2022/08/10

🟥北朝鮮、新型コロナ感染「ゼロ」と報道 韓国の新規感染者は4カ月ぶり15万人超

 北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」は10日、去る8日午後6時から9日午後6時までの24時間、全国で新型コロナウイルス感染と疑われる新規発熱者は発生しなかったと報じました。

 報道基準で、北朝鮮では7月30日から新型コロナウイルス感染と疑われる発熱者が1人も発生しておらず、去る4日には治療中の患者がすべて完治したと発表。北朝鮮の主張通りならば、現在公式的に北朝鮮内の新型コロナウイルス感染者、有症状者、治療中の患者はいないことになります。

 北朝鮮は先ごろ、「全国非常防疫総和会議」の開催を予告。この会議で「最大非常防疫体系」に対する調整があるかどうかが注目されます。

 一方、労働新聞は「保健省と平壌(ピョンヤン)医学大学など該当部門では世界的に引き続き拡散している悪性ウイルス(新型コロナウイルス)変異ウイルスの特性と変化などを綿密に注視しながら検査をより効率的に実施していく」と説明しました。

 韓国の中央防疫対策本部は10日、この日午前0時現在の国内の新型コロナウイルス感染者数は前日午前0時の時点から15万1792人増え、累計2084万5973人になったと発表しました。1日当たりの新規感染者数は前日(14万9897人)より1895人多く、15万人を上回るのは4月13日(19万5387人)以来、約4カ月ぶりとなります。

 新規感染者数は1週間前の3日(11万9886人)と比べ約1・3倍、2週間前の7月27日(10万240人)と比べると約1・5倍となります。

 防疫当局は8月中に新規感染者数が11万~19万人程度でピークに達すると予測しましたが、夏休みシーズンを考慮した追加分析が必要として、来週に新たな予測結果を公表する方針です。専門家らは来週以降にピークを迎えるとの見通しを示しています。中央災難(災害)安全対策本部は8月中に約20万人の新規感染者が発生すると予測しました。

 この日の新規感染者のうち海外からの入国者は前日より27人多い615人で、初めて600人を上回りました。市中感染者は15万1177人でした。

 重症者数は402人と前日から38人増えました。重症者数が400人を超えるのは5月9日以来となります。

 新たな死者は50人で、前日より10人多くなりました。死者の累計は2万5382人。致死率は0・12%。

 2022年8月10日(水)

🟥ベルギー、新たにハーゲンダッツ7品目に回収命令

 ベルギーの食品安全当局は9日、アイスクリーム「ハーゲンダッツ」の一部商品からがんと関連がある化学物質の痕跡が見付かったとして、新たに7品目の回収を命じました。5日にも10品目の回収を命じていました。

 ベルギーで9日に回収対象となった品目は、サイズがパイントとミニカップで賞味期限が2023年3~4月のもの。対象のフレーバーはバニラとベルギーチョコレート、マカデミアナッツブリトル、プラリネ&クリームなど。

 回収対象の商品を購入した場合、食べずに廃棄し、ハーゲンダッツを手掛けるアメリカの食品大手ゼネラル・ミルズに連絡して返金を求めるよう呼び掛けています。

 回収は、フランスの要請に基づくヨーロッパ連合(EU)の食品および飼料に関する緊急警報システムの通知を受けた措置。

 フランスは7月、検査でハーゲンダッツの一部商品から「エチレンクロロヒドリン(2-クロロエタノール)」が検出されたことを受け、最初に回収を命じました。これまでにスペインも複数の品目の回収を命じました。

 エチレンクロロヒドリンは、殺虫剤や洗浄剤として使用される発がん性の化学物質「エチレンオキシド(酸化エチレン)」に含まれる化学物質で、DNA損傷を引き起こす性質を有します。

 ゼネラル・ミルズは先週、「微量のエチレンオキシドは、サプライヤーの1社から供給された原材料の一つ(バニラエキストラクト)に由来する可能性がある」としていました。

 2022年8月10日(水)

