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2022/07/28

🇮🇶アキレス腱前滑液包炎

アキレス腱の前部にある踵骨後部滑液包が炎症を起こし、痛みが生じる疾患

アキレス腱(けん)前滑液包炎とは、アキレス腱の前部(深部)にある踵骨(しょうこつ)後部滑液包が炎症を起こし、痛みが生じる疾患。踵骨後部滑液包炎、アルベルト病とも呼ばれます。

アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉と踵(かかと)の骨である踵骨をつないでいる腱です。滑液包は、皮膚と骨や腱の部分の間にある袋状の軟部組織で、ゼリー状の少量の滑膜が含まれています。滑液包の本来の役割は皮膚と骨や腱などが直接こすれ合うことを防止することですが、一定の動きにより摩擦が長期間続くと炎症を起こしていきます。

踵骨後部滑液包は踵の骨である踵骨にアキレス腱の前部(深部)が付着する部分にあり、この踵骨後部とアキレス腱の間にあってクッションの役割をする滑液包が炎症を起こすと、踵の後ろの部分がはれて硬く盛り上がり、押すと痛みが生じたり、靴を履いて歩くと痛むようになります。靴の着用や歩行が困難になることもあります。

足の裏のアーチを支えている足底筋膜に炎症が起こる足底筋膜炎と同様、扁平足(へんぺいそく)やハイアーチ(凹足)の人が、アキレス腱前滑液包炎を起こしやすいといわれています。扁平足は、土踏まずのくぼんだ部分がなくなって、起立時や歩行時に足の裏のアーチがつぶれ、足の裏全体が地面にくっ付く足です。ハイアーチは、足の甲が極端に高く、起立時や歩行時に土踏まずの部分が地面に接しない足です。

また、アキレス腱前滑液包炎は、踵骨後部滑液包が圧迫や摩擦を受けやすいパンプスやハイヒールなど踵の部分が固い靴を履いている人や、足関節の運動に伴うアキレス腱のオーバーユース(使いすぎ)を起こしやすい長距離走のランナーに起こることもあります。

アキレス腱前滑液包炎の検査と診断と治療

整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による診断では、踵骨後部でアキレス腱付着部前方の部分に圧痛があれば見当は付きますが、念のためX線(レントゲン)検査や超音波(エコー)検査を行います。超音波検査により、踵骨後部滑液包のはれなどを確認できることがあります。

整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による治療では、原因となった踵の後ろの部分に負担のかかるスポーツ活動があるなら中止し、通常、痛みを和らげる湿布が基本となります。

日常の歩行時に痛む場合は、踵を少し高くするヒールパッド(ヒールウエッジ)を靴に挿入して、靴の踵部分が患部に当たらないようにするか、圧迫や摩擦が少なく踵との適合性が高い靴と交換します。

痛みがひどい場合、再発を繰り返す場合は、患部にステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)と麻酔剤を注射したり、踵骨後部滑液包内を洗浄したりします。注射は踵骨後部滑液包のみに施すように注意する必要があり、アキレス腱への注射は腱の脆弱(ぜいじゃく)化または裂傷につながり、その後の断裂の素因となる可能性があります。

踵や足部の形状に異常があり、慢性化の傾向を示す場合は、滑液包と踵骨の隆起部分を切除する手術を行うこともあります。

🇮🇹アキレス腱断裂

かかとの上に位置している大きな腱が切れる外傷

 アキレス腱(けん)断裂とは、かかとの上に位置している大きな腱が切れる外傷。中年以降のスポーツ外傷として、比較的多いものとして知られています。

アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋(かたいさんとうきん)の腱部分で、かかとの骨である踵骨(しょうこつ)に付着しており、足首を足底側に曲げる働きをしています。急に駆け出す、ジャンプする、足関節に力を入れて伸ばすなどの際に、アキレス腱に曲がる力が加わると、バシッと音がして叩(たた)かれたような感じがし、断裂することがあります。

断裂すると、つま先を伸ばすことができず、足首が曲がったままの状態になります。足首の後ろで皮膚の上からアキレス腱に触れると、途切れて、くぼんでいるのがわかります。押すと痛みがあり、皮下出血を認めることもあります。ふくらはぎを握っても、足関節が伸びません。

部分断裂の場合は、足関節を伸ばして足底方向に曲げることはできますが、やはりアキレス腱の部分がくぼみ、十分に力が入らず、痛みがあります。

人口10万人に対して5〜40人程度の発生率で、近年は増加傾向にあります。特に30〜40歳代の男性に多く認められ、原因の80パーセント前後を占めているのはスポーツ外傷です。種目ではバドミントン、バレーボール、サッカー、テニスなどのレクリエーションスポーツが中心となっていて、バトミントンやテニスで前にダッシュした時や、バレーボールでジャンプして着地した時などに受傷します。

スポーツ外傷の場合、ストレッチング、ウォーミングアップの不足が原因と考えられますが、ストレッチを行っていたにもかかわらず断裂することもあり、一般的にアキレス腱断裂の基盤には腱の変性が存在すると考えられています。前兆の全くない人もいますが、断裂する前からアキレス腱に張りや痛みを感じている人も見受けられます。

応急処置として、足関節を曲げず、伸ばしたまま固定し、患部を冷やして、なるべく早く整形外科を受診します。

医師の診断では、特徴的な受傷時のエピソードに加え、くぼみの触知やトンプソンのテストが有用で、ほとんどの症例においてその場で確定が可能です。トンプソンのテストでは、腹ばいになって膝(ひざ)を伸ばして下腿の中央をつかむと、正常では足関節が足底に向かう運動が起こらないことを確かめます。

以上の条件が整えば診断は確定できますが、臨床所見の乏しい例や部分断裂の例では超音波検査やMRI検査を用います。

医師の治療には、アキレス腱をギプスや装具で固定して自然治癒を図る保存療法と、断裂したアキレス腱を縫合する手術療法があります。いずれにおいても、断裂後6カ月の時点での筋力測定の結果に有意差はなく、合併症の発現頻度はほぼ同じと考えられていますが、腱が癒着して歩けるようになるまで2カ月ほどかかります。

スポーツ選手の場合、再断裂の危険が少なく早期復帰が可能だとして、多くが手術療法を選択しています。ただし、感染や皮膚の縫合不全などの合併症が皆無でないため、最近では保存療法にさまざまな工夫を取り入れて、早期復帰を可能にし、スポーツ選手にも適応を広げている医療機関もあります。

予防法としては、スポーツ前にストレッチング、ウォーミングアップを十分に行うことです。特に寒い時期には、念入りに行うことです。

🇮🇱アキレス腱付着部炎

踵の骨の後上面のアキレス腱付着部に痛みが生じる疾患

アキレス腱(けん)付着部炎とは、アキレス腱と踵(かかと)の骨が付着している部位の周辺に痛みが現れる疾患。アキレス腱付着部症とも呼ばれます。

アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉である下腿三頭筋(かたいさんとうきん)とヒラメ筋の腱部分で、踵の骨である踵骨(しょうこつ)の後上面に付着しており、足首を足底側に曲げる働きを担っています。

アキレス腱付着部炎を発症すると、足首を上向きに曲げた際に特に強い痛みが生じます。進行すると、安静時にも痛みが続くようになります。また、踵の部分が深い靴を履くと、症状が悪化する場合があります。痛みを生じている部位がはれることもあります。

アキレス腱と踵骨が付着している部位には強い牽引(けんいん)力が慢性的に加わり、その少し上ではアキレス腱と骨が接しているため、互いに圧迫力を受けています。これらの力が繰り返し加わることで、アキレス腱付着部に炎症が起きて変性が生じ、痛みを起こします。病状の進行に伴って、肉芽形成、石灰化、骨化などの組織の変化が現れ、アキレス腱付着部に突き出た棘(とげ)状の骨が認められるようになったりします。

発症の切っ掛けは、踵骨や足の形の異常、仕事やスポーツなどによるアキレス腱の使いすぎ、ふくらはぎの筋肉の柔軟性低下、足に合っていない不適切な靴の利用などです。

階段を上り下りした時や走った時に踵に痛みが出る、あるいはアキレス腱付着部付近を押さえたり、つまんだ時に痛みが感じられる、歩行時に靴の踵の後ろを支える部分(ヒールカウンター)の上端より低い位置の踵後方に痛みが出るという人は、アキレス腱付着部炎を疑い、早目に整形外科、形成外科、ないし足の外科を受診することが勧められます。

アキレス腱付着部炎の検査と診断と治療

整形外科、形成外科、足の外科の医師による診断では、アキレス腱付着部を押さえた時の圧痛またはつまんだ時の把持痛が認められ、階段の上り下りや歩行、走行などでアキレス腱付着部に痛みが出ることが認められた場合で、踵骨の骨折やアキレス腱断裂が除外された場合に、アキレス腱付着部炎と判断します。

触診中に足関節を手で背屈させると、通常痛みは増悪します。X線(レントゲン)検査を行うと、アキレス腱付着部に突き出た棘状の骨がX線像に認められることもあります。

再発するアキレス腱付着部炎がある場合は、脊椎(せきつい)関節症によって引き起こされることがあるので、病歴を問診し、検査を行います。

整形外科、形成外科、足の外科の医師による治療では、症状の段階に応じて保存的治療、薬物療法、手術療法を行います。

保存的治療では、足の形に合った靴を履くようにしたり、足底挿板(中敷き)を靴の中に装着したりします。アキレス腱のストレッチも行います。

薬物療法では、痛みを柔らげるために、非ステロイド系消炎鎮痛薬の外用剤や経口剤を用います。痛みが非常に強い場合には、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の局所注射を行うこともありますが、アキレス腱の強度の低下や、アキレス腱断裂を招く恐れがあり注意が必要です。

手術療法では、重症でアキレス腱付着部が石灰化、骨化した場合に、アキレス腱が変形した部分や、踵骨の出っ張りの一部を除去します。最近では、内視鏡による手術が行われます。

🇬🇧悪性外耳道炎

外耳道の皮膚に緑膿菌が感染し、皮膚や周囲の軟部組織を進行性に侵す疾患

悪性外耳道(がいじどう)炎とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道の皮膚に、緑膿(りょくのう)菌が感染して炎症を起こし、皮膚や周囲の軟骨、骨などの軟部組織に壊死(えし)性変化を来す外耳道炎。

緑膿菌は、人、動物、土、水など自然界のあらゆるところに生息する常在細菌の一つであり、傷口に感染した際に、膿(うみ)の色がしばしば緑色であることから名付けられました。

健康な人ならば感染症を引き起こすことはほとんどありませんが、体の抵抗力が低下した人では肺炎や尿路感染症などを引き起こすことがあります。近年では、多数の抗生剤が効きにくい多剤耐性緑膿菌が発生し、問題になっています。

また、近年流行のネイルアートで、付け爪(ネイルチップ)をずっと付けていた際などに繁殖して、爪が緑色になるグリーンネイルの原因菌にもなっています。

この緑膿菌が感染して引き起こす悪性外耳道炎は、糖尿病を患っている人や、体の抵抗力が低下した高齢の人に起こります。糖尿病を患っている人は、血流が悪いためにさまざまな細胞の働きが低下しており、高齢の人と同様に体の抵抗力が低下した状態にあります。

特有の症状は、進行性の激しい耳痛、黄緑色をした膿性(のうせい)の耳垂れ(耳漏)、外耳道の肉芽(にくげ)、外耳道のはれ。疾患の広がりにより、中耳に及ぶと難聴が出現し、側頭骨の顔面神経管に及ぶと顔面神経まひが出現し、さらに頭蓋(ずがい)骨の底部に及ぶとさまざまな脳神経症状が加わります。

