2023/06/30

🟧全国の新型コロナ患者数、前週の1・09倍で緩やかな増加傾向 沖縄県はすでに第8波超え

 新型コロナウイルス感染症の増加傾向が続いています。厚生労働省の6月30日の発表によると、同25日までの1週間の全国の感染状況は1医療機関当たり6・13人で、前週の1・09倍。沖縄県が「(今年初めの)第8波のピークを超える状況」(厚労省)となっているほか、鹿児島県で新型コロナと季節性インフルエンザの同時流行の拡大が顕著となっています。

 厚労省によりますと、25日までの1週間に全国約5000の定点医療機関から報告された新型コロナの患者数は前の週から2641人増えて、3万255人となりました。

 1医療機関当たりの患者数は、沖縄県が最多の39・48人(前週比1・37倍)、続く鹿児島県が11・71人(同1・22倍)で、前週比で増加したのは39都府県に上りました。

 沖縄県では医療逼迫(ひっぱく)が顕著で、感染症に詳しい国際医療福祉大の松本哲哉教授は「『5類』移行後、全国的に感染対策は緩み、医療機関の病床の受け皿は縮小している。程度の差はあれ沖縄以外の地域でも医療逼迫が起きる可能性は十分にある」と警鐘を鳴らしています。

 厚労省の発表によると、季節性インフルエンザは全国で減少傾向ですが、鹿児島県で1医療機関当たり18・09人(前週比1・71倍)と突出した伸びとなっています。

 松本教授は新型コロナや季節性インフルエンザに加えて、小児の間で全国的にRSウイルスやヘルパンギーナなどの感染症も同時流行していると指摘。小児は大人に比べて入院病床も少ないとして「いよいよという状況になれば、国や自治体がしっかりと『アラート(警報)』を出して、保護者の注意を促すことも必要ではないか」と語りました。

 2023年6月30日(金)

🟧夏場でも3人に1人がエアコン不使用、理由は「電気代」 ダイキンが調査

 梅雨時期や夏場にエアコンを使わない人にその理由を尋ねたところ、「電気代がもったいない」が最多で、梅雨時期と夏場いずれにおいても約半数を占めていることがわかりました。空調大手のダイキンが29日発表した調査で、こうした実態が明らかになりました。

 調査は同社が熱中症対策への意識や、梅雨時や夏場のエアコンの使用実態などを把握するため、6月2~6日に全国の20~60歳代の男女を対象に実施、有効回答は1046人でした。

 その結果、梅雨の時期から夏場にかけ、何らかの熱中症対策に取り組んでいる人は87・9%に上り、このうち「エアコンの使用」を挙げた人は梅雨時が69・0%、夏場には78・9%でした。

 ただ、全体では、エアコンを使っていない人が梅雨時には40・4%、夏場には31・3%に達し、その理由を尋ねると、梅雨時で46・7%、夏場で50・4%が「電気代がもったいないから」と回答しました。ほかにも、「エアコン使用時に肌寒くなる」ことや「湿気による不快感が解消できない」ことも挙げられました。

 ダイキンは「電気代の値上げが続く中、消費電力の大きいエアコンを使うことへのジレンマやためらいがあることがうかがえる」と分析。その一方で、東京都の調査で「熱中症死亡者の9割以上がエアコン不使用だった」ことなどを挙げ、猛暑や湿度の高い状態が続くこれからの時期には、エアコンを適正に使用することの重要性を訴えています。

 2023年6月30日(金)

🟧機能性表示食品のサプリの有効性表示、届け出を逸脱 景表法違反で2例目の措置命令

 科学的根拠が不十分でありながら、機能性表示食品として有効性をうたってサプリメントを販売したことが景品表示法に違反するとして、消費者庁は30日、通販会社のさくらフォレスト(福岡市中央区)に対し、再発防止策などを求める措置命令を出したと発表しました。機能性表示食品の表示に対する措置命令は、今回で2例目。

 同社は本日付けで、機能性表示食品の届け出を撤回し、販売を終了しました。消費者庁では、今回の商品と同じ研究レビューを用いた約90件の届け出についても、再確認する方針を示しています。

 同社は、機能性表示食品のサプリメント「きなり匠」「きなり極」の2商品について、自社ウェブサイト、同梱冊子、容器包装で有効性をうたっていました。

 「きなり匠」はDHA・EPA、モノグルコシルヘスペリジン、オリーブ由来ヒドロキシチロソールの3成分を配合。消費者庁へ「中性脂肪を低下させる機能」「血圧が高めの方の血圧を下げる機能」「抗酸化作用を持ち、血中のLDLコレステロールの酸化を抑制」することが報告されているという表示を届け出ていた。

 しかし、自社ウェブサイトでは「血圧をグーンと下げる」など、届け出た表示を逸脱した表現が見られました。

 さらに、表示を裏付けるための科学的根拠が不十分と判断されました。DHA・EPAについては、研究レビューによって30報以上の研究論文を対象に評価しましたが、今回の商品よりも多くの成分を含む食品を用いた試験が多数あったといいます。

 モノグルコシルヘスペリジンについては、一般的な醤油を減塩醤油に置き換えた上で、サプリメントを摂取させるという試験の論文を用いましたが、「サプリメント単独の効果を裏付けるものではなかった」(表示対策課)と指摘しています。オリーブ由来ヒドロキシチロソールでも、評価方法が不適切だったといいます。

 同社からは、届け出資料を含む根拠資料が提出されたものの、合理的なものとは認められませんでした。消費者庁は同社に対し、現在も続いている容器包装の表示をやめることや、再発防止策の構築などを命じました。

 消費者庁では、今回の2商品と同じ研究レビューを使用している約90件の商品を対象に、届け出資料が適正かどうかを再確認する方針。内訳はDHA・EPAが31件、モノグルコシルヘスペリジンが14件、オリーブ由来ヒドロキシチロソールが47件としています。

 同時に業界に向けて、表示の裏付けとなる科学的根拠を欠く場合は景表法や食品表示基準に抵触することを周知する予定といいます。

 さくらフォレストは、「今回の措置命令を重く受け止めている。役員、従業員に周知徹底する方針で、コンプライアンス研修を実施し、広告・表示のチェック体制をいっそう強化していく」と話しています。

 2023年6月30日(金)

2023/06/29

🟧沖縄県、推計週1万人がコロナに感染 定点1医療機関当たり39・48人

 6月19~25日までの1週間に沖縄県内で確認された新型コロナウイルスの新規感染者は前の週の1・4倍近くとなり、総数は1万人と推計されています。沖縄県は県内の病院長らと対応を協議し、患者の状況に応じて対応する病院を振り分ける方針を確認しました。

  6月25日までの1週間に県内54の定点医療機関で報告された新規感染者は前の週の1・37倍の2132人で、1医療機関当たりの数は39・48人と、前の週時点の全国平均と比べると7倍以上に上っています。推計される新規感染者の総数は1万人とみられていて、県内の重点医療機関では6カ所で救急診療を制限し、5カ所で一般診療を制限する事態となっています。 

 新型コロナ患者に対応する重点医療機関36カ所(専用病床525床)の病床使用率は65・9%で、圏域別では本島68・5%、宮古30・8%、八重山53・8%でした。

 重点医療機関を含む県内各病院の入院患者は、29日午前11時時点で933人に上り、過去最も感染が広がった昨年8月の1666人に迫る勢いです。

 保健所別の定点報告数は、南部が711人(定点1医療機関当たり50・79人)と最多で、続いて、中部592人(同37・00人)、那覇市450人(同37・50人)、北部161人(同32・20人)、八重山116人(同38・67人)、宮古102人(同25・50人)でした。

 感染の急拡大に伴い、県は昨夜、県内の各病院や医師会と対応を協議しました。会議では、救急外来のある一部の病院に患者が集中している状況を改善するため、患者の症状や重症化のリスクに応じて対応することを議論しました。具体的には、入院治療が求められる患者、在宅医療で支えられる患者、介護者の見守りでよい患者の3つに分け、重点医療機関と地域のクリニックが連携して対処するとしています。

 県は5類に移行する前に県が担っていた入院調整を再開させることは難しいとした上で、入退院が円滑に進む施策を講じる考えを示しました。

 2023年6月29日(木)

🟧 無免許で女性2人に美容整形疑い 中国籍の女逮捕、埼玉県川口市

 医師ではないのに医療行為をしたとして、埼玉県警生活経済課と国際捜査課、川口署の合同捜査班は28日、医師法違反(無資格医業)の疑いで、川口市並木3丁目、中国籍の会社役員の女、李平(38)を逮捕しました。

 逮捕容疑は昨年1~3月ごろ、医師ではないのに自宅マンションの居室内で2回にわたり、県内に住む中国籍の20歳代と30歳代の女性2人に対して乳房や額などにヒアルロン酸のような液体などを注射するなどの医業を行った疑い。

 生活経済課によると、女は東京都内のエステサロン経営者。知人を介して知り合った2人とメッセージアプリで連絡を取り、それぞれ20万~30万円で手術を請け負いました。

 2人は術後しばらく経過しても痛みやはれが引かず、3月に川口署に来署。「医師免許がない中国人女性から豊胸手術を受け、胸に痛みがある」などと相談していました。

 生活経済課は、女の居室からヒアルロン酸用の注射液や麻酔剤、注射器数十本を押収しました。

 女は、「人に注射をしていいのは医者だけだと知っていたが、ヒアルロン酸を注射した人ははっきり覚えていない」と容疑を一部否認しており、「客に頼まれれば自分のお金にもなる。大事になると思わずにやってしまった」などと供述しているといいます。

 2023年6月29日(木)

🟧東京都の新型コロナ定点報告、1医療機関当たり6・22人 前週比0・37人増でほぼ横ばい

 新型コロナウイルスの感染者数について、東京都は6月25日までの1週間では、1医療機関当たり6・22人で、前の週に比べてほぼ横ばいと発表しました。

 都は29日、新型コロナの感染状況について、モニタリング項目を発表しました。

 発表によりますと、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、414カ所から報告があり、感染者数は6月25日までの1週間で計2577人でした。

 1医療機関当たりでは6・22人で、前の週に比べて0・37人増え、専門家は「ほぼ横ばいだが、今後の動向に十分な注意が必要だ」と分析しています。

 6月26日時点の入院患者数は1031人で、前の週に比べて75人増えました。

 専門家は「医療提供体制への大きな負荷はみられないが地域や診療科によってはほかの病気の受診者が増加してきており、状況を注視する必要がある」として、周囲の状況に応じた感染防止対策を心掛けるよう呼び掛けています。

 2023年6月29日(木)

🟧塩野義製薬、「ゾコーバ」の小児対象治験を開始 コロナ治療選択肢拡大も

 塩野義製薬は29日、新型コロナウイルスの飲み薬「ゾコーバ」について、6歳以上12歳未満の小児患者を対象とした最終段階の臨床試験(治験)を開始し、初回投与を28日に行ったと発表しました。12歳未満に使えるコロナ治療薬は現在、点滴薬しかありません。塩野義製薬は治験で成果が得られれば適用範囲の拡大を国に申請する方針で、「新たな選択肢として期待できる」としています。

 治験は軽症・中等症の患者を対象に5日間投与し、偽薬を投与した集団との比較で安全性などを確認します。国内で120人の患者を対象に実施する予定。

 ゾコーバは軽症・中等症患者向けで、基礎疾患などの重症化リスクの有無にかかわらず処方可能。昨年11月に緊急承認され、今年3月末から一般流通が始まったものの、対象は12歳以上となっています。

 国内でほかに新型コロナの飲み薬として流通しているアメリカのメルクの「ラゲブリオ」、アメリカのファイザーの「パキロビッド」も、12歳未満には投与できません。

 新型コロナの感染者数は4月ごろから増加傾向にあります。塩野義製薬によると「軽症・中等症の12歳未満には点滴までせず、対症療法にとどまる場合が多い。安全で飲みやすい抗ウイルス薬が求められている」といいます。

 2023年6月29日(木)

🟧沖縄県、救急搬送困難が急増 コロナ再拡大も要因

 新型コロナウイルスの感染再拡大により、那覇市消防局では、19~25日に急患の搬送先病院への「受け入れ照会4回以上」かつ、搬送先が見付かるまで「現場滞在30分以上」となった救急搬送困難事案が前週に比べて4倍の21件となっていることが28日、わかりました。

 沖縄県内各消防でも搬送人員が増加しています。県防災危機管理課によると、19~25日の搬送人員は計1858人で、前週から186人増加しました。搬送人員の内訳はコロナ関連が158人(前週比37人増)、一般救急が1700人(同149人増)でした。搬送人員は流行第7波を経験した昨年7月10~18日の1922人に迫りつつあります。

 各医療機関では入院患者の増加で病床確保が難しくなり、救急医療を制限する病院もあります。県内各消防のまとめでは、19~25日までに搬送時の「受け入れ照会4回以上」61件(前週比13件増)、「現場滞在30分以上」100件(同29件増)となるなど、患者の負担も増加しています。

 那覇市消防局などによると、近隣病院への搬送要請が断られる事例も目立つといいます。南部から中部の病院へ搬送するなど、医療圏域を越える事例も増えつつあります。

 県立中部病院救急科副部長の山口裕医師によると、同院救急救命センターでは、救急搬送や自ら病院を訪れる受診者が100人を超えるのは主に土日や連休中でしたが、6月中旬以降は平日でも度々100人を超えるようになりました。

 入院するのは、感染により基礎疾患が悪化した高齢者だけでなく、コロナ以外の呼吸器系ウイルス感染症を患う小児も増えています。医療現場では病床や医療従事者不足が常態化しており、医療者の負担感が増しています。

 本格的な夏を迎えるに当たり今後は熱中症が増えることも予想され、那覇市消防局はしっかり対策してほしいと呼び掛けています。

 2023年6月29日(木)

