2025/10/15

🟥認知症の前段階「軽度認知障害」、3割が5年後に「正常」に戻る 九州大調査、生活習慣病や筋力と関係か

 認知症の前段階と診断された高齢者の約3割は、5年後に認知機能が正常に戻ったとする研究結果を、九州大のチームがまとめた。生活習慣病がないことや、筋力が保たれていることなどが関係しており、認知症の発症予防につながる可能性があるという。日本老年精神医学会で報告された。

 この研究は、福岡県久山町の65歳以上の住民を対象に1961年から行われている追跡調査の一環。

 調査は2012年と2017年、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)と診断された高齢者計398人を対象に実施。このうち5年後の状況を追跡できた380人を分析した。正常に戻ったのは119人(31%)で、MCIのままだったのは102人(27%)、認知症に移行したのは106人(28%)だった。

 認知機能が回復した人の背景を解析すると、糖尿病がないことや、血圧が低い、年齢が若い、握力が強いなどの要因があった。

 九州大の二宮利治教授(公衆衛生学)は、「認知症になる可能性は誰にでもある。診断を恐れて検査を受けるのを遅らせるよりも、早い段階から認知機能を理解し、対策に役立ててほしい」と話す。

 2025年10月15日(水)

2025/10/14

🟥WHO、薬剤耐性菌の急増に警鐘 「軽傷でも致命的に」

 世界保健機関(WHO)は13日、薬剤耐性菌(AMR)感染症の急増に警鐘を鳴らした。耐性菌の感染では薬の効果が損なわれ、軽傷や一般的な感染症であっても致命的となる可能性がある。

 WHOは、抗菌薬耐性に関する報告書を発表。尿路・消化管感染症、血流感染症、淋病の治療に用いられる22種類の抗生物質について耐性の普及率を調査した。その結果、2023年に世界で確認された細菌感染症のうち、6分の1が抗生物質による治療に耐性を示したことがわかった。

 報告書によると、2023年までの5年間で監視対象の抗生物質の40%以上で耐性が増加し、年間平均で5~15%の増加が見られた。尿路感染症では、一般的に使用される抗生物質に対する耐性率は世界的に30%前後に達していた。

 WHOの抗菌薬耐性部門責任者イバン・j-F・ヒューティン氏は記者団に対し、「非常に憂慮すべき状況だ。抗生物質耐性が増え続ける中で、治療の選択肢が限られ、命が危険にさらされている」と述べた。

  細菌は長い時間をかけて薬剤に対する耐性を獲得しており、多くの薬剤が無効になっている。この現象は、人間や動物、食品への抗生物質の大量使用によって加速されている。

 WHOによると、薬剤耐性菌は毎年100万人以上の直接死因となり、間接的には約500万人の死に関与している。

 WHOのテドロス・アダノム事務局長は声明で、「抗菌薬耐性は現代医療の進歩を上回る速さで広がっており、世界の健康を脅かしている」と警告した。

 利用可能なデータから判断すると、耐性は医療システムが弱く、監視体制が不十分な地域で高い傾向があった。最も耐性が高かったのは東南アジアおよび東地中海地域で、報告された感染症の3分の1が耐性を示した。アフリカ地域では5分の1の感染症が耐性を持っていた。

 2025年10月14日(火)

2025/10/13

🟥「無痛分娩」最大10万円の助成スタート、東京都に相談急増 医療機関側に「逼迫」懸念も

 東京都による「無痛分娩(ぶんべん)」の助成が今月始まり、妊婦らの申し込みや問い合わせが急増している。都道府県としては初の試みで、都は少子化の改善につなげたい考えだ。ただ、医療機関側の逼迫(ひっぱく)が心配されるケースもみられ、専門家は対策の必要性を指摘する。

 9月中旬の週末、都内の産科クリニックの待合室で、無痛分娩を検討する妊婦向けの説明会が開かれ、20人以上が参加した。クリニックでは都の制度が公表された今年1月以降、無痛分娩に関する問い合わせが増えているという。院長は「出産の時の痛みで体力を大幅に奪われる人もいる。無痛分娩で体力を温存できるメリットもある」と説明した。