顔面神経まひの出現率は約50パーセントに、脳神経まひの出現率は約25パーセントに達します。

以前は、悪性外耳道炎はほとんど治らない疾患とされていました。今は、医学の進歩によって治る可能性が高まっていますが、それでも顔面神経まひや、難聴などの後遺症が出る可能性は否定できません。

耳垂れに、頑固な耳痛を伴えば、要注意です。まずは耳鼻咽喉(いんこう)科の専門医を受診することが勧められます

悪性外耳道炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、まず問診と視診を行います。問診では、耳の痛みの程度や、糖尿病の疾患を持っていないかを確認します。

顕微鏡やファイバースコープで拡大して観察する視診で、膿性の耳垂れ(耳漏)や外耳道の肉芽を確認した場合は、耳垂れの細菌学的検査を行います。緑膿菌の存在を確認したら、悪性外耳道炎であると特定できます。

X線(レントゲン)検査や、側頭骨CT(コンピュータ断層撮影)検査などを行い、外耳道周囲の軟骨、骨などの軟部組織の壊死性病変を調べることもあります。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、主に薬剤を投与し、壊死した組織を除去します。

薬剤投与は経口投与ではなく点滴投与が多い上に、後遺症などが残る可能性もあるため、基本的に入院治療を行います。起炎菌は大抵が緑膿菌なので、緑膿菌に有効なペニシリン系もしくはセフェム系抗生剤を主に点滴投与し、アミノグルコシド系抗生剤を加えることもあります。

壊死した組織の除去は、外耳道を中心とした局所の処置を行い、それでも症状が悪化する場合には、壊死した組織を徹底的に清掃する外科的に手術を行います。

糖尿病患者の場合は、入院中に血糖コントロールも行います。

🇾🇪悪性褐色細胞腫

主に副腎髄質に発生したがんが他の臓器に転移した疾患

悪性褐色細胞腫(しゅ)とは、副腎(ふくじん)髄質の細胞などから発生するまれな腫瘍(しゅよう)である褐色細胞腫のうち、悪性のもの。すべての褐色細胞腫のうち、悪性褐色細胞腫は1割と見なされています。

褐色細胞腫は、副腎髄質の細胞にできた腫瘍によって、自律神経に働くドーパミンやアドレナリン (エピネフリン) 、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)などのカテコールアミンが大量に分泌されて、高血圧を起こす疾患。若い人が、ひどい高血圧を起こすのは、この褐色細胞腫が原因のことがあります。

腫瘍は主として副腎髄質の細胞から発生しますが、時には、ほかの交感神経系のクロム親和性細胞からも発生します。脊髄(せきずい)に沿ったクロム親和性細胞は、重クロム酸カリウムを含む液で固定すると、褐色に染まる細胞をいいます。

褐色細胞腫の大部分の9割は良性で、1割が悪性で悪性褐色細胞腫に相当します。良性の褐色細胞腫と、がんである悪性褐色細胞腫の判断は非常に難しく、摘出した腫瘍を顕微鏡で詳しく検査してもわからないため、骨、肺、肝臓などへの転移巣の存在が認められた場合に悪性褐色細胞腫と判断されています。

褐色細胞腫の多くは明らかな原因もなく腫瘍が発生しますが、遺伝的に褐色細胞腫になりやすい家系もあります。

褐色細胞腫および悪性褐色細胞腫の症状としては、高血圧と糖尿病が起こります。高血圧は、発作的に起こる場合と持続的に血圧が高い場合とがあります。

発作的に起こる場合は、急に不安感、緊張感が起こり、強い動悸(どうき)やズキンズキンとした頭痛を感じ、脈が速くなり、手足が震え、瞳(ひとみ)が大きくなります。手足が冷たくなり、時には耳鳴り、吐き気、嘔吐(おうと)がみられます。

また、しばしば尿糖が出ます。発作は数分から1〜2時間、時には数日続くこともあります。まれに、心不全や出血の危険性が高まることもあります。

このようなはっきりした発作がなく、いつも血圧が高く、また糖尿病になっている場合もあります。

発作的な血圧上昇、動悸、頭痛などがしばしば起こる場合は、内科、内分泌内科、内分泌外科の専門医を受診してください。

悪性褐色細胞腫の検査と診断と治療

内科、内分泌内科、内分泌外科の医師による褐色細胞腫および悪性褐色細胞腫の診断では、血液および尿の中のアドレナリン (エピネフリン) 、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)などの高値により判断します。腫瘍を探すために、腹部CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、血管造影検査などの画像診断を行います。

家族歴などから、遺伝的要因が関係した褐色細胞腫が疑われた場合は、遺伝子の検査が望まれる場合があります。

最近では、特に症状はなく、人間ドックなどで副腎髄質に偶然腫瘍が発見され、精密検査の結果、褐色細胞腫と診断される例も増えています。副腎髄質の細胞や他のクロム親和性細胞以外の部位に転移した時には、悪性褐色細胞腫と判断します。

内科、内分泌内科、内分泌外科の医師による褐色細胞腫および悪性褐色細胞腫の治療では、降圧治療(α遮断薬やβ遮断薬)による高血圧のコントロールを十分に行った上で、手術による腫瘍摘出が原則です。褐色細胞腫は約1割に再発例があるので、手術治療の後も定期的なホルモン検査と画像検査を行うことが大切です。

悪性褐色細胞腫では、降圧治療(α遮断薬やβ遮断薬)に加えて、腫瘍の可能な範囲での摘出手術、抗がん剤による化学療法、放射性ヨウ素I131を標識としたメタヨードベンジルグアニジン(MIBG)という薬剤を用いたアイソトープ内照射療法などの治療を行います。しかし、現時点で悪性褐色細胞腫を根治可能な治療法はありません。

🇦🇩悪性関節リウマチ

関節リウマチの特殊型で、血管炎を伴って関節以外の臓器に障害がみられる疾患

悪性関節リウマチとは、関節リウマチの特殊型で、血管炎を伴って関節以外の臓器に障害がみられる疾患。

厚生労働省により特定疾患(難病)の一つに認定されており、医療費の補助が受けられます。

この悪性関節リウマチは、関節リウマチ全体の0・6パーセントにみられるといわれています。男女比は1:2で女性が多く、発症のピークの年齢は60歳代。関節リウマチよりもやや高齢、性別では関節リウマチよりも男性の占める割合が多い傾向にあります。

関節リウマチに長くかかっている人が発症することが多いと見なされています。もとの疾患の関節リウマチ同様に、原因は不明です。遺伝性疾患といえるほどの強い遺伝性はありません。 

関節リウマチにみられる関節症状に加え、発熱、体重減少などの全身症状と、血管炎に伴う関節以外の症状が現れます。血管炎は主に動脈の組織に起こり、ある臓器に栄養や酸素などを送っている動脈に血管炎が起こると、血流が途絶えて、その臓器に異常が現れます。

皮膚では、つめの縁にみられる点状梗塞巣(こうそくそう)、皮膚の潰瘍(かいよう)、手足の指の壊疽(えそ)、リウマトイド結節などがみられます。目では、上強膜炎、多発性単神経炎などが起こります。

胸膜炎、肺炎、肺線維症、心膜炎、腸間膜動脈の壊死(えし)、心筋梗塞(こうそく)などの内臓障害の危険もあり、致命的になる場合も少なくありません。

血管炎を伴い、心臓血管の病変、神経病変のある悪性関節リウマチは、治療がたいへん難しく、死亡率は43パーセントとされています。直接の死因としては、呼吸不全が最も多く、次いで感染症の合併、心不全、腎(じん)不全などが挙げられます。

悪性関節リウマチの検査と診断と治療

リウマチ科、整形外科、内科の医師による診断では、主に、血清中のリウマトイド因子という体の防御反応として作られた免疫グロブリンに対する自己抗体の有無を調べるリウマトイド因子(RF)検査、赤血球の沈降速度を測ることで炎症の強さを調べる血沈検査、血清中にタンパク質の一種が増えているかを測定することで炎症の度合いを調べるCRP(C-反応性タンパク)検査を行います。

検査成績では、リウマトイド因子が強陽性で、血沈やCRPの値が高いのに加えて、白血球数が増えたり、血清中の補体という異物細胞の攻撃にかかわる免疫系の1つの数値が下がることがあります。

血管炎が生じていることを確認するには、皮膚や臓器の一部をとって調べる生検を行うことがあります。 

リウマチ科、整形外科、内科の医師による治療では、全身の安静を保つような配慮が必要で、中等度以上の内臓の病変を伴う場合は、入院が必要です。

薬物治療も、普通の関節リウマチよりも強力な治療が必要で、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)が第一に用いられます。胸膜炎、心膜炎などがある場合には、ステロイド剤の1つであるプレドニゾロン換算で1日50~60mg、皮膚潰瘍、神経炎などに対しては1日30mg、上強膜炎などには1日15mgが目安になる使用量です。

D‐ペニシラミンなどの抗リウマチ剤も使用されますが、アザチオプリン、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤が必要な場合が多いようです。そのほか、血流の改善のために血管拡張剤、血液をサラサラに保つ血小板凝集抑制薬剤、プロスタグランジン製剤などが用いられます。ほかに、血漿(けっしょう)交換療法が効果的です。

🇦🇴悪性高血圧

急激に悪化し、腎不全、心不全などを起こして生命にかかわる重症の高血圧

 悪性高血圧とは、本態性高血圧などから急激に悪化し、合併症を併発して生命にかかわる重症の高血圧。悪性高血圧症、高血圧緊張症ともいいます。

高血圧は慢性の経過をたどる疾患で、合併症を起こすにしても、10年、20年といいう月日がかかるのが一般的です。ところが、悪性高血圧では2~3年のうちに、生命にかかわる腎(じん)不全、心不全、眼底出血、昏睡(こんすい)などの合併症を起こす場合があります。比較的若い30歳~50歳代の人に多くみられるのが特徴ですが、全体の高血圧の1パーセント未満にしかみられないまれな疾患とされます。

厚労省の研究班が作成した診断基準では、最低血圧が130mmHg以上あること、眼底検査で著しい出血や動脈硬化がみられ、眼底にある視神経の乳頭にうっ血がみられること、腎機能障害が急速に進み腎不全を示すこと、頭痛、嘔吐(おうと)、昏睡などの脳圧高進症状や心不全を伴うことが多い、などが悪性高血圧の特徴です。

悪性高血圧による腎機能障害では、急激な血圧の上昇によって血管が傷付き血栓ができてしまうことで、狭まった血管に血液の流れをよくしようと働き、さらに血圧を上昇させる悪循環が生じていきます。

悪性高血圧が進まないうちに適切な降圧治療を行わないでいると、失明したり生命にかかわるほど悪化する場合があるので、早期発見、早期治療が必要となってきます

悪性高血圧の検査と診断と治療

内科や循環器科の医師による診断では、眼底に蛋白(たんぱく)尿性網膜炎が見られる場合、つまり、眼底所見の第4度高血圧を悪性高血圧症と確定します。

内科や循環器科の医師による治療は、複数の強力な血管拡張剤を使用して血圧を下げます。その後は、腎硬化症の程度に準じて治療します。

昔は予後が悪く、1年か長くても2年で多くの人が死亡していましたが、現在では降圧剤療法によって第2度高血圧症程度に転化させられるようになり、予後は大変よくなりました。

🇦🇲悪性黒色腫

メラニンを作り出す皮膚細胞から発生するがん

悪性黒色腫(しゅ)とは、メラニンを作り出す皮膚細胞(メラニン細胞、メラノサイト)から発生するがん。メラノーマとも呼ばれ、俗に、ほくろのがんと呼ばれることもあります。

