2024/06/29

🟧自閉スペクトラム症、海馬異常で他者覚えづらく 東大がマウスで特定

 東京大学の奥山輝大准教授らは、自閉スペクトラム症(ASD)で脳の海馬にある特定の神経同士の接続が弱くなり、他者を記憶する能力が下がることをマウスの実験で突き止めました。ASDでは他者を記憶しづらくなる社会性記憶障害が起きることがあります。成果はASDの解明や治療法の開発に役立ちます。

 脳が物事を記憶する際、複数の神経細胞がつながる神経回路に情報を保存していると考えられています。他者に関する記憶の場合、相手に応じて反応する神経細胞の集団が変わります。

 ASDではコミュニケーション障害や興味の 幅が狭まる症状のほか、社会性記憶障害が起きることがあります。研究チームはASD発症者の多くで変異が生じる遺伝子「Shank3」について、マウスの脳全体で働かなくさせるとこの障害が起きることを見付けていました。だが、詳しい仕組みは未解明でした。

 今回の研究では、記憶にかかわる脳の海馬だけでShank3遺伝子が働かないように遺伝子操作したマウスを使い、社会性記憶障害との関連を調べました。通常のマウスは初対面の相手に興味を抱き、近寄って観察する時間が長くなります。一方で、面識がある相手を観察する時間は短くなります。ところが、遺伝子操作したマウスは面識がある相手にも長く接しました。

 他者に関する記憶には一定数の神経細胞が必要なこともわかりました。Shank3遺伝子が働かないようにした海馬の神経細胞の数を徐々に増やすと、ある段階で社会性記憶障害が起きました。

 アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、8歳児の36人に1人がASDの患者だと推定されています。ASDにかかわる遺伝子は数百個あり、複数の遺伝子変異の蓄積で発症する場合も多くなっています。症状はさまざまで、根本的な治療法はありません。

 研究チームは人のASDの社会性記憶障害でも、脳の海馬の同様な仕組みがかかわっているとみています。奥山准教授は、「海馬がASD治療の新たな標的となる可能性がある」と話しています。海馬の神経細胞のつながりを改善する研究などを進める考えです。

 アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)などとの共同研究で、成果をまとめた論文はイギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されました。

 2024年6月29日(土)

2024/06/28

🟧新型コロナウイルス感染者数、7週連続で増加 1医療機関当たり4・61人

 厚生労働省は28日、全国約5000カ所の定点医療機関から6月17日~23日の1週間に報告された新型コロナウイルスの感染者数が、1医療機関当たり4・61人だったと発表しました。4・16人だった前週から微増し、7週連続で増加しています。

 地域別で最も多かったのは、沖縄県で1医療機関当たり25・68人。次いで鹿児島県が同10・51人、佐賀県が同8・46人などとなっています。

 2024年6月28日(金)

2024/06/27

🟧札幌市の50歳代男性がダニ媒介脳炎を発症 国内6例目、山林でかまれる

 札幌市保健所は26日、市内の50歳代男性が、マダニにかまれて発症する「ダニ媒介脳炎」に感染したと発表しました。2018年5月以来、6年ぶりの感染確認で、国内6例目(いずれも北海道内)。男性は意識障害があり、入院中だといいます。

 発表によると、男性は5月中旬、山菜採りに出掛けた道央エリアでダニに脚をかまれました。同月23日に発熱や脚のしびれなどの症状が出たことから医療機関を受診。道立衛生研究所の検査で、6月24日に陽性と判明しました。

 道内では1993年以降、男女6人がダニ媒介脳炎になり、このうち2016年、2017年には計2人が死亡しました。

 マダニは森林や草地に生息し、春から秋にかけて活動が活発化するといいます。札幌市保健所は、森林や草地に行く時は長袖、長ズボンを着用し、肌の露出を少なくするよう呼び掛けています。

 2024年6月27日(木)

2024/06/26

🟧アルコール健康被害、世界で推計4億人 WHO、若者の飲酒に懸念

 世界保健機関(WHO)は25日、飲酒によるアルコール依存症など健康を害した15歳以上の人口が2019年に世界で推計4億人に上ったとする報告書を発表しました。15~19歳で飲酒経験がある人の割合が「受け入れがたいほど高い」と懸念。飲酒を容認する社会通念により、引き起こされる健康被害が軽視されていると指摘しました。

 WHOは新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今回は2020~2022年のデータをまとめられなかったとしています。

 報告書によると、2019年の1人当たりの年間アルコール消費量(純アルコール換算)は5・5リットルで、2010年の5・7リットルから微減しました。2020年については、新型コロナの影響を受け、2019年に比べ10・1%減の4・9リットルと推測しました。

 消費量は旧ソ連諸国やヨーロッパ地域、北アメリカ・南アメリカ地域で多く、両地域では健康被害に苦しむ人口比が他の地域よりも高くなりました。最も消費量が多い国はルーマニアで17・0リットル。アメリカは9・6リットル、日本は6・7リットルでした。

 2024年6月26日(水)

2024/06/25

🟧国立ハンセン病療養所での旧陸軍の薬剤臨床試験、入所者2人の死亡と因果関係の疑い 

 熊本県合志市にある国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園(けいふうえん)は24日、太平洋戦争中から終戦直後にかけて旧日本陸軍などが入所者に対し、「虹波(こうは) 」と呼ばれる薬剤の臨床試験を行い、試験中に死亡した9人のうち2人について投薬との因果関係が疑われるとする報告書を公表しました。投与対象者は少なくとも472人に上ります。国の報告書などで虹波の存在自体は知られているものの、被害の詳細をまとめたのは初めて。

