2024/06/30

🟧再生医療などの新拠点「中之島クロス」、大阪市で全面開業

 再生医療の産業化を進める大阪市北区の新拠点「中之島クロス」が29日、全面開業しました。地上16階の建物には、循環器科や眼科などの医療機関のほか、製薬会社や医療機器メーカーなど30社・団体がオフィスを構えました。三井不動産が運営する賃貸ラボ「三井リンクラボ中之島」も入り、スタートアップや大阪大学が入居。相互の連携で実用化を進めます。

 中之島クロスの運営は、大阪府のほかロート製薬や岩谷産業など21の企業、病院が参画する「未来医療推進機構」が担います。

 開業セレモニーで、同機構の理事長を務める大阪大大学院医学系研究科の澤芳樹特任教授は「(再生医療は)研究開発が進みながらも実用化はなかなか進まなかった。社会実装に向けて、スタートアップ育成を加速する中之島クロスがいよいよ始動する」と挨拶しました。

 大阪府の吉村洋文知事は「一つ屋根の下に病院、研究機関、スタートアップ、行政、企業が集まって未来医療をつくる。ここに大きな意味がある」と期待を示しました。

 京都大学iPS細胞研究財団(京都市)は研究開発施設を設け、患者本人の血液から医療用iPS細胞を安価で製造し提供するプロジェクトを進めます。山中伸弥理事長はビデオメッセージで、「最適なiPS細胞を良心的な価格で企業に届ける」と意欲を語りました。

 未来医療推進機構は、再生医療の産業化を目指すスタートアップ向けのポータルサイトを今年秋をめどに開設し、市場調査や医薬品・サービスの設計サポートなどを提供します。

 2024年6月30日(日)

2024/06/29

🟧自閉スペクトラム症、海馬異常で他者覚えづらく 東大がマウスで特定

 東京大学の奥山輝大准教授らは、自閉スペクトラム症(ASD)で脳の海馬にある特定の神経同士の接続が弱くなり、他者を記憶する能力が下がることをマウスの実験で突き止めました。ASDでは他者を記憶しづらくなる社会性記憶障害が起きることがあります。成果はASDの解明や治療法の開発に役立ちます。

 脳が物事を記憶する際、複数の神経細胞がつながる神経回路に情報を保存していると考えられています。他者に関する記憶の場合、相手に応じて反応する神経細胞の集団が変わります。

 ASDではコミュニケーション障害や興味の 幅が狭まる症状のほか、社会性記憶障害が起きることがあります。研究チームはASD発症者の多くで変異が生じる遺伝子「Shank3」について、マウスの脳全体で働かなくさせるとこの障害が起きることを見付けていました。だが、詳しい仕組みは未解明でした。

 今回の研究では、記憶にかかわる脳の海馬だけでShank3遺伝子が働かないように遺伝子操作したマウスを使い、社会性記憶障害との関連を調べました。通常のマウスは初対面の相手に興味を抱き、近寄って観察する時間が長くなります。一方で、面識がある相手を観察する時間は短くなります。ところが、遺伝子操作したマウスは面識がある相手にも長く接しました。

 他者に関する記憶には一定数の神経細胞が必要なこともわかりました。Shank3遺伝子が働かないようにした海馬の神経細胞の数を徐々に増やすと、ある段階で社会性記憶障害が起きました。

 アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、8歳児の36人に1人がASDの患者だと推定されています。ASDにかかわる遺伝子は数百個あり、複数の遺伝子変異の蓄積で発症する場合も多くなっています。症状はさまざまで、根本的な治療法はありません。

 研究チームは人のASDの社会性記憶障害でも、脳の海馬の同様な仕組みがかかわっているとみています。奥山准教授は、「海馬がASD治療の新たな標的となる可能性がある」と話しています。海馬の神経細胞のつながりを改善する研究などを進める考えです。

 アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)などとの共同研究で、成果をまとめた論文はイギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されました。

 2024年6月29日(土)

2024/06/28

🟧新型コロナウイルス感染者数、7週連続で増加 1医療機関当たり4・61人

 厚生労働省は28日、全国約5000カ所の定点医療機関から6月17日~23日の1週間に報告された新型コロナウイルスの感染者数が、1医療機関当たり4・61人だったと発表しました。4・16人だった前週から微増し、7週連続で増加しています。

 地域別で最も多かったのは、沖縄県で1医療機関当たり25・68人。次いで鹿児島県が同10・51人、佐賀県が同8・46人などとなっています。

 2024年6月28日(金)

2024/06/27

🟧札幌市の50歳代男性がダニ媒介脳炎を発症 国内6例目、山林でかまれる

 札幌市保健所は26日、市内の50歳代男性が、マダニにかまれて発症する「ダニ媒介脳炎」に感染したと発表しました。2018年5月以来、6年ぶりの感染確認で、国内6例目(いずれも北海道内)。男性は意識障害があり、入院中だといいます。

 発表によると、男性は5月中旬、山菜採りに出掛けた道央エリアでダニに脚をかまれました。同月23日に発熱や脚のしびれなどの症状が出たことから医療機関を受診。道立衛生研究所の検査で、6月24日に陽性と判明しました。

 道内では1993年以降、男女6人がダニ媒介脳炎になり、このうち2016年、2017年には計2人が死亡しました。

 マダニは森林や草地に生息し、春から秋にかけて活動が活発化するといいます。札幌市保健所は、森林や草地に行く時は長袖、長ズボンを着用し、肌の露出を少なくするよう呼び掛けています。

 2024年6月27日(木)

