2023/09/05

🟧高齢者のてんかんに注意を 70歳以上での発症多数

 脳の神経細胞の過剰な活動により、けいれんや体の硬直などの発作が起きる「てんかん」の人口当たり有病率や発症率が70歳以上で特に高いというデータを、厚生労働省研究班が初の全国規模の調査で明らかにしました。発作が起きても認知症など別の病気と診断されている可能性もあり、てんかんであることも想定して治療を考える必要があると指摘しています。

 「有病率」はある時点でその病気になっている人の割合を指し、「発症率」は一定の期間に新たにその病気を発症した人の割合を指します。病気の実態を把握し、保健医療の施策を考えるために重要なデータですが、てんかんでは全国規模で調べられてきませんでした。

 研究班は、2012~2019年に全国の健康保険組合加入者で74歳以下の約990万人から、診断名や使用している薬の情報を手掛かりに約7万7000人のてんかん患者を見付けました。

 有病率は、2012年から2019年にかけて人口1000人当たり5・4人から6・0人とわずかに増えていました。ほかの先進国と同水準だといいます。特に有病率が高いのは70~74歳で、10歳代がそれに続きました。

 発症率は、1年間に人口10万人当たり72・1人でした。男性より女性で少し高く、世代別では0歳と70~74歳が特に高くなりました。

 調査に中心的にかかわった広島大学病院てんかんセンターの飯田幸治センター長は、「子供の病気と考えられがちだが、高齢者が脳卒中や認知症などの神経疾患と合併して発症するケースが多い」とし、高齢化により発症率が高まる可能性を指摘。「てんかんと認知症の症状は似ており、てんかんの薬を使うなど適切な治療で回復が見込めるかもしれない」と話しています。 

 2023年9月5日(火)

2023/09/04

🟧解毒剤に国未承認の「美白」効能広告 名古屋市が薬局チェーンに行政指導

 名古屋市は1日までに、医療用医薬品のインターネット広告で国に承認されていない効能をうたい、医薬品医療機器法に違反したとして関東、中部、関西で「おだいじに薬局」「セルフケア薬局」など約40店舗を展開する「GOOD AID(グッドエイド)」(名古屋市)に広告を取り下げるなど改善を行政指導しました。

 市によると、同社は無料通信アプリ「LINE(ライン)」で登録した顧客に対し、解毒剤成分「グルタチオン」を含む医薬品の広告で、国から未承認の「美白・日焼け予防」「アンチエイジング作用」の効能をうたっていました。また、特定の整腸剤の広告で、「太りにくい体質になりたい人向け」などと宣伝する文章を日常的に送信していました。

 医療用医薬品を一般向けに宣伝することを禁じた「医薬品等適正広告基準」にも抵触していました。

 2023年9月4日(月)

🟧遺体保管中のドライアイスによる中毒死事故、5年間に4件発生 換気の重要性強調

 遺体の腐敗防止を目的に使われるドライアイスが気化した二酸化炭素を吸い込んで中毒死したとみられる事故が、2018年以降の5年間に少なくとも4件発生していることがわかりました。いずれもひつぎに納められた遺体に寄り添うなどしていました。全日本葬祭業協同組合連合会(東京都港区、全葬連)は、遺体の安置時は換気に注意するよう呼び掛けています。

 全葬連と消費者庁によると、遺体保存用のドライアイスが原因で二酸化炭素中毒となり死亡したとみられる事故は、2018年に青森県の住宅で1件、2020年に沖縄県の住宅で1件、2021年に宮城、宮崎両県の葬祭施設で1件ずつの計4件ありました。

 亡くなったのは40~70歳代の親族ら。ドライアイスで冷やされた遺体を納めたひつぎにもたれかかったり、近くで横たわったりした状態で見付かりました。故人の顔を見ようとしてひつぎに近寄った際、ドライアイスが気化した二酸化炭素を吸い込んだとみられます。

 ドライアイスは、二酸化炭素を冷却して固体にしたもので、常温常圧では気体になります。二酸化炭素は無色無臭で、空気中に約0・03%の濃度で存在しています。濃度が3~4%を超えると、頭痛やめまいを引き起こします。10%になると、視覚障害や耳鳴りを引き起こし、1分程度で死に至ります。

