新型コロナウイルスの感染した後に症状が長引く後遺症を巡り、東京都内の女性に「傷病補償年金」の支給が認定されました。支援するNPO法人東京労働安全衛生センターによりますと、コロナの感染でこの年金が支給されるのは初めてとみられ、後遺症に苦しむ人たちの救済につながると期待されています。
22日、厚生労働省で東京都内に住む55歳の女性が記者会見を開きました。
女性は2021年1月、東京都福生市の有料老人ホームで事務員として働いていた際に、施設でクラスター(集団感染)が発生し、自身も新型コロナに感染して症状が悪化し、救急搬送されました。CT(コンピューター断層撮影)検査で両肺が真っ白に映るほどの重度の肺炎を起こしていたということです。1カ月ほどで退院しましたが休職し、その後も呼吸困難の症状が収まらず、7月に労災認定を受けました。
その後も息苦しさなどは改善せず、自宅で酸素療法を続ける生活を2年以上続けていたところ、今年5月に労働基準監督署から傷病補償年金の支給が決まったと通知されたということです。
傷病補償年金はこれまでじん肺などで療養を始めてから1年半が経過した、症状が重い人が対象となっていましたが、NPO法人東京労働安全衛生センターによりますと、コロナで支給されたのは初めてとみられるということです。
女性は「毎日酸素を2リットル使う生活で、元気に動ける日が少なく不自由な生活になった。時間がかかったけど、支給が認められてほっとしています」と話していました。
NPO法人東京労働安全衛生センターの飯田勝泰事務局長は、「コロナの後遺症に苦しむ人たちの治療と補償が課題になっている中で、国は傷病補償年金を支給し多くの人たちの救済につなげてほしい」と話していました。
労働問題に詳しい東洋大学の鎌田耕一名誉教授は、「新型コロナの後遺症が労災認定されるのは、そもそもハードルが高いといわれている。そうした中で後遺症が長期化した人に傷病補償年金の支給を認めたことは重要な判断だ。コロナの後遺症は企業によっては理解が進んでおらず、症状が続く人が『いつまで仕事を休むのか』といわれるようなケースが少なくないため、こうした人たちへの支援をどう進めていくか、考えていく必要がある」と話しています。
厚労省の研究班は、成人の新型コロナ感染者のうち11・7%から23・4%に後遺症があったとの調査結果を公表しています。
2023年9月25日(月)