2023/11/01

🟩重度訪問介護、22時間余の利用認めるよう命じる初の判決 千葉地裁

 重い障害がある人に自治体が提供する「重度訪問介護」を巡り、難病で寝たきりの千葉県松戸市の男性が、1日当たり24時間の介護サービスを求めた裁判で、千葉地方裁判所は「基本的に24時間に相当する介護支給が認められるべきだ」として、別の医療サービスなどを受けている時間を除く、22時間余りの利用を認めるよう市に命じました。

 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)で寝たきりの松戸市に住む男性(62)は、たんの吸引や人工呼吸器の装着などが必要で、費用のほとんどが公費で賄われる「重度訪問介護」のサービスを受けていますが、昨年3月に市が決めた1日当たり18時間余りの利用では不十分だとして、24時間の介護サービスが受けられるよう求めていました。

 10月31日の判決で、千葉地方裁判所の岡山忠広裁判長は「男性の病状は深刻であり、介護がなければ生命を維持するのが困難な状態である。介護を担う妻は子供の育児や家事、仕事を担い負担が集中していて疲れでたんの吸引などができない恐れがある」と指摘しました。

 その上で「市は妻の心身の状況などを十分に考慮すべきで、基本的に1日24時間に相当する介護支給が認められるべきだ」として、別の医療サービスでたんの吸引などを行っている時間を除く、1日22時間余りの利用を認めるよう市に命じる判決を言い渡しました。

 「重度訪問介護」は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの1つです。重度の障害で常に介護を必要とする人に入浴や食事などの介護をするヘルパーを派遣し、その費用のほとんどが公費で賄われます。

 「重度訪問介護」を月に何時間まで利用できるかは市町村が本人や家族、それに医師から話を聞くなどして決めますが、判断基準はそれぞれの自治体が作成していてばらつきがあるのが実情です。

 原告の松戸市に住む男性は、全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、ALSの患者です。

6年前から疲れやすくなったり手足が震えたりするようになり、翌年、56歳の時にALSと診断されました。

 徐々に筋肉が衰えて一昨年から寝たきりになり、昨年からは人工呼吸器を常に装着している上、たんの吸引などのため24時間の介護が必要です。

 男性は妻と5歳の息子の3人暮らしで、妻が男性の介護や育児に加えてアルバイトで家計を支えることで生活を続けてきましたが、疲労やストレスから体調を崩しているということです。

 判決を受けて原告側の藤岡毅弁護士は、「重い障害がある人が家族と同居している場合、

1日3時間程度は家族が介護すべきだとして、『重度訪問介護』の時間を差し引くことが全国の多くの自治体でなされている。今回裁判所が男性の病状や家族の状況から基本的に訪問介護が1日24時間相当必要だと判断したことは、日本の社会保障の在り方に影響するほど大きなインパクトがある」と指摘しました。

 その上で「当事者や家族がつらい思いをしているケースは多く、この判決で解決の方向に向かってほしい」と述べました。

 2023年11月1日(水)

🟩平日の寝不足、週末寝だめでは補えず アメリカの研究者、心血管系の数値が悪化

 平日に十分な睡眠を取れなければ、週末に寝だめをすればいいとの考えは、少なくとも心血管系の健康にとっては間違いだとする研究結果を、アメリカのペンシルベニア州立大の研究者が心身医学の専門誌に発表しました。

 心拍数や血圧などの心血管系の健康指標は、睡眠が1日5時間に制限されると1週間で悪化し、週末の睡眠を増やしても正常に戻すには不十分でした。睡眠不足が何日も続くと、回復には週末より長い期間が必要な可能性があるとしています。

 20~35歳の健康な男性15人に入院してもらい、最初の3夜は10時間まで眠れるが次の5夜は睡眠を5時間に制限し、その後2夜、再び10時間までの睡眠を許可しました。この間、安静時心拍数と血圧を2時間ごとに測定して分析しました。

 その結果、入院当初は1分間に69回だった平均心拍数が、日を追うごとに増加。試験終了時には78回まで増えていました。収縮期の血圧も1日当たり約0・5ずつ上昇し、当初の平均116だったのが、終了時には119・5に。寝だめの効果は回復には不十分なことが示されたとしている。

 研究チームは、「今回の研究で、長期的な睡眠障害が心臓血管の健康にダメージをもたらす潜在的なメカニズムが明らかになりました。特に若いうちから十分な睡眠を取れていない人は、年齢を重ねると心臓血管疾患を発症する可能性が高くなります。睡眠が健康を改善する上で焦点となることを、多くの人に知ってほしいと思います」と注意を促しています。