2024/06/26

🟧アルコール健康被害、世界で推計4億人 WHO、若者の飲酒に懸念

 世界保健機関(WHO)は25日、飲酒によるアルコール依存症など健康を害した15歳以上の人口が2019年に世界で推計4億人に上ったとする報告書を発表しました。15~19歳で飲酒経験がある人の割合が「受け入れがたいほど高い」と懸念。飲酒を容認する社会通念により、引き起こされる健康被害が軽視されていると指摘しました。

 WHOは新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今回は2020~2022年のデータをまとめられなかったとしています。

 報告書によると、2019年の1人当たりの年間アルコール消費量(純アルコール換算)は5・5リットルで、2010年の5・7リットルから微減しました。2020年については、新型コロナの影響を受け、2019年に比べ10・1%減の4・9リットルと推測しました。

 消費量は旧ソ連諸国やヨーロッパ地域、北アメリカ・南アメリカ地域で多く、両地域では健康被害に苦しむ人口比が他の地域よりも高くなりました。最も消費量が多い国はルーマニアで17・0リットル。アメリカは9・6リットル、日本は6・7リットルでした。

 2024年6月26日(水)

2024/06/25

🟧国立ハンセン病療養所での旧陸軍の薬剤臨床試験、入所者2人の死亡と因果関係の疑い 

 熊本県合志市にある国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園(けいふうえん)は24日、太平洋戦争中から終戦直後にかけて旧日本陸軍などが入所者に対し、「虹波(こうは) 」と呼ばれる薬剤の臨床試験を行い、試験中に死亡した9人のうち2人について投薬との因果関係が疑われるとする報告書を公表しました。投与対象者は少なくとも472人に上ります。国の報告書などで虹波の存在自体は知られているものの、被害の詳細をまとめたのは初めて。

 入所者自治会の要請を受け、2023年度に園の歴史資料館が収蔵する関連資料56点を精査しました。報告書では、死亡例や激しい苦痛を伴う副作用が確認されても臨床試験は中断されなかったとして、「当時の医師らの医療倫理の在り方に疑問が持たれる」と指摘しました。

 報告書によると、虹波は写真の感光剤を合成した薬剤で、熊本医科大(現熊本大医学部)の波多野輔久医師が陸軍の嘱託で開発しました。体質改善や結核のほか、ハンセン病の治療への活用も期待されたものの、効果は上がらなかったとされます。

 臨床試験は陸軍が指揮し、当時の宮崎松記園長の監督の下で行われ、1942年12月から1947年6月まで続いたといいます。対象と確認できた472人には6歳児も含まれていました。ほかに370人が参加した可能性があります。

 臨床試験中に死亡した9人のうち、7人の死因は肺結核や急性肺炎などでしたが、残る2人は虹波が原因と疑われるといいます。

 報告書では、「被験者は臨床試験への参加を拒否できなかった」と指摘。園内での安寧な生活を得るために、従順な態度を取らざるを得なかったと結論付けました。園は今後も調査を続け、薬剤の医学的な効果などを考察する方針。報告書は近く歴史資料館のホームページで公開する予定。

 医学史に詳しい京都大医学部の吉中丈志臨床教授は、「ハンセン病は死に至ることが少ない慢性疾患で、死者が出た薬を使い続けるのは医療倫理以前に、常識としておかしなことだ」と批判しました。

 虹波に関しては、国が設置した有識者らによるハンセン病問題の検証会議が、2005年にまとめた最終報告書で触れており、他の薬物とともに「副作用ばかりが目立つ」「試用は全くの人体実験だった」と指摘しています。

 厚生労働省は、恵楓園による今後の調査を注視するとしています。

 菊池恵楓園は1909(明治42)年、当時の法律に基づいて全国5カ所に設置されたハンセン病の患者を収容する療養所の1つ「九州らい療養所」として現在の熊本県合志市に開設されました。その後「らい予防法」の制定などによってハンセン病の患者が強制的に収容されるようになり、入所者は1958年のピーク時で1734人でしたが、現在は6月1日の時点で126人となっています。

 また、入所者の平均年齢は87・5歳と高齢化が進んでいます。

 菊池恵楓園には国の隔離政策の一環として、全国で唯一のハンセン病患者専門の刑務所が設けられていましたが、現在は取り壊され、跡地には3年前、小中一貫の公立学校が開校しました。

 園内には、入所者の無断外出を防ぐために設けられた「隔離の壁」など、差別の歴史を今に伝える施設が残っていて、厚労省は、これらの施設をハンセン病問題の啓発のために歴史的建造物として保存することにしています。

 2024年6月25日(火)

2024/06/24

🟧 新型インフルエンザ薬「アビガン」、ダニ感染症に応用承認 世界初のSFTS治療薬に

 富士フイルム富山化学は24日、新型インフルエンザ薬「アビガン」を、マダニが媒介する感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の治療にも使えるようになる承認を取得したと発表しました。世界初のSFTS治療薬が登場することになりました。

 SFTSは主にウイルスを持つマダニにかまれることで感染し、致死率は約27%と高くなっています。6~14日の潜伏期を経て発熱や下痢などの症状が出ます。

 患者は西日本に多くなっています。ペットからの感染が報告されているほか、患者を診察した医師への感染例も3月に公表されました。

 アビガンのSFTSへの治療応用は愛媛大、長崎大、国立感染症研究所が中心に実施した臨床研究を経て進められました。

 アビガンは新型インフルエンザの流行に備えて国が備蓄している飲み薬で、新型コロナウイルス流行当初に使われ、話題になりました。

 SFTS治療では、緊急時に対応できる医療機関で十分な知識を持つ医師が投与します。動物実験で胎児に奇形が出る恐れが指摘され、妊婦や妊娠している可能性がある人には使えません。

 2024年6月24日(月)

