有機フッ素化合物の「PFAS(ピーファス)」のうち、有害性が指摘されている2つの物質について、広島県東広島市の水路で国の暫定目標値の80倍となる濃度が検出されました。東広島市は周辺の住民に井戸水の飲用を控えるよう呼び掛けるとともに、今後、さらに詳しい調査を行うことにしています。
有機フッ素化合物の「PFAS」のうち、「PFOS(ピーフォス)」と「PFOA(ピーフォア)」の2種類は発がん性などの有害性が指摘され、国内でも製造や輸入が禁止されています。
東広島市は昨年12月27日に採取した水を調べた結果、八本松町宗吉の水路で「PFOS」と「PFOA」が合わせて、国の暫定目標値である1リットル当たり50ナノグラムの80倍となる1リットル当たり4000ナノグラム検出されたと26日、発表しました。
周辺には18世帯が住んでいるということで、東広島市は井戸水の飲用を控えるよう呼び掛けています。
また、高い濃度が検出された水路とつながる瀬野川の2つの地点でも、国の暫定目標値を上回る1リットル当たり250ナノグラムと170ナノグラムがそれぞれ検出されたということで、東広島市は周辺の地下水などを詳しく調べて、発生源の特定を進めることにしています。
高い濃度が検出された水路の近くにはアメリカ軍の川上弾薬庫があり、東広島市は国を通じて、「PFOS」や「PFOA」を使用していたか、使用していた場合はいつごろまで、どれくらいの量だったかなどを報告するよう求めたということです。
国内各地の河川などから検出が相次ぎ、有害性が指摘されている有機フッ素化合物「PFAS」について、国の食品安全委員会の作業部会は健康への影響評価の案を取りまとめ、人が摂取しても問題ない量の指標を示しました。
多くの種類がある有機フッ素化合物「PFAS」のうち、有害性が指摘される「PFOS」と「PFOA」は国内各地の河川や水道水で高い濃度で検出されるケースが相次いでいることから、国は水質について暫定的な目標値を定めています。
これについて、食品安全委員会は作業部会を設けて、「PFAS」が飲料水や食品などとして体内に入った場合の健康への影響評価を進めており、26日に評価書の案を取りまとめました。
それによりますと、国内外の研究で一部のがんとの関連が報告されているものの、証拠は限定的だとした上で、動物実験の結果などから、PFOSとPFOAについて、毎日摂取しても問題ない量を、いずれも体重1キログラム当たり20ナノグラムとする指標を示しました。これは現在の国の水質の暫定的な目標値とほぼ同等だということです。
このほか、評価書の案では一般的な食生活で著しい健康リスクが生じている状況ではないものの、健康影響についての情報が足りないため、できるだけ摂取量を抑えるなどの対策が必要だと指摘しました。
評価書の案は今後、正式に取りまとめられた上で、国の水質の正式な目標値などの議論に活用されるということです。
環境省のPFAS対策を話し合う専門家会議のメンバーで、環境汚染による健康影響に詳しい京都大学大学院の原田浩二准教授は今回の報告書について、「PFASによる影響が少なくとも、脂質代謝やコレステロール値、子供の生まれてくる時の体重などと関係はありそうだという評価がされている。有害かどうかという点は専門家の中で意見が違うところはあるが、少なくとも疫学に関する知見が非常に高まっている。国内において行政によるPFASのリスクの評価はこれが初めてで、一つの基礎ができたと評価できる」と話しています。
2024年1月27日(土)