2023/12/13

🟧アルツハイマー病新薬「レカネマブ」、年間約298万円で保険適用対象に 中医協が決定

 アルツハイマー病の原因物質に直接働き掛ける新薬「レカネマブ」の公定価格である薬価について、中央社会保険医療協議会(中医協)は、患者1人(体重50キロの場合)当たり年間約298万円と設定し、保険適用の対象とすることを決めました。

 日本の製薬大手「エーザイ」がアメリカの「バイオジェン」と共同で開発した、認知症の原因の1つ、アルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ」は、今年9月に国の承認を受けて、厚生労働相の諮問機関である中医協で保険適用に向けた議論が進められてきました。

 その結果、中医協は13日の総会で「レカネマブ」の薬価について、患者1人当たり年間約298万円と設定し、保険適用の対象とすることを決めました。12月20日から適用される予定。

 この薬を使用できるのは、認知症を発症する前の「軽度認知障害」の人や、アルツハイマー病の発症後、早い段階の人で、年間で最大約3万2000人の使用が見込まれるということです。

 「レカネマブ」は、アルツハイマー病の原因物質に直接働き掛け、取り除くための初めての薬です。

 保険適用の対象となることが決まり、間もなく臨床の現場で使えるようになることから患者の間では期待が高まっていますが、一方で、注意点もあります。

 1つ目の注意点は、薬の投与対象となる患者が限られることです。認知症の原因となる病気にはさまざまな種類があり、「レカネマブ」が使えるのは、アルツハイマー病の患者で、脳に「アミロイドβ」という異常なタンパク質がたまっていることが確認できた人に限られます。

 また、認知症は、軽いものから、認知症と診断される前の「軽度認知障害」、軽度の認知症、中等度の認知症、重度の認知症と進行して認知機能が低下していきますが、今回、薬の投与対象となるのは「軽度認知障害」と「軽度の認知症」の人だけです。

 認知症の専門医によりますと、「レカネマブ」の投与対象となる患者は、認知症患者全体の1割未満とみられるということです。

 2つ目の注意点は、副作用です。製薬会社の治験の結果によりますと、約10人に1人の割合で脳がむくんだ状態になったり、脳内でわずかな出血が起きる副作用が確認されたりしているほか、中にはより危険性の高い脳出血が起きた人もいて、注意が必要だということです。

 3つ目の注意点は、通院の負担です。「レカネマブ」は、点滴で投与する薬で、1度治療を始めると患者は2週間に1度、原則1年半の間、点滴を受けることになります。

 また、副作用を早く見付けるため、脳の画像診断などの検査ができる医療機関で治療が行われることになっており、対応できる医療機関は限られるということです。

 「レカネマブ」の効果に期待する人が多い一方、高額薬で市場規模はピーク時に年986億円におよぶと見込まれ、医療保険財政を圧迫するとの懸念もあります。

 中医協は今後、「レカネマブ」に介護費用の削減効果が認められるかどうかなどを踏まえ、薬価の見直しを検討します。

 先に承認されたアメリカでは、標準的な薬価は患者1人当たり年2万6500ドル(約390万円)とされました。

 2023年12月13日(水)

🟧アメリカ・テキサス州最高裁、先天性疾患胎児の中絶認める地裁判断覆す

 アメリカのテキサス州で、妊娠中の胎児に先天性疾患が見付かったとする女性が、人工妊娠中絶の許可を求めて同州を相手取って起こした訴訟で、州の最高裁判所は11日、緊急中絶を認めるとした地方裁判所の判断を覆しました。原告の代理人弁護士によると、女性は最高裁の判断が出る数時間前に、中絶処置を受けるため同州を離れたといいます。

 ダラス・フォートワース都市圏在住の2児の母、ケイト・コックスさん(31)は妊娠20週目をすぎています。胎児は染色体異常による先天性疾患「18トリソミー(エドワーズ症候群)」で、出産前に死亡する確率が高く、生まれても数日しか生きられないとされます。

 医師らは、人工中絶処置を行わなければ、子宮摘出や命にかかわる危険があると判断。  コックスさんは先週、中絶の許可を求めてテキサス州を提訴し、トラビス州地裁は中絶を認める判断を下していました。

 しかし、これを受けてテキサス州のケン・パクストン司法長官が、直ちに州最高裁に上訴するとともに、コックスさんの中絶処置を行った医師を訴追すると警告していました。

 コックスさんと夫、医師の代理として訴状を提出した「性と生殖に関する権利センター」のナンシー・ノーサップ代表は、コックスさんが他州に移ったことについて、「母体の健康が危険にさらされている。緊急治療室への出入りを繰り返してきた原告は、これ以上待てなかった。これが、裁判官や政治家が妊婦に関する判断を下してはならない理由だ。医師ではないのだ」と非難した。

 一方、テキサス州最高裁の判事らは、本件は司法が介入すべき問題ではないとの所感を示し、今回の判断は、本件について医師が「合理的な医療的判断」に基づいて人命を救うために必要と判断した場合には中絶処置を禁じるものではなく、もし原告が(同州における中絶禁止の)例外に当たるのならば、「裁判所命令は必要ない」と述べました。