2023/06/28

🟧精子や卵子を使わず「胚」に似た組織の作製に成功 エール大とケンブリッジ大が発表

 精子や卵子を使わずに、受精卵から胎児になる初期の過程の「胚」に似た組織を作ることに成功したと、アメリカのエール大とイギリスのケンブリッジ大のチームが発表しました。それぞれの論文が28日、科学誌「ネイチャー」に掲載されます。

 いずれもさまざまな細胞に成長できる人の多能性幹細胞から人工的に作った「胚モデル」で、先天性疾患の原因究明などに役立つ可能性があります。将来的には人工的に人をつくる技術につながる恐れもあり、生命倫理の観点で議論を呼びそうです。

 アメリカのエール大の研究では、人の多能性幹細胞を特殊な環境下で培養すると、卵子と精子を使わずに受精後9日目ごろの胚に似た構造を確認したといいます。

 この胚モデルは細胞分裂によって、胎児や栄養分の元となる立体的な細胞塊に成長。筋肉や消化管などに発達する前段階の特徴もあり、チームは「人の胚の主要な特徴を試験管内で再構築した」としています。一方、胎盤の元になる細胞は含まず、そのまま培養を続けても胎児の体が形成される段階まで育つことはできないといいます。

 胚モデルを巡っては6月中旬、イスラエルや中国のチームも査読前の論文を公開しました。国際学会は子宮に移植することを禁止しているものの、心臓などの先天性疾患や不妊の原因究明に役立つと考えられており、世界で研究競争が激化しています。

 人の受精卵の培養期間は、臓器などの形成が本格化する14日以内とするルールが、日本など多くの国で採用されています。一方、胚モデルは研究が先行し、詳細なルール整備が追い付いていません。「生命の萌芽(ほうが) 」とされる受精卵に比べて倫理的な課題が少ないとして、14日超の培養を容認すべきだという声もあります。日本でも、内閣府が規制の必要性について議論を本格化させる予定です。

  北海道大の石井哲也教授(生命倫理)は、「研究が進展するほど、人工的に人を作る懸念が増す。研究者は胚モデルの作製目的を説明し、受精卵との違いを明確化する責任がある」としています。

 2023年6月28日(水)

🟧富山化学の「アビガン」、希少疾病用医薬品に指定 マダニ感染症治療に期待 

 厚生労働省は27日までに、富士フイルム富山化学(東京都中央区)の開発した抗ウイルス薬「アビガン」を希少疾病用医薬品に指定しました。アビガンは、マダニが媒介する致死率の高いウイルス感染症への効果が期待されています。指定により国の助成や薬事承認審査の優遇措置を受けることができ、同社は実用化に向けて試験開発を進めます。

 希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)は、国内の対象患者数が5万人未満で、医療上、特に必要性が高いなどの条件を満たした医薬品。アビガンは5月29日の厚労省薬事・食品衛生審議会医薬品第2部会で指定が認められ、6月22日付で厚労相から指定を受けました。

 指定されると、薬事承認、販売に向けて、開発にかかる経費負担軽減のための助成金交付、医薬品医療機器総合機構の職員による指導・助言、試験研究費の税控除、薬事承認審査の優先措置・手数料減額、再審査期間の延長―といった国の支援を受けられます。

 インフルエンザ治療薬のアビガンは、新型コロナウイルスの治療薬としては承認を得られなかったものの、マダニにかまれて感染するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)に効果がある医薬品として関係者から注目されています。

 SFTSは重症化すると死亡することがあり、致死率31%とする研究もあります。国内では昨年、過去最多の118人、今年も5月14日時点で43人が感染しています。ワクチンや有効な治療薬はありません。

 富山化学の過去の臨床研究では、アビガンを投与した患者23人のうち19人が回復し、致死率が17・4%まで低下しました。

 2023年6月28日(水)

🟧消費者庁、ドミノ・ピザに景品表示法違反で措置命令 サービス料の表記不十分

 ピザを注文した際にかかる「サービス料」について、消費者にわかりにくく表示していたとして、消費者庁は大手ピザチェーンの「ドミノ・ピザジャパン」に対して、景品表示法違反で再発防止などを命じる措置命令を出しました。 

 措置命令を受けたのは、東京都品川区に本社がある大手ピザチェーンの「ドミノ・ピザジャパン」です。

 消費者庁によりますと、同社は昨年10月から今年4月までの約半年余りの間、ピザを販売する宣伝のチラシに、注文時にかかる「サービス料」について、チラシの裏側などに小さな文字で記載していたほか、持ち帰りの価格より割高になるデリバリー価格に含まれる料金だと、消費者を誤認させるような表示だったということです。

 チラシは今年4月20日現在で全国の店舗の約98%に当たる953店舗で配布されていたということで、デリバリーと持ち帰りのどちらで注文しても、さらに4%から7%程度のサービス料が加算されていたということです。

 消費者庁は、こうした表示は景品表示法に違反するとして、会社に対して27日付けで再発防止などを命じる措置命令を出しました。

 措置命令を受けたことについて、ドミノ・ピザジャパンは「消費者の皆様にご心配をお掛けいたしましたことを心よりお詫び申し上げるとともに、皆様の信頼を損なうことがないよう、再発防止策の履行に全力を挙げてまいります」とホームページで発表しました。

 2023年6月28日(水)

🟧国立がん研究センター中央病院、希少がん治療薬のオンライン治験開始へ 通院なしで参加可能 

 国立がん研究センターは26日、希少がんの患者に開発中の薬を投与する治験(臨床試験)で、センターの中央病院(東京都中央区)から遠方の患者をオンライン参加できるようにすると発表しました。中央病院には一度も通院せずにすむため、地方の患者が参加しやすくなるほか、希少がんの治療薬の開発が進むことも期待されます。

 センターによると、中央病院は3月末時点で525件のがんの治験を実施しています。これに対し、地方では大学病院でさえ治験数が1ケタの場合があるといいます。特に患者の少ない希少がんでは、治験の件数が少ない上、都市部に治験が集中しやすく、地方から参加するのに移動時間や経済面での負担が大きくなっています。希少がんの患者団体からは、地方に住む患者でも参加できるよう改善の要望が出ていました。

 今回の治験自体は四国がんセンター(松山市)や島根大病院(島根県出雲市)など国内4施設で実施され、このうち中央病院のみオンライン治験をします。治験の対象は、類上皮肉腫という手や腕などにできるがんの患者。比較的若い人に多く、国内の主な病院での患者数は2015年までの10年間で174人といいます。

 治験では、一部の血液がんで承認されている薬「タゼメトスタット」の有効性と安全性を、類上皮肉腫の患者で調べます。8月から患者登録を始める予定です。

 オンライン治験で、地方の患者は地元の病院を受診します。中央病院とはタブレット端末で結ばれており、主治医の同席のもと定期的に治験の診療を受けます。

 治験薬は中央病院から患者宅に直接送られます。血液検査や薬の効果を判定する画像検査は、地元の病院で受けます。これらの情報はクラウド上で共有されます。

 副作用が出た時には中央病院が対応し、緊急時は地元の病院も協力します。

 同じような取り組みは、愛知県がんセンターが昨年から別のがん治療薬の治験で実施しています。

 中央病院の島田和明病院長は、「オンライン治験は患者を早く集められるため、治験期間の短縮やコスト削減にもつながる」と語っています。希少がんで実績を重ねて、ノウハウを他の機関とも共有し、遠方の患者でも治験に参加しやすい環境を作ることを目指しているといいます。

 日本希少がん患者会ネットワークの真島喜幸理事長は、「希少がんは治療薬が少ない。オンライン治験が広がり、身近な医療機関から参加できるようになれば、患者の希望になる」と話しています。

 2023年6月28日(水)

🟧目の遺伝子治療薬「ルクスターナ」を国内で初承認 アメリカでは1億2000万円

 製薬大手ノバルティスファーマは26日、目の遺伝性難病の治療薬「ルクスターナ」について、厚生労働省から製造販売の承認を受けたと発表しました。先駆けて承認されたアメリカでの価格は両目で85万ドル(約1億2000万円)で、日本でも高額となることが見込まれます。

 目の病気の遺伝子治療薬が承認されたのは、国内初となります。対象は、難病「遺伝性網膜ジストロフィー」のうち、「RPE65」という遺伝子に異常がある患者。網膜の光を感じ取る機能が低下し、半数以上は10歳代後半までに失明に至るものの、これまで有力な治療法がありませんでした。

 治療では、両目の網膜下に薬を1回ずつ注射し、正常な遺伝子を細胞に送り込みます。投与対象は、網膜に光を感じ取る細胞が残っていることが条件で、同社は5年間で15人程度を見込みます。

 薬の公定価格(薬価)は今後、中央社会保険医療協議会(中医協)で審議されます。これまでの国内最高額は、全身の筋力が低下する難病「脊髄性筋委縮症」(SMA)の遺伝子治療薬で、2020年に承認されたノバルティスファーマの「ゾルゲンスマ」の1億6707万円となっています。

 2023年6月28日(水)

2023/06/27

🟧緊急避妊薬、処方箋不要に 厚労省、今夏から一部薬局で試験的販売へ

 望まない妊娠を防ぐ「緊急避妊薬」について、厚生労働省は26日、今夏にも一定の要件を満たす薬局に限定し、調査研究として試験的に処方箋なしに販売する方針を決めました。販売する薬局は各都道府県に最低1カ所設けます。購入には現在、医師の処方箋が必要で、休日や夜間に入手しにくいなどの声が上がっていました。来年3月末までの調査結果などを踏まえ、市販化の可否を判断します。

 緊急避妊薬は、性行為から72時間以内に服用すると、妊娠を防ぐ可能性が高まります。市販化に向けた機運の高まりを受け、厚労省の検討会が議論を進めています。

 厚労省は、同日開かれた検討会で試験的な販売案を提示。緊急避妊薬の調剤実績のある薬局を中心に、(1)研修を受けた薬剤師が販売(2)夜間・土日祝日の対応が可能(3)プライバシー確保のための個室がある(4)近隣の産婦人科医などと連携できる、などの要件をもとに選定・公表する方針です。実際に販売する薬局は今後、日本薬剤師会など関係団体と詰めます。

 調査研究では、薬局が販売時に購入者へ説明や指導ができたかや、購入者へのアンケートで避妊の結果や産婦人科受診の有無などを確認し、市販化に向けた対応策の検討に生かします。

 緊急避妊薬は「レボノルゲストレル」というホルモン剤を成分とする錠剤の薬で、排卵を遅らせる作用などがあり、性行為から72時間以内に1回服用することで、80%以上の確率で妊娠を防げるとされています。

 副作用は子宮からの出血や頭痛などが報告されていますが、重大なものはないとされています。

 厚労省の専門家の検討会で示された資料によりますと、海外では約90の国や地域で、医師の処方箋がなくても薬局などから購入できるということです。

 また、購入にかかる費用はイギリスやアメリカなど7カ国のデータでは、日本円で約6000円以下ですが、日本では平均で約1万5000円となっています。

 2023年6月27日(火)

🟧新型コロナ重症患者の人工呼吸器を2分間停止 大阪府立病院医師「同意得ようと」

 東大阪市の大阪府立中河内救命救急センターで2021年3月、男性医師が新型コロナウイルス感染後に重症化した男性患者の人工呼吸器を約2分間故意に停止し、患者を重篤な状態に陥らせていたことが、明らかになりました。

 患者との間に人工呼吸器の装着方法を巡る意見の相違があったといい、医師は病院に「命の危険はなく同意を得るために許される範囲だと考えた」と説明。病院は「重大な倫理違反がある」として、患者に謝罪しました。

 府などによると、患者は60歳代(当時)で集中治療室に入院し、口からのどに管を通す形で人工呼吸器を装着していました。40歳代(当時)の男性医師は細菌感染で起きる肺炎などの合併症を防ぐため、気管の一部を切開して管を入れる方法への変更を患者に提案。しかし、説明不足から患者の理解が得られず、同意を得る目的で人工呼吸器を停止させたといいます。

 患者は血液中の酸素濃度が90%を下回るなど重篤な状態に陥り、人工呼吸器を再開後に回復しました。翌日には気管切開して挿管し、現在は退院して社会復帰しているといいます。

 この問題を受けて病院が設置した倫理委員会は、「装着方法の変更という目的自体は不適切といいがたい」とした上で、医師と患者の間で「『呼吸器止めてみます?』『止めてみろ』と売り言葉に買い言葉のようなやりとりがあった」と指摘。「患者の自由意思による決定とはいいがたい。故意に苦痛を与える行為で重大な倫理違反がある」と結論付けました。 病院を管理する市立東大阪医療センターは2021年12月、この医師を戒告の懲戒処分にしていますが、男性医師は処分の撤回を求める裁判を起こしています。

 2023年6月27日(火)

🟧医療承認を得ずに、インフルエンザに効くとうたいミネラルウオーターを販売 女性社長ら3人不起訴、千葉地検

 千葉地検は26日、医薬品としての承認を受けていないミネラルウオーターをインフルエンザに効くとうたって販売したとして、医薬品医療機器法違反(承認前医薬品の広告、無許可販売業と貯蔵の禁止)の疑いで逮捕された東京都文京区の飲料水販売会社「超ミネラル総研」社長の女性(76)=千葉市稲毛区=と、同社社員の男性2人(51歳と55歳)を不起訴処分としました。地検は不起訴の理由を明らかにしていません。

 千葉区検は同日、同社と同社社員の男性(57)を同法違反の罪で略式起訴しました。千葉簡裁は同社に罰金100万円、追徴金270万8770円の略式命令を出し、同社は即日納付しました。男性にも罰金50万円の略式命令が出されました。

 起訴状によると、昨年3~6月、インフルエンザウイルスを不活性化させる効果があるなどと自社のウェブサイトで広告したミネラルウオーターを、代理店に計約321万4000円分販売したとされます。

