2022/08/13

🇨🇭血栓症

血栓症とは、血管の中にできる血の固まりである血栓が血管を詰まらせ、組織や臓器に障害を引き起こす病状です。

血栓は破れた血管を修復し、止血するために不可欠のもので、健康な場合は血栓を作る働きと、それを溶かす働きのバランスがとれています。まず、血管が傷付いて破れた際には、血液中の血小板がその傷口に集まり、止血します。 そこへフィブリンという血液中の繊維素が凝集して血栓となり、完全に止血します。続いて、血管壁細胞の増殖が起こって血管が修復され、その後、血栓を溶かす成分が働いて、血流が元通りになります。

しかし、加齢などで血栓を溶かす働きが衰えると、血栓が血管中に残ってしまい、動脈硬化で動脈が狭くなるなどの条件が重なることで血液の流れが滞ると、血栓症にかかりやすくなります。この血栓が心臓の血管をふさぐと心筋梗塞(こうそく)、脳の血管をふさぐと脳梗塞が起こります。ある部位にできた血栓がはがれて、血流に乗って移動し、他の部位の血管をふさぐと塞栓(そくせん)症が起こります。

日本人では、40歳代の5人に1人、50歳代で3人に1人、60歳代で2人に1人、70歳代ではほぼ全員血栓症であるといわれています。

血栓症を引き起こす要因となるのは、凝固しやすくなるなどの血液の性状変化、炎症や損傷などによる血管壁の変化、 血流のうっ滞、加齢による血管の老化、誤った食生活、運動不足、血中の中性脂肪やコレステロールの増加などが挙げられます。

医師による治療においては、脳血管障害や虚血性心疾患を起こす可能性のある人に対して、予防目的で抗血栓治療を行うことがあります。活発になっている凝固因子の働きを抑える抗凝固薬や 、血小板の働きを抑える抗血小板薬、血栓溶解薬などが使用されます。

それぞれの薬は、出血した際、血を止めるのに必要な血栓ができる過程も抑えますので、出血しやすい、また、出血した際に止まりにくいという副作用がありますので、注意する必要があります。

🇦🇹血栓性外痔核

血栓が肛門の周囲にたまって、はれてくる疾患

血栓性外痔核(がいじかく)とは、血栓が肛門(こうもん)周囲にたまって、はれてくる疾患。

外痔核は、直腸と肛門を隔てる歯状線(しじょうせん)よりも外側にできた痔核です。痔核は、肛門周囲の静脈が膨らんで、こぶになったものです。歯状線よりも外側にできたこぶである外痔核は、歯状線よりも内側にできた痔核である内痔核の肛門外への脱出に伴って、大きくなってくるのが普通です。

外痔核は、排便時の強い息みで突然、出現します。外痔核の周囲には、多数の神経が集まっているので、激しく痛みます。排便時だけでなく通常時でも激しい痛みを伴うことが多いものの、出血を伴うことはあまりありません。

この外痔核がある時に、下痢のために頻繁に排便したり、便秘のために力んで便を出したりすると、静脈叢(そう)のうっ血が急にひどくなり、よどんでいる血液の中に血液の固まりである血栓ができ、強い痛みを伴った青黒いはれ物となります。一種の血豆のようなもので、これが血栓性外痔核です。

血栓性外痔核は、2~3日で痛みのピークとなります。しかし、血栓性外痔核が小さなうちは、軟こうや座薬などを使用するだけで、血栓はすぐに溶けてきます。溶け始めると、完全に詰まっていた血管が流れ出します。そうすると、はれもひいてきて、痛みも次第に少なくなってきます。はれがひくのに1カ月くらいかかりますが、完全に治ります。

しかしながら、肛門に負担をかけるようなことをしているとまた、何度でも血栓性外痔核になります。どこに血栓ができるかによってはれる場所が決まりますので、いつも同じところがはれるとは限らず、はれる場所はその時々によって違います。

この血栓性外痔核は、肛門に一時的に急激に負担がかかった時にできます。多い原因としては、便秘、下痢のほか、冷え、飲酒が挙げられます

血栓性外痔核が大きくなってしまうと、痔核を保護している皮膚が圧迫されて潰瘍(かいよう)ができ、出血を起こしますし、血栓が吸収されても皮膚の盛り上がりは残って、皮垂(ひすい)というこぶのような高まりが肛門の入り口にできます。