2024/06/23

🟧新型コロナウイルスの感染者は2万561人、6週連続で増加 沖縄県は突出続く

 厚生労働省は21日、全国約5000の定点医療機関から10~16日に報告された新型コロナウイルスの感染者数が計2万561人だったと発表しました。1機関当たりは4・16人で前週比1・04倍となり、6週連続で増加しました。前年同期(5・6人)よりは低くなりました。

 都道府県別では、沖縄県が18・11人と、前週(19・58人)に比べやや減ったものの、突出して多い状況が続いています。

 厚労省の担当者は、「過去に夏に一定の感染拡大があったので状況を注視している」と話しています。

 26都府県で増加。沖縄県に次いで多かったのは鹿児島県8・58人、佐賀県7・26人。少なかったのは山形県1・63人、福井県1・82人、福島県1・89人など。

 全国約500の定点医療機関が報告した新規入院患者数は1372人で、前週比0・98倍でした。

 2024年6月23日(日)

2024/06/21

🟧蚊が吸血やめる仕組み解明、被害防ぐ薬開発の可能性も 理化学研究所などのチーム

 デング熱などを媒介するネッタイシマカが「腹八分目」で血を吸う行動をやめるメカニズムを解明したと、理化学研究所と東京慈恵会医科大のチームが発表しました。針を刺すことで血液中に生じる物質が、蚊に満腹感をもたらしているといいます。蚊の被害を防ぐ薬の開発に役立つ可能性があり、論文が21日、アメリカの科学誌「セル・リポーツ」(電子版)に掲載されます。

 ネッタイシマカは東南アジアや南アメリカなどに生息するヤブ蚊の一種で、デング熱やジカ熱などのウイルスを媒介します。

 人や動物の血液に含まれるATPという物質が蚊の「食欲」を促していることはわかっていたものの、腹部が吸った血で満たされる前に逃げることが多く、何を切っ掛けに「食事」をやめるのかはわかっていませんでした。

 理研の佐久間知佐子・上級研究員らは、ネッタイシマカが好むATPの溶液に、血液から赤血球などを取り除いた上澄みだけを加えると、あまり吸わなくなることを発見。上澄みの中に、蚊に満腹感をもたらす物質があると推定して成分を絞り込んだ結果、「フィブリノペプチドA」という物質がかかわっていることを突き止めました。

 この物質は、血液の凝固に欠かせないフィブリノーゲンというタンパク質から作られます。蚊が血管に針を刺した刺激で血液の凝固反応が進んでこの物質が増え、蚊の体内にある程度蓄積すると血を吸う行動を終えることがわかりました。

 ネッタイシマカと同じヤブ蚊の仲間で、国内に多いヒトスジシマカなども、同じ仕組みを持っているとみられ、佐久間上級研究員は「蚊の体内でどのような反応が起きて満腹と感じているかがわかれば、吸血を抑える薬を作れるかもしれない」と話しています。

 蚊の感染症対策に詳しい愛媛大の渡辺幸三教授(熱帯疫学)は、「独創的な研究成果だ。血を吸うのはメスの蚊で、卵が成熟する栄養となる。蚊の吸血行動を抑えることは個体数を減らすことにもつながるだろう」としています。

 2024年6月21日(金)

2024/06/20

🟧つけ爪用など瞬間接着剤、拭き取りで発熱 国民生活センターがやけどに注意呼び掛け

 つけ爪などにも使われる瞬間接着剤をティッシュペーパーなどで拭き取ろうとして発熱し、やけどをするといった事例が報告されているとして、国民生活センターが注意を呼び掛けています。

 国民生活センターによりますと、全国の消費生活センターなどに、瞬間接着剤によってやけどをしたという情報が、2019年4月からの5年間で7件寄せられています。

 このうち、今年1月には10歳代の女性がつけ爪用の接着剤をデニム素材の服にこぼしたところ、服が溶けるほど熱くなり、太ももに全治1カ月以上のやけどをしました。

 このほか、5月には、大阪府河内長野市で行われたイベントで4歳の男の子に、近くにいた見物客が持っていたつけ爪用の接着剤が誤ってかかり、右腕に全治約2週間のやけどをした事例も明らかになっています。

 瞬間接着剤に含まれるシアノアクリレート系の物質は接着面などの水分と反応して熱が発生する特徴があり、ティッシュペーパーや布などにしみ込んで表面積が拡大すると反応が急激に進む場合があるということです。

 国民生活センターが、市販されている瞬間接着剤、12製品について、ティッシュペーパーや衣類に付着した際の温度を調べたところ、粘度が低くさらさらした製品を中心に、合わせて5製品が、ティッシュペーパーや綿100%の衣類に付着した後、やけどを引き起こすとされる70度以上の高温になり、最も高いものは、わずか15秒ほどで167度にまで上昇したということです。

 国民生活センターは、誤って衣類に付着した場合は大量の水をかけることや、皮膚に付着した場合は慌てて拭き取ろうとせず、40度ほどのお湯の中でもむようにしてはがすよう注意を呼び掛けています。

 2024年6月20日(木)

2024/06/19

🟧旧大口病院患者殺害、元看護師に1審に続き無期懲役 東京高裁

 横浜市の病院で入院患者3人の点滴に消毒液を混入して殺害した罪などに問われた元看護師に対し、東京高等裁判所は1審に続き無期懲役を言い渡しました。

 横浜市神奈川区の旧「大口病院」の元看護師、久保木愛弓被告(37)は、8年前の2016年9月、70歳代から80歳代の入院患者3人の点滴に消毒液を混入し、殺害した罪などに問われています。

