2024/10/22

🟪パーキンソン病患者の大腸に腸内細菌移植、国内初の臨床研究 順天堂大グループ

 順天堂大学は21日、2024年中にもパーキンソン病の患者に健康な人の便から取った腸内細菌を移植すると発表しました。腸内細菌の乱れとパーキンソン病の発症リスクが関連するとの研究があり、今回の臨床研究で移植の治療効果や安全性を確かめます。

 パーキンソン病は手足の震えなどの運動障害が起きる難病で、進行すると認知症になることもあります。病気の仕組みに作用して進行を抑える薬はまだありません。

 順天堂大の服部信孝主任教授は21日の記者会見で、「腸内細菌移植でパーキンソン病の進行を緩やかにできれば、認知症の発症を抑えられるかもしれない」と期待を語りました。

 スタートアップのメタジェンセラピューティクス(山形県鶴岡市)と共同で、40~75歳でパーキンソン病進行期の患者約30人を対象に臨床研究を実施します。抗菌薬で患者の腸内細菌をいったん除き、半数には健康な人の腸内細菌を含む溶液を内視鏡で投与します。残り半数には細菌を含まない溶液を投与します。

 投与から約2カ月後、パーキンソン病の症状を示すスコアの改善の度合いなどを調べ、腸内細菌を投与しなかった患者と比べて治療の効果を検証します。

 近年の研究により、パーキンソン病患者は腸内細菌のバランスが大きく変化しているとわかってきました。腸内細菌の乱れが一因となる腸炎により、パーキンソン病の発症リスクが高まることも判明しました。

 人の腸内には1000種類以上、約40兆個の腸内細菌がすんでおり、代謝物などを通して人体と密接に関係しています。腸内細菌を移植する治療法の研究はパーキンソン病以外でも進んでいます。

 2023年には順天堂大などが潰瘍性大腸炎患者を対象に先進医療を始めました。2024年8月には国立がん研究センターと順天堂大、メタジェンセラピューティクスが、がん患者に腸内細菌を移植してがん免疫薬の効果向上を狙う臨床試験を始めると発表しました。アメリカでは2022年、病原性の腸内細菌による大腸炎の治療法として承認されました。

 2024年10月21日(月)

2024/10/21

🟪臓器移植で緊急性の高い患者を優先するルール、対象を肝臓のみから「心臓・肺」に拡大へ

 脳死者から提供された臓器の移植を受ける患者を選ぶ基準について、厚生労働省は、命の危険が迫り、緊急性が高い患者を優先するルールを拡大する検討に入りました。肝臓だけでなく、心臓や肺に広げます。移植が間に合わずに亡くなる患者を減らす狙いがあります。月内にも開く厚生科学審議会の臓器移植委員会で議論を始めます。

 脳死者から提供された臓器については、日本臓器移植ネットワーク(JOT)が厚労省の基準を踏まえて、移植を待つ患者の優先順位を決めます。上位から、患者が登録した移植施設に臓器の受け入れを要請します。基準は、学会や研究会の提案を反映しており、臓器で異なります。

 見直しは心臓移植から始めます。現在は待機期間が長い患者が移植を受けやすい基準になっています。臓器移植委員会では、余命が短いと判断された患者については待機期間にかかわらず最優先に臓器をあっせんできないかや、対象となる患者の具体的な条件を議論します。肺移植でも検討したい考えです。すでに肝臓では、余命が1カ月以内の患者に適用しています。

 このほか、心臓や肝臓などで臓器を摘出する施設と近距離の移植施設に登録する患者の優先度を高める案も検討します。両施設が離れているため、臓器の搬送を担う人員や手段が確保できず臓器の受け入れを断念する場合があります。搬送時間の短いケースを優先させることで、断念を防ぐことが期待できるとしています。

 JOTによると、9月末現在、国内の待機患者は1万6452人。2023年は592人が移植を受けた一方、463人が待機中に亡くなりました。

 移植を受ける患者の選定基準の見直しは、より多くの命を救うためです。

 具体的な検討に入る心臓は、移植を受ける患者の待機期間が長期化し、平均5年を超えています。現行基準では、待機中に病状が悪化しても優先されず、命を落とす患者が後を絶ちません。