メラニン細胞は、色素を作り、皮膚の色を決める色素細胞です。日光がメラニン細胞を刺激すると、メラニンという皮膚の色を濃くする色素がたくさん作られて、悪性黒色腫を発生するリスクが高まります。

悪性黒色腫は最初、正常な皮膚に新しくできた小さな濃い色の皮膚の増殖性変化として現れます。多くの場合、日光にさらされる皮膚にできますが、もともとあったほくろに発生する場合もあります。体のほかの部位に非常に転移しやすく、転移した部位でも増殖を続けて組織を破壊します。また、悪性黒色腫は遺伝することがあります。

日本での悪性黒色腫の発症数は、人口10万人当たり1・5~2人くらいといわれ、年間1500~2000人くらい発症しています。白色人種の多い欧米では人口10万人当たり10数人以上で、オーストラリアは20数人以上の発症と世界一です。日本でも外国でも年々、発症数の増加傾向が認められています。

日本での悪性黒色腫による死亡者は、年間約450人。40歳以上になると発症が多くなり、60~70歳代が最も多くなっています。男女差はありません。

悪性黒色腫の外観は、さまざまです。平らで不規則な形の茶色の皮疹(ひしん)の中に黒い小さな点がある場合もあれば、盛り上がった茶色の皮疹の中に赤、白、黒、青などさまざまな色の点があるものもあります。黒か灰色の硬い塊ができることもあります。

その外観や色などによって、いくつかのタイプに分類されています。悪性黒子型は高齢者の顔などの露出部に色素斑が発生するタイプ、表在拡大型はやや盛り上がった不整型の色素斑が発生するタイプ、結節型は盛り上がるタイプ、末端黒子型は手や足から発生するタイプ、粘膜型は口腔(こうくう)や陰部などの粘膜に発生するタイプ、またメラニン欠乏性は色素を持たないので発見されにくいタイプです。

このようにいろいろなタイプがあるものの、それぞれに対応したよく似た良性腫瘍(しゅよう)が多数存在しています。悪性か良性かを一応判別する目安として、足の裏などのほくろの場合、一般に大きさが5ミリ以下であればほとんど心配はないが、7ミリ以上では要注意と考えられます。さらに、皮疹が数カ月以内に急速に大きくなったり、出血するようになったり、色調に異変などが認められた場合は、悪性化の兆候の可能性があるので、皮膚科の専門医を受診します。

悪性黒色腫の検査と診断と治療

皮膚科の医師による診断では、悪性黒色腫(メラノーマ)が疑われる場合に生検を行います。通常は色の濃い増殖部分全体を切除し、顕微鏡で病理学的に調べます。もし悪性黒色腫だった場合、がんが完全に切除されたかどうかを確認します。

一方、悪性黒色腫の周囲組織を切り取ると、がん細胞が刺激されて転移を起こすことが考えられるため、生検をせずに視診と触診で診断する医師もいます。

医師による治療は原則的に、悪性黒色腫の部位を外科手術によって円形に切除します。手術が成功するかどうかは、皮膚のどの程度の深さにまで悪性黒色腫が侵入しているかによって決まります。初期段階で最も浅い悪性黒色腫であれば、ほぼ100パーセントは手術で治りますので、周囲の皮膚を腫瘍(しゅよう)の縁から最低でも約1センチメートルは一緒に切除します。

皮膚の中に約0・8ミリメートル以上侵入している悪性黒色腫の場合、リンパ管と血管を通じて転移する可能性が非常に高くなります。転移した悪性黒色腫は致死的なものになることがしばしばあり、抗がん剤による化学療法を行いますが、治療の効果はあまりなく余命が9カ月を切る場合もあります。

とはいえ、このがんの進行の仕方には幅がありますし、発症者の体の免疫防御能によっても差がありますので、化学療法、インターフェロンによる免疫療法、および放射線療法などいろいろな手段を組み合わせた集学的治療を行い、たとえ悪性黒色腫が転移しても健康を保って何年も生存する人もいます。

一度、悪性黒色腫を発症した人は、再発するリスクが高くなります。そのため、発症者は毎年皮膚科で検査を受けるべきです。ほくろが多い人も、全身のほくろの検査を年に1回は受けるほうがよいでしょう。

悪性黒色腫をはじめ、その他の皮膚がんの発生数も年々増加傾向にあり、今まで紫外線に対する防御対策をしてこなかったことが増加の一因であると考えられます。海水浴やスポーツ、仕事などで長時間、過度の紫外線を受ける場合は、皮膚を紫外線から防御することが非常に大切です。日焼け止めクリームの使用、帽子や日傘の使用、長袖(ながそで)で腕を覆うなどの予防策があります。

🇦🇱悪性症候群

悪性症候群とは、向精神薬の重大な副作用。精神病の人が向精神薬を服用した際や服用量を増量した際に、高熱が続き、意識障害や筋硬直を起こすものです。シンドロームマリンとも呼ばれます。

麻酔薬の副作用として現れる悪性高熱症と症状が類似していますが、別の疾患です。

悪性症候群の原因は、向精神薬が神経に働き掛けるドーパミンの作用を抑えてしまうためと考えられ、ドーパミン作動薬の使用が試みられています。

また、抗パーキンソン病薬を継続して使用している際の急激な中止や減量でも、悪性症候群の症状が起こる場合があります。

症状としては、高熱、振戦(体の振るえ)、発汗、頻脈などの症状を特徴とし、放置すると時に高熱が持続し、意識障害、呼吸困難、循環虚脱、脱水症状、急性腎(じん)不全へと移行し、死に至ることがあります。

頻度はまれですが、発症した場合はすぐに的確な治療が必要となります。治療の基本は、向精神薬の場合は使用を中止すること、抗パーキンソン病薬の場合は使用を再開することです。

次に、水分と栄養の補給を図ることと、ダントローレンなどの治療薬の投与が必要です。重症な場合には、集中治療室などの利用も必要となります。

🇦🇷悪性線維性組織球腫

軟部組織と骨から発生する悪性腫瘍

悪性線維性組織球腫(しゅ)とは、軟部組織と骨から発生する悪性腫瘍(しゅよう)。最初は軟部組織に発生する腫瘍(しゅよう)として、この疾患名がつけられたのですが、その後、骨にも発生することが明らかとなり、骨の疾患としても悪性線維性組織球腫という腫瘍名がつけられています。

骨のがんである原発性悪性骨肉腫の中では、骨肉腫や軟骨肉腫、ユーイング肉腫の頻度が高く、悪性線維性組織球腫はそれらに比べると頻度が低くまれな疾患です。20歳代後半から発症頻度が増えてくることが知られていますが、比較的に高い年齢層によくみられる疾患で、50歳代に最も多く、以下40歳代、60歳代の順になっています。

発症の原因は明らかではありませんが、一部の発病者では遺伝子異常の関与も指摘されています。例えば、RB1遺伝子と呼ばれる遺伝子に生まれ付きの異常を有する人は、網膜芽細胞腫、平滑筋肉腫などと同様に、悪性線維性組織球腫を発症するリスクが高まることが知られています。

そのほかにも、治療で用いられた放射線の影響によって、悪性線維性組織球腫が発生することもあります。

軟部組織で発生しやすい部位は、手足、特に大腿(だいたい)部で、腹部臓器の周りである後腹膜や骨盤の周りなど体幹部にも発生します。多くは筋肉の中、あるいは筋肉と筋肉の間の筋間など体の深い部位に発生し、皮膚と筋肉の間の皮下組織といわれる体の表面に近い部位にも発生します。肺など体のほかの部位に転移することもあり、咳(せき)や呼吸困難などの呼吸器症状が出現する可能性もあります。

骨で発生しやすい部位は、大腿骨、上腕骨、脛(けい)骨などの長管骨と、骨盤。初期には、骨や関節がはれたり、その部位に痛みを感じたりすることがありますが、はれは数週間から数カ月の間に一気に大きくなるケースが多くみられます。また、骨が非常にもろくなって、本来では骨折を来さないほどの力が加わるだけで骨折を起こすこともあります。

この疾患が疑われる時には、がんセンターや大学病院など専門の施設での治療が必要です。

悪性線維性組織球腫の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、骨や関節にはれや痛みが出現した際には、X線(レントゲン)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、骨シンチグラム検査(アイソトープ検査)などの画像検査を行い、腫瘍の有無を確認します。悪性腫瘍が疑われる際には、組織の一部を採取して顕微鏡でその性状を調べる病理検査(生検9を行います。

同じような症状を引き起こす悪性腫瘍として骨肉腫や軟骨肉腫などさまざまなものがあるため、病理検査による鑑別診断は必須です。

悪性線維性組織球腫は、肺を中心に全身に転移する可能性があるため、全身への病気の広がりを評価するためにPETーCT検査などを行います。疾患の広がり具合に応じて、治療方針を決定します。

整形外科の医師による治療では、手術による腫瘍の切除が中心になります。良好な治療成績を得るためには、病変部位を完全に切除することが重要となります。非常に急速に増殖するため、大規模な手術となることも少なくありません。また、手足に再発した場合には、罹患した腕や脚を切断することも考慮されます。

なお、進行の程度によっては、化学療法や放射線療法といった治療が行われることもあります。疾患が見付かった時には、悪性の細胞が体中に広がっている可能性を考えて、全身に抗がん剤を投与する機会が増えています。しかし、発病者が高齢であるなど、抗がん剤の副作用が強く出てしまうことが予想される場合は、切除手術のみで様子をみることになります。

🇩🇿悪性軟部腫瘍

筋肉など体の軟部組織に発生する悪性腫瘍

悪性軟部腫瘍(しゅよう)とは、体の軟部組織から発生する悪性の腫瘍。軟部肉腫とも呼ばれます。

軟部組織あるいは軟部は、体の肺や肝臓などの実質臓器と支柱である骨や皮膚を除く、筋肉、脂肪、腱(けん)、血管、リンパ管、関節、神経などを含んでいます。悪性軟部腫瘍は、四肢、体幹、後腹膜、頭頸(とうけい)部など、体のいろいろな部位の軟部組織に発生します。

日本での発生率は10万人に2人くらいで、まれな腫瘍です。種類は多く、30種類以上あります。頻度の高い順に悪性線維性組織球腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫、線維肉腫、悪性神経鞘(しょう)腫、血管肉腫などがあります。

好発年齢は、悪性線維性組織球腫と平滑筋肉腫は高齢者に、脂肪肉腫と線維肉腫は多少中年に傾き、滑膜肉腫と悪性神経鞘腫は若年者に多いようです。小児の悪性軟部腫瘍の大部分は、横紋筋肉腫が占めています。男女別では、男女同数または男性にやや多い腫瘍が多数を占めていますが、平滑筋肉腫、滑膜肉腫などは女性に多いようです。

腫瘍の種類により、発生部位に違いがみられます。脂肪肉腫と悪性線維性組織球腫は特に大腿(だいたい)に多く、滑膜肉腫は大きな関節の近くに発生します。平滑筋肉腫は後腹膜や腸間膜に発生することが圧倒的に多く、横紋筋肉腫は頭頸部や膀胱(ぼうこう)の周囲に多く発生します。線維肉腫はいろいろな部位に発生しますが、比較的体幹に多くみられます。

症状としては、多くの場合、上肢、下肢の皮下や筋肉の中にしこりを触れます。これがピンポン玉大から握りこぶし大にもなったら要注意。ふつう痛みはありませんが、しこりの部分には熱感があります。