1カ月以上たってもはれがひかない、あるいはどんどんはれてくるようであれば、すぐに肛門科を受診して下さい。

どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる疾患ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。排便時の痛みや出血といった気になる症状があれば、自己判断せずに、受診するのがよいでしょう。

血栓性外痔核の検査と診断と治療

肛門科の医師による治療は、保存的治療と血栓切除に分けられます。

小さくて痛みが強くない場合には、ほとんど軟こうによる保存的治療で改善してきます。血栓が大きくて痛みが強い場合、軟こうを3~4週間使っても治らない場合、何回も同じところがはれる場合、表面が破れて多量の出血が起こっている場合には、痛みを除き皮膚の変形を防止するためにも、痔核の部分を舟型に切開し、血栓を摘出(てきしゅつ)する結紮(けっさつ)切除法という簡単な処置を行います。この血栓切除は、外来で3分くらいでできます。

血栓を切除すれば、すぐに痛みが消失します。切除後1週間くらいは無理せず、運動や旅行などを控える必要があります。血栓を切除した後は1~2週間ほど、傷口から少しずつ出血が続くことがありますが、血栓が吸収されてなくなれば、自然にしぼんで消えてなくなります。

🇦🇹血栓性静脈炎

皮膚の浅い部分にある静脈が血液の固まりで栓をしたように詰まる状態

血栓性静脈炎とは、皮膚の浅い部分にある表在静脈(皮〔ひ〕静脈)に炎症と血栓が生じる疾患。表在性血栓性静脈炎とも呼ばれます。

全身の静脈は、表在静脈と深部静脈に分類されます。この血栓性静脈炎が表在静脈に血の固まりである血栓が生じる疾患であるのに対して、深部静脈に血栓が生じる疾患は深部静脈血栓症と呼ばれるほか、ロングフライト血栓症、旅行者血栓症、エコノミークラス症候群、静脈血栓塞栓(そくせん)症とも呼ばれ、飛行機内などで長時間、同じ座席で同じ姿勢を取り続けることにより血栓が生ずる疾患として知られています。

同じように静脈に血栓ができても、表在静脈に起こる血栓性静脈炎と深部静脈に起こる深部静脈血栓症とでは、症状の出方は全く違います。血栓性静脈炎は軽くてすむのに対して、深部静脈血栓症は重症化しやすくなります。

血栓性静脈炎は脚の表在静脈に最も多く発生しますが、鼠径(そけい)部や腕の表在静脈にみられることもあります。腕の血栓静脈炎は自然に起きる場合もありますが、最も起こりやすいのは、繰り返し静脈注射を行った場合です。注射針や薬の刺激で静脈の壁に損傷や変化が起き、この部分の血液が固まって血栓を作ります。

心臓や血管の病気の治療を目的に、血管中に挿入するカテーテルという細長い管を静脈内に長期間入れたままでいることでも、血栓性静脈炎は起こります。

そのほか、ベーチェット病、バージャー病(閉塞性血栓血管炎)、血小板増多症、悪性腫瘍、膠原(こうげん)病で、血栓性静脈炎を伴うことがあります。とりわけ、手足のあちらこちらに細長いしこりのようなものが次々に現れて消えていくものは、遊走性静脈炎あるいは遊走性血栓静脈炎といい、バージャー病や内臓の悪性腫瘍の可能性があります。また、静脈瘤(りゅう)に血栓性静脈炎を合併する場合もあります。

血栓性静脈炎では急性の炎症反応が起こり、局所的な痛みとはれが急速に現れ、炎症を起こしている静脈の周囲の皮膚が赤く熱っぽくなり、触れると痛みます。中の血液が凝固するため、この状態の静脈は正常な静脈や静脈瘤のように軟らかくはなく、皮膚の下に硬いしこりがあるように感じられます。このような静脈は、全長にわたって硬い感触がすることもあります。

時には、発熱や悪寒などの全身症状もみられます。

血栓性静脈炎の検査と診断と治療

内科、循環器科などの医師による診断では、 急性期の血栓性静脈炎に対しては、下肢のはれ、色調、皮膚温、表在静脈の拡張など、視診や触診で診断が可能です。また、下肢の血栓の最も有効な検査法は、超音波ドプラー法であり、現在最も頻用されています。時には静脈造影を用いて、血栓の局在や圧の上昇を測定することもあります。

