやすい新たなタイプのウイルスも広がっているとみられ、コンゴ民主共和国では今年だけで1万4000人以上の感染が確認され、524人が死亡したということです。
感染は周辺の国でも確認されていることから、WHOは14日、専門家による委員会を開いて検討した結果、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。
感染経路としては、性的接触による感染のほか、動物からの感染や、家庭内で子供が感染するケースもみられるということです。
テドロス事務局長は、「アフリカの中、そしてアフリカ以外でさらに広がる恐れがあり、憂慮すべきだ」として、感染拡大を抑えるため、各国が協調して対応する必要があると訴えました。
エムポックスに詳しい岡山理科大学の元教授、森川茂さんは、「主に接触感染で広がるウイルスだが、今回の流行では家庭内感染などで子供が発症するケースが多いなど、性的な接触ではない通常の接触での感染リスクが高まっている。また、今回流行しているウイルスは以前流行したものと比べ病原性が強く、特に15歳未満の子供での感染者が多く、重症化して亡くなる方も多いと報告されている。このウイルスがさらに広がると全く違う形の流行になるということでリスクが高いと判断したとみられる」と話しています。
さらに、「エムポックスには天然痘に対して作られたワクチンが効果があると考えられていて、接種も行われているが、アフリカにはまだ十分な量のワクチンが供給されていない。今後、アフリカでのワクチン接種が遅れてしまうと世界中に感染が拡大するリスクがある」とした上で、「日本でも、アフリカの流行地域にいた人が知らないうちに感染して帰国して発症するリスクが考えられる。発症初期には発熱などの症状があるので、流行地域に滞在した人は発熱があればエムポックスを疑って医療機関で検査を受けてほしい」と呼び掛けています。
2024年8月15日(木)