 2023年6月27日(火)

2023/06/26

🟧沖縄県、軽症患者受け入れ医療施設を稼働 新型コロナ感染急拡大

 沖縄県は、新型コロナウイルスの感染が急拡大して入院患者が増加し、多くの病院で新たな入院患者の受け入れが難しくなっているとして、軽症患者を受け入れる医療施設を26日から那覇市内で稼働させました。

 新型コロナウイルスの沖縄県の感染状況は、6月18日までの1週間で、県内54の医療機関から報告された新型コロナの患者数は1552人、1医療機関当たりの平均患者は28・74人で、前週から1・56倍に増えました。推計される患者総数は7280人で、全国最悪の水準の感染状況が続いているとみられます。

 県全体の入院者数は18日現在で507人で、重症は9人、新型コロナ専用病床の使用率は県全体で57・8%。医療機関での院内感染も相次ぎ、救急部門の診療を制限する病院も複数出ていて、医療提供体制がひっ迫しています。

 これについて、玉城デニー知事は26日に記者会見を開いて、県として行う緊急の対策を発表しました。

 それによりますと、65歳以上の軽症の患者を25人まで受け入れて治療できる施設を26日から那覇市内で稼働させるとともに、感染症専門の医師などでつくるチームを設置して、県に助言してもらうということです。

 玉城知事は、「救急医療に大きな負荷がかかり、心筋梗塞や脳卒中などの救急治療が必要な方や、交通事故などで外傷を負った方の治療が難しくなり、救えるはずの命を救うことができなくなる事態が現実となる恐れがある」と危機感を示しました。

 その上で、県民に対し、体調が悪い場合は外出を控えるとともに、高齢者など重症化リスクが高い人は、ワクチンを早期に接種するよう呼び掛けました。

 2023年6月26日(月)

🟧新型コロナ「第9波が始まっている可能性」 政府分科会の尾身会長

 新型コロナ対策に当たる政府分科会の尾身茂会長は、岸田文雄首相と面会した後、「全国的には感染者数が微増傾向で、第9波が始まっている可能性がある」と述べ、高齢者を中心に6回目のワクチン接種など亡くなる人を減らすための対策を行う必要があると指摘しました。

 尾身会長によりますと、26日午前、岸田首相と面会し、新型コロナウイルスの今の感染状況と、中長期的な推移、求められる対策について意見交換を行ったということです。

 面会の後、尾身会長は「医療機関の定点把握などのデータをみると、地域によって差はあるが全国的には微増傾向にあるのではないか。第9波が始まっている可能性があるが、今後どのように推移するかは今のところわからない。社会を元に戻していく方向に進む中で、重症化リスクの高い高齢者を守り、亡くなる人を減らすことが重要だ」と述べました。

 今後の見通しについて、尾身会長はイギリスでは感染拡大の波を経るごとに徐々に亡くなる人の数が少なくなり、感染が地域の中で一定のレベルに落ち着く「エンデミック」に移行してきている可能性があるとした上で、「日本も第9波による死者数が第8波を下回るようであればイギリスから遅れてエンデミックの方向になっていくのではないか。致死率は今のところ大きく変わっていないと思う。新規感染者がどれだけ出るのか注視する必要がある」と指摘しました。

 その上で、「5類に移行したことで接触の機会が増えており、ある程度の感染者の増加は織り込み済みだったと思う。亡くなる人を減らすよう注意して社会を回すことが大事だ。自治体などが高齢者施設での感染対策をしっかりやっていくほか、免疫は時間の経過とともに下がっていくため、特に高齢者は個人の判断になるが6回目のワクチン接種を検討してほしいと思う」と述べました。

 2023年6月26日(月)

🟧ツツガムシ病で80歳代の女性が死亡 青森県内での死亡は2023年初

 青森県は26日、青森市の80歳代の女性がダニの一種であるツツガムシに刺されて感染する「ツツガムシ病」で死亡したと発表しました。ツツガムシ病に感染し亡くなったのは、青森市に住む80歳代の女性です。

 県によりますと、女性は6月上旬に発熱や発疹といった症状が出たため、8日に医療機関を受診し、ツツガムシ病と診断されました。 女性は入院して治療を受けていましたが、13日に亡くなったということです。

 青森県内で2023年、ツツガムシ病の感染が確認されたのは5人いて、亡くなったのは初めてです。死者が出るのは2年連続となりました。

 県内では5~6月にツツガムシ病の感染者が多く、県は草地では肌の露出を避けたり、山林に入った後はすぐに入浴したりするなどの対策を呼び掛けています。また、刺された場合は早期に適切な治療を受けなければ重篤化することから、速やかに医療機関を受診するよう呼び掛けています。

 2023年6月26日(月)

🟧サウナ中の体調不良で救急搬送、25%超入院必要 消防組合が入浴方法に注意呼び掛け

 サウナの人気が高まりを見せる中、福島県中部に位置する郡山地方広域消防組合が2013~2022年の10年間でサウナに関連した救急搬送の統計をまとめました。サウナ中に体調不良になるなどして救急搬送された101人のうち、4分の1超は入院が必要な中等症・重等症でした。同組合は入浴方法に注意を呼び掛け、事業者も対策の強化に乗り出しています。

 同組合は、郡山、田村の2市、小野、三春の2町を担当し、4市町の人口計約38万人をカバーしています。救急統計をまとめたのは、栃木県日光市のサウナ施設で6月10日に20歳代の男性が冷水浴用の池で溺死する事故が起きたのが切っ掛けとなりました。

 総務省消防庁によると、国ではサウナに特化した救急統計をまとめたことがなく、同組合の統計はユニークな試みだといいます。

 搬送者の74人(73・3%)は軽症だったものの、中等症が18人(17・8%)、重症が9人(8・9%)に上っていました。男女別は男性が76人(75・2%)、女性が25人(24・8%)で、年代別では60歳以上が71人と約7割を占めました。症状別は、転倒や冷水浴中の溺水につながる「失神・意識障害」30人(29・7%)、「熱中症・脱水症」24人(23・8%)、「脳疾患」5人(5・0%)の順でした。また、搬送者のうち半数を超える56人が動脈硬化や高血圧などの持病を持っていました。

 熱気浴と冷水浴を繰り返し体を「整える」サウナブームは福島県内にも波及しており、2022年以降、森林などの自然に囲まれた屋外施設が県中、県南地域で相次いでオープンしました。須賀川市のように、民間事業者が市有公園内で開業した例もあります。近年は温度を80度など高めに設定した施設に人気が集まるといいます。

 ただ、同組合によると、体温が高まると血管が拡張し、血圧が下がります。そこで一気に冷水につかると、血管は縮まり血圧が急激に上がってしまいます。体を「整える」どころか、場合によっては負荷をかけてしまいます。

 冬に自宅の浴室で起こる「ヒートショック」の逆現象です。サウナ室から出た後に冷水とみられるシャワーを浴びていて意識を失った中等症の70歳代男性もいたといいます。

 同組合の担当者は、「サウナは健康によい半面、無理をして自分の体調管理を怠ると、生命に危険をおよぼしかねない。持病の悪化の恐れがある場合や飲酒後などは利用を避け、無理せずにサウナを楽しんでほしいこと」と話しています。

 2023年6月26日(月)

2023/06/25

🟧2022年の年間死亡者、過去最多の156万人 コロナ禍の影、増える老衰死

 2022年1年間に国内で死亡した日本人は156万人余りと、前の年より9%近く増え、1899年に統計を取り始めて以降、過去最多となりました。今後も増え続け、2040年には約167万人に達する見込みです。

 厚生労働省の人口動態統計によりますと、昨年1年間に国内で死亡した日本人の数は、概数で156万8961人で、前の年より12万9105人、率にして8・9%増え、過去最多を更新しました。

 新型コロナウイルス感染症の流行下で、前年から死者は約12万9000人増え、増加幅は戦後最大でした。

 死亡した人の数は1989年(平成元年)と比べると約2倍、この20年でも1・5倍に増えています。

 年代別では、80歳以上の死者が計10万9000人増え、前年からの増加数の約85%を占めます。

 死因ごとにみますと、最も多いのは「がん」で38万5787人と全体の24%を占めていて、次いで、急性心筋梗塞(こうそく)や心不全などの「心疾患」が23万2879人(14%)、「老衰」が17万9524人(11%)などとなっていて、「新型コロナ」で死亡した人は4万7635人でした。

 老衰による死者が前年より約2万7000人増えており、高齢化と新型コロナの影響が死者増につながったと厚労省はみています。

 国立社会保障・人口問題研究所がまとめた将来推計人口によりますと、1年間に死亡する人の数は今後も増え続け、2040年には約167万人とピークを迎えた後は減少に転じるものの、2070年まで年間150万人以上で推移する見込みです。

 2023年6月25日(日)

🟧カネミ油症患者への「香典」10万円に増額へ 原因企業のカネミ倉庫が提示

 1968年に発覚した国内最大級の食品公害「カネミ油症」の被害者団体と国、原因企業のカネミ倉庫(北九州市)による3者協議が24日、福岡市内で開かれました。カネミ倉庫は、認定患者が亡くなった際に支払う「香典」について、現在の2万円から10万円に増額する意向を伝えました。患者団体は受け入れる方針。

 カネミ油症患者には毎年、健康実態調査への協力支援金19万円と、カネミ倉庫からの給付金5万円などが出されているものの、被害者団体は「他の公害被害者と比べて低額で、患者の生活は苦しい」と訴えています。

 カネミ倉庫は「医療費とは別に弔意を表したい」として、患者が亡くなった際に2万円を支払ってきましたが、患者団体は20万円を求め、交渉が続いていました。

 香典の支払いは昨年10月1日に逆上り、すでに支払われた約30人には差額の8万円を追加するとしています。

 カネミ油症の認定患者の累計は、今年3月末時点で2370人。

  2023年6月25日(日)

🟧茨城県、女性死亡受けマダニに注意呼び掛け 草むらに入る際は肌の露出少なく、虫よけも

 マダニの媒介が考えられる「オズウイルス」に茨城県内在住の70歳代の女性が感染して亡くなりました。このウイルスによる感染症が人に発症したり、死亡したりする事例が確認されたのは世界で初めてといいます。感染経路は不明ですが、マダニにかまれて感染する可能性が考えられるとして、茨城県は23日、記者会見を開き、注意を呼び掛けました。

 県感染症対策課によると、オズウイルスは愛媛県で採取されたマダニの一種である「タカサゴキララマダニ」から2018年に世界で初めて確認されました。詳しい症状は不明で、有効な治療薬も判明していないといいます。

 同課によると、女性は昨年初夏、39度の熱や嘔吐(おうと)などの症状で医療機関を受診。肺炎の疑いで抗生剤を処方されて自宅療養していたものの、症状が悪化したため、別の医療機関を受診すると、右脚の付け根にマダニがかみついていることが確認されました。女性は入院から26日目に心筋炎で死亡。

 茨城県衛生研究所で入院時の検体を検査した結果、オズウイルスの遺伝子を検出。その後、国立感染症研究所の検査で今月21日、死因がオズウイルスによる心筋炎と確定しました。

 同課は、「草むらなどに入る際は、肌の露出を少なくし、虫よけも併用してほしい。万が一、マダニにかまれた場合は無理に引き抜かず、医療機関を受診してほしい」と呼び掛けています。

 2023年6月25日(日)

2023/06/24

🟧新型コロナ起源、見解分かれ結論出さず アメリカの情報機関が報告書を提出

 世界に拡大した新型コロナウイルスの起源を調査してきたアメリカの情報機関を統括する国家情報長官室は24日、中国からの情報不足などが原因で結論に達していないとする機密報告書を政府に提出しました。

 この調査は、ジョー・バイデン大統領が90日前に命じていました。

 ワシントン・ポストはこの件に詳しいアメリカ高官2人の話として、中国中部で最初に確認された新型ウイルスが動物を介して人間に伝染したのか、あるいは厳重な警備が敷かれている武漢ウイルス研究所の実験室での事故が原因で流出したのか、今回の調査では確定的な結論に至らなかったと伝えました。

 バイデン大統領は調査を命じた際、動物説と研究所説でアメリカの情報機関の見方は二分されていると述べていました。

 同高官らは、情報機関は「努力を倍加して」起源を巡る議論を決着させよとの大統領令を受けたにもかかわらず、90日間の調査でも統一見解に至らなかったと明かしたとされます。

 ウォールストリート・ジャーナルは、問題の一部は中国から詳しい情報を得られなかったことにあると報じています。

 報告書は、アメリカ中央情報局(CIA)など18の情報機関でつくる「情報コミュニティー」の評価をまとめました。国家情報会議(NIC)と他の4機関は動物を介した説を支持した一方で、アメリカエネルギー省とアメリカ連邦捜査局(FBI)は研究所からの

流出した可能性が最も高いと判断しています。CIAは結論を出していません。

 中国に対しては、研究所流出説をより徹底的に評価するよう求める圧力が強まっています。

 世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は、武漢市の研究所に対するWHOの初期調査は不十分だったと認めています。WHOは5月、起源調査の第2段階として研究所の監査などを提案しました。

 中国はこれに強く反発。中国国家衛生健康委員会(NHC)の曾益新副主任は、追加調査計画について「常識を尊重せず、科学に対する傲慢(ごうまん)さが表れている」と指摘しました。

 2023年6月24日(土)

🟧5月の熱中症搬送は3655人 過去2番目に多く2人死亡

 総務省消防庁は24日までに、5月に熱中症で救急搬送された人は全国で3655人だったと発表しました。昨年5月を987人上回り、比較可能な2015年以降、2019年の4448人に次いで多くなりました。体が暑さに慣れていない中、各地で真夏日となった5月中旬を中心に増えました。