大腿など筋肉の厚い部位で、骨に近く深い部分に発生すると、しこりを触れることが難しく、大腿全体が大きくはれたようになっていることもあります。手足に発生した腫瘍が大きくなると、はれてきて関節が曲がらなくなったり、座れなくなったりすることもあります。

一部にはしこり自体に痛みがあったり、しこりが大きくなり神経を圧迫して痛みを伴うこともあります。また、皮膚に色が付いたり、潰瘍(かいよう)ができることもあります。

また、悪性軟部腫瘍には転移しやすいという特徴があり、転移の大部分は肺で、種類によってはリンパ節に起こります。

悪性軟部腫瘍の検査と診断と治療

悪性軟部腫瘍は難治性の腫瘍の一つであり、最初の治療の成否により予後に大きな差が出てきますので、疑わしい症状に気付いたら多少の地理的な不便があっても、がん専門病院の整形外科を受診します。

医師による診断では、まず視診と触診を行います。皮膚に治りにくい潰瘍ができているもの、腫瘍が深い部位に発生し硬いもの、腫瘍が5センチを超えるものは、悪性軟部腫瘍の可能性があります。その場合は、針を刺して組織の一部を取り出して調べる針生検を行ったり、CTやMRI、超音波、血管造影などの検査を行います。

肺の転移を調べるためには肺の断層撮影やCT、リンパ節転移やその他の転移を調べるためにはアイソトープを使った腫瘍シンチグラフィー(RI)などの検査を行います。同時に、1センチ角の組織を切開して病理組織学的に調べ、腫瘍の種類を判断します。

現在、悪性軟部腫瘍の治療の主体は、外科療法です。腫瘍を広範囲に切除すれば完全に除去できるため、上肢や下肢を切断する必要は少なくなっています。近年、腫瘍を大きく切除した後、別の部位の皮膚、筋肉、骨などを移植して再建したり、顕微鏡下で血管をつないだり、人工血管を移植したりする技術が進歩してきたためです。しかし、腫瘍が大きくなり血管や神経が侵された場合は、切断することもあります。

悪性度の高い腫瘍では、手術だけではなく、抗がん剤を用いる化学療法や、腫瘍を小さくする放射線療法、さらには電磁波を当てて温める温熱療法など、さまざまな治療を組み合わせて集学的治療を行います。従来、化学療法は副作用が強く、つらい治療の一つでしたが、最近は副作用を軽減する新しい薬剤や、いろいろな支援療法が行われています。

🇦🇪悪性貧血

赤血球を作る際に必要なビタミンB12や葉酸が欠乏するために起こる貧血

悪性貧血とは、赤血球を作る際に必要なビタミンB12や、ビタミンB群の一つである葉酸が欠乏するために起こる貧血。赤血球に成熟する前段階の赤芽球が増殖障害によって巨大化した巨赤芽球が骨髄中に認められるため、巨赤芽球性貧血とも呼ばれます。

かつては原因が不明で治療法がなかったため、死に至る疾患として恐れられて「悪性」と呼ばれていましたが、多くの医師や研究者が原因や治療法を突き止めようとビタミンや疾患の研究を重ねた結果、今では原因が解明されてビタミンB12や葉酸の注射で治すことができます。

ビタミンB12や葉酸は細胞の核内にあるDNAを合成するのに必要なもので、欠乏すると赤血球の産生の際に細胞の分裂、増殖がうまく進まず、赤血球が途中で死滅します。そして、骨髄中には赤血球に成熟できなかった巨赤芽球がたくさんたまってきます。赤血球は鉄分を材料にして体内で作られますが、たとえ十分な鉄分を食品から取っても、ビタミンB12や葉酸が不足していると正常な赤血球に成長しません。

ビタミンB12は赤芽球の増殖、正常な赤血球の産生のほか、上皮細胞、胃粘膜、神経細胞の成長にも関係しており、悪性貧血になると舌炎や委縮性胃炎、知覚障害も生じてきます。

ビタミンB12の欠乏は、うまく吸収されないことで起こります。ビタミンB12の吸収には、胃に存在する糖蛋白(たんぱく)の一種の内因子が必要で、この内因子自体が欠乏したり、腸内細菌や寄生虫によってビタミンB12が消費され尽くすことで起こります。

また、胃を手術で全部切除した場合は内因子が分泌されないので、手術後3~7年たってから悪性貧血が起こります。

そのため、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)を作る鉄分をしっかり摂取していても貧血が改善されないという人や、血液検査でヘモグロビンの生産量はあるのに赤血球数が少ないという人は、悪性貧血の疑いが考えられます。

食欲不振や消化不良など、鉄欠乏性貧血などほかの貧血でもみられる症状もありますが、悪性貧血の特徴としてみられるのは神経性の症状です。舌の炎症や口内炎、手足のしびれや皮膚の感覚まひから始まり、進行すると、手足がまひして動かしにくくなったり、排尿障害も現れます。排尿障害では尿意の感覚が鈍くなるほか、下痢、便秘、吐き気を繰り返しやすくなります。

さらに症状が進行すると、記憶力が低下し認知症になることもあります。悪性貧血での記憶障害や知能低下の症状は、早期に適切な治療を行えば回復しやすいのも特徴です。

医師による悪性貧血の診断では、まずビタミンB12欠乏か葉酸欠乏かを血液検査で調べ、続いて骨髄を調べて巨赤芽球が認められれば確定されます。

悪性貧血の治療法は、基本的に鉄欠乏性貧血と同じで、不足しているビタミンB12か葉酸を補給すれば治ります。ただし、ビタミンB12が不足している場合、いくら大量に摂取したとしても、胃に存在するビタミンB12の吸収を助ける内因子がなければ吸収はされません。内因子が欠乏している発症者には、ビタミンB12の錠剤を投与しても効果はなく、吸収に内因子を必要としない筋肉注射という方法が有効的です。

通常、ビタミンB12を1日当たり500~1000μg(マイクログラム)注射し、これを1週間続け、以後2~3カ月に1回投与することで、悪性貧血は完全に治ります。胃に内因子がない場合は、ビタミンB12の注射を一生続ける必要があります。高齢者で認知症などの症状が重い場合は、回復しないこともあります。

🌎悪性末梢神経鞘腫瘍

体幹や四肢など体中の末梢神経から発生する悪性腫瘍

悪性末梢神経鞘腫瘍(あくせいまっしょうしんけいしょうしゅよう)とは、体幹や四肢などを中心に体中あらゆる部位の末梢神経から発生する悪性腫瘍。

腫瘍が発生した部位に、しこりを触れることがあり、このしこりは時間経過とともに大きくなり、より腫瘍としてはっきりと認識されるようになります。また、腫瘍が神経を障害するために病変部位が痛んだり、しびれたりし、運動障害や感覚障害が生じたりすることもあります。高度の悪性腫瘍であり、しこりが5センチ以上の場合は生命予後が悪いとされています。

進行すると、病変が最初に発生した部位から、血液やリンパ液の流れに乗って肺や頭蓋内など他の臓器に移ることがあり、この現象を転移といいます。最も転移しやすい臓器は肺であり、大きくなってくると咳(せき)や呼吸困難、胸の痛み、血痰(けったん)などの症状が出現します。悪性度が高く、生命予後は悪化します。

この悪性末梢神経鞘腫瘍は、神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)と呼ばれる疾患に罹患していると、発症リスクが高くなります。その神経線維腫症1型は遺伝子異常により発症し、遺伝子異常を基盤として神経細胞が異常増殖を来すと、悪性末梢神経鞘腫瘍が生じることがあります。

また、悪性末梢神経鞘腫瘍は、こうした基礎疾患がない状況でも生じることがあります。

完全な発症原因は明らかにされていませんが、TP53と呼ばれる遺伝子異常を基盤として発症することも推定されています。そのほか、放射線の影響も考えられており、良性の神経鞘腫を放射線治療したことによって悪性化して生じることもあります。

悪性末梢神経鞘腫瘍は、30〜40歳代にかけて生じることが多いのですが、神経線維腫症1型が関係している場合はやや若い年齢層に生じます。

この疾患が疑われる時には、がんセンターや専門の大学病院での治療が必要です。

悪性末梢神経鞘腫瘍の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、病変部位における変化を詳細に評価するために、超音波(エコー)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、PETーCT検査といった画像検査を行います。

また、病理検査を行い、悪性末梢神経鞘腫瘍に特徴的な組織変化を観察します。病理検査とは、病変部位から組織を一部採取し、顕微鏡で詳細に観察する検査です。

神経線維腫症1型に罹患していると悪性末梢神経鞘腫瘍を発生することがあり、基本的には良性腫瘍のしこりが今までと違って急に大きくなってきた時は、悪性末梢神経鞘腫瘍を疑います。

整形外科、神経内科の医師による治療では、手術により腫瘍を完全に摘出することを第一の目標とします。病変の広がりに応じて、放射線療法や化学療法が選択されることもありますが、必ずしも効果は十分ではありません。

腫瘍を放置すると巨大になり、また肺などに転移しますので、手足を動かす神経の機能を犠牲にしても腫瘍を取り切り、予後が極めて不良となる再発を少なくするようにします。頭皮など浅い部分から表面に盛り上がっている腫瘍は完全に摘出できて治ることがあります。しかし、大きな腫瘍では周囲の軟部組織、神経組織を巻き込んで浸潤していますので、完全に摘出することは不可能となります。

悪性末梢神経鞘腫瘍の5年生存率はおよそ50%前後で、現在でも治療の難しい疾患の一つです。

🗽悪性リンパ腫(しゅ)

リンパ組織の細胞が悪性化して全身の臓器を侵す疾患

悪性リンパ腫(しゅ)とは、全身に広がっているリンパ組織内の細胞が悪性化し、次第に全身の臓器を侵していく疾患。ホジキンリンパ腫と、それ以外の非ホジキンリンパ腫に大別されますが、互いに似た経過をたどります。

ホジキンリンパ腫はホジキンという人が最初に報告したもので、非ホジキンリンパ腫にはT細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫があります。

悪性リンパ腫の原因は白血病と同様に、ウイルス、化学物質、放射線など、いろいろの因子が関連していると考えられていますが、詳しいことはまだ解明されていません。

悪性リンパ腫の発生率は、人口10万人に対して男性約9人、女性約6人と白血病より高率です。日本人の場合、悪性リンパ腫のうち90パーセント程度が非ホジキンリンパ腫で、年齢では50歳代から次第に増加します。

症状の多くは、リンパ節のはれから始まります。痛みがないために、気が付いた時にはかなり大きくなり、また、いろいろなところのリンパ節が同時にはれてくることもあります。口の中の扁桃(へんとう)を含む部分がはれると、呼吸がしにくい、のどがつかえるなどの局所症状が現れます。

全身症状としては、発熱、全身の倦怠(けんたい)感、体重減少、寝汗などがあります。ホジキンリンパ腫では、38度を超える高熱、全身のかゆみが現れることもあります。

悪性リンパ腫の検査と診断と治療

リンパ節を手術によって切り取り、顕微鏡で組織学的に検査します。そして、病巣が限られたところだけにある限局型か、全身に広がっている全身型かを診断します。限局型と全身型とでは、治療方針が異なるためです。

また、ホジキンリンパ腫と、リンパ肉腫や細網肉腫など多数がある非ホジキン肉腫では、治療法が異なります。

ホジキンリンパ腫の限局型では、放射線療法を行い、同時あるいは引き続いて、化学療法を行います。その理由は、全身に広がっているかもしれない病巣を根絶して治すためです。この治療で、大部分が5年以上生存します。