 厚生労働省が9月に公表した移植の実態調査では、一つの臓器あっせんで多くの患者が移植を見送られていた現状が判明しました。効率的なあっせんが行われていないとして、移植医療体制の改革案に盛り込まれました。

 今後、臓器摘出の施設と移植施設の近さを優先する案も議論される見通しです。

 移植を受ける患者数は増加傾向にあるものの、待機患者数を大きく下回ります。一日でも早く移植を受けたいと願う待機患者が納得できる基準にするには、見直しにより、移植の優先順位が下がる患者への影響も含め、慎重な議論が求められます。

 2024年10月21日(月)

2024/10/20

🟪今年のエムポックス死者、アフリカ全土で1100人

 アフリカ連合(AU)の保健機関、アフリカ疾病対策センターは17日、アフリカ大陸全体では今年これまでに、約1100人がウイルス感染症「エムポックス(サル痘)」で死亡したと発表しました。

 1月以降、アフリカでは計4万2000件の症例が報告されています。初の症例が報告されたザンビアとジンバブエを含め、18カ国で感染が確認されています。

 アフリカ疾病対策センターのジャン・カセヤ事務局長は、「対策を講じなければ、エムポックスは制御不能になる」と警告しました。

 死者の大多数は、流行の震源地となったコンゴ民主共和国(旧ザイール)に集中しています。同国では今月、ようやくワクチンの集団接種が開始されました。

 カセヤ事務局長は、大陸全体で「週ごとに新たな症例が増えている」とし、国際的なパートナーに対し支援の強化と、エムポックス対策のために約束された資金を直ちに拠出するよう求めました。

 2024年10月20日(日)

2024/10/18

🟪モデルナ、日本でコロナ・インフル混合ワクチン生産へ

 アメリカの製薬会社モデルナは17日、神奈川県藤沢市の湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)で記者会見を開き、同施設内でメッセンジャーRNA(mRNA)製品を製造することを明らかにしました。ステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)は「複数のmRNA製品を日本で販売したい」と話しました。

 モデルナは2023年9月に、日本政府が主導するワクチンの国内生産体制整備事業の事業者に採択されました。経済産業省から補助金を受け、湘南アイパーク内にmRNAワクチンの製造施設を新設します。今回、改めて日本でのワクチン生産計画の詳細を明らかにしました。バンセルCEOは「今後、数年以内に生産を開始したい」と稼働時期についても示しました。

 同施設ではすでに国内で普及するmRNAのコロナワクチンに加え、RSウイルスワクチン、インフルエンザウイルスとコロナの混合ワクチンなどの新製品も製造する計画だといいます。

 モデルナは日本で呼吸器感染症やサイトメガロウイルス、希少疾患やがん治療など6つのワクチンの臨床試験(治験)を進めています。こうしたワクチン候補の開発が成功し製造販売承認を取得した場合、日本で製造する体制を整備することで日本のヘルスケアに貢献します。

 モデルナは売上高の多くをコロナワクチンが占めており、日本は同社にとってワクチン販売の重要な市場とみています。またワクチン販売以外にも東京大学といった研究機関と連携し、mRNA技術の応用を支援するといいます。

 2024年10月18日(金)

2024/10/17

🟪低炭素のクリーンエネルギー、2030年代の主役に 国際エネルギー機関予測、石油は減少

 国際エネルギー機関(IEA)は16日、2024年版の「世界エネルギー展望」を公表しました。太陽光など再生可能エネルギーの普及により、2030年代半ばに原子力を含む低炭素のクリーンエネルギーが「最大のエネルギー供給源になる」との予測を示しました。一方、世界の石油需要は2030年までにピークを迎え、減少に転じると見通しました。

 日米欧を中心とした主な石油消費国でつくるIEAは近年、気候変動対策の旗振り役として存在感を高めています。主要産油国でつくる石油輸出国機構(OPEC)は9月、2050年の石油需要が2023年比で18%増えるとの予測を公表しており、両者で異なるシナリオを発信しています。

 IEAは、各国が脱炭素化に向けた表明済みの政策を実行するシナリオでは、クリーンエネルギーが2030年代半ばに石油を上回って最大のエネルギー供給源となり、2050年時点で全体の約4割に達すると予想しました。

