アメリカの食品医薬品局(FDA)は4日、アメリカの製薬企業バイオジェンとセージ・セラピューティクスが開発した産後うつに対する初の飲み薬の製造販売を承認しました。従来の薬は静脈注射薬で、医療施設で60時間にわたり投与を受ける必要がありました。
産後うつは、妊娠後期から出産数カ月後にかけて1割ほどの女性に発症します。深刻な場合は患者の生命を脅かし、母子の関係を損なうことで、子供の発達に影響をおよぼす可能性もあります。飲み薬の承認は、多くの患者に有益な選択肢をもたらすとしています。
今回、産後うつの治療薬として承認された「ズラノロン」は、うつ病(大うつ病性障害)の治療薬としてすでに承認されているもので、毎日夜に1回、2週間続けて飲むのが基本。臨床試験では、産後うつの症状改善効果を確認しました。
通常のうつ病の治療薬は服用後、効果が現れるまで数週間を要するのに対して、ズラノロンは数日で症状が緩和するとされています。
バイオジェンとセージ・セラピューティクスは、大きなチャンスになると期待しています。アメリカ国立衛生研究所(NIH)の推定によると、2020年に顕著なうつ症状を少なくとも1回経験したアメリカの成人は2100万人に達しました。またアメリカ疾病管理予防センター(CDCP)によれば、出産女性の約8人に1人が産後うつを発症しました。
ズラノロンの発売にはアメリカ麻薬取締局(DEA)の承認が必要。
アナリストは、セージ・セラピューティクスのズラノロンの売上高が2029年までに約10億ドル(約1420億円)になると予測しています。大半の海外市場での販売権を持つバイオジェンのズラノロンの売上高は2029年までには12億ドル(約1704億円)で、アメリカ国内の利益の半分を受け取る見込み。
2023年8月5日(土)