 今週末からは全国的に気温の高い日が続く見通しで、消防庁は小まめな水分補給や適切なエアコン使用などの対策を呼び掛けています。

 搬送者のうち1人が死亡し、3週間以上の入院が必要な重症は54人、短期入院が必要な中等症は1024人でした。全体の51・5%を65歳以上が占めました。

 都道府県別でみると、東京都の270人が最多で、埼玉県269人、愛知県259人、大阪府201人と続きました。

 2023年6月24日(土)

🟧冷蔵保存期間切れのコロナワクチンを計2418人に接種 3~5月、さいたま市の1医療機関

 埼玉県さいたま市は22日、市内の医療機関1カ所が冷蔵保存期間を超過した新型コロナウイルスワクチンを計2418人に接種していたと発表しました。同医療機関が21日、対象者に郵送で通知しており、希望に応じて健康観察を行います。体調不良の情報はないといいます。市はすべての個別接種医療機関に改めて注意喚起し、再発防止に努めます。

 市新型コロナウイルスワクチン対策室によると、7日に同医療機関から市に、「冷蔵での保存期間を超過したワクチンを接種に使用していた」と連絡がありました。アメリカのファイザー社製オミクロン型対応のワクチンで、接種期間は3月4日~5月28日。3月194人、4月118人、5月2106人の12歳以上の計2418人に接種していました。

 同医療機関がマニュアルを見直して、ワクチンの冷蔵保存期間が10週間と気付いて判明しました。最大で86日期限を超過していました。有効期限まで使用できると誤認していたといいます。改めて接種するかは、対象者の希望に応じて抗体検査を行い、相談して決めるといいます。

 問い合わせは、さいたま市コロナワクチンコールセンター(フリーダイヤル電話0120・201・178)へ。

 2023年6月24日(土)

🟧カネミ油症、先天性疾患の発生率が高い傾向 「次世代調査」研究班が報告

 西日本一帯で1968年に起きた、ダイオキシン類が食用油に混入した食品公害「カネミ油症」を巡り、認定患者の子や孫を対象とした次世代調査を行っている全国油症治療研究班は23日、結果の一部を公表しました。生まれ付き唇や上あごに裂け目がある先天性疾患「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)」の発生率が高い傾向にあると報告しました。

 この日、福岡市であった被害者団体への説明会で示されました。

 厚生労働省は2021年8月から、汚染油を直接食べていない子や孫の「次世代」を対象とした初の調査を開始。2022年2月の中間報告で、認定患者の子や孫の男女計388人のうち「倦怠(けんたい)感がある」「頭痛・頭が重い」と回答した人がそれぞれ約4割いると、公表していました。

 今回、研究班は421人に自覚症状などを尋ねるアンケートを実施し、先天性疾患については292人のデータを集めました。その結果、約1%に当たる3人に口唇口蓋裂がありました。全国約300の分娩(ぶんべん)施設で生まれた子供の一般的な発症率は0・2%といいます。

 研究班長の辻学・九州大准教授は、「胎児の成長にダイオキシン類が影響している可能性がある」としています。今後は、低出生体重児など他の先天性疾患についても解析を進めるといいます。

 ただ、倦怠感や頭痛といった次世代が訴える自覚症状と油症との関連についての解析は示されませんでした。研究班は、医師の診察所見や、ダイオキシン類の血中濃度などとの関係を現在分析しているとしました。

 2023年6月24日(土)

2023/06/23

🟧熊本市の慈恵病院、内密出産11人に 初事例から1年半で利用拡大

 熊本市西区の慈恵病院は22日、東日本と西日本に在住する成人女性2人が5月、病院の担当者のみに身元を明かして出産する「内密出産」をしたと公表しました。2021年12月の初事例から10、11例目。

 2人は出産後に身元を行政に明かしましたが、慈恵病院は内密出産を「出産直後に匿名を希望する意思を確認した人」と定義しており、今回のケースも該当します。

 病院によると、いずれも産婦人科を受診しておらず、「自分で育てられない」とメールや電話で相談しました。新幹線で来院後、間もなく自然分娩(ぶんべん)で出産。母子ともに健康だといいます。

 10例目は東日本在住の女性で、出産後に「自分で育てたい」と考えを変えました。子共は女性の居住地の乳児院に保護されています。

 11例目は西日本在住の女性。出産後、子供を特別養子縁組に託すことを決めました。子供は内密出産の事例では初めて乳児院に委託せず、特別養子縁組をあっせんする県外の民間団体に預けられました。養子縁組を望む夫婦に引き取られ、手続きを進めているといいます。

 初事例から約1年半で10例を超えたことについて、蓮田健院長は「軌道に乗った感触がある。巣立っていく赤ちゃんが養親に託され、幸せそうな姿を見ると、新しい形ができている実感がある。赤ちゃんとお母さんの命を守るのが最も大きな柱だが、愛着障害や虐待など負の連鎖を断ち切る効果を感じている」と話しました。

 熊本市児童相談所は、それぞれの子供の処遇について「個別の事案には答えられない」としています。

 2023年6月23日(金)

🟧東京都の新型コロナ感染者、5類移行後に増加傾向 ヘルパンギーナも警報レベル超え

 東京都内で、新型コロナウイルスの患者数が緩やかな増加傾向にあります。都内の感染状況を分析する都感染症対策連絡会議が22日開かれ、都医師会の猪口正孝・前副会長は「今のところ、医療体制への大きな負荷はみられないが、今後の動向には注意が必要だ」と呼び掛けました。

 都の報告によると、定点医療機関当たりの1週間の患者数は5月22〜28日の週で3・96人でしたが、29日〜6月4日で5・29人に増えました。5〜11日は5・99人で、12〜18日は5・85人となり数字上は下がっているものの、出席者は「横ばい」と評価しました。入院患者数も前週より減っているものの、同じく「横ばい」とされました。

 会議で国立国際医療研究センターの大曲貴夫医師は、「都内の学校では学級閉鎖も起こっている」と指摘しました。

 さらに、子供を中心に新型コロナ以外の感染症も増加し、子供を中心にかかる夏風邪の一種で、38度を超える発熱や口やのどに水膨れができるのが特徴の「ヘルパンギーナ」が5月以降急増して、6月12~18日の定点医療機関当たりの患者報告数は6・09人となり、都の警報レベルの6・0を超えたと報告されました。警報レベルとなったのは2019年8月以来、4年ぶり。

 都はヘルパンギーナについて、特別な治療法やワクチンはないとし、こまめな手洗いなどの感染対策の徹底を呼び掛けています。

 また、都によりますと、ヘルパンギーナと同様に幼い子供がかかりやすく、発熱や鼻水とせきの症状が特徴の「RSウイルス感染症」の患者数も増えていて、1医療機関当たりで2・32人と、前の週の1・35倍となりました。

 会議の中で、都の担当者は「新型コロナで感染予防の意識が強まり、ほかの感染症の流行が抑えられていたが、そのぶん、免疫を持つ人も減ったのではないか」と分析しました。

 東京感染症対策センターの賀来満夫所長は、新型コロナの感染法上の位置付けが5類に移行し「感染対策の緩みが(子供の感染症拡大の)要因になっているのでは」と指摘。場面に応じたマスク着用や手洗いなどの感染対策をとるよう改めて求めました。

 2023年6月23日(金)

🟧新型コロナ感染者、前週比1・10倍で11週連続で増加 最多の沖縄県は1・56倍

 厚生労働省は23日、全国に約5000ある定点医療機関に12日~18日に報告された新型コロナウイルス新規感染者数は計2万7614人で、1定点医療機関当たり5・60人(速報値)だったと発表しました。前週(5・11人)の約1・10倍となり、32府県で前週より増えました。前週から増加が続くのは11週連続となり、4月上旬からの緩やかな増加傾向が続いています。

 最多は沖縄県の28・74人で、前週比1・56倍。鹿児島県9・60人、千葉県7・57人、愛知県7・22人、埼玉県7・02人と続きます。少ないのは秋田県2・81人、島根県2・95人、青森県3・18人など。東京都5・85人、大阪府4・55人、福岡県5・92人でした。

  12日~18日の全国の新規入院患者数は4417人で、前週(4484人)より減りました。集中治療室に入院している全国の重症患者数は7日間平均で前週と同じ79人でした。

  また、国立感染症研究所は5月15日から28日までに、全国19自治体で過去5年と比べ死者数がどれほど増えたかをみる「超過死亡」数を公表。いずれの自治体でも超過死亡は認められませんでした。

  5類移行後は毎日の死者数が公表されなくなったことから、迅速な動向把握や対策のために一部自治体の超過死亡数を分析し、1カ月以内に公表しています。

 厚労省は全国の流行状況について、「全国的に緩やかな増加傾向が続いているほか、5類移行の前後で単純に比較はできないものの沖縄県では今年1月の第8波のピークに近い水準になっているため引き続き注視したい」としています。

 沖縄県内では新型コロナの感染が急速に拡大しており、12日~18日の患者数は前週と比べて1・56倍に増えました。患者の搬送先を探すのに約1時間かかるケースも発生しています。

 県によりますと、18日までの1週間に県内54の医療機関から報告された新型コロナの患者数は1552人、1医療機関当たりの平均患者は28・74人で、前週から1・56倍に増えました。推計される患者総数は7280人で、全国最悪の水準の感染状況が続いているとみられます。

 県全体の入院者数は18日現在で507人で、重症は9人、新型コロナ専用病床の使用率は県全体で57・8%です。

 県内の医療機関では医療提供体制がひっ迫し始め、27の重点医療機関では7カ所で救急診療、3カ所で一般診療を制限しているということです。

 また先週、県内では救急車を呼んだ患者の搬送先を探すのに55分かかるケースや病院への照会が10回行われたケースなど、搬送が困難な事例が複数発生しているということです。

 県保健医療部の糸数公・部長は、「感染を防ぐための行動を取ってもらえるよう期待したいが、それがない場合は患者数の増加傾向が続く可能性がある。軽症の場合は救急の時間帯の受診は控えてほしい」と呼び掛けています。

 2023年6月23日(金)

🟧マダニが媒介「オズウイルス」に感染、茨城県の70歳代女性死亡 発症と死亡の報告は世界初

 茨城県は23日、県内在住の70歳代女性がオズウイルスに感染し死亡したと発表しました。人の発症と死亡が確認されたのは世界で初めて。女性はマダニにかまれ、感染したとみられます。

 県によると、女性は昨年初夏、発熱や倦怠(けんたい)感、嘔吐(おうと)などの症状から医療機関を受診しました。肺炎の疑いとして抗生剤を処方され自宅療養していましたが、症状が悪化しました。入院した別の医療機関でマダニにかまれたことが確認され、その後、心筋炎で入院から26日目に死亡しました。

 県衛生研究所で入院時の検体を検査した結果、オズウイルスの遺伝子を検出。国立感染症研究所の検査で同ウイルス感染症と診断されました。

 現時点で有効な治療薬に関する知見はなく、治療は対症療法のみとされます。茨城県は、マダニが生息する草むら、やぶなどに入る際、肌の露出が少ない服を着るなどの注意を呼び掛けています。

 オズウイルスは、2018年に日本で発見されたウイルスです。厚生労働省などによりますと、これまでに国内では血液中の抗体検査でオズウイルスに感染したと考えられるケースがあったことから「感染が必ずしも致死的な経過につながるわけではない」としていて、ウイルスの特徴や症状などについて引き続き調査や研究を行うことにしています。

 2023年6月23日(金)

2023/06/22

🟧3Dプリンターで傷付いた手指の神経再生に成功 京大病院

 京都大病院は4月24日、有機物を扱う「バイオ3Dプリンター」を使って、神経を再生する技術の開発に成功したと発表しました。医師主導の臨床試験(治験)で、指や手首の末梢(まっしょう)神経を損傷した患者に、作製した神経細胞の塊を移植したところ、痛みが和らぎ、知覚神経が回復するなどの効果が確認できたといいます。

 国内では、手指の末梢神経損傷の患者が年1万人ほど出ています。現在の治療は、患者の体の他の部分から健常な神経を移植する「自家神経移植」が主流です。ただ、神経採取によってしびれや痛みが残ることがあります。

 人工神経の開発も進められてきたものの、細胞成分が乏しいため再生に必要なたんぱく質などが不足し、自家神経移植に比べて治療成績がよくなく、一般に普及していません。

 京大病院は再生医療ベンチャーのサイフューズ(東京都港区)と手を組み、バイオ3Dプリンターで神経細胞の塊を作製。ラットやイヌでまず試したところ、これまでの人工神経に比べて良好な成績を得られました。

 そこで、仕事中に左手の指や手首を刃物で誤って切って5~10ミリほど神経が欠けてしまった30~50歳代の男性3人を対象に、医師主導の治験を実施。

 患者のおなかの皮膚にある細胞を約2カ月間培養し、3Dプリンターを使って積み重ねて、直径2ミリ、長さ2センチほどの神経細胞の塊をつくりました。それを患部に移植し、48週間にわたり経過を観察をしました。

 その結果、3人の患者は「痛みがかなりよくなり、指先の感覚が普通に戻った」と話し、仕事も元の通りできるようになりました。手や指の知覚機能検査や、神経障害の予後評価の成績も正常レベルまで回復していました。副作用や合併症はなかったといいます。

 研究チームの京大病院リハビリテーション科の池口良輔准教授は、「末梢神経の損傷で苦しむ患者の治療法の1つとして、社会復帰につなげたい」と話しています。

 2023年6月22日(木)

🟧青森産ブラックベリーで機能性表示サプリ 東北三吉工業が開発

 機械製造・農園運営を手掛ける東北三吉工業(青森県五戸町)は、青森県産のブラックベリーを使った機能性表示食品のサプリメントを開発し、販売を始めました。ポリフェノールの一種エラグ酸を含んでおり、体脂肪や体重、内臓脂肪の減少、体格指数(BMI)の改善などへの効果が期待できるとされています。ブラックベリーを使うエラグ酸の機能性表示食品は全国初となるといいます。

