花王とアース製薬は29日、東南アジア向けに蚊よけの殺虫剤を共同で商品化したと発表しました。花王独自の界面活性剤の技術を活用し、蚊の羽の表面をぬらして飛べなくする製品を開発しました。まずタイで7月から販売します。蚊が媒介するデング熱の感染拡大の防止につなげます。
商品名は「アース モスシューター」。花王が開発した特殊な界面活性剤は、水をはじきやすい蚊の羽の表面をぬらすことができるといいます。最終的に「気門」と呼ばれる酸素を取り込む体の表面の穴を液剤で覆い、窒息させることで駆除します。
花王のタイの工場で製造し、主にアース製薬の持つ販路を通じて、スーパーや個人経営の商店など5万店で販売し、年間数億円の売上高を目指します。販売状況を見ながら段階的に取扱店舗や商品数を増やすほか、周辺国での販売も検討します。
東南アジアでは温暖化の影響もあり、重症化すると死亡する恐れもあるデング熱の感染が急速に拡大しています。世界保健機関(WHO)の推計によると、世界で年間3億9000万人が感染しており、タイやベトナム、マレーシアの感染者は2023年に前年の数倍に増えたもようです。
花王とアース製薬は、入浴剤やトイレ用洗剤などでは競合するライバル。花王の長谷部佳宏社長は29日の発表会で、「自社だけでの開発も検討したが、少しでも早く商品を出すために虫の研究に強いアース製薬と組むことにした」と説明しました。花王は2023年12月期まで5期連続で最終減益となりました。独自技術を生かした商品の開発に力を入れます。
レモングラス由来の殺虫成分を使ったのも新商品の特徴です。化学合成の殺虫成分の健康への影響を懸念して、東南アジアでは殺虫剤の使用を控える消費者もいるといいます。
アース製薬の川端克宜社長は、「小さな子を持つ家庭など化学成分を使わない殺虫剤へのニーズは高い」と話しています。タイは同社にとって東南アジアでの主戦場で、2023年の売上高は51億円、殺虫剤のシェアは2割弱の2位です。
デング熱対策では日本企業が存在感を示しており、武田薬品工業はインドでワクチン製造を始めます。
2024年2月29日(木)