🟥サル痘と関連か、ブラジルでサルへの襲撃増加 WHOが注意喚起

 世界保健機関(WHO)は9日、ブラジルでサルが暴行を受けたり毒を盛られたりする問題が相次いだことを受け、現在起きているサル痘の流行はサルとは関連していないと強調しました。

 ブラジルのニュースサイト「G1」によると、サンパウロ州の自然保護区では、毒を盛られたり、故意に傷付けられたりしたとみられるサルが1週間足らずで10匹に上りました。救助隊や活動家は、周辺地域でサル痘患者が3人確認されたこととの関連を疑っています。

 サル痘の感染事例は以前、アフリカ西部・中部にほぼ限定されていたものの、5月以降に世界中で急増し、2万8100人の感染者と12人の死者が出ています。WHOのデータによると、ブラジルでは1700人以上が感染し、1人が死亡しました。

 WHOのマーガレット・ハリス報道官はスイス・ジュネーブで開いた記者会見で、現在の流行は人同士の接触により起きており、サルが原因ではないと強調。サル痘の名前は、デンマークで研究用に飼育されていたサルからウイルスが初検出されたことに由来しているものの、感染する動物はげっ歯類が多いと指摘しました。

 これまでの感染者はほぼ全員が男性同士で性交渉する人ですが、WHOは感染者に汚名を着せることのないよう注意を喚起しています。ハリス報道官は、「もし人々が感染者と知られるのを恐れたら、治療を受けず、予防措置も講じなくなる」との懸念を示しました。

 2022年8月10日(水)

🇦🇪顆粒性結膜炎

微生物のクラミジア・トラコマーティスにより引き起こされる結膜炎

顆粒(かりゅう)性結膜炎とは、細菌よりさらに微細なクラミジア・トラコマーティスという微生物によって引き起こされる結膜炎。英語に基づいてトラコーマ、ドイツ語に基づいてトラホーム、元々はエジプトの風土病であったことに基づいてエジプト眼炎とも呼ばれます。

上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆う結膜の急性、もしくは亜急性の炎症で始まり、ついには黒目の表面を覆う角膜が混濁して、失明の原因となることもあります。

衛生環境のよい日本では現在、顆粒性結膜炎の発症は非常に少なくなりました。かつては世界で一番大きな失明原因の一つでしたが、2020年までに顆粒性結膜炎を地球から排除する計画を進めている世界保健機関(WHO)の報告によると、顆粒性結膜炎の全世界における患者数は1985年の3億6千万人から、2006年には8000万人へと減少がみられています。

地理的には、北アフリカ、中東、インド周辺、東南アジアなど、空気が乾燥して気温が高く、上水道設備が整っていない地域で、今も多く発症しています。

日本では日清戦争時に、兵士が顆粒性結膜炎に感染して帰国してから流行したといわれており、1910年代には日本の顆粒性結膜炎の罹患(りかん)率は20パーセントを超えていました。衛生環境がよくなるにつれ、1975年以降は激減しました。

なお、クラミジア・トラコマーティスによる結膜炎には、クラミジア・トラコマーティス血清型D〜Kによって起こる封入体結膜炎もあります。こちらは現在、性(行為)感染症によるクラミジア結膜炎として増加しています。

クラミジア・トラコマーティス血清型A、B、Ba、Cによって起こる顆粒性結膜炎の発症は、年齢的には10歳未満の小児や子供に多くみられます。これより年上の子供や成人では、免疫力が高まり衛生面にも気を配るので、発症することは少なくなります。

疾患の初期に感染力が高く、目と手の接触、クラミジア・トラコマーティスの付着したタオルやハンカチの共用、目元に塗る化粧品の共用、特定の種類のハエによる媒介などによって伝染します。