慢性期の血栓性静脈炎に対しては、皮膚や皮下組織が厚くなるリンパ浮腫との区別が難しく、リンパ管造影や静脈造影が必要になる場合もあります。

遊走性静脈炎の場合の基礎疾患には、難病といわれるベーチェット病やバージャー病、悪性腫瘍などが含まれますので、静脈炎を繰り返す時は精査が必要です。

内科、循環器科などの医師による治療では、血液疾患や悪性疾患などの合併症がある場合は基礎疾患の治療が優先されます。それ以外の急性期の血栓性静脈炎は、局所の安静と湿布、弾性包帯などを用い、痛みがある場合には、対症療法として炎症鎮痛剤などを使います。

薬剤の静脈注射やカテーテルの使用による静脈損傷が判明した場合は、速やかに薬剤の中止や変更、カテーテルの抜去を行った後、局所の治療を行います。

静脈瘤が原因の場合は、局所の対症療法を行って症状が軽快した後、原因である静脈瘤を治療します。静脈瘤に生じた血栓性静脈炎は他の原因に比べて血栓量が多いため、炎症が強い際は静脈を小切開して血栓を絞り出すことで、早期に症状を改善することができます。また、弾性ストッキングによる圧迫も有効です。

薬剤やカテーテル、静脈瘤などの原因を取り除くことができれば、局所的な痛みやはれは速やかに消退することがほとんどです。しこりや色素沈着は、数週間残る場合もあります。

難治性のものには、抗凝固剤や血栓溶解剤を使って血栓の治療と予防を行い、対症療法として炎症鎮痛剤などを使います。症状がひどい場合は、外科的手術による血栓の除去、静脈の切除、バイパス形成を行います。

🇦🇹結腸性便秘

結腸の緊張が緩んで、蠕動運動が弱いために、便を十分に送り出せないことから起こる便秘

結腸性便秘とは、大腸の大部分を占める結腸の緊張が緩んでいて、蠕動(ぜんどう)運動と呼ばれる消化管環状筋の伸び縮みが弱いために、便を十分に送り出せないことから起こる便秘。弛緩(しかん)性便秘とも呼ばれます。

便秘は通常、排便回数が少なくて、3日に1回未満、週2回未満しか、便の出ない状態です。

便が硬くなって出にくかったり、息まないと便が出なかったり、残便感があったり、便意を感じなかったり、便が少なかったりなど多様な症状も含みます。便の水分が異常に少なかったり、うさぎの糞(ふん)のように固い塊状なら便秘です。

便秘の症状の現れる時期は、さまざまです。一般には、加齢とともに増加する傾向にありますが、女性のほうが男性より多いと見なされ、若い女性の便秘は思春期のころに始まることも少なくありません。

その便秘の多くは結腸性便秘で、日本人の常習化した慢性便秘の約3分の2を占めるとされています。慢性便秘は症状が1〜3カ月以上続く便秘で、旅行や生活の変化に伴う数日間だけの一過性の便秘と区別されます。

また、結腸の緊張の緩みと腸管の蠕動運動の低下のために起こる結腸性便秘と、排便を我慢する習慣が便意を感じにくくさせるために起こる直腸性便秘とが重なって、慢性便秘が起こることもあります。

結腸性便秘になると、便が大腸を通過するのに時間がかかり、水分の吸収が必要以上に増加するために、出てくる便は太くて硬くて量が少なくなり、排便回数も少なくなります。

もともと排便に関与する腹筋が弱い女性に、結腸性便秘は多くみられます。腸が緩んで、便を送り出す力も便意を感じる力も弱まってしまうため、排便時に上手に腹圧をかけて息むことができなくなった結果、起こるものです。

高齢者、内臓下垂のある人、経産婦、長期臥床(がしょう)者、虚弱体質の人、体力が低下している人、運動不足の人などにも、結腸性便秘は多くみられます。高齢者では、入れ歯がかみ合わなかったり、歯の数が少なかったりして、食事量や食物繊維の摂取不足になる傾向から、大腸を刺激する力が弱まるとともに、腹筋などの筋力が弱まる結果、起こるものです。