ホジキンリンパ腫の全身型では、化学療法を行います。近年は、70パーセント以上の症例で、一時的に正常な状態となる寛解(かんかい)となり、その半数以上が10年再発することなく生存できます。

非ホジキンリンパ腫の限局型では、ホジキンリンパ腫と同様に放射線療法を行いますが、限局型にみえても、実際には全身的に病巣が広がっていることが多いため、化学療法が不可欠です。放射線療法と化学療法を併用して行った場合、70パーセント以上の症例で長期生存が得られます。

非ホジキンリンパ腫の全身型では、強力な化学療法を行うことにより、60〜80パーセントに寛解が得られ、2年以上寛解を継続した症例では長期生存が期待できます。

非ホジキンリンパ腫のB細胞リンパ腫に関しては、リツキサンが開発され、治療戦略が大きく変わりました。B細胞リンパ腫の90パーセント以上の症例に発現しているCDー20抗原と特異的に結合する抗モノクロナール抗体のリツキサンは、前治療がある症例に単剤で治療しても30パーセント以上の奏効率を示し、この抗体と化学療法を併用すると非常に高率で完全寛解が得られています。特に、高齢者に対しては、リツキサンと化学療法の併用が第1選択となりました。

化学療法に耐性が生じた症例と、完全寛解後に再発した症例に対しては、自家造血幹細胞移植と組み合わせた大量化学療法が効果的です。自家造血幹細胞移植では、自己の骨髄または末梢(まっしょう)血幹細胞を移植します。

🇺🇸アクロコルドン

首や胸、わきの下などにできる細かい、いぼ状の良性腫瘍

アクロコルドンとは、首や胸、わきの下などにできる細かい、いぼ状の良性の腫瘍(しゅよう)。スキンタッグとも呼ばれます。

感染性はなく、皮膚の老化や体質でできるもので、中年以降に多く発生し加齢とともに増えてきますが、早ければ思春期のころから見られます。肥満者、特に更年期を過ぎた女性に好発します。

首、胸、わきの下、鼠径(そけい)部、しりなどの摩擦を受ける個所で、皮膚の角質が増殖して少し飛び出すために、直径1~3ミリの軟らかい腫瘍ができます。中には5ミリを超える大きい腫瘍ができることもあります。

一つだけできる場合も、数え切れないくらいたくさんできる場合もありますます。色は、肌色から褐色調、黒色調のものがあります。

首やわきの下など多発するものをアクロコルドンないしスキンタッグ、体幹に単発するものや直径約1センチの大きなものを軟性線維腫(しゅ)ないし線維性軟疣(なんゆう)、これがさらに巨大になり皮膚面から垂れ下がるようになったものを懸垂性線維腫と呼んで、厳密には区別することもあります。

腫瘍は線維や脂肪からできていて、皮膚が盛り上がったり垂れ下がったりするものの、痛みやかゆみはありません。かゆみがある場合も軽度です。

がん化するなど特に心配な疾患ではありませんが、衣類やアクセサリーでこすれて炎症を起こすことがあります。年齢とともに徐々に増大するため、年を取ると目立ってきます。

目立って外見が悪い、衣服の脱着時に引っ掛かって出血するという場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師を受診することが勧められます。

アクロコルドンの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による診断では、特に検査は行いません。

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による治療では、塗り薬や食生活の改善で完治させるのは難しいため、一般的には、小さいものならば、麻酔シートを張ってから電気メスで焼灼(しょうしゃく)します。中程度の大きさのものは、まず-200℃近い超低温の液体窒素で冷凍凝固して小さくした後、電気メスで焼灼します。大きいものは、メスで除去します。

腫瘍の数が多い場合は、液体窒素療法を何度か繰り返します。1~2週間後に、かさぶたになります。かさぶたはかなり色が濃く、治療後はかなり目立つこともありますが、自然に脱落し、半年くらいすると赤みもひいて、きれいになります。

日常生活でできるアクロコルドンを作らない心掛けとしては、首にも一年中日焼け止めを塗る、首も顔同様のスキンケアをする、首に密着するネックレスは極力つけない、首回りに刺激を与える服は避けるなどが挙げられます。

🇦🇫アクロメガリー

骨の発育が止まった後に、脳下垂体から成長ホルモンが過剰分泌されて起こる疾患

アクロメガリーとは、脳下垂体から成長ホルモンが過剰に分泌されるために起こる疾患。先端巨大症、末端肥大症とも呼ばれます。

このアクロメガリーは、骨の末端部分の骨端線が閉鎖して骨の発育が止まった後、すなわち思春期が終了した後に起こります。一方、骨端線が閉鎖する前の発育期に、脳下垂体から成長ホルモンが過剰に分泌されると、巨人症(ジャイアンティズム)が起こります。アクロメガリー、巨人症とも大部分は、脳下垂体に腫瘍(しゅよう)ができ、そこから成長ホルモンが過剰に分泌された場合に起こります。

脳下垂体に成長ホルモンを作る腫瘍が生じる原因ははっきりわかってはいませんが、もともと成長ホルモンを作っている細胞が腫瘍化して、成長ホルモンを過剰に産生、分泌するようになるとの考えがあります。膵臓(すいぞう)や肺に、まれに発生する特定の腫瘍でもホルモンが産生され、脳下垂体を刺激して過剰な成長ホルモンが作られこともあります。

アクロメガリーは多くの場合、骨の発育が止まって長い年月が経過した30〜50歳で発症します。発症すると、手足が大きくなり、特有な顔や体形を示します。普通、少しずつ変化が生じるために、自分や周囲の人が気付くころにはかなり進んでいることも多いようです。

手足が大きくなるために、より大きいサイズの指輪、手袋、靴、帽子が必要になります。あごの骨の成長過剰で、あごが突き出ます。声帯の軟骨が厚くなるため声は太く、かすれます。肋骨(ろっこつ)が肥厚すると、樽(たる)のように胸板が厚くなります。関節の痛みがあり、長年経過してから体が不自由になる変形性関節炎になることがあります。

舌は肥大して、溝ができます。体毛は硬く濃くなり、皮膚の肥厚で増加します。皮膚の皮脂腺(せん)と汗腺は肥大し、大量の発汗と不快な体臭を発します。心臓が肥大し、機能が著しく損なわれると、心不全を起こすことがあります。時には、肥大した組織が神経を圧迫し、腕や脚に不快な感触や脱力感を覚えます。目から脳へ情報を伝える神経も圧迫されることがあり、視覚、特に視野の外側が損なわれます。脳が圧迫されると、ひどい頭痛が生じることがあります。

そのほか、性機能の低下、女性の場合は無月経などの症状を生じることもあります。また、糖尿病や高血圧症で治療中の人の中に発見されることもあります。

アクロメガリーでは腸のポリープ、悪性腫瘍、糖尿病、心血管系の合併症が多くみられ、そのまま放置しておくことは危険なので、早期に治療が必要です。 内科ないし内分泌科の専門医の診察を受けて下さい。

アクロメガリーの検査と診断と治療

内科、内分泌科の医師による診断は、症状、血中ホルモンの測定、および画像検査により行われます。検査では、まず血中の成長ホルモンを測ります。ブドウ糖液を飲んで、血中の成長ホルモンを測定する検査も行われます。

血中の成長ホルモンは正常者ではブドウ糖により低下しますが、アクロメガリーでは低下が認められません。また、血中の成長ホルモンは分泌が不規則なために、最近は、成長ホルモンにより作られるインスリン様成長因子(IGF―I)というホルモンの信頼性が高いといわれており、診断のために測定されています。

画像検査として、X線写真で骨や軟部組織の肥厚の評価をし、MRI(磁気共鳴画像撮影)やCT(コンピュータ断層撮影)で脳下垂体の腫瘍を見付けることも重要です。

内科、内分泌科の医師による治療は、第一に手術が考慮されます。鼻腔(びくう)から脳下垂体と接している骨を削り、脳下垂体の腫瘍を摘出する方法が一般的に行われています。腫瘍が小さいと完治させることも可能ですが、大きい場合や周囲に広がっている場合は、完全に取り除くことは難しくなります。

その場合は、放射線や薬による追加治療が行われます。コバルトやリニアックを照射する放射線治療では、効果が出るまでに数年かかり、ほかの脳下垂体ホルモンの分泌が低下することがあります。

薬による治療でも、時にはブロモクリプチンなどのドーパミン作用薬が有効で、錠剤を服用することで成長ホルモンの量を減らせます。最も有効なのは、成長ホルモンの産生と分泌を正常に遮断するソマトスタチン系のホルモンの皮下注射です。注射薬にはオクトレオチドや、持続型インスリンアナログもあり、1カ月に1回程度の投与ですみます。

これらの薬で治癒するわけではありませんが、使用し続けている限り、多くの人でアクロメガリーを制御する効果があります。

🇦🇿あざ

皮膚の一部分に色調や形状の異常が現れる状態

皮膚の一部分に色調や形状の異常が現れる状態。医学的には母斑(ぼはん)と呼ばれます。

あざはさまざまなタイプに分けられますが、一般的には、その皮膚の一部分の色によって、赤あざ、青あざ、茶あざ、黒あざなどに分けられます。

赤あざは、局所的な毛細血管の拡張や増殖によって起こり、内部の血液によって皮膚表面が赤く見えるタイプで、血管腫(しゅ)とも呼ばれます。

青あざは、皮膚のやや深い部分の真皮にメラニン色素を産生する色素細胞(メラノサイト)が増えるために起こり、発生する部位や症状により蒙古(もうこ)斑、太田母斑などに分けられます。

茶あざは、皮膚の表面の表皮のメラニン色素が増加した状態で、扁平(へんぺい)母斑、思春期ごろに生じるベッカー母斑などに分けられます。

黒あざは、一般にほくろ(黒子)といわれるタイプで、メラニン色素を産生する色素細胞(メラノサイト)が変化した母斑細胞からなる良性腫瘍(しゅよう)です。医学的には、色素性母斑と呼ばれます。

皮膚の毛細血管の増殖、拡張でできる血管腫

血管腫は、真皮および皮下組織の中にある毛細血管の増殖、拡張を主としてできる母斑。内部の血液によって皮膚表面は赤く見えるので、赤あざとも呼ばれます。

異常を示す血管のある部位と、血管の構造の違いにより、いろいろの型があります。代表的なものは、ポートワイン母斑(単純性血管腫)、正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑、苺(いちご)状血管腫(ストロベリーマーク)です。

ポートワイン母斑(単純性血管腫)は、赤ブドウ酒色をした皮膚と同じ高さの平らで、境界が鮮明な斑点です。普通は出生時からあって、その後、拡大することも、自然に消えることもありません。加齢とともに少し膨らみ、いぼ様の隆起が出現することもあります。

この母斑は、真皮の上の部分の毛細血管の拡張、充血の結果できるものです。多くは、美容的な問題があるだけであり、放置してもかまいません。ただし、この型の大きな血管腫が顔の片側にある時は、スタージ・ウェーバー症候群といって、眼球や脳の中に血管腫が合併することがあります。

また、片側の腕や下肢に大きな血管腫がある時は、クリッペル・ウェーバー症候群といって、その部分の筋肉や骨の肥大などの合併症がある場合があるので、注意が必要です。

正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑は、乳幼児の顔、後頭部の正中線に沿ってみられる、淡紅色ないし暗赤色の毛細血管の拡張した赤い斑点です。額、眉間(みけん)、上まぶたにあるものを正中線母斑、またはサーモンパッチといい、1歳から3歳までの間に自然に消退するものの、完全ではありません。