潜伏期間は5~12日で、普通は両目に発症します。まぶた(眼瞼(がんけん))がはれ、まぶたの内側の結膜である眼瞼結膜が充血してむくみ、大量の目やにが出ます。かゆみや痛みが生じ、涙が多く出ます。まぶたの裏は赤くはれて、多数の小さなぶつぶつ、すなわち顆粒が現れます。光に対しても過敏になります。

治療を行わないと慢性化して、症状の軽快と悪化を繰り返し、後期には、小さなぶつぶつが大きくなり、血管が徐々に発達して結膜から角膜の上にまで侵入する新血管形成が現れて、視界を妨げます。

結膜や角膜に瘢痕(はんこん、ひきつれ)ができて荒れた粘膜となり、まつげの向きが乱れて、内側に向いてしまう逆さまつげになる場合もあります。あるいは、まぶた全体が眼球側にまくれ込む眼瞼内反になる場合もあります。

こうした状態になると、まばたきをするたびにまつげが角膜をこするので、細菌の感染、角膜の潰瘍(かいよう)や混濁など、回復不能の損傷が生じやすくなります。顆粒性結膜炎にかかった人のうち約5パーセントが、視力障害や失明に至ります。

顆粒性結膜炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、目の観察所見と症状の持続期間が、顆粒性結膜炎(トラコーマ)を疑う手掛かりになります。目からサンプルを採取して、検査室で感染源のクラミジア・トラコマーティスを特定することで、診断が確定します。

眼科の医師による治療では、エリスロマイシンやアジスロマイシンなどのマクロライド系、ドキシサイクリンやミノサイクリンなどのテトラサイクリン系の抗生物質(抗生剤、抗菌剤)を3~5週間服用します。アジスロマイシンの場合は、週に1回、1~3週間の服用ですみます。抗生物質を含む軟こうも効果がありますが、4~6週間使用する必要があります。

まぶたや結膜、角膜が損傷を受けている場合は、手術が必要です。逆さまつ毛に対する手術も行われます。

顆粒性結膜炎は感染症であることから、再感染もしばしばみられます。人から人へと感染することもあります。子供から子供への感染がよくみられますが、家庭内においては、子供から母親への感染もよくみられます。発症者の目の分泌物の中の病原体によると考えられます。目の分泌物が付着する可能性のあるタオル、ハンカチなどの貸し借りはやめるべきです。

目の分泌物をエサとして、子供の目にたかるハエもいます。分泌物に触れたハエが、人から人へと病原体を運搬する可能性もあります。ハエは駆除し、毎日、手や顔をきれいに洗うことを習慣付けることにより、感染の広がりを防げます。

顆粒性結膜炎の発症者が多く出ている地域では、しばしば近隣の全住民に抗生物質が処方されています。

🇰🇼カルチノイド

非がん性、がん性の混じった腫瘍で、過剰なホルモン様物質を産生

カルチノイドとは、消化管や気管支などの原腸(げんちょう)由来の臓器から発生する、非がん性ないしがん性の腫瘍(しゅよう)。原腸とは、受精卵が成長する過程で出現する消化管その他の原器です。

カルチノイドは通常、小腸、直腸、虫垂、十二指腸、胃などの消化管のホルモン産生細胞に発生し、膵臓(すいぞう)、精巣、卵巣、肺、気管支、胸腺(きょうせん)のホルモン産生細胞でも発生します。がん性のカルチノイドは、一般のがんに比べて進行はゆっくりで、長い経過をたどります。転移することもまれです。全く症状を示さない非がん性のカルチノイドも、発生します。

消化管に発生したカルチノイドは、セロトニン、ブラジキニン、ヒスタミン、プロスタグランジン、カテコールアミンなどのホルモン様の生理活性物質を産生します。膵臓、肺、気管支、胸腺などに発生したカルチノイドは、副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン、抗利尿ホルモン、ガストリンなどを産生します。