 クリーンエネルギーへの投資額は2024年に約2兆ドル(約300兆円)となり、化石燃料の2倍となる見通しです。

 2024年10月17日(木)

2024/10/16

🟪2024年4月の医学部医学科入学者、女性は4割下回る 合格率は10・6%、男性は12・3%

 2024年4月に大学の医学部医学科に入学した女性の割合が2年ぶりに4割を下回ったことが、文部科学省の調査結果でわかりました。

 文科省が公表したのは、2024年度の医学部医学科入試の公正確保などに関する調査。医学部入試で女性を一律減点するなど差別的な対応が行われていたことが2018年に発覚したのを受け、文科省は2019年度と2020年度の入試について医学科がある81大学の男女別合格率を公表する緊急調査を実施。2021年度以降は毎年調査を行っています。

 文科省が15日に公表した調査結果によると、2024年4月に入学した女性の割合は39・8%で、前年度を0・4ポイント下回りました。男性は60・2%(前年度比0・4ポイント増)。文科省の担当者は、「長期的に見た場合は、医学部医学科に入学する男女の割合は縮まってきている」と話しています。

 2024年度入試での81大学の平均合格率は男性12・3%(同0・5ポイント減)で、女性は10・6%(同1・6ポイント減)。女性の平均合格率が男性より高いのは、受験者が女性のみの東京女子医科大を含めて26大学でした。国立(42大学)では男性31・9%、女性28・3%。公立(8大学)は男性30・6%、女性28・8%で、私立(31大学)は男性8・4%、女性7・7%でした。

 医学部医学科の受験者の総数は男性6万7804人(同6・1%増)、女性5万2298人(同13・6%増)。女性の受験者数は、2019年度の調査開始以降で初めて5万人を超えました。

 2024年10月16日(水)

2024/10/15

🟪卵巣予備能検査が一般の不妊治療でも保険適用に 専門家「妊活の目安に」

 結婚の高年齢化に伴い妊娠しにくくなり、不妊治療を受ける人が増えています。卵巣にどれくらい卵子が残っているかを示す卵巣予備能を測る「抗ミュラー管ホルモン(AMH)検査」が今年6月から一般の不妊治療でも保険適用になり、産婦人科医は「不妊治療をどこまで続けるか、方針決定がしやすくなる」と期待を寄せています。 

 女性の卵子は胎児の間に原始卵胞という形で数百万個がつくられ、出生後は減る一方となっています。卵巣の中で待機していた原始卵胞は、思春期以降、定期的に発育して卵子となって排卵されますが、卵巣の中にある特定の時期に分泌されるAMHの濃度を測定することで、卵子がどのくらい残っているかの目安となります。生理の周期などによって増減する卵胞刺激ホルモンとは異なり、卵巣機能を安定的に評価することができるとされます。

 AMH検査は血液を採取し測定しますが、従来は体外受精をする前提としてのみ、保険適用でした。産婦人科クリニックなどからの要望があり、一般的な不妊症の患者に対する卵巣機能の評価や治療方針の決定などに対し、6カ月間で1回に限り保険適用が決まりました。保険適用後のAMH検査の費用は、3割負担で1800円程度です。

 AMHの数値は20歳代で平均4台、30歳代で3〜1台、40歳代では1以下になるものの、個人差が大きいため、厳密なものではありません。だが、産婦人科医によると、AMH値が高いほど採卵できる数が多いといいます。

 保険適用に尽力した絹谷産婦人科(広島市)の絹谷正之院長は、「妊娠を希望する人にとって自分の妊娠可能な残り時間を早めに知ることがとても重要で、少子化対策にもつながると考える」と話しています。

 2024年10月15日(火)

🟪小中学生の体力調査、中学生男子はコロナ感染拡大前を上回る

 全国の小学5年生と中学2年生を対象に、50メートル走など8つの項目で体力や運動能力を調べる今年度の国の調査で、中学生の男子の合計点は新型コロナウイルスの感染拡大前を上回りました。一方で、小学生の男女は低下傾向にあり、スポーツ庁は運動の機会を増やす取り組みに力を入れていく方針で...