iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った心臓の筋肉の細胞を球状に加工し、重い心臓病の患者に移植する手術を実施したと、慶応大学の研究者らが作ったベンチャー企業が発表しました。治験として行ったということで、国の承認を目指すとしています。
これは、慶応大学医学部の福田恵一教授らが立ち上げた医療ベンチャー企業「ハートシード」(東京都新宿区)と、手術を行った東京女子医科大学病院の医師が10日に会見を開いて発表しました。
この企業では、iPS細胞から心臓の筋肉の細胞である心筋細胞を作り、球状に加工して、重い心不全の患者の心臓に注射で移植する、新たな治療法の開発を進めています。
発表によりますと、第1例目となる患者の手術を、昨年12月、東京女子医科大学病院で、国の承認を得るための治験として行ったということです。
患者は、心筋梗塞を起こして重い心不全の状態となっている60歳代の男性で、別の冠動脈バイパス手術を受けるのに合わせて、iPS細胞から作った球状の心筋細胞の塊およそ5万個を、心臓の15カ所に注射して移植したということです。
福田教授によりますと、移植によって心臓の機能の回復が期待できるとしており、これまでのところ患者の状態に問題はなく、今後、半年から1年かけて安全性や効果を確認するということです。iPS細胞は、患者本人とは別の健常な提供者から血液を採取してつくったもので、患者は移植を受けた後、免疫抑制剤を飲む必要があります。
福田教授は、「研究を最終的に臨床に反映することが、何より大事だと思ってきた。非常に大きな一歩だ」と話しており、今後、2人目の手術も行いたいとしています。
2023年2月13日(月)