 商品名は「ブラックベリーES」。1日の使用目安2粒当たりに、効果が見込まれる3ミリグラムのエラグ酸が含まれています。成分分析などで青森県産業技術センター弘前工業研究所や県が協力しました。

 1袋62粒入り(約1カ月分)で、税込み4000円。同社オンラインショップのほか、八戸市のユートリー、六ケ所村の特産品販売所「六旬館」、三沢市のスカイプラザミサワ、十和田市の農産物直売施設「ファーマーズ・マーケットかだぁ~れ」などで購入できます。

 2023年6月22日(木)

🟧新型コロナ再感染の平均間隔、徐々に短く 第7波で3・7カ月

 新型コロナウイルスに一度感染後、再び感染した場合の平均間隔が、昨年夏の流行「第7波」では約3・7カ月だったとの分析結果を、名古屋工業大などの研究チームがまとめたことが22日わかりました。第1~3波の約16・9カ月から、感染規模の拡大に伴い徐々に短くなっていました。感染者の約3%が複数回かかり、若者が占める割合が多くなりました。

 平田晃正・名工大教授は、「特に第6波以降で感染者の増加や免疫の減弱によって再感染のリスクが高まったといえる。引き続き警戒が必要」と指摘しています。

 研究チームは、新型コロナで受診した約85万人の健康保険組合などのレセプト(診療報酬明細書)データを分析。新型コロナによる診療と診療の間隔が30日を超えた場合に「再感染した」と定義し、2020年4月~2023年1月の感染回数や再感染までの間隔を調べました。

 期間中に複数回感染した人は、約3%に当たる約2万5000人。2020~2021年の第1~3波で最初の感染をした人が再び感染するまでの間隔は、平均で約16・9カ月でした。間隔は次第に短くなり、第4波で感染した人は約13・6カ月、第5波で感染した人は約10・9カ月、第6波で感染した人は約7・3カ月、第7波で感染した人は約3・7カ月でした。

  2023年6月22日(木)

🟧認知症の行方不明者、全国で過去最多1万8709人 10年前から1・95倍に

 警察へ2022年に届け出があった認知症の行方不明者は1万8709人(前年比1073人増)で、統計を取り始めた2012年以降、10年連続で増加して過去最多でした。警察庁が22日、発表しました。大半はその後無事に見付かっている一方で、2021年以前に届け出られた人も含め、2022年には491人が遺体で見付かりました。

 認知症で行方不明になった人は、10年前の2012年の9607人から1・95倍に増えました。警察庁は、高齢化の進展で認知症患者が増えていることが背景にあるとみています。

 警察庁によると、2022年に届け出があった1万8709人のうち、80歳代以上(1万670人)と70歳代(6968人)で合わせて94%を占めました。

 都道府県別では、兵庫県が最多の2115人。大阪府1996人、埼玉県1902人、神奈川県1780人、愛知県1549人と続きました。2022年中に見付からなかった人は284人いました。

 2021年以前に届け出があった人も含め、昨年中に生存した状態で所在が確認できたのは1万7923人。このうち、届け出を受理した当日に見付かったのが77・5%。99・6%は1週間以内に見付かりました。

 高齢化が進み、行方不明者は今後さらに増加する可能性があります。警察は自治体や地域の団体、企業などと連携し、行方不明者の特徴を広く知らせるなど、早期発見に向けた取り組みを進めています。

 認知症以外の人も含めた昨年の行方不明者の総数は8万4910人。統計が残る1956年以降で最少だった2020年(7万7022人)から、2年連続で増えました。

 原因別では、認知症を含む「病気関係」が2万4719人(29・1%)で最多。親子・夫婦間の不和など「家庭関係」が1万2899人(15・2%)、失業など「事業・職業関係」が9615人(11・3%)と続きました。

 また、認知症以外を含む行方不明者の総数は、前の年から5692人増えて8万4910人となりました。過去最少だった2020年から2年連続の増加で、新型コロナウイルス禍に伴う行動制限が緩和された影響とみられます。

 年代別では、20歳代が最も多い1万6848人、次いで10歳代が1万4959人。さらに80歳以上が1万3749人、70歳代が1万779人で続き、これら4つの年代で6割以上を占めました。

 原因・動機別では、認知症を含む「病気関係」が約3割と最も多く、「家庭関係」、「事業・職業関係」と続き、この3つで約6割となっています。

 一方、理由がわからず犯罪被害や事故に遭遇した恐れなどがある不明者は、1万7080人に上っているということです。

 2023年6月22日(木)

2023/06/21

🟧無免許で強い光を当てて脱毛、女性客やけど エステ店経営者ら書類送検、大阪府警

 医師免許がないのに強い光を当てて脱毛行為をし、女性客にやけどを負わせたとして、大阪府警は21日、美容エステ店「BeSonder(ベゾンダァ)」(大阪市西区)の女性経営者(24)=大阪市=と、女性アルバイト(24)=大阪府柏原市=を医師法違反(無資格医業)と業務上過失致傷の疑いで書類送検しました。

 送検容疑は2022年8月、医師免許がないにもかかわらず、大阪府内の20歳代女性客に対して光線を当てる機器で背中を脱毛。減光フィルターを付けないまま毛根に強い光を当てて施術し、客の背中に全治約1〜2週間のやけどを負わせたとしています。

 府警によると、2人は業務上過失致傷容疑は認めているものの、医師法違反容疑は否認しており、経営者は「脱毛機器を使用するのに医師の資格が必要とは知らなかった」と話しているといいます。

 府警生活環境課によると、女性客は店舗を利用した数日後、府警に被害を相談。店は元々ネイルサロンで、2020年12月から脱毛施術も始めました。2023年1月までに少なくとも約110人の客を脱毛していましたが、今のところ他の客から被害の訴えはないといいます。

 厚生労働省は2001年、「強い光線を毛根部分に照射し、毛乳頭などを破壊する行為」は医療行為に当たり、医師免許を持たない者が実施すれば医師法違反になるとの通知を都道府県に出しています。

 府警は、今回の脱毛行為が医師にしか認められていない「医業」と判断したとみられます。

 エステ店での脱毛を巡る事故は相次いでいます。国民生活センターによると、2022年度の事故件数は163件で、2017年度の123件から約3割増えています。

 日本エステティック振興協議会は、脱毛方法について「除毛や減毛を目的に、毛の幹細胞を破壊しない範囲で行う」とする自主基準を策定し、エステ店に法令順守を求めています。

 2023年6月21日(水)

🟧人工呼吸器が外れ5歳が5年意識不明 看護師3人を書類送検、愛知県警

 愛知医科大病院(愛知県長久手市)で2018年7月、人工呼吸器のチューブが外れて入院中の男児(5)=当時7カ月=が意識不明の重体となる医療事故があり、愛知県警捜査1課と愛知署は21日、担当の看護師だった女性3人を業務上過失傷害容疑で書類送検しました。県警は起訴を求める「厳重処分」の意見を付けました。

 送検容疑は2018年7月19日、病院の総合集中治療室(GICU)で、男児の体位を変えるために体を持ち上げた際、人工呼吸器のチューブが気管から外れたのに適切に対応せず、重度の低酸素脳症に陥らせたとしています。

 男児は約30分間にわたって心停止となりました。チューブが食道に入っていることに気付いた医師が気管に挿し直したものの、男児は約5年が経過した現在も意識が戻っていません。

 男児は事故2日前に激しいせきで救急搬送され、気管支炎と肺炎の疑いで入院。気管にチューブを挿入する人工呼吸管理を受けていました。30~33歳の3人は当時GICUを担当し、事故後に退職しました。

 県警から書類送検の知らせを受けた男児の母親(46)は、「親としてほっとしている。警察が捜査を尽くしてくれたことに感謝したい。看護師らが刑事罰を受けてけじめをつけなければ、同じことが繰り返される」と話しました。

 事故を巡っては、男児の両親らは今年1月、3人を刑事告訴。3月には同病院側を相手取り、約1億7000万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴しています。

 2023年6月21日(水)

🟧ヨーロッパの温暖化ペース、世界平均の2倍 国連・EU報告

 ヨーロッパでは1980年代以降、世界平均の2倍のペースで温暖化が進んでいることが、19日公開された国連(UN)とヨーロッパ連合(EU)による報告書で明らかになりました。昨年は観測史上最も暑い夏となりました。

 国連の世界気象機関(WMO)とEUの気候監視ネットワークであるコペルニクス気候変動サービス(C3S)がまとめた報告書「ヨーロッパの気候の現状2022」は、ヨーロッパではこの結果、干ばつで作物が枯れるほか、記録的な海水面温度や前例のない氷河の融解が起きると指摘しています。

 昨年の気温は産業革命前に比べ、約2・3度高くなりました。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ポルトガル、スペインなどでは史上最も温暖な1年となりました。報告書は、気候変動に伴い、生命を脅かすような熱波がより頻繁に起きるようになると指摘しています。

 世界の気温は、1800年代中ごろと比べ平均1・2度近く上昇しています。

 報告書によると、ヨーロッパの気温は1991~2021年の30年間で1・5度上昇しました。

 ヨーロッパでは昨年、高温により1万6000人以上が死亡。極端な気候を原因とする損害額は20億ドル(約2830億円)相当に上り、その大半は洪水や嵐によるものでした。

 C3S幹部、カルロ・ブオンテンポ氏は報告書で「残念ながら、一度限りの出来事や変則的な現象だと考えることはできない」と指摘しました。

 ヨーロッパの大半の地域では昨年、降水量が例年を下回りました。農業生産は打撃を受け、貯水池の水位は下がり、山火事が発生しやすい条件がそろいました。フランス、スペイン、ポルトガル、スロベニア、チェコの各地で大規模な山火事が発生。総延焼面積はヨーロッパ史上2番目の規模となりました。

 スペインの貯水量は昨年7月までに、総貯水容量の半分以下にまで減りました。フランスでは農地の一部でかんがいができず、ドイツでは干ばつで穀物やブドウの収穫に大きな影響が出ました。

 報告書は、今後、干ばつや熱波などはより頻度が増え、激しくなるとして警鐘を鳴らしています。

 一方で、昨年の風力と太陽光の発電の合計は、石炭や天然ガスの発電量をいずれも上回ったとしていて、WMOは、化石燃料への依存を減らすためにも再生可能エネルギーなどの利用を増やすことが欠かせないと訴えています。

 地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、産業革命前と比べた地球の平均気温の上昇幅を1・5度に抑えることを目標にしています。

 2023年6月21日(水)

🟧インド、熱波に見舞われ熱中症で100人以上が死亡 最高気温が45度近くに

 インドでは、猛烈な熱波の影響で一部の地域では最高気温が45度近くまで上昇し、地元メディアはこれまでに100人以上が死亡したと伝えています。

 インドの気象当局の発表によりますと、東部オディシャ州とジャルカンド州で19日、日中の最高気温が44・8度を記録したほか、北部ウッタルプラデシュ州などでも40度を超える日が続いています。

 猛烈な熱波の影響で、熱中症などで死亡する人が相次いでいて、インドのメディアによりますと、ウッタルプラデシュ州では少なくとも68人の死亡が確認され、400人以上が入院しているということです。

 また、東部ビハール州でも、45人の死亡が確認され、合わせて100人以上が死亡したと伝えています。

 死者の多くが60歳以上で、基礎疾患があったと報じられています。

 多くの熱中症患者が連日、病院に搬送されているということで、大規模な病院であっても患者であふれかえり、これ以上収容できなくなっている病院もあります。

 これを受けて、インドの保健相は20日、緊急の対策会議を開き、熱波による健康被害が広がらないよう今後の対応を話し合いました。

 インドでは例年より雨期が遅れているため熱波はさらに続きそうだということで、当局は、日中の外出を控え、十分に水分を補給するなど警戒を呼び掛けています。

 ウッタルプラデシュ州のアディティヤナート州首相も19日、「熱中症に注意し、特に高齢者や子供、病気の家族を気に掛けてほしい」とツイッター上で呼び掛けました。

 2023年6月21日(水)

2023/06/20

🟧新型コロナ後遺症の脳神経症状、鼻での感染が関連 東京慈恵医大

  新型コロナウイルスの一部を鼻で感染させると、脳内炎症などの脳神経関連の症状を引き起こすことがマウス実験で判明したと、東京慈恵医大の研究チームが19日までにアメリカの科学誌に公表しました。倦怠感やうつ症状などのコロナ後遺症を発症する仕組みの1つとみられるといいます。既存の認知症薬がこうした症状を改善させる可能性があるとして、臨床試験(治験)を進めています。

 新型コロナでは感染後に症状が長引く後遺症として頭痛や疲労感のほか、集中力や記憶力が低下する「ブレインフォグ」などの脳神経症状が報告されています。発症の仕組みはわかっていません。

 研究チームはウイルス表面にある突起状のスパイクタンパク質に着目。マウスの鼻に入れて感染させると、脳でウイルスが増殖していないのにもかかわらず、脳で炎症が起き、マウスに倦怠感やうつなどの症状が出ました。

 症状が出たマウスの脳を詳しく調べると、炎症を抑える働きがある神経伝達物質アセチルコリンが通常より少なくなりました。アセチルコリンを増やす働きがある認知症薬「アリセプト」を投与すると症状が改善したといいます。

 研究チームは後遺症の重症化予防が可能か、横浜市立大などとアリセプトの効果を調べる治験を実施中です。

 2023年6月20日(火)

🟧鳥インフルエンザ「清浄化」で今季終息宣言 殺処分は1771万羽と過去最多に

 農林水産省は20日、国内で昨秋から続発していた高病原性鳥インフルエンザについて「清浄化」を宣言し、家畜の伝染病を監視している国際獣疫事務局(OIE)に認められたと発表しました。「清浄化」は、農場や施設からウイルスがなくなったことを意味し、事実上の終息宣言となります。 