 2023年10月31日(火)

🟩脳死下の臓器提供1000例目、長崎大病院で肝臓移植 

 長崎大学病院(長崎市)は10月30日、国内1000例目の脳死による臓器提供に伴って肝臓の移植手術を28日に同病院で実施したと公表しました。提供を受けたのは原発性硬化性胆管炎の30歳代男性で、術後の経過は良好といいます。

 日本臓器移植ネットワークによると、1000例目は中国・四国地方の病院に脳出血で入院していた60歳代男性。家族が臓器提供に同意し、10月26日午後7時22分に脳死と判定されました。28日午前5時15分に摘出手術を開始。長崎大学病院では午前9時15分に移植手術を始め、午後1時44分に臓器が到着し、午後8時41分に終了しました。

 肝臓以外の移植手術はいずれも長崎県外で行われ、60歳代男性に心臓、40歳代男性に肺、50歳代女性と40歳代男性に腎臓が提供されたといいます。

 同病院でこれまでに、脳死と判定されて臓器提供者(ドナー)となった事例は15件あるといいます。

 2023年11月1日(水)

2023/10/31

🟩福島第一原発の廃液かかるトラブル、飛散した量は公表の数十倍

 福島第一原発にある汚染水の処理設備を洗浄していた作業員に放射性物質を含む廃液がかかったトラブルで、東京電力は当初、飛散した廃液の量を約100ミリリットルと公表していましたが、実際にはその数十倍に上るとみられることが、作業員への聞き取りなどから新たにわかりました。

 10月25日、福島第一原発にある汚染水の処理設備で行われていた配管の洗浄作業中に、放射性物質を含む廃液をタンクに流すホースが外れて、作業員5人が防護服の上から廃液を浴びました。

 このうち20歳代と40歳代の男性作業員2人は当時監視役で防護服の上に雨がっぱを着用しておらず、汚染が確認され、福島県立医大病院入院して除染を続けていました。

 その結果、28日に放射能量が一定のレベルを下回ったことから、2人は退院しています。

 東京電力はトラブルが起きた当初、現場の床に残っていた廃液の量をもとにホースから飛散したのは約100ミリリットルとしていましたが、30日の会見で、その数十倍の数リットルに上るとみられることが新たにわかったと発表しました。

 廃液が噴き出る様子についての作業員たちの証言や、飛び散ったあとが残っていた床の面積などから推定し直したとしています。

 監視役だった2人には防水性のある雨カッパの着用が義務付けられていなかったことがわかっており、東京電力は、ルールの見直しを検討しています。

 2023年10月31日(火)

🟩プール熱の流行、秋になっても続く 患者数は過去10年の最多更新、7府県で警報レベル

 咽頭結膜熱、いわゆるプール熱の流行が、秋になっても続いています。10月16日から22日までの1週間の患者数は過去10年間で最も多くなり、専門家は「今後も流行が続く可能性があり、換気や手洗いを心掛けて予防してほしい」と呼び掛けています。

 咽頭結膜熱、いわゆるプール熱は、子供を中心にのどの炎症や高熱、結膜炎などの症状が出るアデノウイルスによる急性ウイルス性感染症で、せきやくしゃみなどの飛まつで主に感染するほか、ウイルスが付着したタオルや、プールでの接触などを介しても感染します。ドアの取っ手、エレベーターのボタンなど患者が触れたものを介してもうつり、保育園、幼稚園、小学校などでの小児の集団発生も少なくありません。

 国立感染症研究所によりますと、10月22日までの1週間に全国約3000の小児科の定点医療機関から報告された患者数は6795人で、前の週から1279人増えました。

 1医療機関当たりでは2・16人で、これまで最も多かった前々週を上回り、過去10年で最も多くなりました。

 都道府県別にみますと、沖縄県が6・9人、福岡県が6・33人、奈良県が5・47人、佐賀県が4人、大阪府が3・58人、京都府が3・18人、三重県が3・07人と、7つの府県で国の警報レベルの目安となる「3」人を超えています。41都道府県で前週を上回っています。 