 1審の横浜地方裁判所は3年前、起訴された内容を認定した上で、「立ち直りの可能性が認められる」などとして無期懲役を言い渡し、検察と弁護側の双方が控訴していました。

 19日の判決で、東京高等裁判所の三浦透裁判長は、久保木元看護師に対し、1審に続いて無期懲役を言い渡しました。

 これまでの裁判では、久保木元看護師の責任能力と刑の重さが争点となっていました。

 1審の横浜地方裁判所は、久保木元看護師の当時の精神状態について「自閉スペクトラム症の特性を有し、うつ状態と認められるが、完全責任能力があった」と判断し、責任能力が限定的だったとする弁護側の主張を退けました。

 一方で、刑の重さについては「患者が亡くなった際に家族にどなられて強い恐怖を感じた。ストレスをため込み、一時的な不安軽減のため、患者を消し去るほかないと考えた。こうした動機の形成過程は被告のために考えるべき事情と言える。立ち直りの可能性もあり、死刑を選択するのはちゅうちょを感じざるをえない」として、無期懲役を言い渡しました。

 検察と弁護側の双方が控訴し、2審で検察は「3人を殺害した事件であり、死刑を回避すべき事情はない」などと主張したのに対し、弁護側は死刑にすべきではないと主張していました。

 久保木愛弓被告は、神奈川県秦野市の県立高校を卒業後、看護の専門学校に通い、2008年に看護師の免許を取りました。

 1審の裁判では、看護師のイメージについて「患者の近くに寄り添い、不安や苦痛を取り除く素晴らしい仕事だと思いました」と述べていました。

 1審判決によりますと、免許を取った後に旧大口病院とは別の病院のリハビリ病棟や老人保健施設などに勤めましたが、患者が亡くなった際に同僚の看護師が遺族から責められているのを見てショックを受けるなどし、その後、抑うつ状態と診断されました。

 勤め先を辞め、事件が発覚する前の年の2015年に旧「大口病院」に採用されました。

 およそ1年後、夜勤中に救命措置をとった患者が亡くなる出来事があり、遺族から「看護師に殺された」などと、どなられることがあったということです。

 これを切っ掛けに、自分が勤務していない時間帯に患者が亡くなれば、患者の家族から責められるリスクが減ると考えるようになったと、1審判決は認定しました。

 1審の審理の最後、久保木元看護師は「身勝手な理由で大切な家族を奪ってしまい、申し訳なく思っています。死んで償いたいと思います」と述べていました。

 2024年6月19日(水)

2024/06/18

🟧研修医の誤診などで16歳男子高校生死亡 日赤名古屋第二病院、十二指腸閉塞

 名古屋市昭和区にある日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院は17日、昨年、腹痛やおう吐を繰り返した16歳の男子高校生を当初、研修医が急性胃腸炎と誤って診断し、その後も対応した医師らが適切な治療を行わなかった結果、男子高校生が死亡する重大な医療過誤があったと発表しました。

 名古屋第二病院によりますと、昨年5月28日の早朝、16歳の男子高校生が、腹痛やおう吐、下痢などを訴え、救急車で搬送されたということです。

 研修医が診察し、CT検査で胃の拡張を確認した一方、血液検査で脱水が疑われる数値が出ていたことを見逃し、上司の医師に相談せずに急性胃腸炎と診断して整腸剤などを処方し、帰宅させました。

 高校生は症状が改善しなかったため、同じ日の昼前に再び救急外来を受診しましたが、別の研修医も新たな症状はないと判断して、翌日、近くのクリニックを受診するよう指示したということです。

 高校生が翌朝クリニックを受診したところ緊急処置が必要だと判断され、改めて名古屋第二病院を受診した結果、十二指腸が閉塞(へいそく)する病気、上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)の疑いと診断され、入院しました。

 しかし、医師や看護師らによる処置が適切に行われず翌日の未明に心停止となり、意識不明のまま、およそ2週間後の6月15日に亡くなったということです。

 名古屋第二病院は事故調査委員会を設置して調査した結果、十二指腸の閉塞に対して適切な処置が行われず、脱水への治療も遅れたことなどにより心停止となり死亡したと結論付けられたとして、遺族に対して謝罪したということです。

 亡くなった高校生の家族は、「何度も助けられる機会はあったのに見過ごされてしまいました。目の前で苦しんでいる人の声をもっとしっかり聞いてください。16歳の男の子の人生を突然終わらせてしまったこと、夢見ていた未来を奪ってしまったことを決して忘れないでください」とコメントしています。

 佐藤公治病院長は、「苦痛とおう吐に苦しむ患者に最後まで適切な対応をせず、未来ある患者を救うことができなかった。大変申し訳なく、心からおわび申し上げたい。職員一丸となって再発防止に努めていきたい」と話しています。

 2024年6月18日(火)

2024/06/17

🟧中学生の肥満、やせの割合増加 コロナ下での休校など影響か

 新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年からの3年間で、環境の変化によるとみられる中学生の肥満の割合が男女ともに増えたとの分析結果を、国立成育医療研究センターなどのチームが14日までにまとめました。2022年には、やせの割合も増えていました。

 チームは、休校や外出自粛で運動の機会が減ったほか、流行の長期化によるメンタルヘルス(心の健康)や親の経済状況の悪化が影響した可能性があるとみています。

 チームは2015~2022年度に中学校を卒業した子供約40万人分の健診データを分析。「肥満」「やせ」「視力低下」などの項目について、新型コロナ流行前の2019年と、流行後の2020~2022年を比較しました。

 肥満は、2020~2022年に男子で0・31~0・88ポイント、女子で0・20~0・36ポイント増加。やせは2020、2021年に顕著な傾向はみられなかったものの、2022年に男子で0・21ポイント、女子で0・34ポイント増えました。