カルチノイドが消化管や膵臓にできると、それが産生する物質は血液中に放出され、直接肝臓の門脈に入り、肝臓の酵素によって破壊されます。そのため、消化管にカルチノイドができても、一般的には肝臓に広がらなければ症状は現れません。

肝臓に広がった場合は、肝臓はこれらのホルモン様物質が全身を循環し始める前に破壊できなくなります。腫瘍が放出する物質によって、カルチノイド症候群と呼ばれる種々の症状が現れます。また、肺、精巣、卵巣に腫瘍ができた場合も、産生するホルモン様物質が肝臓を迂回(うかい)して血流に乗り、広く全身を循環するために種々の症状が現れます。

カルチノイドのある人の多くは、他の腸管腫瘍に似た症状を示し、主に締め付けられるような腹部の痛みと、閉塞(へいそく)の結果として便通の変化が現れます。

カルチノイド症候群は腫瘍がある人の10パーセント以下に現れ、顔や首に出る不快な紅潮は最も典型的で、最初に現れることが多い症状です。血管拡張による紅潮は、感情、食事、飲酒、熱い飲み物によって起こります。紅潮に続いて、皮膚が青ざめることがあります。

腸の収縮が過剰になると、腹部けいれんと下痢を生じます。腸は栄養を適切に吸収できないため栄養不足になり、脂肪性の悪臭を放つ脂肪便が出ます。心臓も傷害を受けて、下肢がはれます。肺への空気の供給も妨げられて、気管支ぜんそくに似た発作や息切れが現れます。セックスへの興味を失ったり、男性では勃起(ぼっき)機能不全になることもあります。

カルチノイドの検査と診断と治療

症状からカルチノイドが疑われる場合は、尿を24時間採取して、尿中のセロトニンの副産物の1つである5ーヒドロキシインドール酢酸(5ーHIAA)の量を測定し、その結果から診断します。

この検査を行う前の少なくとも3日間は、バナナ、トマト、プラム、アボカド、パイナップル、ナス、クルミといったセロトニンを豊富に含む食べ物を避けます。ある特定の薬、せき止めシロップによく使われるグアイフェネシン、筋弛緩(しかん)薬のメトカルバモール、抗精神病薬のフェノチアジンなども検査結果の妨げになります。

腫瘍の位置を突き止めるには、放射性核種走査が有効な検査です。カルチノイドの多くはホルモンのソマトスタチン受容体がありますので、放射性ソマトスタチンを注射する放射性核種走査によって、腫瘍の位置や転移の有無が確認できます。この方法で約90パーセントの腫瘍の位置がわかります。

CT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、動脈造影も、腫瘍の位置を突き止めたり、腫瘍が肝臓に転移していないかを確認するのに役立ちます。腫瘍の位置の診査手術が必要な場合もあります。

腫瘍が虫垂、小腸、直腸、肺など一定部分に限定していれば、外科的切除で治癒することがあります。腫瘍が肝臓に転移している場合、手術で治すのは困難ですが、症状が緩和されることがあります。腫瘍の増殖は遅いので、腫瘍が転移している人でさえ10〜15年生存することがしばしばあります。

進行した場合、一般のがんと同様に放射線療法や、抗がん剤による化学療法を含めた集学的治療を行います。ストレプトゾシンにフルオロウラシル、時にはドキソルビシンなどの抗がん剤の併用によって、症状を緩和できることがあります。オクトレオチドも症状を緩和し、タモキシフェン、インターフェロンアルファ、エフロルニチンは腫瘍の増殖を抑制します。カルチノイド症候群による紅潮を抑えるためには、フェノチアジン、シメチジン、フェントラミンが使用されます。