また、うなじから後頭部にみられるものをウンナ母斑といい、消退するのに時間がややかかり、また一生消えない場合もあります。 

苺状血管腫(ストロベリーマーク)は、出生時より、または生後間もなく出現する赤色、ないし暗赤色の軟らかい小腫瘤(しゅりゅう)で、表面が苺の実のように粒々しています。

出生後、半年から2年までは急速に増大して、大きいものでは鶏卵大以上の大きなしこりになることもあるものの、5~6歳ころまでには完全に消失します。このあざは、真皮内に未熟な血管がたくさん増殖するためにできるものです。

自然に治るので慌てて治療する必要はありませんが、未熟な血管の集団があるため、外傷を受けるとなかなか出血が止まらないことがあるので、注意が必要です。出血した時には、清潔なタオルかガーゼで十分に圧迫して、出血が止まるまで押さえておく必要があります。

血管腫を早期に的確に診断することは、必ずしも簡単ではありません。皮膚科専門医を受診して、診断を確定するとともに、治療法についても相談することが勧められます。

新生児の尻や腰、背中の下部に青い染みが現れる蒙古斑

蒙古斑は、生後1週から1カ月ころまでに、新生児の尻(しり)や腰、背中の下部に現れる青い染み。

胎生期に皮膚の深い部分の真皮に生じたメラノサイト(メラニン細胞、メラニン形成細胞、色素細胞)の残存と考えられています。通常は表皮にあって、メラニンという皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイトが、表皮に出ていけずに真皮にとどまって増殖しているために、青い染みに見えてしまうのです。

日本人の新生児の9割にみられ、誰でも知っているあざの一種ですが、濃淡には個人差があります。多くは中心が濃くて、境界線付近は薄くはっきりしていません。境界線もはっきりして、ほくろのように濃い蒙古斑もあります。小さいとほくろのようですが、蒙古斑は隆起がないのが特徴です。

この蒙古斑は生後2歳ころまでには青色調が強くなり、その後は徐々に薄くなって、5、6歳までには、遅くとも10歳前後までには自然に消失し、さほど問題にはなりません。

まれに、尻などの通常の部位以外の手足や顔、腹部、背中の上部、胸などにも、青みを帯びた黒色調の蒙古斑が見られることがあります。これは異所性蒙古斑に相当し、通常の蒙古斑よりも消えにくい特徴があります。

といっても、異所性蒙古斑の大半は学童期までに消失することが多く、蒙古斑同様に治療の必要はありません。中には、青い染みが学童期になっても残る場合があります。しかし、その大半は成人期までに消えることが多く、放置しておいてもかまいません。

なかなか消えない異所性蒙古斑が衣服に隠れない露出部などに現れている場合は、子供が気にしてしまうケースもあり、外見的コンプレックスになることがあります。いくつかの側面から考えて、治療の対象にするべきか、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科の医師と対処を考えることが勧められます。

なかなか消えない青いあざの中には、まれに異所性蒙古斑ではなく、青色母斑であることもあります。この青色母斑の中でも細胞増殖型と呼ばれるものは、幼少時に異所性蒙古斑と区別がつかないこともあり、悪性化することもあって治療法も異なるため、通常の部位以外にみられる青いあざは時々専門医の診察を受けることも必要でしょう。

褐青色の色素斑が、まぶたから額、頬にかけてできる太田母斑

太田母斑とは、片側のまぶたから額、頬(ほお)にかけてできる、境界の不明瞭な褐青色の色素斑。眼上顎部(がんじょうがくぶ)褐青色母斑とも呼ばれます。

この太田母斑は、詩人や作家としてのペンネーム木下杢太郎(もくたろう)でも知られる皮膚科の医学者・太田正雄東大教授が、1939年(昭和14年)に初めて報告した疾患で、日本人など東洋人に比較的多くみられます。

通常は顔の片側に色素斑ができますが、両側にできる場合もあります。また、生後間もなく色素斑ができる早発型と、小児期や思春期に色素斑ができて徐々に拡大する遅発型の2種類があります。

さらに、色素斑は顔面の皮膚だけでなく、眼球結膜や口の粘膜、鼓膜にできることがあります。

色素斑は、三叉(さんさ)神経の第1・第2枝の支配領域にみられ、青みを帯びた色素斑の中に褐色調の小さな斑点が散在した状態で現れます。皮膚の表面は滑らかで、盛り上がったりしません。

原因は、メラノサイト(メラニン細胞、メラニン形成細胞、色素細胞)にあります。通常は表皮にあって、メラニンという皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイトが、深い部分の真皮の上層に存在し増殖しているために、皮膚が褐青色に見えてしまいます。

色素斑が拡大したり、色調が濃くなったりすることもあり、自然に消えることはありませんが、悪性化を心配することもありません。

なお、同様の色素斑が肩から上腕に見られることがあり、これは伊藤母斑と呼ばれます。

本人が特に気にしなければ、太田母斑の治療の必要はありません。見た目が気になるようなら、カバーマークによる化粧で色を隠すのも選択肢の一つですが、皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診し色素斑を除去することも勧められます。

体のさまざまな部位に茶色の平らなあざが生じる扁平母斑

扁平母斑とは、先天的もしくは後天的に、顔面および四肢、体幹の体表面に生じる淡褐色から褐色の平らなあざ。いわゆる茶あざで、カフェオレ斑とも、カフェオレ・スポットとも呼ばれます。

ほくろのように、皮膚から盛り上がることはありません。そのために、盛り上がりのないあざという意味で、扁平母斑と呼ばれています。また、コーヒーのような黒さでなく、ミルクコーヒーに似た色のあざという意味で、カフェオレ班、カフェオレ・スポットと呼ばれます。

色素細胞(メラノサイト)の機能高進により、表皮基底層でメラニン色素が増加するために、扁平母斑が生じます。大きさや形はさまざまで、類円形から紡錘形、辺縁がギザギザした不正型の小さいあざが多数集まっていたり、面状に分布する比較的均一な大きいあざであったりします。淡褐色から褐色のあざの中に、直径1ミリ程度の小さな黒色から黒褐色の点状色素斑が多数混在することもあります。

ほとんど、生まれ付きに存在するか幼児期に発生しますが、思春期になって発生する場合もあり、遅発性扁平母斑とも呼ばれます。

思春期になって発生する場合には、毛が同時に生えてくることが多く見られ、ベッカー母斑と呼ばれています。特に男性の肩甲部や胸部の片側に、少し濃い発毛を伴うベッカー母斑も発生します。海水浴や強い日光にさらされた後などに、ベッカー母斑が現れることもあります。

先天性、遅発性の扁平母斑とも通常、悪性化することはありません。

しかし、生まれた時から丸い扁平母斑が6個以上ある場合には、神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)のこともあります。神経、目、骨など皮膚以外の場所にも症状が出てくる可能性がある症候群で、早めに総合病院の皮膚科を受診したほうがよいでしょう。

扁平母斑は、多少の色の変化はありますが、自然に消えるあざではありません。色が淡褐色で、肌と違和感が少ないため気にならなければ、強いて治療する必要はありません。顔や腕など、肌の露出部にあって気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科を受診することが勧められます。

思春期前後になってから肩などに生じる褐色調のあざで、発毛を伴うこともあるベッカー母斑

ベッカー母斑とは、思春期前後になってから、肩や胸などに生じる比較的大きな褐色調のあざ。

いわゆる茶あざの一種で、先天的もしくは後天的に、顔面および四肢、体幹の体表面に生じる淡褐色から褐色の平らなあざである扁平母斑に類似しており、色素細胞(メラノサイト)の機能高進により、表皮基底層でメラニン色素が増加するために、ベッカー母斑が生じます。

多くは、体の片側に10~20セント前後の大きさで出現します。周囲の正常な皮膚との境界がはっきりしており、表面はザラザラとしています。好発部位は、肩、胸、背中、上腕など体幹と四肢の境界部。

女性よりもやや男性に多く、過半数に少し濃い発毛を伴うという点が特徴といえます。あざの部分に、髪の毛くらいの太さの毛が密に生えることもあります。皮膚から盛り上がることはありません。

発毛を伴う場合は、毛包という毛を包んでいる組織に、メラニン色素を作る色素細胞も入っています。

海水浴や強い日光にさらされた後などに、ベッカー母斑が現れることもあります。通常、悪性化することはありません。

ベッカー母斑は、多少の色の変化はありますが、自然に消えるあざではありません。色が淡褐色で、肌と違和感が少ないため気にならなければ、強いて治療する必要はありません。気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科を受診することが勧められます。

皮膚のすべての部位に黒色の色素斑ができる色素性母斑

色素性母斑とは、皮膚のすべての部位にできる褐色から青黒色、あるいは黒色の色素斑。母斑細胞性母斑とも呼ばれます。

母斑というのは、皮膚の部分的な奇形のことです。その皮膚の奇形というのは、皮膚の成分の一部が遺伝的素因により、異常に発育、増殖した状態をいいます。この場合、生まれた時からあるものもあるし、生後数年、あるいは数十年後に初めて出てくることもあります。

母斑の代表的なものが、この色素性母斑です。色素性母斑の大きさは大小いろいろで、皮膚と同じ高さのものから、半球状に隆起したものまであります。

色素性母斑の一番小さい型が、いわゆるほくろ(黒子)です。つまり、点状の小さく黒い色素斑や、小豆大の半球状に隆起した黒い小さな結節。顔や全身にあり、小さい時から次第に数は増加し、古くなると色が自然に消えることもありますが、大きさは次第に増大します。

比較的大きな色素性母斑は、いわゆる黒あざです。生れ付きあることが多く、その多くは皮膚と同じ高さで、表面に黒い毛が生えていることもあります。

時には、広い範囲に生じて、先天性巨大色素性母斑と呼ばれます。まれには、全身に大小の黒褐色色素斑が多発し、その上に剛毛が密生し、その外見から獣皮様母斑と呼ばれる場合もあります。この型の母斑は、脳を始め全身の神経組織の色素異常を伴うこともあり、神経皮膚黒色症と呼ばれ、悪性黒色腫ができやすい型です。

時には、まぶたの上、下に母斑が分かれている場合もあり、分離母斑と呼ばれます。胎生期のまぶたが分離する前から母斑があった場合に、分離母斑はみられます。

色素性母斑の本態は、メラノサイト(色素細胞)となるべき細胞が表皮や真皮の境界部で、異常に増加したものです。この増殖した細胞を母斑細胞と呼びます。一般的には、母斑細胞の活性は出生後はなくなっていますが、時には残っていることがあります。この活性が非常に高進してくると、ほくろのがんといわれる悪性黒色腫に移る危険性があります。

特に、成人以降に足の裏や手のひらに急に黒あざができて、色や大きさの変化が激しい場合、色の濃淡が強い場合、母斑の境界がはっきりしない場合などは、たとえ小さくても悪性黒色腫の可能性もあるので、早めに受診します。生まれ付きの大きい黒あざも、生後早めに医師と相談します。

あざの検査と診断と治療

血管腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科の医師は通常、見た目と経過から診断します。スタージ・ウェーバー症候群やクリッペル・ウェーバー症候群が疑われる場合には、画像検査などが必要になります。

ポートワイン母斑(単純性血管腫)に対しては、パルス色素レーザー治療が第一選択です。薄いあざなので、手術をすると残った傷が目立つためです。レーザー治療の効果の程度は病変の深さによって違いますが、傷を残さずにほとんどの赤あざを消退させることができます。乳幼児期から開始する早期治療が、有効です。