 視力低下は2020、2021年に男子で最大2・17ポイント、女子で1・43ポイント増加。男子は2022年も1・80ポイント増えていました。

 2024年6月17日(月)

2024/06/16

🟧アメリカ軍、新型コロナで偽情報流布 フィリピンで中国製ワクチンの不信あおる

 ロイター通信は14日、新型コロナウイルスが世界的に流行していた2020年春から2021年半ばにかけて、アメリカ軍が中国製ワクチンに対する不信をあおる宣伝戦をフィリピンなどで展開していたと報じました。ワクチン外交を通じた中国の影響力拡大に対抗するため、偽情報をソーシャルメディアで流布していました。

 アメリカ製も含むワクチン全体への信頼を損なうもので、対中戦略のために民間人を危険にさらしたとの批判が出ています。元情報機関幹部も、「一線を越えた」と非難しました。

 フィリピンでは当時、接種の遅れによる被害拡大が問題になっていました。アメリカ

軍はフィリピン人になりすまして、「新型コロナは中国からきた。ワクチンも中国からきた。中国を信用するな!」などとタガログ語でX(旧ツイッター)やフェイスブックに投稿しました。

 中央アジアや中東でも、イスラム教で禁忌される豚のゼラチンが中国製ワクチンに含まれているとの偽情報を広めました。

 ドナルド・トランプ前政権で始まった宣伝戦は続いたものの、ジョー・バイデン政権になって停止が命じられたといいます。

 2024年6月16日(日)

2024/06/15

🟧新型コロナ感染者、5週連続増加 沖縄県が最多、医療現場に負担

 厚生労働省は14日、全国に約5000ある定点医療機関に6月3日~9日に報告された新型コロナウイルスの新規感染者数は計1万9719人で、1定点当たり3・99人だったと発表しました。前週(3・52人)の約1・13倍で、5週連続で増加しました。昨年の同時期は1定点当たり5・11人でした。

 都道府県別の最多は沖縄県の19・58人で、引き続き突出しており、医療現場に負担がかかっています。ほかに多かったのは鹿児島県8・73人、北海道6・67人。少なかったのは福井県1・72人、香川県1・85人、三重県2・07人など。東京都4・07人、愛知県4・72人、大阪府2・38人、福岡県4・12人でした。36都道府県で増加しました。

 9日までの1週間に全国約500の定点医療機関から報告された新規入院患者数は1400人で、前週(1266人)から134人増加。集中治療室(ICU)に入院した患者は66人で、前週(61人)から5人増えました。

 2024年6月15日(土)

2024/06/14

🟧温浴施設で最大400倍のレジオネラ菌検出、1年以上報告せず営業 宮崎市のホテル

 ルートインジャパン(東京都品川区)は13日、宮崎市青島西1で運営するホテル「ルートイングランティアあおしま太陽閣」内の温浴施設で基準値以上のレジオネラ菌が検出されたのに、宮崎市保健所に1年以上報告せず営業していたと発表しました。検出されたのは基準値の最大400倍でした。客らの健康被害は確認されていないとしています。

 同社によると、温浴施設は「健康ランド華の湯」。施設では衛生に関する管理要領などに基づき全浴槽で年2回以上、水質検査をしており、2023年3月、4月、9月、2024年2月、5月の検査でいずれも基準値以上のレジオネラ菌を検出しました。検出されたのは2023年3~9月は基準値の最大2倍、2024年2月は最大46倍、同5月は400倍でした。

 市の条例では、基準値を超えた場合には保健所に届け出て、指導に沿った配水管などの洗浄消毒を行い、再び基準値を超える菌が検出されないことの確認を求めています。施設では保健所に報告せず、独自に消毒洗浄し、陰性確認を行わないまま営業を再開していました。

 2023年度の水質検査結果を提出していないとして市保健所から複数回提出を求められたものの、その後も未提出で、市保健所から6月11日、立ち入り検査を受けたといいます。

 健康ランド華の湯は現在、営業を停止しているといいます。

 ルートインジャパンは、「保健所の指導のもと、より安心・安全な施設運営に努める」としています。

 2024年6月14日(金)

2024/06/13

🟧全国で初の猛暑日観測の福島県、会津坂下町で80歳女性が死亡 熱中症か

 日本列島は12日、高気圧に覆われて晴れ、広い範囲で気温が上昇しました。福島地方気象台によると、福島県内では伊達市梁川町で35・2度を観測、今年に入り全国で初めて、最高気温が35度以上の猛暑日となりました。

 全国914の観測地点のうち、30度以上の真夏日となったのは、梁川町を含めて326地点。

 県内では福島市で33・8度、喜多方市で33・7度、会津若松市で33・5度となるなど、30ある観測地点のうち21地点で今年最高を更新しました。

 一方、会津若松地方消防本部によると、12日午後3時50分ごろ、会津坂下町の畑で「女性が倒れている」と近隣の男性から119番通報がありました。女性(80)は心肺停止の状態で見付かり、その場で死亡が確認されました。熱中症とみられ、県によると、県内で熱中症の疑いによる死者は今年初めてといいます。

 県内ではこのほか、熱中症による搬送が相次ぎました。各消防本部の午後5時現在のまとめによると、福島、郡山、いわき、伊達、猪苗代、中島の6市町村で計7人が熱中症の疑いで病院に搬送されました。いずれも軽症とみられます。

 気象台によると、13日の県内も晴れや曇りの予想で、昼ごろから激しい雨になる所もある見込み。予想最高気温は福島市と会津若松市で32度、郡山市で30度などで、13日も真夏日の場所がある見通し。

 2024年6月13日(木)