🇰🇼加齢黄班変性

高齢者の失明原因となる疾患の一つ

加齢黄斑(おうはん)変性とは、眼球内部の網膜にある黄斑が変性を起こして、視力が低下する疾患。加齢に伴って起こるもので、高齢者の失明原因の一つです。

黄斑とは、光を感じる神経の膜である網膜の中央に位置し、物を見るために最も敏感な部分であるとともに、色を識別する細胞のほとんどが集まっている部分。網膜の中でひときわ黄色く観察されるため、昔から黄斑と呼ばれてきました。

この黄斑に異常が発生すると、視力に低下を来します。また、黄斑の中心部には中心窩(か)という部分があり、ここに異常が発生すると、視力の低下がさらに深刻になります。

加齢黄斑変性には、網膜よりさらに外側に位置している脈絡膜から、異常な血管である新生血管(脈絡膜新生血管)が生えてくることが原因で起こる滲出(しんしゅつ)型と、新生血管は関与せずに黄斑そのものが変性してくる非滲出型(委縮型)の二つのタイプがあります。

新生血管とは、網膜に栄養を送っている脈絡膜から、ブルッフ膜を通り、網膜色素上皮細胞の下や上に伸びる新しい血管です。正常な血管ではないため、血液の成分が漏れやすく、破れて出血を起こしてしまいます。

滲出型加齢黄斑変性の初期では、物がゆがんで見える変視症や、左右の目で物の大きさが違って見えるなどの症状を自覚するケースが多くみられます。新生血管が破れて黄斑に出血を起こすと、見たい物がはっきり見えない急激な視力低下や、見ようとする物の中心部が丸く黒い影になって見えなくなる中心暗点という症状が出現します。

病巣が黄斑に限られていれば、見えない部分は中心部だけですが、大きな出血が起これば、さらに見えにくい範囲が広がります。病状が進行すると、視力が失われる可能性があります。また、片目に病巣が認められたら、4割程度の人では経過とともに両目に発症するといわれています。医師に本疾患と診断された人は、良いほうの目も定期的に診てもらうべきです。

非滲出(委縮)型加齢黄斑変性の場合は、黄斑の加齢変化が強く現れた状態で、網膜色素上皮細胞が委縮したり、網膜色素上皮細胞とブルッフ膜の間に黄白色の物質がたまったりします。病状の進行は緩やかで、滲出型と比較すると視力低下の程度も軽度であることがほとんどで、視力はあまり悪くなりません。

しかし、新生血管が発生することもあるので、定期的に眼底検査、蛍光眼底検査を行い、経過をみる必要があります。特に、片目がすでに滲出型加齢黄斑変性になっている場合は、注意深く経過をみなければいけません。

加齢黄斑変性は高齢者に多く発症することから、黄斑、とりわけ網膜色素上皮細胞の加齢による老化現象が主な原因と考えられています。また、はっきりしたことはわかっていませんが、高血圧や心臓病、喫煙、ビタミンやカロチン、亜鉛などの栄養不足のほか、遺伝の関与も報告されています。しかし、加齢黄斑変性の原因と病態は完全には解明されておらず、現在もなお、さまざまな研究がなされています。

もともと加齢黄斑変性は欧米人に多く、日本人には少ない疾患でした。その主な理由としては、欧米人の目が日本人の目に比べて、目の老化を促進する原因となる光刺激に弱いことが挙げられます。アメリカでは現在、本疾患が中途失明を来す疾患のトップです。

最近では、日本でも発症数が増加の一途をたどっており、日本人の平均寿命の延びが原因として挙げられています。食生活を中心に生活様式が欧米化したことや、TVやパソコンの普及により目に光刺激を受ける機会が非常に多くなったことも、原因の一つと考えられています。日本人では、女性の約3倍と男性に発症しやすいことを示す研究報告もあります。

加齢黄班変性の検査と診断と治療

健康診断で、加齢黄斑変性が早期に発見されることもあります。50歳以後の中高年の人は、視力を保つために早めに検査を受けましょう。

今まではあまり有効な治療法はありませんでしたが、近年、新しい方法が試みられるようになり、早期発見、早期治療によって視力低下を最小限に抑えられる可能性が期待できるようになってきました。