 臨床中毒に詳しい、元筑波大教授で茨城県西部医療機構理事長の水谷太郎さんは、「二酸化炭素は空気より重く、低い方に滞留する性質がある。ひつぎのような閉鎖環境では、ふたが開いていてもたまりやすく、ドライアイスの量などによって、近付いた際に二酸化炭素中毒になる危険性は十分にある」と指摘しています。

 全葬連によると、故人の体格や火葬するまでの時間などによって使用する量は異なるものの、遺体の保管にドライアイスは欠かせないため、今年8月に会員企業に同種事故の有無などを確認するとともに、遺体安置時は換気に十分配慮することや遺族らに注意喚起を行うことなどを求めました。

 水谷さんは、「注意すれば防げる事故。ひつぎに納められた遺体との対面は、換気の行き届いた場所で、複数人で手短に行うことが大事だ」と話しています。

 2023年9月4日(月)

🟧高齢者の電動車いす事故、過去10年で最多ペース 新型コロナ後の久しぶりの操作原因か

 製品評価技術基盤機構(NITE)は8月31日、65歳以上の高齢者による電動車いすの事故が今年1~7月に8件発生し、過去10年で最多だった2018年と2020年の年間発生件数に並んだと発表しました。新型コロナウイルスの「5類」移行で外出機会が増える中、久しぶりの車いす操作に不慣れなことが原因とみています。

 被害状況別では、死亡6件、重傷1件、製品破損1件。事故内容別では電車との接触3件、転倒3件、転落2件でした。

 NITEによると、2013年~2023年7月に発生した高齢者の電動車いすの事故は52件で、死亡(26件)と重傷(16件)で約8割を占めます。

 NITEは、「乗車前に十分に練習し、利用する道路などの状況を介護者とよく確認してほしい」としています。

 2023年9月4日(月)

2023/09/03

🟧訪問介護事業所220カ所が休廃止 市区町村の社協で運営、5年間で13%減

 社会福祉法に基づき全市区町村にある社会福祉協議会(社協)で運営する訪問介護事業所が過去5年間に少なくとも約220カ所、廃止や休止されたことが2日、マスコミの調査で明らかになりました。5年間で約13%減り、現在は約1300カ所。都市部で一般の民間事業者との競合を理由に撤退するケースもあるものの、多くはヘルパーの高齢化や人手不足、事業の収支悪化などが響いています。

 公的な性格を持つ社協が事業をやめると、採算面などで民間事業者が受けたがらない利用者にサービスがゆき届かなくなる恐れがあります。政府は「住み慣れた地域で最期まで暮らせるように」という理念を掲げていますが、厳しい現実が浮き彫りとなりました。

 調査は、都道府県が所有する介護保険の事業所データから社協の訪問介護を抽出。2018年と2023年(一部は期間が異なる)を比較し、2023年データに載っていない事業所について各社協に廃止や休止かどうか尋ねました。

 社協の訪問介護は2023年現在、全国に1302カ所(休止中は除く)。5年間に44都道府県で218カ所が廃止(統廃合を含む)や休止となっていました。

 都道府県別で訪問介護事業所の減少率が高いのは、鳥取県53・3%(減少数8)、次いで大分県38・5%(同10)、千葉県30・4%(同7)、茨城県28・6%(同10)、栃木県27・8%(同5)の順でした。

 2023年9月3日(日)

🟧目の遺伝子治療薬「ルクスターナ」、国内で初発売 薬価は両目で1億円

 スイス製薬大手ノバルティスの日本法人ノバルティスファーマは8月30日、網膜の異常で目が見えにくくなる難病「遺伝性網膜ジストロフィー」の遺伝子治療薬「ルクスターナ」を発売したと発表しました。薬価は片目当たり4960万226円で、両目では約1億円。国内では2番目に高額となります。

 国内では眼科領域で初の遺伝子治療薬。遺伝性網膜ジストロフィーは、視力障害や視野が狭まったり、暗いところで見えにくいなどの症状があります。ほぼすべての患者が最終的に失明するとされ、これまで治療法がありませんでした。

