2023/12/09

🟧世界初のゲノム編集治療、アメリカで承認 遺伝性の血液異常疾患対象

 アメリカ食品医薬品局(FDA)は8日、遺伝性の血液疾患「鎌状赤血球貧血症」に対応するゲノム編集技術を利用した世界初の治療を承認しました。同治療に利用するクリスパー・キャス9という手法は、2012年に開発されてから10年強で実用化されました。

 がんやエイズウイルス(HIV)などの治療にも応用できる可能性があるとされ、2020年にはノーベル化学賞も受賞しました。

 アメリカのバイオ企業「バーテックス・ファーマシューティカルズ」とスイス拠点の「クリスパー・セラピューティクス」が共同開発しました。承認された治療は鎌状赤血球貧血症の患者で、血管閉塞性危機が定期的に起こる12歳以上の人が対象となります。

 治療では、患者から採取した造血幹細胞をゲノム編集技術で遺伝子改変して、それを注射で体内に戻します。事前に抗がん剤を投与(化学療法)して、元々持っていた造血幹細胞を除去します。

 鎌状赤血球貧血症は本来、円盤状の赤血球が三日月のように変形する病気です。変形した赤血球が血管に詰まり、激しい痛みや臓器損傷が生じます。FDAによると、鎌状赤血球貧血症の患者はアメリカ国内に約10万人おり、主に黒人の患者が多くなっています。

 バーテックス社の治療は、イギリスの医薬品・医療製品規制庁(MHRA)も11月に承認しました。これまで鎌状赤血球貧血症の患者には造血幹細胞を白血球の型である「HLA型」が一致するドナー(提供者)から受ける以外に、治療の選択肢がありませんでした。

 今回の承認でゲノム編集に対する関心がさらに高まりそうです。現在、同技術を利用したHIVやがん、希少疾患などの治療の開発が進んでいます。

 FDAは、「今回の承認は遺伝子治療の分野で革新的な進歩があったことを示している」としています。

 アメリカのホワイトハウスは承認を受けて、「この医学的進歩には、さらなる命を救う治療の開発の可能性が秘められている。他の希少疾患とともに生きる何百万人ものアメリカ人に希望を与えるものだ」と歓迎する声明を出しました。

 2023年12月9日(土)

🟧特許切れ先発医薬品を希望する患者の窓口負担引き上げへ 厚労省

 厚生労働省は、医療上の必要性がない場合に、ジェネリック(後発医薬品)ではなく、特許が切れている先発医薬品の処方を希望する患者の窓口負担額を引き上げる方針を審議会に示し、来年度中にも引き上げが実施される見通しです。

 厚労省は、医療費を抑制し、新薬開発の後押しをする財源を捻出したいとしており、8日に開かれた社会保障審議会・医療保険部会に、医療上の必要性などがない場合に、価格が高く、特許が切れている先発医薬品の処方を希望する患者の窓口負担額を引き上げる方針を示しました。

 具体的には、発売から5年以上経過した先発医薬品などを対象に、ジェネリックとの差額の4分の1から半分程度を全額自己負担にする複数の案があります。

 例えば、500円の先発医薬品と250円のジェネリックがある薬で、窓口負担が3割の場合、先発医薬品を選んだ時の支払い額は、今は150円ですが、これが200円から250円になる計算です。

 ジェネリックの薬価は先発医薬品のおよそ半分程度とされます。厚労省はこれまでも、高齢化や医療の高度化に伴って年々増大している医療費を抑えるため、ジェネリックの使用率が高い薬局や医療機関には追加の報酬を支払うなど、ジェネリックへの移行を進めてきました。2021年時点で、ジェネリックの使用割合は79%まで高まりましたが、さらに推し進めたい考えです。

 2023年12月9日(土)

🟧男子高校生のうつ傾向、新型コロナで顕著に

 国立国際医療研究センターなどのチームは8日までに、新型コロナウイルスの流行下では、流行前と比べて、男子高校生のうつ傾向が強まったとの研究成果をまとめました。チームは男子では女子よりも部活動などの制限の影響が大きかったほか、悩みがあっても助けを求めにくかった可能性があるとしています。

 新型コロナ流行前の2019年2月~2020年2月に調査したグループと、流行後の2020年3月~2021年9月に調査したグループを比較。その結果、流行後のグループは男子の平均点が0・97点高くなり、状態が悪化していることがわかりました。流行後を時期ごとに調べると、時間の経過とともにより悪化していました。

 2023年12月9日(土)

🟧入院時の食費自己負担30円上げ、490円に 2024年にも

 厚生労働省は8日、医療機関の入院患者が自己負担する食事代について、国が定める1食当たり原則460円を、30円増の490円とする方針を決めました。物価高騰で仕入れ費用が増えていることに対応し、早ければ2024年6月に引き上げます。同日の社会保障審議会の部会で提案し、了承されました。

 現行制度では、医療機関は入院患者の自己負担460円に、公的医療保険からの給付180円を加えた計640円で食材費を賄っています。詳しい引き上げ時期は12月中に決める見通し。引き上げまでの間も物価高に対応するため、医療機関に対し1食20円相当を交付金などで支給します。

 2023年12月9日(土)

🟧インフルエンザ患者数、3週間ぶり減少 1医療機関当たり26・72人、依然として多い状況続く

 厚生労働省は8日、全国約5000の定点医療機関が11月27日~12月3日に報告した季節性インフルエンザ患者数は13万2117人で、前の週から7797人減少したと発表しました。1医療機関当たりでは、前の週から1・58人少ない26・72人となりました。