カバーマークによる化粧で色を隠すのも、選択肢の一つです。

顔面の正中線母斑(サーモンパッチ)は、自然に消えていく場合が多いので、治療せずに経過をみます。完全に消えない場合には、露出部位のあざなので、パルス色素レーザー治療が勧められます。ウンナ母斑は、髪に隠れて目立たない部位に生じるので、ほとんど治療しません。

苺状血管腫(ストロベリーマーク)は自然に消えていくので、特に合併症の危険がない大部分のものは無治療で経過をみて差し支えありません。ただし、まぶたに生じ、目をふさいでしまうようになったものや気道をふさぐものなどは早急な治療が必要です。

即効的な治療として、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の大量投与が行われます。効果が不十分な場合には、インターフェロンαの連日皮下注射が行われる場合もあります。これらの治療は効果的ですが、いずれも重い副作用を生じる可能性があります。

単に色調だけを自然経過よりも早期に淡くしたい場合には、パルス色素レーザー治療を行います。この治療は副作用が少ないのですが、こぶを小さくする効果は期待できません。こぶを縮小するためには、内部にヤグレーザーを照射します。

蒙古斑、異所性蒙古斑、青色母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科の医師による診断では、特徴的な色素斑なので、ほとんどは見ただけで診断はつきます。細胞増殖型青色母斑の確定診断は、切除した小結節を顕微鏡を用いて病理組織検査することでつきます。

細胞増殖型青色母斑が疑われる場合は、リンパ節転移を起こすことがあるため、CT(コンピュータ断層撮影)検査やシンチグラム検査(RI検査、アイソトープ検査)といった全身の検査も行う必要があります。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、通常の蒙古斑の場合、ほとんどが自然に消えるのでそのまま経過をみます。異所性蒙古斑の場合は、悪性化の心配はほとんどないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザーにより、あざを除去します。

Qスイッチレーザーには、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザーなどがあり、レーザーの種類により多少の効果や経過の違いがみられます。特定のレーザー光線を患部に照射すると、皮膚の中にあるメラニン色素に対してのみ反応するため、周辺の正常な皮膚組織へのダメージを極力抑えながら、あざの元になっているメラニン色素だけを破壊することができます。

いずれのレーザー治療も痛みを伴うため、麻酔シール、注射などを使用して痛みの緩和を行います。治療対象となる異所性蒙古斑の色が濃く、範囲が広い場合、1~2回程度のレーザー照射では終わらない場合もあります。

異所性蒙古斑の治療の難しさは、治療をすべきかどうか、その見極めにあるともいわれています。乳幼児に現れた大半は、成長とともに消えてしまう、あるいは薄くなるケースが多いことから、早い時期に治療を選択してしまうことで、かえって傷跡を残してしまう恐れがあるためです。また、手の甲に境界線のはっきりしない異所性蒙古斑ができた場合、レーザーを照射することで逆に色を目立たせてしまう結果に至ることもあります。

一方で、異所性蒙古斑は、まだ皮膚の薄い幼児期に治療したほうが、レーザーが皮膚内に届きやすく、治療効果が高いといった意見もありますので、担当医とよく相談し、治療の有無を決めるようにします。

細胞増埴型青色母斑が疑われる場合は、原則として、局所麻酔による手術で深く広範囲に切除します。リンパ節転移が見付かった場合には、リンパ節を切除します。

太田母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科の医師による診断では、部位や色素斑の様子から視診で判断します。皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、真皮上層に色素含有メラノサイトが認められます。

また、異所性蒙古斑、青色母斑などの皮膚疾患と鑑別します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科の医師による治療では、悪性化の心配はないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザー治療により、色素斑を除去します。

治療対象となる太田母斑の色が濃く、範囲が広い場合は、1〜2回のレーザー照射だけは不十分で、およそ3カ月の間隔で、少なくとも5~6回の照射を行います。

治療時期は何歳からでも可能ですが、小児の場合は全身麻酔が必要なため3歳ごろから開始するのが普通で、早期から開始するほうが効果が高いといわれています。成人の場合でも、かなり色調が改善し、完全に色素斑を除去できることもあります。

眼球の色素斑はレーザー照射ができないので、現在は治療法がありません。

扁平母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)が疑われる場合は、神経線維腫や聴神経腫瘍、骨格異常の有無など検査します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、病変が浅いので、Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチアレキサンドライトレーザーなどを照射すると、メラニン色素に選択的に吸収され、扁平母斑が消失したり軽快します。

レーザー治療の長所は治療を行った部位に傷跡ができにくいことですが、すべての扁平母斑に有効ではありません。思春期になって発生する遅発性扁平母斑では、多くのケースで効果を認めます。

先天性の扁平母斑では、思春期以降に色調が強くなって認識したケースでレーザーが効くのはまれで、レーザーを照射してしばらくは消えていたものが、次第に再発する場合もしばしばあります。再発の程度は、テスト治療で推測できます。

しかし、先天性の扁平母斑でも乳幼児期からレーザー治療を行うと、再発が少なく効果を認めることが多くなります。そのため、有効率を高めるために、皮膚が薄い0歳児からレーザー治療を行う医療機関が増えてきました。

レーザー治療が無効で扁平母斑がすぐに再発する場合には、ドライアイスや液体窒素を使用した治療や、グラインダーで皮膚を削る皮膚剥削(はくさく)術という手術が行われます。傷跡を残すことがあるので、第一選択ではありません。

ベッカー母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断は、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療は、医療レーザーによる治療が第一選択とされます。レーザー治療の長所は、治療を行った部位に傷跡ができにくいことです。

Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチヤグレーザー、炭酸ガスレーザーなどを照射すると、メラニン色素に選択的に吸収され、多くのケースでベッカー母斑が消失したり軽快します。

有毛性のベッカー母斑では、レーザー治療の前に脱毛するなどの処理できれいにすることが、重要になります。

有毛性のベッカー母斑に対して、脱毛処理を行わずにレーザー治療を行うと、最初は周囲の正常な皮膚と同じ肌色になりますが、時間が経つにつれて、ポツンポツンと毛穴に一致して色素沈着が出てきます。毛包の中のメラニン色素を作る色素細胞が、過剰に反応してしまうためです。

医療機関によっては、剛毛が生えていたり、多毛である際には、Qスイッチヤグレーザーなどと医療脱毛用のレーザーを併用することもあります。

レーザー治療が無効でベッカー母斑が再発する場合には、ドライアイスや液体窒素を使用した治療や、グラインダーで皮膚を削る皮膚剥削(はくさく)術という手術、植皮術などが行われます。傷跡を残すことがあるので、第一選択ではありません。

色素性母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断は、特徴的な色素斑なので、ほとんどは見ただけで診断はつきます。ただし、色素性母斑自体は良性ですが、皮膚の悪性腫瘍の中でも悪性度が高い悪性黒色腫と見分けがつきにくいものも時々あります。悪性黒色腫の確定診断は、切除したほくろを病理組織検査することでつきます。

放置しておいてもかまわない色素性母斑であっても、顔などに大きなものがあり、本人が非常に気にしたり、他人に悪印象を与える時などは、皮膚科、形成外科での手術で除去することになります。非常に小さなほくろであっても、本人が悪性化や、その他の面で気にする時にも、手術を行うこともあります。

手術では、病変部の皮膚をメスで全部切り取った後、皮膚の欠損部を縫い合わせるか、植皮術を行います。最近では、顔の小さいほくろの場合に、メスの代わりに炭酸ガスレーザーで切除した後、縫い合わせないで自然に治るのを待つ、くり抜き療法も行われています。

いずれにして、多少の傷跡は残ります。特に、植皮術で植皮した皮膚は、周囲の皮膚とは細かい性状が異なり、完全にはなじみません。従って、手術の跡と、ほくろやあざとどちらが目立つかを考えてから、手術をする必要があります。手術をしなくても、カバー・マークを利用して、色を隠せばよいからです。

なお、炭酸ガスレーザーを用いる、くり抜き療法は顔面ではあまり傷跡が目立たないことが多いようですが、他の部位ではくり抜いたところの傷跡が目立つ場合もあります。また、レーザー治療では多くの場合、病変部を焼き飛ばすため、病理組織検査を行えません。悪性黒色腫と見分けがつきにくい場合もあるので、レーザー治療を選択する場合には、担当する医師の十分な診断力が必要とされます。

🇸🇮アザラシ肢症

手や足が直接胴体に付いているため、アザラシのように見える先天性奇形症

 アザラシ肢症とは、四肢、特に上肢の長骨がなかったり、短かったりして、手または足が直接胴体に付いているため、外観がアザラシのように見えることから名付けられた先天性奇形症の一つ。サリドマイド胎芽症の一種で、海豹肢症とも呼ばれ、上肢が全くない場合は無肢症とも呼ばれます。

 そのほか、心臓や消化器の配置異常などの広範囲の異常を引き起こしていることもあります。原因としてはさまざまなものがあると考えられますが、ヨーロッパで1950年代後半、日本で1960年代前半に大量発症したケースは、ドイツで創製されたサリドマイドによる薬害が指摘されています。

 1950年代後半から1960年代前半には、もともと抗てんかん薬として使用されていたサリドマイドが、妊婦のつわりや不眠症の治療薬として用いられており、妊婦が妊娠初期に服用することによる副作用である催奇性により、胎児に影響が出たものとされています。

 日本では1962年9月になってサリドマイドの販売が停止されたものの、これによるとみられる奇形児は死亡児を含めて約1200人。全国の家族が国と製薬会社に損害賠償を要求する訴訟を起こし、1972年までにサリドマイド症児として309人が認定され、1人当たり2800万~4000万円の賠償金の支払いがなされました。

 アザラシ肢症は、サリドマイドの創製以前から報告されているものの、サリドマイド以外の原因についてはいまだ解明されていません。

 サリドマイドを創製したのは、西ドイツ(現在のドイツ)の製薬会社であるグリュネンタール社。サリドマイドは、1957年に睡眠薬「コンテルガン」として世界に向けて売り出され、胃腸薬としても有効なことから、妊婦がつわり防止や眠れない時に服用していました。

 もともとこの非バルビツール酸系の化合物は、合成実験の際に用いる試薬の副産物として、偶然にできたものでした。睡眠薬としての効果は良好で、即効性があり、麻酔のようにクラクラする感じも、皮膚のかゆみなどもありません。それまでの睡眠薬は、連用により危険を伴う副作用が出現するのに対し、サリドマイドにはそういった副作用がなく、気軽に使える新薬として、「妊婦や小児でも安心して飲める安全無害な薬」と宣伝されました。サリドマイドは、致死量が決定できないくらい急性毒性が低かったため、睡眠薬による自殺も防止できるともてはやされ、世界46カ国で発売されました。

 日本では、大日本製薬(現在の大日本住友製薬)が薬学雑誌に掲載されたグリュネンタール社の論文に着想を得て、独自の製法を用いて合成を行い、製法特許を出願しました。そして、わずか1年足らずで厚生省(現在の厚生労働省)の承認を得て、1958年1月から睡眠薬「イソミン」として発売しました。大日本製薬以外にも、国内では10社を超える製薬会社がサリドマイドを販売していましたが、そのシェアの9割以上は大日本製薬のイソミンが占めていました。

  1959年8月には大日本製薬が胃腸薬「プロバンM」にサリドマイドを配合して販売し、妊婦のつわり防止に使用されました。

 しかし、やがてサリドマイドを服用した妊婦から、新生児が発育不全で、手足が欠損したまま産まれてくるなどの異常が相次ぎました。サリドマイドには、あらゆる動物の胎児ばかりか、植物の胚にまで奇形を生じさせるほどの強い催奇性があったのですが、妊娠中の動物を使った実験は行われていなかったのです。

