世界保健機関(WHO)の年次総会が、19日からスイスで始まりました。会期中には、感染症対策の強化のための新たな国際条約「パンデミック条約」が採択される見通しであるほか、最大の資金拠出国 アメリカの脱退表明を受けた対応についても協議される予定です。
WHOの年次総会は19日午前、日本時間の夕方、本部のあるスイス・ジュネーブの国連ヨーロッパ本部で始まりました。
今回の総会では、総会2日目となる20日に、新型コロナウイルスの感染拡大の教訓を踏まえ、WHOの加盟国が交渉を行ってきた新たな国際条約「パンデミック条約」が正式に採択される見通しです。
また総会では、アメリカの脱退表明を受けて、当初の予算案から11億ドル、日本円で約1600億円削減しました、2026年からのWHOの2年間の予算案についても審議されます。
このほか、各国がWHOに拠出している分担金の額を引き上げるかどうかも協議される予定です。
初日は各国の閣僚などが演説を行い、このうち開催国スイスの代表は「世界が危機に直面する中、国際社会の連帯はこれまで以上に重要だ。WHOへの全面的な支援を確認する必要がある」と述べ、WHOへの支持を訴えました。
総会は27日まで開かれ、最大の資金拠出国であるアメリカが脱退を表明する中、世界の感染症対策などの強化に向け各国が一致できるかが焦点です。
WHOのテドロス・アダノム事務局長は、年次総会で演説し、最大の資金拠出国・アメリカの脱退表明を受けた財政難に対応するため、全体の活動予算を削減すると同時に各国に加えて民間からも新たな支援を募り、財源を増やす考えを示しました。
その上で「大規模な構造改革によって現在の危機から抜け出すことができれば、WHOはより強固で、より独立した組織になることができる。私たちは世界の80億人に奉仕するためにいるのだ」と述べ、各国に対して支援を呼び掛けました。
年次総会では、WHOに加盟していない台湾のオブザーバーとしての参加が審議されましたが、中国などの反対で認められませんでした。台湾の参加が認められなかったのは9年連続です。
これについて中国外務省は19日、報道官の談話を発表し「台湾は自国の一部だ」とする主張を繰り返した上で「台湾の民進党当局がかたくなに『台湾独立』の立場を堅持していることが招いた結果だ」などとしています。
一方、台湾外交部は、外交関係を持つ国々が台湾のオブザーバー参加を提案するとともに、日本やオーストラリア、それにヨーロッパ諸国などが事前に支持を表明したとして謝意を示し「中国による不当な妨害が国際社会に広く理解されず支持されていないことを十分に証明している」と強調しました。
2025年5月20日(火)