 鳥インフルエンザは昨年10月~今年4月、26道県の農場や施設で84件発生し、1771万羽が殺処分の対象となりました。件数・殺処分数ともに過去最多で、このうち、山形、福島、群馬、鳥取、長崎、沖縄6県では初の感染確認となりました。

 シーズン最後の発生となった北海道千歳市の農場で4月14日に防疫措置が完了。その後28日間にわたり新たな発生がなかったため、農水省がOIEの規定に基づき清浄化を申告していました。

 鳥インフルエンザは、ヨーロッパや南アメリカ、それにアジアなどでも発生が続いていて、1年を通じて各国で感染が続く状況になっています。

 日本国内には越冬する渡り鳥によってウイルスが持ち込まれるとされ、農水省は秋以降に、感染が拡大しないよう農場・施設での衛生管理の徹底を養鶏農家に呼び掛けます。

 2023年6月20日(火)

🟧国連、公海の海洋生物多様性協定を採択 保護する初の法的拘束力も

 どこの国にも属さない公海の海洋生物多様性を守り、海洋資源の持続可能な利用を目指す「国家管轄権外区域における海洋生物多様性協定」(BBNJ)が19日、ニューヨークの国連本部で開かれた政府間会合で採択されました。発効すれば、国の管轄権を越えた海域で生物を保護する初の法的拘束力がある協定になります。

 公海は地球上の海の6割以上を占めます。しかし、気候変動や乱獲、プラスチックごみなどによる海洋汚染で海洋生態系の危機は深刻化しており、国連によると、保護されている海域は1%にすぎません。

 協定では、公海の海洋生物などから得られたデジタル化された遺伝情報を基に、国や企業が医薬品や化学品を開発して利益を得た場合、協定の締約国に公正に配分する枠組みを設けます。また、重要な種やその生息地を保全・管理するために、公海に海洋保護区を設けることを可能にし、公海での商業活動に関する環境影響評価の基本的なルールも定めました。

 昨年12月の国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「2030年までに世界の陸と海の30%以上を保全する」という目標の達成に向け、法的な基盤になることが期待されています。

 公海の海洋生物を保護する国際協定は20年近く前から検討されてきました。協定の発効には60カ国の署名・批准が必要になります。9月20日からニューヨークで批准の受付が始まり、60カ国が批准した時点で発効します。

 国連のアントニオ・グテレス事務総長は、「海洋に新たな生命と希望を与え、闘うチャンスを与えた」と歓迎し、加盟国に速やかに批准するよう呼び掛けました。

 2023年6月20日(火)

🟧新型コロナワクチン接種後死亡、新たに男女5人認定 72~91歳、いずれも基礎疾患あり

 新型コロナウイルスワクチンの接種後に亡くなった人のうち、新たに5人について、厚生労働省はワクチン接種との因果関係が否定できないとして、死亡一時金などを支給することを決めました。

 新型コロナワクチンの接種後に死亡した人については、予防接種法に基づいた健康被害の救済制度で、国が因果関係が否定できないと認定した場合には、死亡一時金などが支給されています。

 厚労省は19日、接種後に間質性肺炎の悪化や急性心不全、急性心筋梗塞などで亡くなった、72歳から91歳の男女5人について、新たに認定することを決めました。

 5人全員が高血圧症や腎臓病などの基礎疾患があったということで、厚労省は、死亡診断書やカルテの記載などを踏まえて、因果関係が否定できないと判断したとしています。

 接種したワクチンの種類や接種の回数などは、明らかにしていません。

 新型コロナのワクチン接種で、死亡一時金などの支給が認められたのは、今回の5人を含めて20歳代から90歳代までの計72人となりました。 

 2023年6月20日(火)

2023/06/19

🟧新型コロナワクチン、すべての小児への接種を推奨 重症化を防ぐ重要な手段、日本小児科学会

 新型コロナワクチンの子供への接種について、日本小児科学会は対策が緩和されて多くの子供が感染することが予想されるなどとして、引き続き「すべての小児に接種を推奨する」という考え方を示しました。重症化を防ぐ手段としてワクチン接種は重要だとしています。

 日本小児科学会は、新型コロナの感染症法上の位置付けが5月8日に5類に移行したことや、世界保健機関(WHO)が今年3月「生後6カ月から17歳の健康な小児へのワクチン接種は優先順位が低く、国ごとの状況を踏まえて検討すべきだ」としたことを受け、接種の意義について改めて検討しました。

 今回、学会がまとめた考え方によりますと、WHOは子供に対する接種は有効かつ安全としているほか、複数の研究報告で、発症予防や重症化予防の効果が確認されているなどとしています。

 その一方、国内では未感染の子供が多いとみられ、感染すると、まれに急性脳症や心筋炎を発症し、後遺症が残ったり死亡したりするケースもあるとしています。

 その上で、学会は対策の緩和で多くの子供が感染することが予想され、接種は重症化を防ぐ手段として重要だとして、引き続き「生後6カ月から17歳のすべての小児に接種を推奨する」としました。

 学会の理事で新潟大学の齋藤昭彦教授は、「感染すると持病がなくても重症化する可能性はある。健康な子供たちもワクチンを接種し重症化を防ぐ対策をすることが重要だ」と話しています。

 2023年6月19日(月)

🟧国会が旧優生保護法下の実態巡り報告書 強制不妊手術に公的機関の関与も浮き彫り

 旧優生保護法(1948~1996年)に基づき障害者らに強制不妊手術が行われた問題で、衆参両院事務局は19日、立法の経緯や被害実態についてまとめた調査報告書を公表しました。

 今回の報告書は、2019年4月に成立した被害者救済法に基づき、国の対応が遅れた経緯や社会的背景を解明するためにまとめられました。2020年6月から厚生労働省や自治体、当事者らに対して調査を実施しており、12日に報告書の原案が衆参両院の厚生労働委員長に提出されていました。

 報告書は約1400ページ。「不良な子孫の出生を防止する」との目的で、1948年に旧法が成立したことなど、優生思想が国の施策に反映されていく過程を詳述しています。

 報告書によると、不妊手術の実施件数のピークは1955年。旧法下では2万4993人が手術を受けたとされ、「本人同意なし」の手術は約66%に上りました。

 全体の約75%が女性。都道府県別では北海道が3224件で最も多く、宮城県1744件、大阪府1249件と続きました。最少は鳥取県63件でした。

 手術の背景には、経済状況による育児困難、家族の意向や福祉施設の入所条件などがありました。最年少はいずれも当時9歳だった男女2人で、男児は昭和30年代後半に、女児は同40年代後半に手術を受けました。最年長は57歳の男性でした。

 報告書は、本人にわからないよう施術されたケースや、原則として認められていなかった子宮や睾丸の摘出が横行していたことを指摘。旧厚生省は、手術について「欺罔(ぎもう)等の手段を用いることも許される場合がある」との通知を出していました。資料からは「虫垂炎手術ということで納得させていた」「盲腸手術の時に本人にわからないうちにした」などの事例も確認されました。

 不妊手術の適否を判断する「都道府県優生保護審査会」は定足数を欠いて開催されたり、書類による持ち回りで審査されたりもしていました。

 2023年6月19日(月)

2023/06/18

🟧マツタケ、食物アレルギーの任意表示から削除へ マカダミアナッツ、追加候補として調査へ

 食物アレルギーを引き起こす食品を事業者の任意で表示する「推奨表示」の1つだったマツタケが、表示対象から外れます。河野太郎消費者担当相が16日の閣議後記者会見で、消費者庁に今年度中の対応を指示したと発表しました。

 推奨表示は現在20品目あります。推奨表示からの削除は、表示が義務の品目に移行したもの以外では、2001年の制度開始以来初めてとなります。

 消費者庁はこのほど、推奨表示に関する追加や削除の際の基本的な考え方を初めて整理しました。削除候補となるのは、おおむね3年ごとに行う全国実態調査の直近4回の結果で、症例数で上位20品目に入っていないもの、およびショック症例数が極めて少数であるものに該当する品目とされました。マツタケは直近4回の全国実態調査で症例数がありませんでした。

 一方、推奨表示の追加の候補となっているのはマカダミアナッツで、河野消費者担当相は16日、閣議後記者会見で、本年度内にマカダミアナッツの流通実態などを調査して検討するよう消費者庁の事務方に指示したと明らかにしました。

 2023年6月18日(日)

🟧5月下旬の新型コロナ抗体保有者、全国で42・8% 2月の調査から変化なし

 新型コロナウイルスへの感染によってできる抗体を持つ人は、献血の血液を分析した結果、感染症法上の位置付けが「5類」に移行した後の5月下旬時点で、全国で42・8%だったとする結果を厚生労働省が示しました。今年2月の調査からほとんど変化しておらず、専門家はこの間、感染が大きくは拡大しなかったことを示しているとしています。

 厚労省は、5月下旬に献血に訪れた16歳から69歳の1万8048人の血液を調べ、新型コロナに感染した場合にだけできる抗体を持つ人の割合を分析しました。

 それによりますと、抗体の保有率は全国で42・8%で、今年2月時点の42・0%からほとんど変化していませんでした。

 年代別では、16歳から19歳が60・5%、20歳代が53・0%、30歳代が51・4%、40歳代は46・0%、50歳代は36・2%、60歳代は28・8%と、年代が上がるほど低い傾向がみられました。

 また、地域別では、沖縄県が63・0%、東京都と宮崎県で52・9%、大阪府で49・5%などと高かった一方、石川県で34・1%、青森県で34・9%などと地域によって差がみられました。

 厚労省の専門家会合の脇田隆字座長は、「2月から5月にかけて、それほど感染が拡大しなかったことを示している。免疫によって感染を防ぐ力は時間とともに下がるので、全体としてコロナに対する免疫が下がってきている可能性がある」としています。

 2023年6月18日(日)

🟧アメリカFDA、「XBB」に対応する「1価ワクチン」の開発勧告 新型コロナ秋接種に備え

 アメリカ国内で今年の秋以降、使用する新型コロナウイルスのワクチンについて、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、現在、流行の主流となっているオミクロン型派生型「XBB・1・5」に対応する「1価ワクチン」の開発を製薬各社に推奨しました。

 アメリカでは、新型コロナの感染状況の変化に伴い、ワクチンの成分をどのようにするか、FDAの専門家会議などで議論が重ねられてきました。

 FDAは16日、アメリカ国内でこの秋以降、使用する新型コロナのワクチンとして、オミクロン型派生型「XBB・1・5」に対応する「1価ワクチン」の開発を製薬各社に推奨したことを発表しました。

 「XBB・1・5」は複数のオミクロン型が組み合わさり、免疫から逃れやすい性質が指摘されており、6月10日現在、アメリカ国内の新規感染者の中で最も多く、約4割を占めると推定されていますが、検出割合は減少傾向。同じ系統の「XBB・1・16」など別タイプが増えつつあり、秋までに取って代わる可能性もあります。ただウイルスの形の違いはわずかで、接種の効果はほぼ同じと見込んでいます。9月中に出荷をほぼ終える必要があり、製造スケジュールも考慮して推奨を急ぎました。

 複数の製薬会社はすでにオミクロン型派生型「XBB」系統に対応する成分のワクチンの開発を進めており、今回のFDAの推奨は、開発中のワクチンの有効性に関するデータや、製薬各社が供給できる時期の情報などをもとに行ったとしています。

 FDAの推奨を受け、製薬各社は今後、ワクチンの開発をさらに加速させるものとみられます。

 日本の厚生労働省も、国内で主流となっている同じ「XBB」系統に対応した製品を導入する方針で、接種対象者は追って決めます。ヨーロッパ医薬品庁(EMA)は、高齢や持病などの重症化要因がある人や妊婦を優先するほか、医療関係者への接種も考慮すべきだとの考え方を示しています。

 2023年6月18日(日)

2023/06/16

🟧肝機能を調べるALT値が30超えたら受診を 日本肝臓学会が新指標、コロナ禍で増加

 日本肝臓学会は15日、血液検査の項目のうち肝機能を調べるALT(GPT)値が30を超えた場合を、かかりつけ医へ受診を促す新たな指標に定めたと発表しました。新型コロナウイルス禍で脂肪肝やアルコール性肝障害になる人が増えており、早期発見や治療につなげたい考え。これまで日本人間ドック学会などが、どこまでが正常かを示す基準値を示していたものの、明確に受診を促す指標は初といいます。

 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、自覚症状のないまま悪化するリスクがあります。肝臓学会理事長の竹原徹郎大阪大教授は、「肝臓病を見付ける糸口になってほしい。健康診断で決して軽視しないで」と呼び掛けました。

 ALTは肝臓などの細胞に多く含まれる酵素。障害が起こって細胞が壊れると数値が上がり、肝機能障害が起きている可能性を示します。

 同学会によると、最近は治療法の進歩によりウイルス性肝炎による死亡が減る一方、アルコール性の肝障害の死亡率は増加。コロナ禍の外出自粛などで非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)も増加傾向にあります。

 2023年6月16日(金)

🟧新型コロナ、夏に一定の感染拡大の可能性 5類移行後初の専門家会合 

 新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が感染症法上の位置付けの5類への移行後初めて開かれ、新規患者数は緩やかな増加傾向が続いていて、夏の間に一定の感染拡大が起きる可能性があると分析しました。手洗いや換気、マスクの効果的な場面での着用などの基本的な対策が重要だとしています。

 専門家会合は、5類への移行後初めて開かれ、感染状況や医療提供体制の状況について分析し、今後求められる対応について検討しました。

 専門家会合によりますと、新規患者数は4月上旬以降緩やかな増加傾向で、5類移行後も4週連続で増加が続いていて、地域別では36の都道府県で前の週より増え、沖縄県では感染拡大の傾向がみられるとしています。

