2023/12/10

🟧「気候変動が健康に影響」医師の78%が実感 シンクタンクが調査

 日本の医師の約8割は、「気候変動が人々の健康に影響を及ぼしている」と実感しているとのアンケート調査結果を、シンクタンク「日本医療政策機構」(東京都千代田区)が公表しました。世界では近年、地球温暖化の影響で、山火事による大気汚染や感染症リスクの増大などが指摘され、日本でも医療現場で影響が顕在化している可能性があります。

 アラブ首長国連邦ドバイで開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、同条約の会議として初めて、健康を巡る問題について集中的に議論する「保健の日」が設けられました。また、健康を守る行動を加速させることなどを盛り込んだ「気候と保健に関する宣言」に123カ国・地域が署名。世界的に気候変動による健康への影響について、懸念が高まっています。

 アンケート調査は11月21~27日にウェブサイト上で実施し、20~90歳代の医師1100人から回答を得ました。診療科別では、内科が16・1%と最多で、消化器内科8%、精神科8%、整形外科6・5%などと続きました。

 「日本で気候変動が人々の健康に影響を及ぼしているか」との質問に対し、「とてもそう感じる」は19・0%で、「そう感じる」の59・1%と合わせ計78・1に上りました。医師が直接診察しているそれぞれの診療分野の患者に限っても、51・4%が「影響がある」と認識していました。「あまり感じない」は18・7%、「全く感じない」は3・2%でした。

 病気やけがの種類ごとに今後10年間での影響についての見通しを聞いたところ、「大きな悪影響を及ぼす」としたのは、洪水や台風、地滑り、山火事などによる「外傷」で83・3%。次いで、熱中症など高温の影響による「熱関連疾患」が79・5%、蚊などによる「節足動物媒介感染症」が75・8%に上りました。

 こうした状況について「患者に対して啓発すべきだ」と考える医師は56・7%いましたが、情報や資源不足、知識不足、時間不足などで啓発が困難との回答も目立ちました。実際に「気候変動の主な要因は何か」など知識を問う調査で、4問の設問に3問以上正答できたのは12・9%にとどまりました。

 気候変動と健康を巡っては、熱帯夜で睡眠時間が短くなることによる健康被害や、認知症や精神疾患の増加と気温上昇の関係を指摘する論文も出ており、影響は多方面に及ぶ恐れがあります。

 日本医療政策機構は、「COP28が、アンケート調査で明らかになった国内の状況に変化を与える切っ掛けになってほしい。医師の生涯学習として気候変動と医療を取り扱うことも必要になる」としています。

 2023年12月10日(日)

🟧スギ花粉、1月下旬にも九州・東海・関東で飛散開始 暖冬の影響で飛散量は平年比128%

 気象情報会社「ウェザーニューズ」(千葉市)は5日、2024年春の花粉シーズンに向け、「花粉飛散傾向」(スギ・ヒノキ、北海道はシラカバ)を発表しました。

 花粉の飛散開始時期に影響する12月から2月の気温は全国的に高い傾向で、飛散開始が早まる見通しです。1月下旬には九州や東海、関東の一部でスギ花粉の飛散が始まり、3月上旬にかけて全国で飛散が始まります。本格的な飛散はスギ花粉が2月中旬から、ヒノキ花粉が3月中旬からの予想です。

 飛散量は北日本の一部を除いた広範囲で2023年春よりも少なくなるものの、平年(過去10年の平均)と比べると平年並みか平年を上回るエリアが多い予想です。

 2023年夏は全国的に記録的な暑さとなり、東日本と北日本を中心に日照時間が平年を上回ったことで、雄花の生長に適した天候となりました。2023年春に飛散量が多かった反動で2024年春は飛散量が少なくなる「裏年」傾向のエリアでも、平年並みか平年を上回る飛散量を予想しているところが多くなっています。

 本格的な飛散開始は、九州から東北南部にかけて2月中旬から下旬としています。全国平均の飛散量は、平年比128%と見込んでいます。

 2023年12月10日(日)

🟧インフルエンザで欠席2万人超、過去10年で最多 今季の札幌市立小中

 札幌市立の小中学校で、今季の季節性インフルエンザによる欠席者が累計2万人に達したことが8日、市教育委員会のまとめでわかりました。過去10年で2万人を超えるのは初めて。

 市教委保健給食課が学級・学年閉鎖、休校措置を取った学校の欠席者を年度別に集計しました。学級閉鎖は過去10年で最も早い9月5日以降に相次ぎ発生し、これまで小学校で1万4830人、中学校で5429人の計2万259人が欠席しました。

 過去10年で最多だった2019年度の計1万3290人を大幅に上回っています。2020、2021年度は新型コロナウイルスの感染拡大があり、インフルエンザによる学級閉鎖はありませんでした。

 北海道教育委員会によると、道内の小中高などでは11月27日~12月3日の1週間で、262校が学級閉鎖、97校が学年閉鎖、18校が休校の措置を取りました。

 札幌市保健所は、インフルエンザの流行は続くとみて、感染対策の徹底を呼び掛けています。

 2023年12月10日(日)

2023/12/09

🟧世界初のゲノム編集治療、アメリカで承認 遺伝性の血液異常疾患対象

 アメリカ食品医薬品局(FDA)は8日、遺伝性の血液疾患「鎌状赤血球貧血症」に対応するゲノム編集技術を利用した世界初の治療を承認しました。同治療に利用するクリスパー・キャス9という手法は、2012年に開発されてから10年強で実用化されました。