また、下剤を使いすぎた場合も、薬の刺激で便意を催させるため、腸の機能が低下して結腸性便秘になることがあります。

結腸性便秘になると、腹痛などの強い症状を生じることは少ないものの、長く続くと、大腸に便が滞りガスがたまることによる腹部膨満感、腹部不快感、残便感、食欲の低下などの症状がみられます。頭痛や肩凝り、手足の冷え、倦怠(けんたい)感などの症状を伴うこともあります。

また、腸内細菌のバランスが崩れ、腐敗便がたまると、肌のトラブルや大腸がんの発生の引き金になることもあります。

結腸性便秘の検査と診断と治療

肛門(こうもん)科、あるいは消化器科、婦人科の医師による診断では、結腸性便秘を詳しく調べるために、X線マーカーを服用して大腸の通過時間を調べる検査や、バリウムによる模擬便を用いて、排便時の直腸の形や動きを調べる排便造影検査を行います。

肛門科、あるいは消化器科、婦人科の医師による治療では、食事指導、生活指導、運動、緩下剤といった保存的治療法が主体となり、これらをうまく取り入れて便通をコントロールするようにします。

日常の食生活で不足しがちな食物繊維を補うためには、市販の食物繊維サプリメントであるオオバコ、小麦ふすまなどを活用するのもよい方法です。運動で腹筋を鍛え、蠕動運動を活性化するためには、ウオーキングやジョギングを行うのもよい方法です。

緩下剤は、腸への刺激がなく、水分を保持して便を軟らかくする酸化マグネシウムなどの塩類下剤を主体として使用します。センナ系、漢方などの速効性の刺激性下剤は、できるだけ常用しないように心掛けます。刺激性下剤を常用すると、次第に腸が下剤の刺激に慣れて効果が鈍くなり、ますます便秘が悪化することがあるためです。

🇻🇦血尿

腎臓や尿路などからの出血のために、尿中に血液が混入している状態

血尿とは、腎臓(じんぞう)や尿路などからの出血のために、尿中に血液が混入している状態。赤血球尿とも呼ばれます。

血尿の中には、目で見て明らかに赤い尿が出る肉眼的血尿と、目で見てもわからないけれども顕微鏡で見ると尿の中に赤血球が存在する顕微鏡的血尿との2つがあります。正常の人では尿中に赤血球が混入することはなく、尿を遠心分離器にかけた際に、尿中に含まれる固形物が沈殿して底にたまる尿沈渣(ちんさ)を顕微鏡で調べ、一視野に4個以上の赤血球を認めた場合が、顕微鏡的血尿に相当します。

女性生殖器からの出血のために、尿中に血液が混入しているものは、血尿とは呼びません。

尿は腎臓で作られ、尿管を通って膀胱(ぼうこう)に至り、一度貯留された後、尿道から排出されます。従って、この経路のどこかに腫瘍(しゅよう)、結石、炎症などが存在し出血していると、血尿を生じます。男性の場合は、生殖器である前立腺(ぜんりつせん)や精巣(睾丸〔こうがん〕)と泌尿器がつながっているため、前立腺からの出血でも血尿を生じることがあります。

高齢者で血尿をみた時に、最も注意しなければいけない疾患は、悪性腫瘍、すなわちがんです。血尿を来すがんは、腎臓がん、腎盂(じんう)がん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がんなどです。そのほか、尿路系臓器の周囲の臓器からのがんが浸潤し、血尿を生ずることもあります。例えば、大腸がん、子宮がんの転移が、それに当たります。

がんによる血尿は通常、肉眼的血尿なので、気付いたらすぐに検査を受ける必要があります。顕微鏡的血尿でも、まれにがんによって起こされることがあります。腎臓がんでは背部痛を生じることもありますが、無症状のことも多く、肉眼的血尿があった時には他の症状がなくても検査を受ける必要があります。

血尿を生ずる疾患としては、結石もあります。腎臓で作られた尿の最初の通路である腎盂の中で形成された結石が、尿管の細い部分に詰まると、痛みと血尿を生じます。尿管には、腎盂と尿管の移行部、総腸骨動脈圧迫部、尿管と膀胱の移行部という3つの狭窄(きょうさく)部があり、そこに結石が詰まりやすくなっています。狭窄部に詰まっていない状態では、痛みもなく血尿もほとんど認めません。