 友人の勧めで無痛分娩に興味を持ったという練馬区の保育士の女性(32)は、11月に第1子の出産を予定する。初産で痛みに耐えられるか不安だったといい、「子育ては何かとお金がかかるので、負担が少しでも減るのは助かる」と話す。

 無痛分娩の費用は10万~20万円ほど。母体の急変に備えて蘇生機器を整えるなど一定の安全基準を満たし、都に届け出た病院・診療所で出産した都内在住者は、最大10万円の助成を受けられる。

 都が3月下旬に設置した問い合わせ窓口でも、「どうすれば申請できるのか」「自分は対象か」といった相談が急増。件数は9月までの半年間で496件だったが、今月は1~9日だけで143件に達した。都に届け出た病院・診療所も、都内で出産できる医療機関の8割に当たる125施設(9月末時点)に上り、制度は妊婦と医療機関の双方から支持を得ているようだ。

 ただ、無痛分娩は麻酔による合併症を引き起こすリスクがある。分娩が長引いて赤ちゃんを吸引しなければならない事態も起こり得る。

 東邦大医学部産科婦人科学講座の中田雅彦主任教授(60)は「デメリットを理解していない妊婦は多い」と明かす。同大大森病院(大田区)では、昨年まで1割ほどだった無痛分娩の取扱件数が6割前後に増えたという。中田主任教授は「希望者がさらに増えた際に対応し切れるのか不安」とも語る。

 都が昨年8~10月、都内の母親約1万1000人を対象に行った調査では、無痛分娩で出産した母親は35・8%にとどまった。だが、次回出産時の希望を聞いたところ、無痛分娩で出産したいと答えた割合は63・3%に上った。助成が始まったことで、希望する妊婦はさらに増えるとみられる。

 無痛分娩に詳しい神奈川県立保健福祉大の田辺けい子准教授(助産学)は「出産時の痛みや苦しみに悩む女性もおり、選択肢を広げることにつながる助成は高く評価できる。無痛分娩の需要は全国的に高まっており、都の制度はモデルケースになる」と評価。一方、「希望者の急増により、安全性を担保できるか懸念している。出産に携わる医師や助産師について、無痛分娩の知識や技術を底上げさせる取り組みも必要だ」と指摘する。

  ◆無痛分娩=局所麻酔で出産の痛みを和らげる方法。国内では背中に入れた管から麻酔薬を入れる硬膜外麻酔が主流。日本産婦人科医会の調査では、2023年の出産全体の中で無痛分娩が占める割合は13・8%で、5年前の倍以上に増えている。

 2025年10月13日(月)

2025/10/12

🟥認知症の人に「接したことある」61% 政府が支援策などの周知徹底へ

 内閣府の世論調査で、認知症の人と接したことがあると答えた人は61%となった一方、昨年施行された、認知症の人が安心して暮らせるための国などの取り組みを定めた法律について知っている人は22%にとどまり、政府は支援策などの周知を徹底したいとしている。

 内閣府は今年8月から9月にかけて全国の18歳以上の3000人を対象に認知症に関する世論調査を行い、52%に当たる1551人から回答を得た。

 それによると、認知症の人と「接したことがある」と答えた人は61%だった。具体的な接点を複数回答で聞いたところ、▽「家族の中にいる」と答えた人が54%、▽「親戚の中にいる」が34%、▽「近所付き合いで」が22%などとなった。

 一方、昨年1月に施行された認知症の人が安心して暮らせるための国や自治体の取り組みを定めた「認知症基本法」について知っている人は22%にとどまった。

 厚生労働省は、「高齢者のおよそ5人に1人が認知症になると予測される中、皆が安心して暮らせるよう、支援策などの周知をさらに徹底したい」としている。

 一方で、調査では、自分が認知症になった場合に不安を感じることは何かを尋ねたところ、「家族に負担をかける」と答えた人が74・9%に上った。複数回答で「できていたことができなくなる」は66・2%だった。

 自分が認知症になった際、どのように暮らしたいかを尋ねると「医療・介護のサポートを利用しながら今まで暮らしてきた地域で生活したい」との回答が27・4%だった。

 厚労省の担当者は、認知症の人や住民が集う「認知症カフェ」など交流の場を増やし、不安を和らげたいと話した。

 2025年10月12日(日)

