妊婦には使用できない新型コロナウイルスの治療薬が、妊娠に気が付く前に処方されてしまうケースが相次いでいるとして、日本感染症学会などが医療機関に注意を呼び掛ける声明を発表しました。
この声明は、日本感染症学会と日本産科婦人科学会、日本化学療法学会の3つの学会と日本医師会、日本薬剤師会が14日に合同で発表しました。
新型コロナの治療薬のうち「ゾコーバ」や「ラゲブリオ」などは、胎児に影響がある恐れがあるとして、妊婦には使用できませんが、厚生労働省によりますと、このうち「ゾコーバ」については、10月15日までに投与後に妊娠が判明したケースが32件報告されているということです。
声明では、妊婦に処方された事例の多くが、医師の問診や薬剤師の聞き取り、それにチェックリストなどでの確認が行われ、問題ないとされたケースだったことから、患者本人が妊娠の可能性はないと話していても、可能性を完全には排除できないと指摘しました。
その上で、医師や薬剤師に対し、妊娠が可能な年齢の女性に処方や調剤を行う際には丁寧に説明し、処方するかどうか慎重に判断するよう求めました。
また、女性の患者に向けた文書も併せて発表し、新型コロナの治療薬を内服する前に、もう一度、最近数カ月間のことをよく思い出し、妊娠の可能性に思い当たる節がある場合には内服を控えるよう注意を呼び掛けました。
ゾコーバは、軽症や中等症の患者を対象とし、昨年11月に緊急承認されました。動物実験では胎児の奇形が認められていました。製造販売元の塩野義製薬によると、今年10月までに妊婦への投与が計32例確認されています。
2023年11月16日(木)