病気の診断、程度の判定、最適な治療を考える上で、医師による多くの検査が必要です。特に重要なのは、眼底検査と蛍光眼底検査。

眼底検査は、眼底にある網膜の状態を詳しく調べるために行われます。検査の前に目薬をさして、瞳孔(どうこう)を開きます。まぶしくて近くが見えない状態が約3時間続きますが、自然に元に戻ります。

蛍光眼底検査は、網膜や脈絡膜の血液の流れを把握する目的で行われ、腕の静脈に蛍光色素を注射してから眼底を調べます。蛍光色素によって血管だけが浮き彫りになりますから、血管の弱い部分や詰まった個所、新生血管の発生した位置を突き止めたり、病状の程度を判定したりすることが可能です。

その他、主として脈絡膜の血液循環を調べるための特殊な造影検査もあります。

加齢黄斑変性の治療では、レーザーによるレーザー光凝固術や、場合によっては手術が行われます。近年、経瞳孔温熱療法や光線力学療法などといった新しい治療法が一部の施設で試みられ始めており、この病気の予後の向上が期待されるようになってきています。

レーザー光凝固術は、新生血管をレーザー光で焼き固める治療法です。正常な周囲の組織にもダメージを与えてしまいますので、新生血管が中心窩にある場合はほとんど実施されません。

手術には、新生血管抜去術と黄斑移動術があります。新生血管抜去術は、新生血管を外科的に取り去る治療法です。新生血管が中心窩にある場合も実施されますが、中心窩を傷付けてしまう可能性もあります。

黄斑移動術は、中心窩の網膜を新生血管から離れた場所に移動させることにより、中心窩の働きを改善する治療法です。新生血管が中心窩にある場合に実施されますが、物が二つに見えるなどの副作用が起こる場合もあります。

新しい治療法の経瞳孔温熱療法は、弱いレーザーを新生血管に照射し、軽度の温度上昇によって、新生血管の活動性を低下させる治療法です。

光線力学的療法のほうは、光に反応する薬剤を体内に注射し、それが新生血管に到達した時にレーザーを照射する治療法です。弱いレーザーによって薬剤が活性化され、新生血管を閉塞(へいそく)します。使用するレーザーは通常のレーザーとは異なり、新生血管周囲の組織にはほとんど影響を及ぼしません。継続的に行う治療法であり、3カ月ごとに検査を行い、その結果により必要に応じて再度実施されます。

薬物療法として、ステロイド剤や血管新生阻害剤などの投与が試みられています。効果を得るには繰り返しの投与が必要で、経瞳孔温熱療法との併用も考えられています。

治療後の視力は、病状の進行度によってさまざまです。一般に早期に治療を開始すると、良好な視力が保たれる傾向にあります。黄斑の中でも特に重要な中心窩に病態が現れている場合は、視力の低下は著明です。

治療後も、定期的に医師による目のチェックを受けるとともに、バランスの取れた食事で目の健康を保ち、全身の健康を維持しましょう。

亜鉛の血中濃度の低下と加齢黄斑変性の関連が、指摘されています。加齢に伴って、亜鉛が含まれている食品の摂取量が少なくなるとともに、腸の亜鉛を吸収する力が低下してしまうことから、亜鉛不足になりやすいといわれています。亜鉛を多く含んでいる食品である穀類、貝類、根菜類を、なるべく摂取するようにしましょう。

同じく、カロチン(カロチノイド)の摂取量が少ないと、加齢黄斑変性を発症しやすいという研究報告もあります。カロチンを多く含んでいるカボチャ、ニンジン、トマト、さやいんげん、ピーマンなどの緑黄色野菜を、なるべく摂取するようにしましょう。

