理化学研究所の元研究者、高橋政代氏が代表を務めるビジョンケア(神戸市)などは30日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)関連の特許で理研などと和解したと発表しました。同特許はiPS細胞から網膜細胞を製造する特許で、理研やバイオ新興のヘリオスなどが特許権を持っていますが、高橋氏はビジョンケアなどでも特許を使えるよう2021年に国に「裁定」を請求していました。
東京都内で記者会見した高橋氏は、「iPSには医療を変える大きな力がある。医療側の私たちなら早期に開発ができると思っていたので、特許使用を認められたのは大きい」と話しました。
和解によって自由診療を対象に、ビジョンケアなどが、患者自身のiPS細胞を使った細胞から網膜細胞の作製などができるようになるといいます。iPS細胞由来の網膜細胞を使う医薬品を開発中のヘリオスと住友ファーマは、ビジョンケアなどに特許権を行使しないといいます。
高橋氏は理研に在籍中の2014年、世界で初めて網膜の難病に対してiPS細胞由来の細胞を移植する手術に成功。実用化に向けてヘリオスの設立にもかかわったものの、2019年にビジョンケアを立ち上げ社長に就任しました。
裁定の対象は目の「網膜色素上皮細胞」の製造技術に関する特許で、失明のリスクがある網膜難病の治療が期待されています。高橋氏は発明者の一人ですが、職務発明として理研に特許を受ける権利を譲渡しました。理研はヘリオスとの間で特許契約を結んでおり、理研を退職した高橋氏はこの技術を自由に使えない状態になっていました。
2024年5月31日(金)