全国の小学5年生と中学2年生を対象に、50メートル走など8つの項目で体力や運動能力を調べる今年度の国の調査で、中学生の男子の合計点は新型コロナウイルスの感染拡大前を上回りました。一方で、小学生の男女は低下傾向にあり、スポーツ庁は運動の機会を増やす取り組みに力を入れていく方針です。
国は2008年度から、全国の小学5年生と中学2年生を対象に50メートル走やボール投げ、反復横とびなど8つの項目で体力や運動能力を調べていて、今年度は約185万人が対象となりました。
この中で、8項目の成績を80点満点で数値化した「体力合計点」の全国平均は、中学生の男子では昨年度より0・5ポイント上がって41・7で新型コロナの感染拡大前の2019年度の成績を上回りました。
特に「長座体前屈」や「立ち幅跳び」では調査開始以来、最もよい成績となったほか、「50メートル走」は7秒99で6年ぶりに8秒を切りました。
また、中学生の女子は昨年度より0・1ポイント上がり47・2とほぼ横ばいとなっています。
一方で、小学生の合計点は、男子が0・1ポイント下がって52・5、女子が0・4ポイント下がって53・9で、依然として新型コロナの感染拡大前よりも低い水準で推移しています。
特に女子は、「上体起こし」以外のすべての項目で下がっているか横ばいとなっていて、合計点は過去最低となりました。
また、生活習慣についてのアンケートでは、学習以外でスマートフォンやテレビなどを1日3時間以上見る割合が小中学生ともに昨年度より増え、小学生では男子が44・1%、女子が38・7%と、いずれも約2ポイント増加しています。
これについてスポーツ庁は、スマートフォンなどを見る時間はコロナ禍で増加に拍車がかかり、今後もこの傾向は続いていくと分析していて、日常生活で運動の機会を増やす取り組みに力を入れたいとしています。
調査結果の分析にかかわった子供のスポーツ学が専門の中京大学の中野貴博教授は中学生の男子が新型コロナの感染拡大前の成績に戻った一方で、小学生では依然、低い水準となっていることについて、「コロナ禍で、体を動かす遊びは制限されてしまっていたが、今の中学生はコロナ禍より前にいろいろな遊びを経験している。一方で今の小学生は、生活習慣を確立する小学校中期までの時期に新型コロナの感染拡大が直撃したので、その影響が残っている可能性がある」と分析しています。
また、子供たちの運動の課題として全力を出し切ることができない児童や生徒が見られることを挙げ、「学校現場を回っていると、全力を出し切る前にやめてしまったり、全力を出す機会そのものが減っていたりする。それは一瞬の力を使う握力や、持久力のテスト結果にも影響していると推測される。教員の雰囲気や声掛けでも変わると思うし、思い切ってやってみた時の爽快感が子供に伝われば、変化が出てくると思う」と指摘しました。
2024年12月22日(日)