2024/06/12

🟧子供向け解熱鎮痛薬を自主回収 15万箱、健康被害なし

 医薬品製造の「池田模範堂」(富山県上市町)は12日、解熱鎮痛薬「ムヒのこども解熱鎮痛顆粒(かりゅう)」15万1220箱を自主回収すると発表しました。顆粒の入った小袋に穴が開き、薬が変色する可能性があるといいます。同社は健康被害の恐れはないとしています。

 箱の底面に記載されている使用期限が2025年5~12月の製品が対象。富山県内の工場で製造され、全国で販売。購入者からの指摘でわかったといいます。同社は、変色がある場合は服用を控えるよう求めています。健康被害の報告はないといいます。

 問い合わせはフリーダイヤル0120・643・061。平日の午前9時から午後5時まで受け付けます。同社ウェブサイトからも手続き可能。回収後、製品代金相当のプリペイドカードを送ります。

 2024年6月12日(水)

2024/06/11

🟧新型コロナ後遺症、中高年や女性にリスク 広島大がデータ分析

 新型コロナウイルス感染症の後遺症について、日常生活に支障を来す何らかの症状が3カ月以上続くリスク要因として「中高年」「女性」「糖尿病と喫煙」「デルタ株流行時の感染」といった項目が特定できたとする研究結果を、広島大の田中純子特任教授(疫学・疾病制御学)らの研究チームがイギリスの科学誌に発表しました。 

 新型コロナ感染症では後遺症に悩まされる人が多いものの、どんな要因が関与しているか十分に解明されていません。

 研究チームは、2020年3月から2022年7月までの間に広島県でコロナと診断された約2400人から後遺症のデータを収集、分析しました。

 その結果、感染時の隔離が解除された時点で成人の8割、小児の3割に倦怠(けんたい)感、せき、集中力低下などの症状があり、これらの症状が3カ月以上続いた場合は成人、小児ともに、その6割で症状が1年以上続くことがわかりました。日常生活に支障を来すレベルで何らかの症状が1年以上続いている人は、成人では全体の13・4%、小児では3・4%でした。

 日常生活に支障がある症状が3カ月以上続くリスクについて、男性に比べて女性は2・1倍、12歳以下に比べて13~29歳は4・3倍、30~49歳は6・5倍、50~69歳は5・5倍、70歳以上は3・8倍でした。

 喫煙習慣のある人はない人と比べて1・8倍、糖尿病の治療を受けている人は受けていない人に比べて2倍、リスクが高くなりました。飲酒習慣やワクチン接種の有無では差はありませんでした。

 2021年7~9月のデルタ株が流行した時期に感染した人は流行初期の中国・武漢株に比べて2倍リスクが高く、アルファ株やオミクロン株では差はありませんでした。

 2024年6月11日(火)

2024/06/10

🟧旧優生保護法を巡る浜松市75歳女性の裁判、国が控訴 賠償命令に不服 

 旧優生保護法(1948年~1996年)のもとで不妊手術を強制されたとして、視覚に障害がある浜松市の75歳の女性が起こした裁判で、国の賠償責任を認めた判決を不服として、国は7日、東京高等裁判所に控訴しました。

 浜松市の武藤千重子さん(75)は、旧優生保護法のもと、視覚に障害があることを理由に1977年に不妊手術を強制されたとして、国に3300万円の賠償を求めています。

 5月27日、静岡地方裁判所浜松支部は旧優生保護法は憲法に違反すると判断し、「子供を産みたいという希望や夢を理不尽にも奪われた原告の苦痛は甚大だ」と指摘して国の賠償責任を認め、1650万円を支払うよう命じました。

 最大の争点だった不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」について、賠償請求の権利行使が困難な状況だったとし、適用は「著しく正義・公平の理念に反する」と認めませんでした。

 この判決を不服として、国は7日東京高等裁判所に控訴しました。

 原告側の大橋昭夫弁護団長は、「国が被害の実態を直視していれば控訴できないはずで、納得できない。原告も高齢なので1審の判決で安心させてあげたかったが、2審でも引き続き闘っていきたい」と話しています。

 旧優生保護法を巡っては、最高裁判所大法廷が同様の裁判のうち、上告されている5件を審理していて、今年7月3日に判決を言い渡し、統一判断を示す見通しです。

 2024年6月10日(月)

2024/06/09

🟧手足口病が流行、大阪府が5年ぶりに警報発令 手洗いなど予防呼び掛け

 大阪府は6日、4歳くらいまでの乳幼児を中心に、手足や口などに発疹ができる手足口病の患者が急増しているとして、2019年以来となる警報を発令しました。有効なワクチンがなく、府は手洗いなどの感染対策の徹底を呼び掛けています。

 府によると、2日までの1週間の患者数は1つの医療機関当たり6・11人となり、4週間前の5倍以上に増え、警報基準の同5人を超えました。

 手足口病は、口の中や手足に水疱(すいほう)状の発疹が現れ、3人に1人程度の割合で発熱します。ほとんどの場合は数日で治るものの、まれに合併症や心筋炎などにより重症化します。

 予防では有効なワクチンがなく、府は保育施設や幼稚園などで、職員や子供の手洗いとうがい、排泄(はいせつ)物の適切な処理を徹底するよう呼び掛けています。

 2024年6月9日(日)

2024/06/08

🟧新型コロナ感染者数は計1万7401人でほぼ横ばい 沖縄県は突出で病床逼迫の医療機関も

 厚生労働省は7日、全国約5000の定点医療機関から5月27日~6月2日に報告された新型コロナウイルスの感染者数が計1万7401人だったと発表しました。1医療機関当たりは3・52人で前週比1・05倍となり、ほぼ横ばいも4週連続増となりました。