尿管、膀胱でも結石ができることがあり、特に感染、異物の存在などが結石の核となるとされています。

膀胱炎もしばしば血尿の原因となり、急性膀胱炎の場合は通常、排尿時痛、頻尿、白血球が混入した膿尿(のうにょう)を伴います。慢性膀胱炎の場合には、血尿と膿尿だけで、痛みや頻尿の症状は比較的軽く、ほとんど自覚しないこともあります。

尿路系臓器の炎症では、細菌がついて起こる前立腺炎、腎盂腎炎、尿道炎も、血尿の原因となります。高齢者になってから発症することは少ない疾患で血尿を生じるものに、慢性糸球体腎炎(特にIgA腎症)、急性糸球体腎炎、多発性嚢胞(のうほう)腎、腎結核などが挙げられます。青年期からの無症候性血尿としては、遊走腎、薬剤性血尿などがあります。

血尿の発症者の約10人に1人は原因を特定できないことがあり、特発性血尿といいます。また、健常者でも激しい運動後、一時的に血尿を認めることがあります。いずれにおいても血尿が認められた時は、泌尿器科、ないし腎臓内科の医師の診断を受け、定期的に経過観察することが必要です。

血尿の検査と診断と治療

泌尿器科、腎臓内科の医師による診断では、症状および各種検査を総合し、血尿の原因を確定します。

血尿に排尿時痛を伴う時は、膀胱炎、膀胱結石を疑います。血尿に腹痛、背部痛を伴う時は、腎結石、尿路結石を疑います。血尿に浮腫(ふしゅ)、高血圧などを伴う時は、腎糸球体病変を疑います。

肉眼的血尿の場合、ある期間持続すると貧血が進行する恐れがあり、早急に精密検査を行います。尿の通過経路である腎臓、尿管、膀胱などに血尿の原因となり得る腫瘍、結石などの病変はないかを調べます。腹部超音波、腎盂尿管膀胱撮影、静脈性尿路造影などを行い、異常所見を検索します。特に中高年の場合は悪性疾患を疑い、尿中に混入している異常細胞を調べる尿細胞診を繰り返し行うことがあります。

無症候性の顕微鏡的血尿を各種の健康診断で指摘されている場合、尿沈渣を行い、赤血球円柱、赤血球の変形などがあれば、腎糸球体疾患を疑います。IgA腎症、急性糸球体腎炎などが考えられ、診断のため血液検査を行います。尿沈渣に異常がみられない場合、尿管、膀胱などの下部尿路系の病変を考え、肉眼的血尿の時と同様に腹部超音波、腎盂尿管膀胱撮影、静脈性尿路造影などを行います。

そのほかの尿所見で、白血球の混入が認められれば膀胱炎、腎盂腎炎などの感染症、異型細胞が認められればがんを疑います。

泌尿器科、腎臓内科の医師による治療では、血尿そのものより、血尿の原因となる疾患の治療、経過観察を重視します。 

がんの治療では、三大治療と呼ばれる外科療法、放射線療法、化学療法の3つを駆使し、状況に合わせて組み合わせた集学的治療を行います。腎臓がん、膀胱がんの早期には手術を行いますが、転移がひどい場合や年齢的に手術不可能の場合は、インターフェロン療法などの化学療法を行います。

尿路結石では、痛みや繰り返す膀胱炎、腎盂腎炎などの症状がなければ、尿とともに自然に出てくるまで経過観察で様子をみることもあります。症状がある場合や大きな結石の場合は、結石に超音波などの物理的エネルギーを加え、そのエネルギーで結石を粉砕し、体外に出す破砕療法や、手術によって除去します。

膀胱炎、腎盂腎炎などの感染症では、感染している細菌に有効な抗生物質、抗菌剤を投与します。効果は比較的早い段階で現れます。どこで炎症を起こしているかにもよりますが、水分の摂取を多くして尿量を増やし、細菌を洗い流すほか、尿の刺激性を低下させて症状を和らげます。症状の強い際は、十分な休息、睡眠を確保するようにします。

🇻🇦結膜炎

結膜炎とは、目の結膜に炎症が起こる病気の総称で、大きく分けて、急性結膜炎と慢性結膜炎とがあります。

結膜とは、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆っている、薄い粘膜の部分を指します。まぶたの裏側を覆っている部分は眼瞼(がんけん)結膜、白目の表面を覆っている部分は眼球結膜と呼ばれています。一方、黒目の部分を覆っている粘膜は角膜と呼ばれています。