 同権利センターの専属弁護士、モリー・デュアン氏は「もしテキサス州でコックスさんが中絶処置を受けられないなら、誰が受けられるのか。本件は、例外が機能せず、中絶禁止法がある州での妊娠は危険だということを証明している」と指摘しました。

 ノーサップ氏も、「コックスさんには州外にゆく手立てがあったが、大半の人にはなく、こうした状況は死刑宣告になりかねない」と非難しました

 アメリカ最高裁は2022年6月、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた判決を覆す判断を下しました。

 テキサス州は、レイプや近親姦(かん)による妊娠でも中絶を認めない厳格な中絶禁止法を施行。また、中絶手術を受けた本人だけでなく、中絶に協力した人を市民が告発できる州法があります。中絶手術を行った医師に対しては、99年以下の禁錮と10万ドル(約1500万円)以下の罰金が科された上、医師免許が剥奪される可能性があります。

 2023年12月13日(水)

🟧石綿労災、全国1215事業所で認定 厚労省が1133事業所の名称を公表

 厚生労働省は13日、アスベスト(石綿)の健康被害で、2022年度に全国1215カ所の事業所で労災などを認定し、個人で作業を請け負うケースなどを除く1133事業所の名称や所在地、従事した作業内容を公表しました。このうち新たに公表されたのは860事業所。厚労省のホームページで閲覧できます。

 業種別の労災認定数は、建設業が805事業所で全体の66・3%を占め、製造業313事業所(25・8%)が続きました。

 また、石綿を吸い込んだことで中皮腫などを発症し、労災認定されたのは1140件(前年度比64件増)。労働者が死亡し、労災請求の時効5年がすぎても、石綿救済法に基づき遺族に支給する「特別遺族給付金」の支給決定は170件(同139件増)でした。

 認定者と同じ事業所に勤めていた人が関連疾患を発症すると、労災認定などで補償される可能性があります。また、工場から石綿が飛散したことによる周辺住民の健康被害が判明し、救済につながるケースもあります。

 厚労省によると、石綿による中皮腫や肺がんなどは、発症まで30~50年の潜伏期間があり、近年労災請求件数は1000件ほどで推移。同省担当者は「労災保険制度の周知を通じて、被災労働者とご遺族の請求促進につなげたい」とし、相談を呼び掛けました。

 同省は12月14、15日の午前10時~午後5時に特別電話相談窓口を設置。問い合わせ先は03・3595・3402。

 2023年12月13日(水)

2023/12/12

🟧加熱式たばこ、紙巻きと同じ水準に増税へ 防衛財源で政府案

 政府は12日、防衛力の抜本的強化に伴う増税に関し、たばこ税のうち加熱式たばこの税負担を引き上げ、紙巻きと同じ水準にそろえる案を自民党税制調査会の幹部会合に示しました。週内にまとめる与党税制改正大綱に、「たばこ税は加熱式と紙巻きの負担の差を解消する」との内容を盛り込む方針です。

 現在、加熱式たばこは販売本数が増えているものの、タバコの葉の使用量が紙巻きより少なく、税負担は紙巻きより最大3割ほど低く抑えられています。政府案は、「税負担差を解消し、課税の適正化による増収を防衛財源に活用する」としています。

 たばこメーカーや自民党の一部からは、「加熱式のほうが健康被害が少ない」として税率差を維持するよう求める意見が出ていました。

 昨年末に閣議決定した税制改正大綱では、防衛増税のうち、たばこ税は「1本当たり3円相当」を引き上げると明記しました。約2000億円の税収増を見込みます。

 自民党税調の宮沢洋一会長は12日午前、記者団に対し、防衛増税の開始時期について、「岸田首相とも相談し、今年は決定しないことにした」と述べました。

 2023年12月12日(火)

🟧COP28合意文書草案、化石燃料「段階的な廃止」に言及せず 環境団体から批判も 

 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は12日の会期末を前に、新たな合意文書の草案を発表しました。草案は、化石燃料を巡っては「削減する」などの表現にとどまり、欧米の先進国などが求めた「段階的な廃止」については言及しておらず、最終局面となった交渉での各国の対応が注目されます。

 12日に会期末を迎えるCOP28は、世界全体の気候変動対策の進ちょくを評価する「グローバル・ストックテイク」が初めて行われ、この中で、対策強化に向け、合意文書で「化石燃料の廃止」を巡る文言をどう盛り込むかが大きな焦点となっています。

 会期末を前に11日に議長国のUAEが示した合意文書の草案では、化石燃料について「2050年の温室効果ガス排出実質ゼロに向け、消費と生産の両方を、公正で秩序があり、公平な方法で削減する」などと、「削減」の表現にとどまり、8日に示された案では使われていた「段階的な廃止」という文言はなくなり、表現が後退した形になっています。