 都道府県別の1医療機関当たりの感染者数は、沖縄県が19・74人で突出して多くなっています。県内では一部の高齢者施設で集団感染が発生し、病床が逼迫する医療機関も出ています。

 続いて多かったのは鹿児島県7・11人、北海道5・44人。少なかったのは福井県1・38人、愛媛県1・80人、香川県1・87人。

 全国約500の定点医療機関が報告した新規入院患者数は1260人で、前週比0・85倍でした。

 2024年6月8日(土)

2024/06/07

🟧「睡眠科」を診療科名に追加へ、2008年以来の見直し 「睡眠内科」「睡眠精神科」など組み合わせ標榜も想定

 厚生労働省は、医療機関が掲げることができる診療科名に「睡眠科」を追加する方針を固めました。診療科名をわかりやすく表記することで、患者が医療機関を選択しやすくします。診療科名の見直しは2008年以来となります。日本人は睡眠時間が短く、睡眠障害は現代の「国民病」ともいわれます。さまざまな病気のリスクを高める恐れがあるため、適切な治療につながることが期待されます。

 医療機関が看板などで広告できる診療科名は「標榜(ひょうぼう)診療科」と呼ばれ、厚労省が医療法に基づき定めています。「内科」「外科」「小児科」など単独で使えるものが20種類あるほか、「糖尿病内科」「脳神経外科」など組み合わせで認められているものもあります。それ以外の診療科も開設できるものの、路上や駅での広告や看板などで宣伝ができません。

 追加するには、関連学会の賛同を得た上で、厚労省の医道審議会に意見を聞く必要があります。(1)国民の求めの高い診療分野であるか(2)診療科名がわかりやすいか、などの条件を満たしていることが前提となります。

 専門医らでつくる日本睡眠学会の調査では、睡眠障害を治療する医療機関(約1200施設)の72%が睡眠科の標榜を希望しています。同学会は日本呼吸器学会や日本循環器学会など関連学会から賛同を得られるよう調整を進めており、今夏にも追加を求める要望書を厚労省に提出する予定です。

 これを受け、厚労省は早急に手続きを進める考えです。「睡眠科」の単独ではなく、「睡眠内科」「睡眠精神科」など組み合わせで標榜できる方式を想定しています。

 現在、患者は症状に応じ、精神科や耳鼻咽喉科、小児科などにかかっているとみられますが、受診先を探しにくいことが課題となっています。日本睡眠学会は「一目でわかる診療科を求めるニーズは高い」と説明しています。

 経済協力開発機構(OECD)の調査(2021年版)では、日本人の1日当たりの平均睡眠時間は7時間22分で、33カ国中で最短。厚労省の調査では、睡眠で十分な休養が取れていない人の割合は2018年に21・7%に上っています。慢性的な睡眠不足は高血圧や糖尿病、うつ病などのリスクを高める恐れがあります。

 こうした中、睡眠への関心が高まっています。睡眠の質を高める効果をうたう乳酸菌飲料などが人気となっており、調査会社の富士経済によると、睡眠サポート市場は2015年の43億円から2022年には640億円に急拡大しています。

 2024年6月7日(金)

2024/06/06

🟧世界の平均気温、5月も観測史上最高 12カ月連続で記録更新

 ヨーロッパ連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は6日、今年5月の世界平均気温が15・91度で、5月としては1940年からの観測史上最高だったと発表しました。これまで最高だった2020年を0・19度上回りました。その月としての記録を更新するのは、昨年6月から12カ月連続となりました。

 産業革命前と同程度とされる1850~1900年の5月の推定平均気温と比べ、1・52度高くなりました。

 アメリカのカリフォルニア州からインドのニューデリーに至る世界各地を熱波が襲い、死者が出た地域もありました。今夏はさらなる熱波が予想されています。

 地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では年ごとの変動を除いた世界の平均気温の上昇幅を1・5度に収めることが目標ですが、達成は困難な情勢です。

 2024年6月6日(木)

2024/06/05

🟧緊急避妊薬の処方箋なし試験販売で200薬局追加へ 武見厚労相が明らかに

 望まない妊娠を防ぐため性交後に服用する「緊急避妊薬(アフターピル)」の医師の処方箋なしでの試験販売を巡り、武見敬三厚生労働相は5日の衆院厚労委員会で、販売する薬局を本年度、200ほど追加できる見込みだと明らかにしました。立憲民主党の早稲田夕季氏への答弁。

 試験販売は、日本薬剤師会が厚労省の委託を受けて調査研究として実施。昨年11月に全国145の薬局で始めました。対象は16歳以上の女性で、事前の電話相談や薬剤師の面前での服用が求められます。

 緊急避妊薬は排卵を遅らせる薬で、性交後72時間以内に飲むと8割の確率で避妊できるとされます。購入するには医師の処方箋が必要で、近くに受診できる医療機関がなかったり、受診に心理的な負担を感じたりする人が薬を使いづらいことが課題になっていました。

 2024年6月5日(水)

2024/06/04

🟧糖尿病患者の寿命延びる 死因1位はがん、学会が調査

 日本で糖尿病と診断された人の寿命が、2020年までの10年間で男性が3・0年、女性が2・2年、それぞれ延びていることが、日本糖尿病学会が医療機関を対象としたアンケートで明らかになりました。

 同学会が1970年代から10年ごとに実施している調査の5回目。「糖尿病の死因に関する委員会」(委員長・中村二郎愛知医大先進糖尿病治療学寄附講座教授)が、全国208の医療機関から登録された糖尿病約6万9000人と非糖尿病の約16万5000人の死亡時期や死因を解析しました。