 ルクスターナは、網膜で光を感じる働きにかかわる「RPE65遺伝子」に変異がある患者が対象となります。正常なRPE65遺伝子を患者に導入し、視覚機能の回復を図る遺伝子補充療法です。片目1回ずつの注射で治療が完了します。海外の臨床試験では、投与1年後の患者の光の感度が約100倍改善したといいます。

 ピーク時の2028年の売上高は患者5人で5億円と予測しています。ノバルティスファーマは、全身の筋力が低下する難病「脊髄性筋萎縮症」の遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ」も販売しており、薬価は1億6707万円と国内で最高額。ルクスターナはこれに次いで、2番目に高い医薬品となります。

 ノバルティスファーマのレオ・リー社長は、「対象患者は非常に少数だが、日本では眼科疾患で初めての遺伝子補充療法を提供できてうれしく思う。これまで治療法がなく、失明の不安を抱えながら生活している患者の人生を変えられる可能性がある」とコメントしました。

 2023年9月3日(日)

2023/09/02

🟧直近1週間の新型コロナ感染、岩手県が全国最多 青森県が2位で流行の中心は東北地方に

 新型コロナウイルスについて、厚生労働省は9月1日、国内の最新の感染状況を発表しました。岩手県の患者数は、1医療機関当たりでみると全国で最も多くなりました。

 岩手県内で8月21日から8月27日までの1週間に、県が指定している定点医療機関から報告された新型コロナウイルスの新規患者数は1966人で、1医療機関当たりでみると31・71人でした。全国平均は19・07人で、岩手県は全国で最も多くなっています。

 東北各県では青森県が31・30人と岩手県に次いで多く、宮城県が29・54人(全国3位)、秋田県が26・73人(同5位)、福島県が25・87人(同6位)など高い水準にあります。

  岩手県は、「流行の波が西日本から東日本に移ってきていると思う。県内ではクラスター(感染者集団)も増えてきているので体調が悪い場合は療養するなど、場面に応じた感染対策を引き続きお願いしたい」と呼び掛けています。

 一方、青森県感染症対策コーディネーターの大西基喜医師は、夏祭りや帰省シーズンで人の移動が活発だったことなどを背景に、青森県の感染拡大の規模は「定点医療機関で把握していないぶんも含めると、過去最大とみられる」との見解を改めて示しました。

 青森県の千田昭裕新型コロナウイルス感染症対策監は、「沖縄から始まった流行が九州、西日本と移り、今は北日本にピークがきている状況」と説明。前週から今週にかけ、10歳未満の感染者の割合が高まっており、夏休み明けの学校での感染拡大も影響しているとみられます。

 青森県の推計によると、2022年夏の第7波では、青森県のピーク時の感染者数は55・71人、2022年冬の第8波ピーク時は42・48人。直近の集計値は、それぞれのピークを下回っているものの、大西医師は「集計方法が変わり、定点以外の医療機関を受診する人、発症しても受診しない人もいる。医療機関からの話を総合すると、今が一番多い時ではないか」と解説しました。

 現状の感染の広がり具合については、「周囲に当たり前のように感染者がいる。誰もが感染者と接触しているのではと想定し、発熱などの症状が出たら真っ先にコロナを疑う状況」との見方を示しました。

 重症化リスクが高い人、息苦しさを覚えるなど症状が重い人は医療機関の受診が必要としつつ、「発熱した人が全員医療機関へ押し寄せると、負担が大きく増える。軽症の人は自己検査や自分で薬を用意するなどの対応が大事になる」と話しました。

 2023年9月2日(土)

🟥茨城県の救急電話相談、2カ月間で最多2万9170件 選定療養費徴収が影響か

 救急車を呼ぶか迷った際に助言を受けられる茨城県の「救急電話相談」で、昨年12月と今年1月の2カ月間の相談は前年同期比約12%増の2万9170件に上り、過去最多となったことが11日、県への取材でわかりました。12月に始まった緊急性のない救急搬送患者から「選定療養費」を徴収する制...