 新規入院者数や重症者数も増加傾向で、医療提供体制は全国的にひっ迫はみられていないものの、沖縄県の状況には注意が必要だとしています。

 また、検出される新型コロナウイルスの種類はオミクロン型のうちの「XBB系統」が大部分を占めていて、民間の検査会社で検出された結果をもとにした分析では、6月下旬時点にはインドなどで拡大し免疫を逃れやすい可能性が指摘されている「XBB・1・16」が49%になると推定されています。

 さらに今後の感染の見通しについて、過去の状況などを踏まえると夏の間に一定の感染拡大が起きる可能性があり、医療提供体制への負荷が増大する場合も考えられるとしていて、感染やワクチンによって得られた免疫が弱まる状況や、より免疫を逃れやすい可能性がある変異ウイルスの増加、接触する機会の増加によって感染状況に与える影響にも注意が必要だとしています。

 こうしたことを踏まえ、専門家会合は、感染の動向をさまざまな指標で把握し、医療提供体制を注視すること、高齢者や基礎疾患のある人へのワクチン接種、感染拡大が起きても必要な医療が提供されるよう体制の移行を進めることが求められるとした上で、手洗いや換気、マスクの効果的な場面での着用など、基本的な感染対策を呼び掛けました。

 厚労省は同日、新型コロナの感染で得られた抗体の有無を5月17~31日に調査した結果、抗体保有率は42・8%(速報値)だったと明らかにしました。前回2月の調査(42・0%)から横ばいで、年代が上がるほど保有率が低くなる傾向がみられました。

 専門家会合の座長の脇田隆字・国立感染症研究所所長は「2月以降、それほど感染が拡大しなかったことを示している。時間とともに免疫の状態は低下している可能性がある」と述べました。

 調査は日本赤十字社の献血ルームなどを訪れた全国の16~69歳の1万8048人分の血液を対象にしました。

 2023年6月16日(金)

🟧新型コロナ感染者、前週比1・12倍 36都府県で増加

 厚生労働省は16日、全国に約5000ある定点医療機関に6月5~11日に報告された新型コロナウイルスの新規感染者数は計2万5163人で、1定点当たり5・11人(速報値)だったと発表しました。前週(4・55人)の約1・12倍となり、36都府県で前週より増えました。4月上旬からの緩やかな増加傾向が続いています。

 最多は沖縄県の18・41人で、前週比約1・17倍。鹿児島県7・37人、石川県6・58人、埼玉県6・51人、北海道6・47人と続きます。少なかったのは秋田県2・62人、島根県2・76人、岡山県3・01人など。

 東京都5・99人、愛知県6・28人、大阪府4・33人、福岡県5・76人でした。

 5~11日の全国の新規入院患者数は4330人で、前週(4122人)の約1・05倍。集中治療室に入院している全国の重症患者数は7日間平均で79人で、前週(63人)から16人増えた。

 2023年6月16日(金)

🟧新型コロナ感染者、1医療機関当たり5・99人 東京都、5週続け増加傾向

 新型コロナの感染者数について、東京都は、6月11日までの1週間では、1医療機関当たり5・99人と発表しました。前の週の約1・13倍と5週続けて増加傾向にあり、専門家は「今後の動向に十分な注意が必要だ」としています。

 都は6月15日、新型コロナの感染状況のモニタリング項目について発表しました。

 それによりますと、定点把握の対象になっている都内419の医療機関のうち、415カ所から報告があり、感染者数の合計は、6月11日までの1週間で2486人で、1医療機関当たりでは5・99人となりました。

 これは、前の週の5・29人の約1・13倍で、5週続けて増加傾向にあり、専門家は「感染拡大が続いている。今後の動向に十分な注意が必要だ」と指摘しています。

 また、6月12日時点の入院患者数は、前の週より49人増えて1032人となりました。

 2023年6月16日(金)

🟧エムポックスワクチン接種の臨床研究開始 男性同士の性的接触者やHIV感染者に

 厚生労働省などは15日、「エムポックス(サル痘)」のワクチンを、男性同士の性的接触がある人やエイズウイルス(HIV)感染者らに接種する臨床研究を、国立国際医療研究センター(東京都新宿区)で始めたと発表しました。

 当面は同センターを受診している人などが参加できます。天然痘のために開発されたワクチンを使い、3100円の費用がかかります。エムポックス感染者に接触した人を対象にした別の臨床研究も進められています。

 今年に入り感染報告が増えており、厚労省によると、昨年からの感染者は6月4日時点で計175人。男女とも感染する恐れはあるものの、男性同士の性的接触者らの間で感染が広がっていると指摘されています。

 エムポックスはサル痘と呼ばれていましたが、世界保健機関(WHO)の決定を踏まえ、5月に名称が変わりました。エムポックスウイルスが原因で、発熱や発疹など天然痘に似た症状が出ます。

 2023年6月16日(金)

2023/06/15

🟧認知症へコロナ悪影響、医療・介護施設の7割が認識 広島大が全国調査

 新型コロナ禍による生活の変化で医療・介護施設の70%が認知症の人の状態に「影響が生じた」と認識していることが15日までに、広島大と日本老年医学会の全国調査でわかりました。施設の感染対策による面会制限や外出自粛などが、認知機能の低下といった悪影響を与えたとみられます。

 広島大の石井伸弥寄付講座教授は「状況を改善するには、中断していたリハビリを進めることや、面会制限などを徐々に緩和することが必要だ」と指摘。ただクラスターを防ぐために一定の対策も必要といい、「病院や施設ではどの程度の対策を行うか、難しいかじ取りが迫られる」としています。

 調査は流行「第8波」の最中だった1~2月に実施し、995施設から回答を得ました。今回が3回目の調査。

 生活の変化で生じた具体的な悪影響は、「認知機能の低下」が最多で、重度認知症の人の78%でした。「身体活動量の低下」、「基本的日常生活動作の低下」も目立ちました。

 影響が生じたと回答した施設は2020年の1回目は39%、2021年の2回目は53%、今回は70%と回を重ねるごとに増加しました。

 2023年6月15日(木)

🟧「脳動脈瘤」に薬による治療の可能性 理研などの研究グループが治療薬候補を発見

 理化学研究所などの研究グループは、脳動脈瘤ができた際に特定の遺伝子の突然変異が起きていることを突き止め、手術ではなく、薬による治療の可能性を見いだしたと発表しました。

 理化学研究所のチームリーダーで杏林大学医学部の中冨浩文教授らの研究グループは、外科手術で摘出された脳動脈瘤の遺伝子を解析し、405個の後天的にできたとみられる遺伝子変異があることを確認しました。

 このうち16個の遺伝子が特に高頻度で変異がみられ、その多くが腫瘍形成にかかわる遺伝子として知られるものだったということです。

 特に治療が困難な大きな動脈瘤では、PDGFRβ(ベータ)という遺伝子の変異が起きていました。

 この遺伝子変異を導入したマウスに、がん治療薬の1つである「スニチニブ」を投与したところ、動脈瘤の発生・成長が抑制されたということです。

 研究グループによると、日本人の約5%が破裂する前の脳動脈瘤を発症しています。脳動脈瘤の治療は、現状では開頭手術か血管内カテーテル治療しかありませんが、研究グループでは今後、スニチニブと似た作用を持つさまざまな薬を試すことなどにより、投薬による脳動脈瘤の治療が可能になるとみて、10年後をめどに実用化につなげたいとしています。

 本研究は14日付で、アメリカの科学雑誌のオンライン版に掲載されました。

 2023年6月15日(木)

2023/06/14

🟧文化祭で新型コロナ感染拡大か、埼玉県の春日部高と不動岡高で学校閉鎖

 埼玉県教育委員会は13日、春日部市の県立春日部高校の生徒114人が新型コロナウイルスに集団感染したと発表しました。9日から学年閉鎖していた2、3年生に加え、1年生も13日に学年閉鎖し、学校閉鎖となりました。学校閉鎖は14日までの予定。

 同校は3、4日に文化祭を開催。振り替え休日後の8日以降、生徒から「陽性になった」との連絡が相次ぎました。当初、学級閉鎖や学年閉鎖で対応したものの、感染が全学年に拡大したといいます。2、3年生は15日に、1年生は週明けの19日に授業を再開する見込み。

 埼玉県内では、新型コロナの感染症法上の分類が5類に移行した後、加須市の県立不動岡高校でも、1年生から3年生の合わせて生徒77人が新型コロナウイルスに集団感染し、9日から13日まで学校閉鎖となっています。この高校では1日に体育祭が、3日と4日に文化祭が開催されていました。

 県教委は両校とも文化祭が感染拡大の要因になったとみています。

 2023年6月14日(水)

🟧「オミクロン型XBB」対応ワクチン導入検討 厚労省、コロナ秋接種で

 9月以降に多くの世代を対象に開始予定の新型コロナウイルスワクチンの秋接種について、厚生労働省が日本を含め世界で主流となっているオミクロン型派生型「XBB」に対応したワクチンを導入する方向で検討に入ったことが13日、明らかになりました。アメリカでも同様の考え方が示されています。

 開発企業が申請し、薬事承認されることが条件。秋接種は5歳以上のすべての年代が対象で、XBBワクチンに関しては対象年齢が引き上げられる可能性があります。

 現状の追加接種では、主にアメリカのファイザーやモデルナが開発した流行初期の型とオミクロン型の「BA・1」や「BA・5」に対応した「2価ワクチン」が用いられています。

 厚労省は16日に専門家を交えたワクチン分科会を開き、秋接種で使うワクチンに関する議論を行います。

 XBBは世界的に拡大しており、アメリカ食品医薬品局(FDA)は12日、今年秋から冬用のワクチンは、世界で主流となっているXBBの仲間に対応した製品が妥当との考え方を示しました。15日に専門家の諮問委員会で詳細を詰める予定。

 現在の追加接種には、流行初期の型のほか、オミクロン型派生型「BA・4」や「BA・5」にも対応する「2価ワクチン」を使っていますが、次はXBBのみの「1価ワクチン」にすることを提案しました。

 初期の型への免疫はこれまでの感染やワクチン接種で一定程度得られた一方、標的にするウイルスは更新が必要だと判断しました。

 2023年6月14日(水)

🟧中国、5月に再流行で発熱患者36万人に倍増 コロナワクチンの緊急使用を許可

 中国疾病予防コントロールセンターは13日までに、5月の新型コロナウイルスの感染状況を発表しました。5月初旬からの約2週間で発熱外来の受診者が倍増し、コロナの再流行が浮き彫りになりました。中国政府は新たなコロナワクチンの緊急使用許可を出し、警戒感を強めています。

 中国では、新型コロナを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ政策」を大幅に緩和した昨年12月ごろに感染爆発が起き、今年に入り流行が落ち着いたものの、同センターによると4月下旬に再び感染が広がり始めました。

 5月1日に18万3000人だった発熱外来の受診者は5月16日に36万人と約2倍に増加し、その後も1日当たり30万人前後で推移しました。大部分はコロナ患者とみられ、5月のコロナ感染死者は164人でした。

 2023年6月14日(水)

🟧エムポックスのワクチン接種、男性同士の性的接触者に拡大へ 国内で今年166人感染

 「エムポックス(サル痘)」に感染した人の濃厚接触者に接種しているワクチンの対象者を、男性同士の性的接触がある人など高リスク者に広げる方針を厚生労働省が固めたことが、13日明らかになりました。近く国立国際医療研究センター(東京都新宿区)が中心となり、複数の医療機関で臨床研究として接種を始めます。

 エムポックスはサル痘と呼ばれていたものの、世界保健機関(WHO)の英語表記で「mpox」への名称変更を踏まえ、日本も5月にエムポックスへ変えました。

 エムポックスは、血液や体液を介して感染し、発熱や発疹など天然痘に似た症状が出ます。今年に入り国内の感染者は増えており、国立感染症研究所が13日に発表した速報値では、4日までに計166人。

 2023年6月14日(水)

🟧ゲノム編集iPS細胞を提供開始 拒絶反応のリスク減少、京大財団

 京都大iPS細胞研究財団(理事長=山中伸弥・京大教授)は14日、ゲノム編集の技術で免疫の拒絶反応を抑えられるようにした医療用iPS細胞(人工多能性幹細胞)を開発し、製薬企業などへの提供を開始したと発表しました。安全性や有効性を確かめる臨床試験に活用してもらい、iPS細胞を使った医療の普及を目指します。

 iPS細胞は皮膚や血液から作って、筋肉や神経などの細胞に変化させることができ、病気やけがで失われた組織や臓器を新しい細胞で補う再生医療の実現が期待されています。患者本人から作れば移植しても拒絶反応は起きない一方で、作製には1人当たり数千万円以上の費用と、半年以上の期間がかかるのが課題でした。

 この課題を克服するため、山中教授らは2013年度から、拒絶反応を受けにくい特別な「細胞の型」を持つ健康な人を探し、多くの人に適合するiPS細胞を作って備蓄するプロジェクトを開始。財団を設立し、これまでに7人から血液の提供を受けてiPS細胞を作りましたが、適合するのは日本人の約4割にとどまっています。

 そこで新たに、狙った遺伝子を精密に操作できるゲノム編集の技術を使って「細胞の型」を改良し、多くの人に適合できるようにする方法を検討。拒絶反応にかかわる重要な3つの遺伝子を外したiPS細胞を作製しました。この細胞は、強い拒絶反応については、ほぼ回避できる可能性があるといいます。

 財団は昨年11月、ゲノム編集した医療用のiPS細胞の提供を開始すると発表し、山中教授は「研究開発はこれからが正念場。患者に届けるというゴールに向けて頑張りたい」と語っていました。

 ゲノム編集が狙った遺伝子以外にダメージを与えていないかなどを検査するとともに、供給体制を整備しました。今後、希望する製薬企業や医療機関、研究機関などに提供し、難病などの治療につなげたい考えです。