 前週比0・94倍で3週間ぶりに減少したものの、例年の同時期と比べて極めて患者数が多い状況が依然として続いています。

 データを基に推計されるこの1週間の全国の患者数は約91万人となっていて、今年9月4日以降の累積の患者数は約688万5000人と推計されています。

 都道府県別で1医療機関当たりの患者数が多かったのは、北海道が50・49人、宮城県が42・66人、福岡県が40・13人、長野県が40・09人など。少なかったのは沖縄県8・17人、秋田県13・79人、東京都15・08人。17の道と県で「警報レベル」とされる30人を超え、沖縄県を除くすべての都道府県で「注意報レベル」の10人を超えています。

 休校や学級閉鎖などとなったのは、4690施設でした。

 感染症に詳しい東邦大学の舘田一博教授は、「患者数は減少したが横ばいの状況だ。今後も増加の傾向が見込まれ、年明けには急激に増える可能性もある。引き続き、室内では適度な湿度を保つことや換気に注意すること、それに密になるような場面でのマスクの着用など、生活の中で可能な範囲で感染対策を意識してほしい」と話しています。

 2023年12月9日(土)

🟧神奈川県の新型コロナ感染者、3週連続増加 1医療機関当たり1・60人

 新型コロナウイルス感染症を巡り、神奈川県は7日、県内364カ所の定点医療機関で報告された感染者数を公表しました。11月27日~12月3日の1週間で、1医療機関当たりの平均患者数は1・60人で前週比0・24人増え、3週連続で増加しました。

 報告された患者数は全県で583人。定点医療機関当たりでは、横浜市が1・34人、川崎市が2・10人、相模原市が1・51人、政令市以外の県域が1・69人でした。

 新型コロナの感染者数は、感染症法上の位置付けが5類に移行したのに伴い、今年5月8日から一部の医療機関が1週間分を報告する定点把握に変わっています。

 12月6日時点の入院者数は319人(前週比31人増)で、うち重症者はゼロ(前週比1人減)でした。

 また、同期間の季節性インフルエンザは定点医療機関当たりの平均患者数が17・09人で、前週比で1・25人減少しました。

 報告された患者数は全県で6219人。定点医療機関当たりでは、横浜市が16・53人、川崎市が17・34人、相模原市が18・03人、政令市以外の県域が17・31人でした。

 2023年12月9日(土)

2023/12/08

🟧名古屋大学が針を使わぬ「貼る注射器」を開発 衝撃波を発生させ薬剤を粒子で注入

 名古屋大学工学研究科の市原大輔助教らは、針なしで薬剤を体内に注入できる注射器を開発しました。薄いシートを皮膚に貼り、ロケットの打ち上げ時などに生じる衝撃波を発生させて、皮下組織まで薬剤を届けます。自己注射が必要な糖尿病患者や不妊治療中の人などの注射への負担を減らす医療機器として、実用化を目指します。

 物体が音速を超えて進む時に、衝撃波が発生します。爆発が起きた際、離れた場所の窓ガラスが割れるのは衝撃波が出ているためです。

 市原助教らは衝撃波を駆使することで、針なしで薬剤を注入できる手のひらサイズの貼る注射器を開発しました。ばんそうこうのような厚さ0・3ミリメートルの薄いシートで、皮膚に貼って使います。

 瞬間的に高い電流を与えて衝撃波を発生させることで、薬剤を体内に高速で注入することができます。使用する電気エネルギーはごくわずかで、痛みを感じるレベルでもないとしています。

 シートは3層構造になっており、皮膚から一番遠い上層が電流を供給する基盤になっています。中間層は「ブリッジ部」という構造で、電流が流れると一部分にエネルギーが集中して衝撃波が発生します。皮膚に一番近い下層は絶縁体のポリイミドでできており、粒子状の薬剤を塗布し、衝撃波によって皮下組織に注入される仕組みです。

 通常の針がある注射器では、薬剤の粒子を液体に溶かしてから注入していますが、新しい注射器は液体で薄めずに粒子のまま注入します。

 人肌を模したゲルに貼って作動させ、約50マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの粒子が中に入るのを確認しました。この大きさは、市販の注射用の薬剤を液体に溶かす前の粒子の大きさとほぼ同じになります。皮膚から約2ミリメートルの深さまで届き、皮下注射をする時の深さに相当します。粒子が小さいため、針を刺すより痛点を刺激する確率が低く、痛みは少なくなるとみています。

 シートの上層の基盤は導電性のインクを使って印刷して作ることができるため、大量生産が可能。針がないため、廃棄時の管理費用も抑えられる利点があります。

 まずは糖尿病治療や不妊治療などのホルモン剤での実用化を目指し、自己注射の体への負担軽減につなげたい考えです。将来は他の薬剤でも使えるようにして、針あり注射器に取って代わる機器になることを目指します。

 市原助教は、「衝撃波は航空業界では本来は厄介者になる。うまく使いこなすことで、今回、注射器という異分野のデバイスにたどり着いた」と話しています。

 市原助教らは人の皮膚に一番近いとされるブタでの実験を進めています。安全性を確かめ、数年以内の実用化を目指すといいます。

 2023年12月8日(金)

🟪小中学生の体力調査、中学生男子はコロナ感染拡大前を上回る

 全国の小学5年生と中学2年生を対象に、50メートル走など8つの項目で体力や運動能力を調べる今年度の国の調査で、中学生の男子の合計点は新型コロナウイルスの感染拡大前を上回りました。一方で、小学生の男女は低下傾向にあり、スポーツ庁は運動の機会を増やす取り組みに力を入れていく方針で...