 咽頭結膜熱は例年6月ごろの夏場が流行のピークですが、今年は秋になっても流行が続いています。

 子供の感染症に詳しい国立病院機構三重病院の谷口清州院長は、「まだ流行は続く可能性があり、換気や手洗いを心掛けて予防してほしい。熱が3日以上続いたり、水分や食事がとれなかったりすると、重症化する可能性もあるので速やかに医療機関を受診してほしい」と話しています。

 2023年10月31日(火)

🟩風邪薬など一部医薬品の大量販売、20歳未満に禁止案 オーバードーズ対策

 麻薬に似た成分を含む市販薬について、厚生労働省は30日、若者の間で広がる過剰摂取(オーバードーズ、OD)の対策として、20歳未満には大容量の製品や2個以上の販売を禁止する案を明らかにしました。

  案は、厚労省の検討会で示されました。厚労省は今後、専門家の意見を踏まえて案を取りまとめ、制度改正を目指します。

  薬局やドラッグストアで販売される風邪薬などの一部には、麻薬や覚醒剤に似た成分がわずかに含まれます。大量の摂取により、幻覚やけいれんを引き起こしたり、気分を高揚させたり、依存症にさせたりする場合があります。

 このため、厚労省はこうした作用のある6つの成分、エフェドリン、コデイン(鎮咳去痰薬に限る)、ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る)、ブロムワレリル尿素、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリン(鎮咳去痰薬のうち、内用液剤に限る)を「乱用の恐れのある医薬品」として指定。これらの成分が含まれる市販薬は1人1個の販売とすることなどを販売者に求めています。

 だが、1個でも中毒量や致死量に至るほどの大容量の薬が入った製品があるほか、ネット通販で簡単に購入できるなど、対策の実効性が問われていました。

 今回の案では、20歳未満に「乱用の恐れのある医薬品」を販売する場合、小容量の製品1個のみとし、2個以上や大容量の製品の販売は原則禁止としました。店頭では、客が手に取れない場所に陳列することにし、購入者の氏名や年齢を記録し、ネット通販では販売しないことも求めています。

 検討会の委員からは「ODをしてしまう若者の周囲の大人に、問題を周知する必要がある」「長期的には販売記録を一元管理できる仕組みが必要だ」などの意見が出されました。

  国立精神・神経医療研究センターの2021年度の調査によると、全国の高校生の1・6%に「過去1年間に市販薬の乱用経験がある」と推定されるといいます。背景には孤独や孤立、SNS(ネット交流サービス)の広がりがあると考えられています。

 2023年10月31日(火)

🟩O157感染の子供3人、ペッパーランチで食事 大分市の店舗、鹿児島県でも症状訴え

 ステーキチェーンの「ペッパーランチ」でハンバーグを食べた客が下痢や嘔吐などの体調不良を訴える被害が各地で相次ぐ中、30日までに大分市内で「O157」への感染が確認された子供3人がいずれもペッパーランチで食事をしていたことがわかり、保健所が関連を調べています。

 ペッパーランチを運営する「ホットパレット」は、今月14日から22日にかけて大分市と山口県、鹿児島県にある3つの店舗でハンバーグを食べた客合わせて5人が、下痢や嘔吐などの体調不良を訴えたと発表しました。

 会社は29日から、運営する全国の187店舗でハンバーグが入っているメニューの販売を休止しました。

 こうした中、大分市保健所によりますと、先週から30日までに腸管出血性大腸菌O157への感染が確認された児童と幼児合わせて3人が、いずれも大分市内のペッパーランチで食事をしていたということです。

 3人はいずれも入院していますが、快方に向かっているということです。3人はほかにも複数の飲食店を利用していて、感染経路は特定できておらず、保健所が関連を調査しています。

 また、鹿児島県によると、ペッパーランチの姶良(あいら)市内の店舗でも14日に食事をした1人が下痢や嘔吐の症状を訴えています。O157の感染については「調査中」だといいます。

 一方、ホットパレットでは店で食事をした後に体調不良を感じた場合には、相談窓口まで連絡するよう呼び掛けています。

 窓口の電話番号は03−5875−2566で、平日の午前9時から午後6時まで受け付けています。

 2023年10月31日(火)

🟪介護職員の数が初の減少、他産業との賃金差響く 厚労省が発表

 介護職員の数は2023年度に約212万6000人で、2022年度よりも2万8000人減少し、厚生労働省は、減少に転じるのは調査開始以来初めてだとしています。  厚労省によりますと、昨年10月1日時点での有料老人ホームなど介護施設や介護サービス事業所で働く職員の数は、約212万...