総務省消防庁は、マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた「マイナ保険証」を活用した患者搬送を5月中旬にも開始します。これまで搬送の参考とする患者の医療情報は、口頭で聞き取ることが多かったものの、マイナ保険証を利用することで、通院歴や処方薬などの情報を把握することが容易になり、救急活動の迅速化や円滑化につながると期待しています。
救急現場では、隊員が患者から通院先の医療機関や処方薬などの情報を聞き取って搬送先を決める際の参考にしています。しかし、詳細な情報を覚えていない人も多く、症状によっては会話が困難なケースもあります。こうした状況を踏まえ、消防庁は患者がマイナ保険証を所持している場合、その場で医療情報を閲覧できるシステムを導入します。
具体的には、患者に同意を得た上で、隊員が専用のカードリーダーでカードを読み取り、レセプト(診療報酬明細書)処理を担う厚生労働省所管の「社会保険診療報酬支払基金」に情報照会するシステムを構築します。このシステムにより、救急車内に設置したタブレット端末で患者の氏名や住所のほか、医療機関の通院歴、処方薬、手術などの情報を閲覧できるようになります。
このシステムの導入によって、患者から救急隊員への詳しい説明が不要になる上、隊員にとっても、正確な情報に基づき、迅速に搬送先の医療機関を選定することが可能となります。受け入れる医療機関側も、事前に既往歴や処方実績などを把握することで、円滑な救命処置ができます。
消防庁は、全国の47消防本部の500隊程度で、実証事業としてこの取り組みを始める
考えで、2月上旬まで参加を公募しています。実際に現場でマイナ保険証を活用した救急搬送を実施する時期は、大型連休明けの5月中旬を見込んでいます。将来的には意識のない重体患者のような場合でも、医療情報を閲覧できるようにすることも検討しています。
2024年2月10日(土)