その結膜の働きは、直接、外界に接している目を異物の侵入から守ること。そこで、結膜には抗菌作用のある粘液や涙液が分泌され、常に作られている涙で目の表面を潤して防御しているのですが、多くの細菌にさらされたり、睡眠不足、過労などで抵抗力が落ちている時には、炎症を起こすことがあるのです。

結膜炎の症状は引き起こす原因によって異なりますが、共通する症状として白目の充血、目やになどが現れます。

急性結膜炎は、主に細菌、ウイルス感染によって引き起こされます。アデノウイルスによる流行性角結膜炎(はやり目)や咽頭結膜炎(プール熱)では、患者の分泌物などから伝染し、しばしば地域や学校で集団感染し、大量の目やに、リンパ腺(せん)のはれが生じます。そのほか、エンテウイルスによる急性出血性結膜炎などもあります。

慢性結膜炎は、細菌の感染、ダニや花粉などのアレルギー、目をこすりすぎるなどの機械的刺激、薬品などの化学的刺激といった、種々の原因によって引き起こされます。

🇻🇦結膜下出血

突然、目の白目に赤い出血斑が現れる状態

結膜下出血とは、突然、目の白目に赤い出血斑(はん)現れる状態。白目の一部分がわずかに赤く見えるもの、黒目の回りが真っ赤になるものなどがあります。

目をぶつけたり、強くこすったりした時、または、そのような原因が思い当たらない場合にも起こります。通常は痛み、かゆみなどの自覚症状はないため、朝起きて鏡を見て見付けたり、周囲の人に指摘されたりして気が付くこともよくあります。

赤い出血斑は、白目の表面を覆っている眼球結膜に存在する大小の血管が破れて、結膜の下に広がったものです。小さな点状のものから、斑状、時に眼球結膜全体を覆う広範なものもあります。また、血腫(けっしゅ)を作ることもあります。

通常の出血では多少、目がごろごろする程度で、ほとんど痛み、かゆみ、目やになどの症状は伴いません。また、眼球内部に血液が入ることはないため、目が見えにくくなったり、視野が狭くなったりすることもありません。

普通は、1~2週間で自然に吸収されてきれいな白目に戻ります。出血斑の状態は、赤色、茶褐色、黄色、白色と変化することになります。まれに、茶褐色が比較的長期間残ることがあります。中には、出血が自然に吸収されてきれいな白目に戻るまで、2~3カ月かかるものもあります。時間はかかりますが、出血は吸収されますので心配はいりません。

多くの場合、結膜下出血は特別な治療の必要はなく、放置しておいてもかまいませんが、目に外傷を受けた場合、痛みやかゆみ、目やにを伴う場合、頻繁に繰り返す場合、熱を伴う場合は、自分の症状をしっかりと眼科医に伝えアドバイスを受けます。

なお、出血と充血の違いを挙げると、出血は血管が破れて血液が出たもので、血管の走行が見えません。一方、充血は細い血管が拡張した状態で、血管の走行が見えます。充血の場合は、血管収縮剤を使うと赤みが少なくなります。

結膜下出血の検査と診断と治療

結膜下出血で痛みやかゆみ、目やにを伴う場合、頻繁に繰り返す場合には、高血圧症や動脈硬化症、出血しやすくなる疾患などの有無を検査します。

医師の治療では、目の疾患や全身性疾患が要因になっている場合は、原因疾患の治療を行います。目に外傷を受けている場合は、感染の予防などのため直ちに穿孔(せんこう)部を閉じる必要があります。隠れた目の外傷があって結膜下出血がなかなか消えない場合も、穿孔部を閉じる必要があります。

出血が止まっても赤目が広範で長引いているひどい場合は、吸収促進のために血栓溶解剤などを結膜下注射することもあります。

ほとんどの場合、結膜下出血が起こった後に眼底出血が起こることはありません。しかし、動脈硬化、高血圧、糖尿病、出血性素因(貧血、白血病、紫斑病など)、腎炎(じんえん)に伴って起こるような疾患が原因の場合は、眼底出血が起こり、失明することもありますので注意が必要です。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...