 その結果、糖尿病患者が亡くなった時の年齢は平均で男性約74歳、女性約77歳。日本人全体の寿命の伸びを上回り、寿命の差は縮まりました。

 死因について調べると、1位はがん、2位は感染症。1970年代には42%を占め、1980年代まで1位だった脳梗塞、心筋梗塞、慢性腎不全などの「血管障害」は1990年代に2位、2000年代に3位と順位が下がっていました。今回の調査では死因に占める比率が1970年代の4分の1になりました。薬剤などの進歩が貢献したとみられます。

 一方で、死因中のがんの比率は1970年代の25%から増え続け、今回は39%。国民全体では28%で高止まり傾向なのに対して上昇傾向がみられ、糖尿病患者でのがんの予防、管理の重要性が示されました。

 糖尿病のよく知られた合併症である慢性腎不全が死因となった割合は、1970年代の13%から下がり続け、今回は2・3%と国民全体の2・0%とほとんど差がありませんでした。糖尿病の増加の半面、糖尿病から人工透析が必要な慢性腎不全になる人数は減少に転じており、こちらも薬剤などの進歩を裏付ける結果となりました。

 2024年6月4日(火)

2024/06/03

🟧より深刻な感染症には「パンデミック緊急事態」発令可能に WHOが国際保健規則を改正

 世界保健機関(WHO)は1日の総会で、感染症の拡大を受けた緊急事態宣言の手続きなどを定めた「国際保健規則(IHR)」を全会一致で改正しました。感染症の拡大が「緊急事態」よりも深刻化した場合に「パンデミック緊急事態」を発令することを可能とする規定を盛り込みました。

 パンデミック緊急事態は、WHOが宣言する「国際的な公衆衛生上の緊急事態」よりも重大な局面を想定しています。新たな規則では、感染症が「複数の国家にまたがって広がる」「重大な社会、経済的混乱を引き起こす」可能性がある状況などと定義し、国際社会により高いレベルの警戒と国際協調を促しています。WHOはコロナ禍でも「パンデミック」を表明したものの、明確な規定はありませんでした。

 IHR改正が承認されたことを受け、テドロス・アダノム事務局長は「我々は、そして世界は勝利した。世界はより安全になった」と謝意を表明しました。議場からは拍手が上がりました。

 今回の改正では、医薬品へのアクセスに公平性を確保することや、規則を効果的に運用するための締約国による委員会設置なども盛り込まれました。新たな規則は各国の手続きを経て、実際に適用されます。

 一方、感染症対策の強化を目指し、2年以上にわたって協議が続けられてきた「パンデミック条約」については、総会後も議論を継続し、1年以内の交渉終結を目指すことを決めました。5月下旬に開幕した総会中も議論を続けたものの、ワクチンの公平な配分や監視体制の強化などで先進国と途上国の間の溝が埋まりませんでした。

 テドロス事務局長は、「規則改正での成功は、条約策定も成し遂げられるという自信につながる」と期待を示しました。

 2024年6月3日(月)

2024/06/02

🟧細胞を投与する再生医療後に一時的な視力障害 製造したロート製薬が注意喚起

 細胞を投与する自由診療の再生医療で一時的な視力障害が報告されたとして、細胞を製造したロート製薬(大阪市生野区)が、関係する医療機関に、同様の症状が観察された場合は適切な処置をし、同社に連絡するよう求める注意喚起の文書を配布したことが1日、明らかになりました。細胞の保存のために使われた有機溶剤が、原因となった可能性が高いといいます。

 問題を調査した「特定認定再生医療等委員会」の議事録などによると、東京都のクリニックで、更年期障害や卵巣の機能低下に伴う症状の改善を目的に、自由診療で同社製造の「脂肪由来の間葉系幹細胞」が点滴で投与されました。

 昨年11月、患者に視力障害が出たとクリニックが認定委員会に報告。今年3~4月にも、このクリニックで似た症状が2件相次ぎましたが、いずれも回復したといいます。

 認定委員会では、細胞に含まれていた有機溶剤「ジメチルスルホキシド(DMSO)」が血管の収縮を引き起こした可能性があるといった意見が出ました。

 ロート製薬によると、DMSOは細胞の品質を維持するための保存液として使用されています。

 2024年6月2日(日)

2024/06/01

🟧新型コロナ感染者数は計1万6554人で横ばい 最多の沖縄県は一部で医療逼迫

 厚生労働省は5月31日、全国約5000の定点医療機関から20~26日に新たに報告された新型コロナウイルスの感染者数は計1万6554人で、1機関当たり3・35人だったと発表しました。3週連続で増加しましたが、前週(3・28人)比はほぼ横ばいの1・02倍。昨年の同時期は1機関当たり3・63人でした。

 最多の沖縄県は1機関当たり14・09人で、一部の医療機関の負担が増して逼迫しており、このまま感染が広がり続けると対応が困難になる恐れがあります。

 都道府県別で1機関当たりの感染者数が多かったのは、沖縄県に次いで鹿児島県5・34人、北海道4・84人など。少なかったのは福井県1・33人、愛媛県1・69人、香川県1・77人などでした。

 全国約500の定点医療機関が報告した新規入院患者数は計1489人で、前週比1・13倍でした。

 2024年6月1日(土)

🟪インフルエンザの患者数が注意報の基準を超える 新型コロナと同時に流行ピークの恐れも

 インフルエンザの感染状況について、厚生労働省は20日、全国約5000の定点医療機関から9〜15日の1週間に報告された感染者数が1医療機関当たり19・06人だったと発表しました。前週(9・03人)と比べ2・11倍に急増し、「注意報」の基準の10人を超まし た。  都道府県別では...