医師免許を持たない人から「HIFU(ハイフ)」と呼ばれる技術を使った美容の施術を受けてやけどを負ったとして、20歳代の女性がエステサロンを経営する会社に賠償を求める訴えを東京地方裁判所に起こしました。「HIFU」でやけどや目の病気になったという相談は近年相次いでおり、国が注意を呼び掛けています。
8日東京地方裁判所に提出された訴状によりますと、20歳代の女性は3年前、東京都内のエステ店で医師免許を持たない人から「HIFU」の施術を受け、左足にやけどを負ったとして、経営する会社に慰謝料など415万円の賠償を求めています。
原告の女性は都内で会見を開き、「治療に2年ほどかかり、今もやけどの痕が残っている。友人と温泉などに行った時に聞かれたり、着替えの時に目に入ったりするので、当時のつらい気持ちを思い出します」と話していました。
消費者庁によりますと、「HIFU」は専用の機械で皮膚に超音波を当てて加熱する技術で、肌のたるみやしわの改善、やせるなどの効果があるなどとされていますが、施術を受けた人からやけどや顔のまひ、急性白内障などになったという相談も相次いでいます。
こうした事態を受けて厚生労働省は今年6月、施術には医師免許が必要で、違反行為には速やかな指導を行うように促す通知を都道府県に出しました。
原告側によりますと、医師免許を持たない人による「HIFU」の違法性を問う裁判は初めてだということです。
エステ店を経営する会社は「訴状が届いていないので、コメントは差し控えさせていただきます」としています。
消費者庁によりますと、「HIFU」による健康被害の相談は9年前から一昨年までに135件あり、このうち7割に当たる96件がエステサロンでの施術でした。
相談の内容を見ると、7割が顔の症状についてのもので、「口が動かずろれつが回らない。右側の口がまひ」「唇が痛くなり3年たつが今でもしびれが残っている」、「目にもやがかかったような違和感がある」など、やけどだけでなく神経などにかかわる報告もありました。
消費者庁は、「HIFU」の性能やリスク、ほかの施術方法などについて十分に理解した上で、受ける必要性について考えてほしいとしています。
医師で「HIFU」の施術に詳しい東海大学医学部の河野太郎教授は、施術を受ける人は安全性などについて事前に十分に検討してほしいと話しています。
河野教授は、「『HIFU』はこれまでの治療より安全性が高く、手軽なのは事実だが、合併症の可能性は全く別の問題だ。行う人が顔や体の構造の違いを理解していないと、やけどをさせたり、神経や目の組織を傷付けたりすることもある。知識と技術が非常に重要になる」と指摘しています。
その上で、「施術を考えている人は、安全性について医師などから説明を受けることがとても重要だ。施術する部位ごとに起こり得る合併症やその対処法について理解し、十分に考える時間をとった上で判断してもらいたい」と話していました。
2024年8月9日(金)