 サリドマイドを妊婦が服用すると、母胎の中にいる胎児の手足の成長を促す一連の蛋白質(たんぱくしつ)の機能が阻害され、左右対称性に上肢があっても短い、あるいは小さな手が肩甲骨から直接出ているというような、サリドマイド胎芽症の一種であるアザラシ肢症となった重度の奇形児が産まれてしまうようになります。

 このアザラシ肢症になった新生児の多くは、指の付け根の筋肉が未発達で、隣の指と結合していたり、手足が内側に反っていたりしました。さらに、サリドマイド胎芽症の新生児には、難聴や外耳奇形、心臓や消化器の配置異常が生じていました。

 妊娠の初期3カ月間は、胎児の体の各器官が作られる時期で、この時期にサリドマイドを服用すると、胎児の体の発達を妨げます。どの部分の発達が妨げられるかは、薬を服用する時期によって異なり、それによってさまざまな器官に障害が生じます。

 手足の障害にも、さまざまなタイプがあります。手については、上肢が全くない無肢症、肩から直接手が出ていて指の本数が少ないアザラシ肢症(フォコメリア)、上肢が短い 、 肘(ひじ)から先の骨や親指が欠損している、親指を始めとした指の発達が不十分などの症状がみられます。足については、下肢奇形、股関節脱臼(こかんせつだっきゅう)が生じます。

 耳と顔面の障害には、耳が全くなく高度の難聴を伴う無耳症、耳が小さく高度の難聴を伴う小耳症、顔の表情が作れずコミュニケーションが難しい顔面神経麻痺、悲しい時に涙が出ず物を食べた時に涙が出るワニの涙症候群、眼球の運動が制限されるデュアン症候群が生じます。

 心臓や消化器の奇形としては、心臓疾患、消化器の閉塞(へいそく)・狭窄(きょうさく)、ヘルニア、胆嚢(たんのう)や虫垂の欠損が生じます。

 一般に無耳症は妊娠早期に、上肢障害はこれより少し遅れ、下肢障害はさらに遅い時期に発生することが知られています。

 1950年代後半から1960年代前半には、妊婦が服用した場合にサリドマイド胎芽症の新生児が生まれるという副作用があり得るという認識が薄かったため、サリドマイドの薬害は全世界におよびました。

 日本におけるサリドマイド胎芽症の新生児は、推定約1200人といわれ、世界全体では約7000人。もちろん、病院で処方されたサリドマイドだけでなく、薬局で市販されているサリドマイドの服用によって生じた奇形児も多くいました。薬局で市販されていたサリドマイドについては、患者の母親が服用した事実を証明することができず、また因果関係を認められなかった軽症例が多数いたとされています。さらに、大半が胎児期に死亡し、死産となったので、実際には統計の数倍以上の被害だったとされています。

 サリドマイドは日本では1962年9月に販売停止されましたが、現在はハンセン病の2型らい反応の治療薬、多発性骨髄腫(しゅ)の治療薬として世界で用いられています。日本では使用に当たって、「サリドマイド製剤安全管理手順」の順守が求められています。

2022/07/27

🇮🇪足関節脱臼骨折

足関節を構成する骨が骨折し、靭帯も損傷を受けて関節が外れた状態

足関節脱臼(だっきゅう)骨折とは、足関節すなわち足首の関節を構成する脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)、距骨(きょこつ)が骨折し、それぞれの骨をつなぐ靭帯(じんたい)が強く損傷を受け、足関節が外れてしまった状態。

足関節脱臼骨折は、足関節に対しての直接的な外力や重度の捻挫(ねんざ)などを切っ掛けとして発症します。具体的には、交通事故やスポーツ外傷、足の踏み違え、道路の穴や段差による転倒、階段や高い所からの転落などに関連して生じることがあります。

また、内側に足をひねるのか、外側に足をひねるのか、足関節に対してどの方向から衝撃が加わるかによって、骨折が生じる部位や靭帯が損傷を受ける部位は異なってきます。

発症すると、足関節の痛みやはれ、皮下出血、変形などの症状が現れます。特に変形は見た目にもわかるほどであり、足の真っすぐさが失われてしまい、障害を受けた部位がゆがんで見えます。骨折がひどいと、骨片の端が皮膚を突き破って外に出て、出血することもあります。はれがあまりに強くなると、血の巡りが悪くなって悪循環を起こし、血の流れが止まって筋肉や神経が死んでしまうことがあります。

足関節は体重が多くかかり、歩行に際して重要な役割を果たす関節であるため、足関節脱臼骨折を生じると、痛みや変形のために、体重をかけて歩行することができなくなってしまいます。

後遺症を減らすためには、早期のギプス固定や手術が重要です。長期的にみると、骨折と脱臼の治癒過程においても後遺症が生じることが少なくなく、変形性関節症に至るケースもあります。その場合には、疼痛(とうつう)が持続しさらなる治療が必要になります。

自身の症状が足関節脱臼骨折でないかと危ぶまれる際は、整形外科のクリニックか、近くの総合病院の救急外来を受診することが勧められます。痛みで全く立ち上がれない際には、救急車での受診が適切です。

実際に整形外科のクリニックを受診した場合には、足関節脱臼骨折の診断は診察とX線(レントゲン)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査で行います。診断が足関節脱臼骨折で手術が必要な場合には、行われた診察、検査の結果をまとめた診療情報提供書(紹介状)とともに、手術可能な病院を紹介してくれます。結果的に足関節脱臼骨折ではなく筋肉の問題であれば、整形外科のクリニックで対応が可能です。

総合病院の救急外来を受診した場合は、相対的に待ち時間が少ないというメリットがある一方で、専門の整形外科医ではなく広く浅く診察をする救急医が初期対応に当たることになります。総合病院の整形外科外来は、飛び込みで受診するには患者数が多くて、待ち時間が長く、また診療情報提供書を持っていないと受診ができなかったり、追加料金が必要となったりします。

足関節脱臼骨折の検査と診断と治療

整形外科、救急外来などの医師による診断では、内側に足をひねったのか、外側に足をひねったのかによっても、骨折が生じる部位や靭帯が損傷を受ける部位が異なるため、いつ、どこでどのように発生したのかなど受傷機転を含めて、詳細な身体診察をして障害部位を特定します。動脈損傷や神経損傷がないかどうかの確認も行います。(動脈が触れるか、感覚は残っているかなど)も行われます。

また、X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査といった画像検査も行うことで、骨や靭帯などの損傷の程度、骨のずれ具合などを評価します。

整形外科、救急外来などの医師による治療では、骨折で生じている骨のずれ(転位)が少ない場合や、徒手整復で整復位が得られれば、ギプスによる外固定で保存的に処置します。

整復位が得られても保持が難しく不安定性が強い例や、十分な整復位が得られない場合は、少しでも骨のずれがあれば手術を行います。骨のずれや脱臼を元の位置に戻しつつ、骨折部の固定や靭帯損傷の修復などを手術的に行います。

骨がずれたまま固定されると、足関節のすり合わせが悪くなり、将来、関節の軟骨が片減りして、痛くて動きが悪くなり歩けなくなります。軟骨がなくなってからでは、手術で関節を固定して動かなくするしか方法がなくなるので、正確に骨を戻して整復し、早くから関節を動かす訓練ができるように、しっかりと金属のスクリュー(ネジ)や金属のプレート(板)で固定し、ギプスで外固定することになります。

手術後には、症状や病状の回復状態をみながら、徐々に足に荷重をかけつつ運動負荷を上げていきます。この際、自己流のリハビリテーションを行うのではなく、専門的知識を持った理学療法士といった医療従事者の下で運動を行うことが重要です。

骨が付くには6週間かかりますが、ギプスでの外固定は3週間程度にとどめ、その後は取り外しのできる固定装具に変えて、痛みに耐えられる範囲で足関節の運動を開始します。X線検査の写真で骨が付いたことを確認したら、体重をかけた運動を開始します。最初はプールの中で歩く練習から始めるのが理想的です。

長期的後遺症として、関節の軟骨が片減りして痛くて動きが悪くなる変形性関節症を生じた場合は、症状により関節内注射や、骨切り術や関節形成術などの手術を選択することになります。

🇮🇸アジソン病

副腎が損傷を受けて、副腎皮質ホルモンの分泌量が低下

アジソン病とは、副腎(ふくじん)機能の低下によって、すべての副腎皮質ホルモンが不足する疾患。慢性副腎皮質機能低下症、慢性原発性副腎皮質機能低下症とも呼ばれます。

副腎皮質ホルモンは、生命の維持に必要なホルモンで、健康な人では体の状態に合わせて適切に分泌されています。この副腎皮質ホルモンには、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、男性ホルモンがあり、アジソン病では、主に糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドの欠損症状が現れます。

副腎自体の疾患による場合と、副腎皮質ホルモンの分泌を調節する下垂体の疾患による場合とで、副腎皮質ホルモンの不足は起こりますが、このうち副腎自体の疾患が原因で慢性に経過したものがアジソン病です。下垂体の疾患で副腎を刺激しないために副腎の機能が低下するものは、続発性副腎機能不全症というアジソン病に似た疾患です。

副腎は両側の腎臓の上、左右に2つあり、両側の副腎が90パーセント以上損なわれるとアジソン病になります。副腎が損なわれる原因として最も多いのは、副腎結核と自己免疫によるものです。まれに、がんの副腎への転移によるもの、先天性のものなどがあります。

アジソン病は1855年に、英国の内科医トーマス・アジソンによって初めて報告されました。あらゆる年齢層の人に、また男女いずれにも同じように発症します。乳児や小児の場合は、副腎の遺伝子の異常が原因です。

現れる症状はさまざまですが、主なものとして、色黒、倦怠(けんたい)感、脱力感、体重減少、食欲不振、便秘、下痢、低血圧、低血糖などが挙げられます。また、不安、集中力の低下などの精神症状や、腋毛(えきもう)、恥毛の脱落などもしばしば認められる症状です。体内のナトリウムイオンとカリウムイオンのバランスが崩れるので重症の場合、心停止を起こして死ぬこともあります。

自己免疫が関係する特発性アジソン病の場合、甲状腺(せん)疾患や糖尿病、貧血、真菌症などを合併することが多く、これらの症状が現れることもあります。

アジソン病の検査と診断と治療

アジソン病の初期では副腎皮質の障害が軽度なので、ホルモンの分泌も生活に支障を来さない程度に保たれています。自覚症状もはっきりしたものではなく、気が付かないことがほとんどです。しかし、この状態の時に、けが、発熱などで強いストレスがかかった場合、急性副腎不全を来して危険な状態になることがあります。アジソン病の症状があった場合、内分泌・代謝を専門とする病院で一度精密検査をしておくことが望まれます。

アジソン病の診断においては、一般的な血液検査、尿検査に加え、ホルモンの検査、腹部CTなどが必要になります。ホルモンの検査は、血液中の副腎皮質ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、尿中に排出される副腎皮質ホルモンなどを測定するほか、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)や副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)放出ホルモン(CRH)を投与した後の副腎や下垂体の反応により、副腎の機能を評価します。

そのほか、副腎を損なう原因を調べるため、結核など感染症に対する検査、がんの検査、自己免疫疾患の検査などが行われます。

治療においては、疾患の程度、日常生活に合わせて、副腎皮質ステロイド薬を補充します。通常、1日1〜2回の内服ですみますが、けがや発熱などで体に強いストレスがかかる場合は、それに応じて内服量を増やす必要があります。筋力の低下や全身消耗の強い場合は、副腎性アンドロゲン(男性ホルモン)を補充することもあります。

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