🇰🇼加齢性筋肉減弱症

年齢を重ねるとともに筋肉量が減少し、筋力または身体能力が低下した状態

加齢性筋肉減弱症とは、年齢を重ねるとともに筋肉量が減少し、筋力または身体能力が低下した状態。サルコペニア、原発性サルコペニアとも呼ばれます。

1980年代後半に、アメリカの研究者が加齢性筋肉減弱症、すなわちサルコペニアを提唱しました。主に高齢者にみられ、運動機能、身体機能に障害が生じたり、転倒、骨折、寝たきりの危険性が増大し、自立した生活を困難にする原因となることがあります。

2010年に欧州の老年医学の研究グループが診断基準を作りましたが、欧米人のデータを基にした基準値は、体格の異なるアジア人には必ずしも適さないと考えられました。そこで、日本、韓国、中国、香港、タイなど、アジアの7つの国・地域の研究者が協力し、2013年にアジア人向けの診断基準をまとめました。

加齢性筋肉減弱症の定義は、(1)筋肉量の減少(2)筋力の低下(3)身体能力の低下のうち、(1)と、(2)か(3)のどちらかがある状態です。

アジア人向けの診断基準では、高齢者が加齢性筋肉減弱症かどうかを診断する際、まず握力と歩行速度を測定します。基準値は、握力が男性26キログラム未満、女性18キログラム未満、歩行速度が秒速0・8メートル以下。どちらか一方でも該当すると、加齢性筋肉減弱症が疑われます。

握力の基準値は、両手で各3回測り、最高値をとります。歩行速度の秒速0・8メートルの目安は、青信号で横断歩道を渡りきれるかどうかです。

確定診断には、X線を用いる特殊な検査法であるDXA法(二重X線吸収法)で筋肉量を測定し、男性7・0(キログラム/平方メートル)、女性5・4(同)の基準値未満なら、加齢性筋肉減弱症とされます。

 ただし、加齢性筋肉減弱症、すなわちサルコペニアは疾患名として確立しておらず、この筋肉量測定法は普及していないので、握力か歩行速度が基準値以下なら注意が必要と考えられます。

70歳以下の高齢者の13〜24パーセント、80歳以上では50パーセント以上に、加齢性筋肉減弱症を認めるという報告があります。仮に筋肉量が基準値を超えているのに、握力や歩行速度が基準値以下なら、パーキンソン病や変形性膝(しつ)関節症など、ほかの病気が影響している可能性もあるとされます。

筋肉の量は20歳代前半をピークに、25~30歳ころから減少の進行が始まり、生涯を通して進行していきます。40歳代以降は年1パーセントの割合で減少し、75歳を超えると減る割合はより大きくなります。筋肉の量の減少は、活動性の低下だけでなく、組織や細胞の変化など多くの因子によって起こります。

また、筋肉の量の減少は広背筋、腹筋、膝伸筋群、臀筋(でんきん)群などの抗重力筋において多くみられるため、立ち上がりや歩行が次第に億劫(おっくう)になり、放置すると歩行が困難になり、高齢者の活動能力の低下の大きな原因となっています。

頻繁につまずいたり、立ち上がる時に手を掛けるようになると、症状がかなり進んでいると考えられます。特に、つまずきは当人や周囲が注意力不足のせいだと思い込んでいることが多いため、筋力の低下が原因と気付かないことが多く、注意が必要です。

加齢性筋肉減弱症の対策と軽減策

筋肉量の減少や筋力の衰えを予防、改善するには、運動と栄養補給の組み合わせが大切です。

運動としては、特に下半身の筋肉を鍛えるスクワットなどが推奨されます。ウオーキングなどの有酸素運動も、取り入れたほうがよいでしょう

栄養補給としては、蛋白質(たんぱくしつ)に含まれる必須アミノ酸の一つで、筋肉を作る役割があるロイシンの摂取が効果的。肉や魚、卵、乳製品、大豆など、ロイシンを多く含む食品を毎日食べたほうがよいでしょう。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...