 入所者自治会の要請を受け、2023年度に園の歴史資料館が収蔵する関連資料56点を精査しました。報告書では、死亡例や激しい苦痛を伴う副作用が確認されても臨床試験は中断されなかったとして、「当時の医師らの医療倫理の在り方に疑問が持たれる」と指摘しました。

 報告書によると、虹波は写真の感光剤を合成した薬剤で、熊本医科大(現熊本大医学部)の波多野輔久医師が陸軍の嘱託で開発しました。体質改善や結核のほか、ハンセン病の治療への活用も期待されたものの、効果は上がらなかったとされます。

 臨床試験は陸軍が指揮し、当時の宮崎松記園長の監督の下で行われ、1942年12月から1947年6月まで続いたといいます。対象と確認できた472人には6歳児も含まれていました。ほかに370人が参加した可能性があります。

 臨床試験中に死亡した9人のうち、7人の死因は肺結核や急性肺炎などでしたが、残る2人は虹波が原因と疑われるといいます。

 報告書では、「被験者は臨床試験への参加を拒否できなかった」と指摘。園内での安寧な生活を得るために、従順な態度を取らざるを得なかったと結論付けました。園は今後も調査を続け、薬剤の医学的な効果などを考察する方針。報告書は近く歴史資料館のホームページで公開する予定。

 医学史に詳しい京都大医学部の吉中丈志臨床教授は、「ハンセン病は死に至ることが少ない慢性疾患で、死者が出た薬を使い続けるのは医療倫理以前に、常識としておかしなことだ」と批判しました。

 虹波に関しては、国が設置した有識者らによるハンセン病問題の検証会議が、2005年にまとめた最終報告書で触れており、他の薬物とともに「副作用ばかりが目立つ」「試用は全くの人体実験だった」と指摘しています。

 厚生労働省は、恵楓園による今後の調査を注視するとしています。

 菊池恵楓園は1909(明治42)年、当時の法律に基づいて全国5カ所に設置されたハンセン病の患者を収容する療養所の1つ「九州らい療養所」として現在の熊本県合志市に開設されました。その後「らい予防法」の制定などによってハンセン病の患者が強制的に収容されるようになり、入所者は1958年のピーク時で1734人でしたが、現在は6月1日の時点で126人となっています。

 また、入所者の平均年齢は87・5歳と高齢化が進んでいます。

 菊池恵楓園には国の隔離政策の一環として、全国で唯一のハンセン病患者専門の刑務所が設けられていましたが、現在は取り壊され、跡地には3年前、小中一貫の公立学校が開校しました。

 園内には、入所者の無断外出を防ぐために設けられた「隔離の壁」など、差別の歴史を今に伝える施設が残っていて、厚労省は、これらの施設をハンセン病問題の啓発のために歴史的建造物として保存することにしています。

 2024年6月25日(火)

2024/06/24

🟧 新型インフルエンザ薬「アビガン」、ダニ感染症に応用承認 世界初のSFTS治療薬に

 富士フイルム富山化学は24日、新型インフルエンザ薬「アビガン」を、マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の治療にも使えるようになる承認を取得したと発表しました。世界初のSFTS治療薬が登場することになりました。

 SFTSは主にウイルスを持つマダニにかまれることで感染し、致死率は約27%と高くなっています。6~14日の潜伏期を経て発熱や下痢などの症状が出ます。

 患者は西日本に多くなっています。ペットからの感染が報告されているほか、患者を診察した医師への感染例も3月に公表されました。

 アビガンのSFTSへの治療応用は愛媛大、長崎大、国立感染症研究所が中心に実施した臨床研究を経て進められました。

 アビガンは新型インフルエンザの流行に備えて国が備蓄している飲み薬で、新型コロナウイルス流行当初に使われ、話題になりました。

 SFTS治療では、緊急時に対応できる医療機関で十分な知識を持つ医師が投与します。動物実験で胎児に奇形が出る恐れが指摘され、妊婦や妊娠している可能性がある人には使えません。

 2024年6月24日(月)

2024/06/23

🟧新型コロナウイルスの感染者は2万561人、6週連続で増加 沖縄県は突出続く

 厚生労働省は21日、全国約5000の定点医療機関から10~16日に報告された新型コロナウイルスの感染者数が計2万561人だったと発表しました。1機関当たりは4・16人で前週比1・04倍となり、6週連続で増加しました。前年同期(5・6人)よりは低くなりました。

 都道府県別では、沖縄県が18・11人と、前週(19・58人)に比べやや減ったものの、突出して多い状況が続いています。

 厚労省の担当者は、「過去に夏に一定の感染拡大があったので状況を注視している」と話しています。

 26都府県で増加。沖縄県に次いで多かったのは鹿児島県8・58人、佐賀県7・26人。少なかったのは山形県1・63人、福井県1・82人、福島県1・89人など。

 全国約500の定点医療機関が報告した新規入院患者数は1372人で、前週比0・98倍でした。

 2024年6月23日(日)

🟪新型コロナ、沖縄県が独自で注意喚起へ 流行時に「拡大準備情報」を発出 

 沖縄県は19日、新型コロナウイルス感染症の流行が疑われる場合、県独自で「新型コロナ感染拡大準備情報」を発出すると発表しました。新型コロナについては、過去の感染データの蓄積が乏しいことなどから、国がインフルエンザのような注意報や警報の発令基準を設けていない一方、重症化する高齢者...