2025/10/11

🟥新型コロナ感染、3週連続で減少 前週比0・82倍、厚労省

 厚生労働省は10日、全国約3000の定点医療機関から9月29日〜10月5日の1週間に報告された新型コロナウイルスの新規感染者数が1万8587人だったと発表した。1医療機関当たりの感染者数は4・82人で、前週比0・82倍となり、3週連続で減少した。

 都道府県別で1医療機関当たりの感染者数が最多だったのは大分県の8・38人で、愛媛県8・30人、長崎県7・57人が続いた。少なかったのは滋賀県2・64人、青森県2・94人、大阪府3・27人などだった。

 同じ期間の全国のインフルエンザ新規患者数は1医療機関当たり1・56人で、前週比1・50倍だった。沖縄県は12・18人で、注意報レベルとされる10人を上回った。

 2025年10月11日(土)

2025/10/10

🟥マダニ感染症「SFTS」、東京都でイヌの感染初確認 都が「もはや全国どこでも感染リスク」と注意喚起

 ウイルスを持ったマダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の感染が全国的に拡大する中、東京都は9日、都内で飼われていたイヌの感染を初めて確認したと発表した。人にはマダニから直接感染するほか、イヌ、ネコを通しても感染することから都は警戒感を強めており、感染域も「全国に拡大しており、もはや国内のどこでも感染リスクがあると考えたほうがいい」として注意を呼び掛けている。

 都によると、感染が確認されたイヌは15歳で、都内の室内で飼われていた。9月2日に嘔吐や下痢の症状が現れ、動物病院を受診し治療を続けていた。同18日になってマダニが付着しているのを飼い主が発見。遺伝子検査によりSFTSの感染が判明した。その後も治療を続けたが、同27日に死んだ。

 犬種や性別は非公表。イヌには基礎疾患があり、死とSFTSの因果関係は不明としている。また、イヌは8月下旬、都外に出ており、「どこで感染したのかは不明」(都担当者)という。

 SFTS発症後の致死率は人の場合6〜30%と高い。イヌ、ネコはさらに高く、イヌが40%程度、ネコが60%程度という。今年5月には三重県で獣医師が、診療していたネコから感染し、死亡している。

 SFTSは2013年に山口県で国内で初めて感染者が確認されて以降、九州・四国・中国地方など西日本地域を中心に感染が徐々に拡大。今年に入り、関東や北海道でも感染が初確認されるなど感染域が広がり、年間の感染者数も過去最多を更新している。

 都の担当者は、「今は日本全国どこにいっても感染のリスクがあると考えたほうがいい」とし、「屋外活動で注意するなど、予防や対策について意識を高めてほしい」と呼び掛けている。

 2025年10月10日(金)

🟥「年1回以上」のランニング人口、4年で300万人減少 20歳代は大幅減で3分の1に

 笹川スポーツ財団は9日、18歳以上の男女の運動実施状況などを昨年調査した「スポーツライフ・データ2024」を発表し、20歳以上で年1回以上のジョギング・ランニング実施率は7・4%、推計758万人だった。過去最高だった2020年と比べて2・8ポイント減り、推計で約300万人減少した。

 実施率は男性が11・4%、女性が3・3%。女性は1998年の調査開始以来最低となり、20歳代は2020年と比べて約3分の1と大幅に減少した。

 調査は昨年6~7月、全国の18歳以上の男女3000人を対象に実施。

 財団の担当者は、「ライフスタイルの変化によるSNSやスマホゲームの利用、動画視聴といった余暇活動の選択肢拡大が、運動・スポーツ実施率全体の減少傾向の一因となっていると推測される」としている。

 2025年10月10日(金)

🟥人工網膜で視力改善、文字が読めるように 特殊めがねで画像変換

 視力が低下する加齢黄斑変性の患者に、人工網膜の技術を使うことで、1年後に文字が読めるようになった、と欧米の研究チームが20日発表した。臨床試験の結果がアメリカの医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載された。  人は網膜の視神経で感知した光を、脳に信号...