新型コロナウイルスのオミクロン型から派生した「JN・1」の感染が、日本や米欧など各国で拡大しています。国内の入院患者は2023年12月から増え続け、2023年夏の第9波のピークを上回りました。インフルエンザなども同時流行する中、各地の救急医療は逼迫しつつあります。
世界保健機関(WHO)は12月、JN・1を「注目すべき変異型(VOI)」に指定し、監視レベルを引き上げました。
東京都のゲノム解析では、昨年12月4~10日に17・2%だったJN・1の割合は、同25~31日に45・1%、1月8~14日には58・3%と急速に拡大し、流行の主流へと置き換わっています。
アメリカ疾病対策センター(CDC)の推定でも、JN・1は1月7〜20日のアメリカの新規感染で約86%に上りました。
JN・1は派生型「BA・2・86」に変異が加わったもので、直近の主流だった「EG・5(通称エリス)」などよりも感染力が強くなっています。東京大学や北京大学の研究グループはそれぞれ、JN・1は免疫から逃れる性質が強いとの分析結果を報告しました。体内の抗体がJN・1には効きにくいため、感染が広がる一因になっているとみられます。
厚生労働省によると、全国約500カ所の定点医療機関で1月15〜21日の新規入院患者数は3483人で、2023年8月の第9波のピークを上回りました。22〜28日も3311人と高水準でした。全国約5000の定点医療機関で報告された新規感染者数は10週連続で増加しました。
呼吸器感染症が流行しやすい冬を迎え、JN・1の感染力の強さや、ワクチン接種から時間がたったことによる免疫の低下なども影響して、感染者と入院患者の増加につながっています。今冬はインフルエンザや咽頭結膜熱、溶連菌感染症なども流行しています。
各地の救急医療体制は逼迫しつつあります。総務省消防庁によると、搬送先がすぐに見付からない「救急搬送困難事案」も、2023年8月の直近のピークに並ぶ規模です。
人混みでのマスク着用やワクチン接種などの基本的な対策は有意義。JN・1は免疫から逃れやすくなっているものの、派生型「XBB・1・5」に対応した現在のコロナワクチンの接種には、免疫をある程度底上げする効果が期待されます。コロナに感染しないことは、倦怠(けんたい)感などの後遺症を避けるための対策にもなります。
2024年1月4日(日)