2025/12/01

🟥ゴールドウイン、PFAS不使用に 年内に衣料品の素材切り替え、海外拡大で

 アパレル大手で衣料品の素材として有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」を使うことを取りやめる動きが広がっている。「ザ・ノース・フェイス」などを展開するゴールドウインは2025年内で代替素材に切り替える。PFASは熱に強く、アウトドア向け衣料で活用されている。健康への有害性が指摘されて米欧で規制が進んでおり、対応を急ぐ。

 PFASは主に炭素とフッ素からなる有機フッ素化合物の総称で、1万種類以上あるとされる。水や油をはじき、熱に強い性質があるため、半導体から衣料品まで幅広い製品で使われている。自然界でほとんど分解されないため「永遠の化学物質」とも表現される。一部の物質では飲み水などから人体に入ると、発がん性などのリスクがあるとされる。

 こうした懸念から、ゴールドウインは2025年内でPFAS素材の使用を全16ブランドでやめる。同社の売りはノース・フェイスやヘリーハンセンなどの高機能衣料品で、これまで荒天時や雪山での着用を想定したレインジャケットやバッグ、シューズ類の加工でPFASを使っていた。

 ザ・ノース・フェイス事業本部の畑野健一氏は、「PFASを使わない素材はPFAS使用の生地と比べ、はっ水機能や生地の張りが損なわれる」と話す。そのため、「バルトロライトジャケット」などノース・フェイスの定番商品では、着用感が変わらないよう糸の編み方や加工の方法を模索した。2026年春夏シーズンから発売する全商品で新製法・加工に切り替える。

 日本でのPFAS規制は一部種類にとどまる。アメリカではPFAS全種類を使用した商品の販売規制が進むなど、米欧の規制は先行している。米欧に販路を持つ大手ブランドを中心に、PFASフリー素材への切り替えが進んでいる。

 日本ゴアが製造する機能素材「ゴアテックス」は表面加工のはっ水剤などでPFASを使用してきたが、2025年内に全製品で切り替える。ゴアテックスは3層構造で、「メンブレン」という真ん中の膜が防水機能の肝となる。機能性を保つ代替素材の研究を続け、新素材「ePEメンブレン」を開発した。

 2022年から一般向けで代替を進め、2025年からより高い機能が求められる競技用のウエアでも切り替えている。同社から調達したゴアテックスを商品に使用しているデサントも、2026年春夏から切り替えを進める。

 世界的ブランドでは対応が先行している。アメリカのナイキは2024年度にPFASフリー素材に切り替え、ドイツのアディダスも2024年秋冬までに99%の商品で切り替えた。アメリカのパタゴニアも2025年から、全製品でPFASを使った防水・はっ水加工をしていない。

 ゴールドウインは海外での店舗拡大を進めている。米欧で2店舗を展開する「ゴールドウイン」ブランドでは、2033年までにロンドンやニューヨークなど8店舗に拡大する。全社では2029年3月期に海外売上高比率を10%と足元から倍増させる計画だ。

 1万種類に上るPFASのうち、有害性が指摘されている物質は一部とされるが、海外ではPFAS全体に忌避感が高まっている。世界最大市場であるアメリカやヨーロッパでの事業を拡大するには、消費者の懸念払拭が急務だ。素材に関する情報の開示や安全性を示す取り組みも求められる。

 2025年12月1日(月)

🟥ゴールドウイン、PFAS不使用に 年内に衣料品の素材切り替え、海外拡大で

 アパレル大手で衣料品の素材として有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」を使うことを取りやめる動きが広がっている。「ザ・ノース・フェイス」などを展開するゴールドウインは2025年内で代替素材に切り替える。PFASは熱に強く、アウトドア向け衣料で活用されている。健康への有害性...