 日本政府の関係者からは廃止に反対している産油国や新興国のほか、化石燃料に依存せざるを得ない途上国への配慮ではないかとの声が上がっているほか、環境団体からは「全く不十分だ」と批判が上がり、この文言では化石燃料の廃止を求める先進国などは合意せず、今後の交渉で文言が変わる可能性があるなどの指摘も出ています。

 会期末に向け、各国がどのような姿勢で交渉に臨み、合意文書がどうまとまるのか注目されます。

 2023年12月12日(火)

🟧膵臓がんの経過に真菌が関係 感染有無で生存、再発に差異

 膵臓がんの経過に、皮膚や体内にいる真菌(カビ)の一種が関係しているとする研究結果を東京医科歯科大消化管外科とアメリカの研究機関の共同研究チームが国際科学誌「ガストロエンテロロジー」に発表しました。

 関与が疑われるのは真菌の一種「マラセチア・グロボーサ」。体表や体内にいるありふれた真菌で、皮膚の病気との関係は知られていたものの、近年、膵臓がんの増悪との関係についての報告が相次いでいました。実際のがん組織で関連を調べたのは初めてで、抗がん剤治療の際に抗真菌薬を組み合わせるなど、膵臓がん治療の選択肢を広げる可能性があるとしています。

 同科の奥野圭祐助教、絹笠祐介教授らとアメリカのシティオブホープナショナルメディカルセンターなどとの共同研究。1998年から2017年にかけて日本の3施設で患者から摘出され、凍結保存されていた膵臓がんの組織180人分をPCR検査にかけ、この真菌の有無と濃度を調べた結果、78人の検体から真菌が見付かりました。

 理由はわかっていないものの、陰性例では検査精度を高めても真菌は見付からず、陽性との中間の濃度に当たる検体はありませんでした。男性のほうが、陽性の割合が高くなりました。

 78人の陽性例と残る102人の陰性例とでその後の経過を比較したところ、陽性の患者のほうが、手術から3年の全生存率が低くなりました。また、がんが再発せず死亡しなかった人の割合(無再発生存率)も低くなりました。

 奥野助教は、「手術後にその後の経過を予測する手掛かりになる可能性が示された。今後、関与のメカニズムの解明が必要だが、これまで日常診療で使用している抗真菌薬が膵臓がん治療の選択肢になり得る」と話しました。

 2023年12月12日(火)

🟧咽頭結膜熱が7週連続で過去10年最多 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎も3週連続で過去10年最多

 子供を中心に流行が続く咽頭結膜熱の12月3日までの1週間の患者数は、前の週からさらに増えて、過去10年間で最も多い状況が7週連続で続いています。

 また、「溶連菌感染症」の一種、「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」も、感染者数が過去10年間で最多の状況が3週連続で続いていて、専門家は「症状が軽いからといって無理をせず体を休ませるようにしてほしい」と話しています。

 咽頭結膜熱は、子供を中心に高熱やのどの痛み、結膜炎などの症状が出るアデノウイルスによる感染症で、せきやくしゃみなどの飛まつで感染するほか、ウイルスが付着したタオルなどを介しても感染します。

 国立感染症研究所によりますと、12月3日までの1週間に全国約3000の小児科の医療機関から報告された患者数は、前の週より563人多い1万1702人となりました。

 1医療機関当たりでは前の週を0・18人上回って3・72人となり、過去10年間での最多を7週連続で更新しました。

 都道府県別では、福井県が8・72人、北海道が8・05人、佐賀県が6・87人、福岡県が6・63人、石川県が6人などとなっていて、合わせて29の都道府県で国の警報レベルの目安となる「3人」を超えています。

 また、主に子供が感染し、発熱やのどの痛みなどの症状が出る「溶連菌感染症」の一種、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の患者も増加が続いています。

 12月3日までの1週間に報告された患者数は、前の週から957人増えて全国で合わせて1万3103人、1医療機関当たりでは4・17人となっていて、過去10年間での最多を3週連続で更新しました。

 都道府県別では、鳥取県が10・53人、宮崎県が8・14人と、2つの県で国の警報レベルの基準となる「8人」を超えているほか、富山県が7・79人、埼玉県が6・76人、千葉県が6・36人、福岡県が6・02人などとなっています。

 子供の感染症に詳しい国立病院機構三重病院の谷口清州院長は、「症状が悪化して入院する子供も多くなっている。症状が軽いからといって無理をして学校や仕事に行かず体を休ませてほしい。地域の感染状況に応じてマスクの着用や手洗いなどの対策を取ることが重要だ」と話しています。

 2023年12月12日(火)

🟥血液製剤使えなくなるなど不適切な取り扱い5件相次ぐ 日本赤十字社公表

  日本赤十字社は、冷凍庫の電源が落ちて血液製剤1万本あまりが輸血用として使えなくなるなど、血液事業での不適切な取り扱いが5件相次いだことを明らかにした。日本赤十字社は、今後、全国で一斉点検を実施するなど、再発防止に努めるとしている。  これは、日本赤十字社が19日、東京都内で会...