韓国では、医師不足への対応策として医学部の定員増加を発表した政府と、増員に反対する医師が激しく対立していて、各地の病院に勤務する研修医ら6000人以上が政府に抗議するため辞表を提出するなど、医療現場での混乱が広がっています。
韓国政府はソウル首都圏以外の地方での深刻な医師不足に対応するため、2006年度から3058人で据え置かれてきた全国の大学医学部の定員を、2025年度の入試から2000人増やして5058人とする方針をまとめました。
しかし、医師の団体は受け入れの準備が間に合わないほか、医学部教育や医療サービスの質の低下を招くと主張して、反発を強めています。
こうした中、各地の病院では医師団体の意向に賛同する、臨床現場に配属されて間もない研修医らが辞表を提出して出勤を拒否する動きが相次いでおり、韓国保健福祉省によりますと19日までに6400人余りの研修医が辞表を提出し、少なくとも700人余りが20日朝から出勤していないということです。
韓国メディアはソウルの主な病院の中には救急外来に対応できないところや手術の延期が相次ぐところなど、医療現場での混乱が広がっていると伝えています。
問題の背景には狭き門の医学部に受験生が殺到し、医師のステータスが特権化した韓国の極端な受験競争があるとも指摘されています。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は20日の閣議で、「国民の生命と健康を人質にしてはならない」と述べて早期の復帰を求めました。
また、韓国政府は軍の医師などを動員して医療体制を維持させるとしていますが、研修医の職場放棄が長期化すれば医療現場への影響はさらに深刻になるとの懸念も出ています。
2024年2月21日(水)