 がんやエイズウイルス(HIV)などの治療にも応用できる可能性があるとされ、2020年にはノーベル化学賞も受賞しました。

 アメリカのバイオ企業「バーテックス・ファーマシューティカルズ」とスイス拠点の「クリスパー・セラピューティクス」が共同開発しました。承認された治療は鎌状赤血球貧血症の患者で、血管閉塞性危機が定期的に起こる12歳以上の人が対象となります。

 治療では、患者から採取した造血幹細胞をゲノム編集技術で遺伝子改変して、それを注射で体内に戻します。事前に抗がん剤を投与(化学療法)して、元々持っていた造血幹細胞を除去します。

 鎌状赤血球貧血症は本来、円盤状の赤血球が三日月のように変形する病気です。変形した赤血球が血管に詰まり、激しい痛みや臓器損傷が生じます。FDAによると、鎌状赤血球貧血症の患者はアメリカ国内に約10万人おり、主に黒人の患者が多くなっています。

 バーテックス社の治療は、イギリスの医薬品・医療製品規制庁(MHRA)も11月に承認しました。これまで鎌状赤血球貧血症の患者には造血幹細胞を白血球の型である「HLA型」が一致するドナー(提供者)から受ける以外に、治療の選択肢がありませんでした。

 今回の承認でゲノム編集に対する関心がさらに高まりそうです。現在、同技術を利用したHIVやがん、希少疾患などの治療の開発が進んでいます。

 FDAは、「今回の承認は遺伝子治療の分野で革新的な進歩があったことを示している」としています。

 アメリカのホワイトハウスは承認を受けて、「この医学的進歩には、さらなる命を救う治療の開発の可能性が秘められている。他の希少疾患とともに生きる何百万人ものアメリカ人に希望を与えるものだ」と歓迎する声明を出しました。

 2023年12月9日(土)

🟧特許切れ先発医薬品を希望する患者の窓口負担引き上げへ 厚労省

 厚生労働省は、医療上の必要性がない場合に、ジェネリック(後発医薬品)ではなく、特許が切れている先発医薬品の処方を希望する患者の窓口負担額を引き上げる方針を審議会に示し、来年度中にも引き上げが実施される見通しです。

 厚労省は、医療費を抑制し、新薬開発の後押しをする財源を捻出したいとしており、8日に開かれた社会保障審議会・医療保険部会に、医療上の必要性などがない場合に、価格が高く、特許が切れている先発医薬品の処方を希望する患者の窓口負担額を引き上げる方針を示しました。

 具体的には、発売から5年以上経過した先発医薬品などを対象に、ジェネリックとの差額の4分の1から半分程度を全額自己負担にする複数の案があります。

 例えば、500円の先発医薬品と250円のジェネリックがある薬で、窓口負担が3割の場合、先発医薬品を選んだ時の支払い額は、今は150円ですが、これが200円から250円になる計算です。

 ジェネリックの薬価は先発医薬品のおよそ半分程度とされます。厚労省はこれまでも、高齢化や医療の高度化に伴って年々増大している医療費を抑えるため、ジェネリックの使用率が高い薬局や医療機関には追加の報酬を支払うなど、ジェネリックへの移行を進めてきました。2021年時点で、ジェネリックの使用割合は79%まで高まりましたが、さらに推し進めたい考えです。

 2023年12月9日(土)

🟧男子高校生のうつ傾向、新型コロナで顕著に

 国立国際医療研究センターなどのチームは8日までに、新型コロナウイルスの流行下では、流行前と比べて、男子高校生のうつ傾向が強まったとの研究成果をまとめました。チームは男子では女子よりも部活動などの制限の影響が大きかったほか、悩みがあっても助けを求めにくかった可能性があるとしています。

 新型コロナ流行前の2019年2月~2020年2月に調査したグループと、流行後の2020年3月~2021年9月に調査したグループを比較。その結果、流行後のグループは男子の平均点が0・97点高くなり、状態が悪化していることがわかりました。流行後を時期ごとに調べると、時間の経過とともにより悪化していました。

 2023年12月9日(土)

🟧入院時の食費自己負担30円上げ、490円に 2024年にも

 厚生労働省は8日、医療機関の入院患者が自己負担する食事代について、国が定める1食当たり原則460円を、30円増の490円とする方針を決めました。物価高騰で仕入れ費用が増えていることに対応し、早ければ2024年6月に引き上げます。同日の社会保障審議会の部会で提案し、了承されました。

 現行制度では、医療機関は入院患者の自己負担460円に、公的医療保険からの給付180円を加えた計640円で食材費を賄っています。詳しい引き上げ時期は12月中に決める見通し。引き上げまでの間も物価高に対応するため、医療機関に対し1食20円相当を交付金などで支給します。

 2023年12月9日(土)

🟥血液製剤使えなくなるなど不適切な取り扱い5件相次ぐ 日本赤十字社公表

  日本赤十字社は、冷凍庫の電源が落ちて血液製剤1万本あまりが輸血用として使えなくなるなど、血液事業での不適切な取り扱いが5件相次いだことを明らかにした。日本赤十字社は、今後、全国で一斉点検を実施するなど、再発防止に努めるとしている。  これは、日本赤十字社が19日、東京都内で会...