 今後、各機関が治験を実施するなどし、遺伝子を改変したiPS細胞を人に移植しても問題ないかどうかや、移植できる対象をどこまで拡大できるか確認を進めます。

 財団によると、約30万個のiPS細胞入りの容器1本で約20万円。非営利機関には無償で提供します。

 2023年6月14日(水)

🟧東京都、 水質調査の地点を追加し1年前倒し実施へ 「PFAS」汚染問題

 東京都の多摩地域の地下水から発がん性の疑いがある有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)が検出されている問題について、東京都は13日の都議会代表質問で、高濃度のPFASが検出されている地域で水質調査の地点を増やす方針を明らかにしました。環境省がPFASに関する自治体向けの対応の手引を改訂する方針で、その前に都内の現状を把握するといいます。

 都環境局は4年ごとに、飲用を含む都内260地点の井戸水の水質を定点調査しています。2021年までに、PFASの国の暫定指針値(1リットル当たり50ナノグラム)を超過したのは、多摩地域を中心に24地点ありました。都は今後、濃度の高かった地域で調査地点を追加します。追加地点数や地点の場所については決まっていないといいます。

 村松一希氏(都民ファーストの会)の質問に、栗岡祥一環境局長が「指針値の超過が判明した地下水を飲用しない取り組みの徹底が重要。きめ細かく把握していきたい」と述べました。

 定点調査は現在、2021〜2024年度の3年目。都は計画を1年前倒しし、本年度中に全地点の調査を終えることも明らかにしました。環境省はPFAS対応の手引の改訂に合わせ、暫定指針値を超えた場合の具体的な対応などの公表を検討しています。都環境局の担当者は「改訂に間に合うよう、調査を進めたい」と話しました。

 都環境局が調査対象としている井戸とは別に、都水道局は多摩地域で水道水源に利用している7市の井戸40カ所を、PFAS汚染の影響で取水停止としています。

 2023年6月14日(水)

2023/06/13

🟧川崎市、ぜんそく患者への医療費助成廃止へ 関係者が市に抗議、存続求める

 川崎市は、高度経済成長期の深刻な大気汚染を切っ掛けに、市内のぜんそく患者に独自に行ってきた医療費の助成制度を廃止する条例案を12日、市議会に提出しました。「ほかのアレルギー疾患との公平性を担保するため」としており、可決されれば、来年3月末で新規の受け付けが打ち切られることになります。

 川崎市は、高度経済成長期の昭和30年代から40年代にかけての深刻な大気汚染を切っ掛けに、国の公害認定の新規受け付けが終了した昭和63年以降も、市内のぜんそく患者を対象に年齢に応じて医療費の一部か全額を独自に助成する制度を続けてきました。

 対象者は今年3月現在、子供を含めて1万2438人で、2023年度当初予算額は約3億6800万円となっています。

 しかし、市がアレルギー疾患への対策を検討してきた結果、ぜんそく患者だけではなくさまざまなアレルギー疾患の患者を対象に医療体制の整備や予防に向けた啓発を総合的に進めていく方針が今月決まりました。

 その上で市は、12日に開かれた市議会で「ほかのアレルギー疾患の患者との公平性を担保するため」として、ぜんそく患者への独自の助成制度を廃止する条例案を提案しました。

 今月29日の市議会の採決で可決されれば、来年3月末で新規の受け付けが打ち切られることになります。2024年4月以降の2年間は経過措置で、現行受給者に助成を続けます。

 助成の廃止案について、市が今年2月から3月にかけて行ったパブリックコメントでは700通を超える市民の意見が寄せられ、ほとんどが廃止への反対や懸念の声だったということです。

 川崎市は「大変重く受け止めるが、市民からは公平性を欠くという声もあり、法律や国の指針に照らしても特定の疾患への助成を続けることは困難だ。今後は医療提供や相談の体制整備や人材育成などを進めていく」としています。

 川崎市のぜんそく患者らでつくる「川崎公害病患者と家族の会」の大場泉太郎事務局長は、「助成制度がなくなれば患者が病院を受診する回数が減る恐れがある。患者の中には通院のために生活費を削らなくてはならないという声もあり、不安が強くなっている。多くの市民が廃止に反対の意思を示しているのになぜ強行するのか」と話しています。

 2023年6月13日(火)

🟧はしか4年ぶりに流行懸念、全国で計14人が感染

 感染力が非常に強いはしか(麻疹)の流行が、4年ぶりに懸念されています。新型コロナウイルスの5類感染症への移行で海外との往来が復活する中、感染者の報告が相次いでいます。専門家によると、はしかは潜伏期間が10日~12日と長く、ほかの感染症との区別が難しいため、発見が遅れるケースもあります。

 国立感染症研究所が発表した6月7日までの感染症発生動向調査週報によると、2023年第1週からの累計は東京都で5人のほか、大阪府で3人、兵庫県で2人、千葉県、茨城県、神奈川県、北海道でそれぞれ1人で、合わせて14人が感染しました。

 日本は2015年に土着の麻疹ウイルスの排除に成功したものの、海外からの流入の影響で4年前の2019年には全国で744人が感染しました。百貨店などで集団感染が発生した大阪府は感染者が全国最多の149人となりました。

 はしかは、麻疹ウイルスに感染して起こる感染症で、発熱や発疹などが主な症状となります。免疫をつけるためには、1歳と小学校入学前の計2回の予防接種「麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)」が必要とされます。

 はしかは季節性インフルエンザの10倍ともいわれるほど感染力が強く、空気感染するため、手洗いやマスクのみで予防ができず、予防接種が最も有効な予防法とし、厚生労働省は、海外渡航を計画している成人や、はしかの罹患歴がなく、2回の予防接種歴が明らかでない場合は、予防接種を検討するよう呼び掛けています。

 宮城大看護学群の風間逸郎教授(病態生理学)によると、典型的なはしかの経過は、初期が「カタル期」と呼ばれ、鼻水や熱、せきなどの症状が出て、頰粘膜に白い斑点「コプリック斑」が現れることがあります。その後にいったん解熱するものの、「発疹期」になると全身性の発疹や高熱が出現し、カタル期の症状が強くなることもあります。これらの症状は3日程度持続した後、やがて改善し「回復期」に向かうといいます。

 風間教授は、「初期のカタル期は風邪の症状に似ているために見過ごされる可能性がある」と明かし、発疹についてもはしかの場合、発疹同士が融合することが特徴で、1回だけのワクチン接種など、はしかに対する免疫が不完全な人が発症する軽症で典型的な症状が出現しない不全型の「修飾麻疹」の場合には、風疹などとの鑑別が難しくなると指摘しています。

 ほかにも、発疹が出る「りんご病(伝染性紅斑)」や、2歳以下でかかることが多い「突発性発疹」、薬の内服や注射によって起きる「薬疹」などとも間違われやすいといいます。こうしたことから、はしかの見落としを防ぐため、医療機関では麻疹特異的IgM抗体などの血清抗体価の測定や、行政ではPCRなどの遺伝子検査が求められています。

 厚労省は、はしかの疑いがある場合、かかりつけ医または医療機関に電話などで伝え、受診の要否や注意点を確認してから指示に従うことを求めています。また、周囲への感染を広げないため、医療機関に移動する時は、必ずマスクを着用し、公共交通機関の利用を可能な限り、避けるよう呼び掛けています。

 2023年6月13日(火)

🟧中国、ゼロコロナ政策緩和前後の火葬遺体数公表せず 死者急増を指摘され意図的に非公表か

 中国政府が公表した統計で、2022年10月から12月までの火葬遺体数を非公表としていたことが、12日までにわかりました。中国国内で新型コロナウイルスの感染が爆発的に拡大し、死者数の急増が指摘されていた時期と重なります。中国政府は非公表の理由について説明していないものの、意図的に公表を控えたか、あるいは集計作業が追い付かなかった可能性がありそうです。

 統計は中国民政省が3カ月ごとに公表する「民政統計データ」。2022年1~9月の統計では火葬された遺体数が477・6万人と記載されていた一方で、9日に公開された2022年1~12月の統計からは火葬遺体数の項目自体が消去されていて、10月から12月までの火葬遺体数は不明のままとなっています。

 中国では新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ政策」を大幅に緩和した昨年12月以降、爆発的に感染が拡大。医療機関は逼迫(ひっぱく)し、葬儀場でも火葬の順番を待つ遺族が列をなしました。当局はゼロコロナ政策撤廃後から約1カ月で約6万人が医療機関で死亡したと発表したものの、市民からは実態とかけ離れていると、当局の発表を疑問視する声も上がっていました。

 2023年6月13日(火)

2023/06/12

🟧WHOが「人工甘味料」に警告を発するガイドラインを発表 体重管理に役立たず糖尿病リスクを高める

 世界保健機関(WHO)は5月15日、人工甘味料やその他の砂糖の代替品の摂取を減らすように促すガイドライを発表しました。しかし、だからといって本物の砂糖を再び使い始める必要はない、とも述べています。

 WHOはすでに砂糖の摂取量を制限するように促すガイドラインを発表しています。今回の発表では、天然か人工かにかかわらず、すべての甘味料を控えるよう求めています。

 「甘味料は、食生活の中で推奨されない要素として扱われるべきです」「甘味料は健康的な食生活にはそぐいません。これが我々がいいたいことです」とWHOの栄養・食品安全部長のフランチェスコ・ブランカ氏は述べています。

 ガイドラインでは、人工甘味料の使用が減量に長期的な影響を及ぼさないばかりか、糖尿病や心血管疾患の発症リスクを高めることが示されたとしています。

 人工甘味料の多くは砂糖よりも「低カロリー」で、中には1グラム当たり「ゼロカロリー」のものも存在しているため、カロリー過多を気にする人々から人気を集めています。

 WHOは人工甘味料と減量の関連性を明らかにするべく、日本でも使用されている「アセスルファムK」「アスパルテーム」「サッカリン」「スクラロース」「ステビア」などの人工甘味料を対象とした283件の研究結果を包括的に分析しました。

 その結果、「3カ月以内の短期的な実験」では、被験者の体重やBMI(体格指数)、摂取カロリーを低減させる効果が示されていたことが判明。一方で、「6~18カ月の長期的な実験」では、体重を減らす効果は示されていないことが明らかになりました。

 また、最大30年におよぶ長期的な追跡研究をまとめた結果、「人工甘味料を含む食品」を長期的に摂取した場合は2型糖尿病の発症リスクが23%増加し、「食卓塩のように消費者が後から食品に振りかけるタイプの人工甘味料」を長期的に摂取した場合は2型糖尿病の発症リスクが34%増加することが判明しました。さらに、人工甘味料の長期的な摂取によって、心血管疾患の発症リスクが32%増加することも示されています。

 上記の分析結果から、WHOは「人工甘味料を体重管理や非感染性疾患(NCDs)の予防のために使用することは推奨しない」と主張しています。

 また、栄養・食品安全部長のブランカ氏は、「砂糖を人工甘味料に置き換えても、長期的には減量に役立たない。砂糖の摂取を減らすには、人工甘味料を摂取するのではなく、『果物を食べる』『砂糖も人工甘味料も含まない食べ物を食べる』といった方法を検討する必要がある」「人工甘味料は栄養を含まず、必須の食べ物でもない。人々は健康を促進するために人生の早い段階で『食事に含まれる甘味』を減らすべきである」と述べています。

 甘味料業界の国際団体は「科学的に厳密ではない」と反論しています。

 2023年6月12日(月)

🟧PFAS、国の検査の約2・4倍の血中濃度を検出 東京都多摩地域の住民対象の血液検査

 有害性が指摘される化学物質を含む有機フッ素化合物(総称PFAS(ピーファス))を巡り、専門家と市民団体が、東京都多摩地域の住民を対象にした血液検査の平均値で、国の調査の約2・4倍の血中濃度が検出されたとする結果を公表しました。

 PFASのうち、「PFOS(ピーフォス)」と「PFOA(ピーフォア)」と呼ばれる2つの物質は、アメリカの研究などで有害性が指摘されています。

 沖縄県のアメリカ軍基地周辺の河川や地下水などで国の暫定的な目標値を超える値が相次いで検出されたことを受け、京都大学大学院の原田浩二准教授と市民団体は、アメリカ軍横田基地のある多摩地域の住民650人を対象に血液検査を行い、8日、立川市で開いた記者会見でその結果を公表しました。

 それによりますと、検査を受けた650人で検出されたPFOSとPFOAを合わせた平均値は14・6ナノグラムで、これは国が一昨年、全国の3地点で行った調査の平均値の2・4倍に当たるということです。

 PFOSとPFOAの合計の平均値が高いところは自治体別で、国分寺市で23・2ナノグラム、立川市で19ナノグラム、武蔵野市で15・8ナノグラムなどとなっています。

 原田准教授は「沖縄などに続いて、多摩地域でもこうした結果が出たことから、全国的な問題だと捉えて、国や自治体が、しっかりした調査をしてほしい」と話していました。

 8日の会見には、血液検査を受けた住民も参加し、検査を受けた経緯や結果の受け止めについて話しました。

 国分寺市に45年間住んでいるという友田絹子さん(75)は、検査でPFOSとPFOAの合計で、27・7ナノグラムの血中濃度が検出されたということです。

 友田さんは「多摩地域は地下水がおいしいというので、それを使った水道水をずっと飲んできました。検査結果を聞いて、『ずいぶん高い』と感じたので、すぐに直接飲むのをやめ浄水器をつけました。国などには詳しく検証してほしい」と話していました。

 PFASは泡消火剤や撥水(はっすい)剤などで使用されてきましたが、健康への悪影響が指摘され、海外で基準を強化する動きがあります。国内でも現在、使用や製造が原則禁止されており、国は専門家らによる検討会議で、国内外の最新の科学的知見や科学的根拠に基づく対応などを審議しています。

 2023年6月12日(月)

🟧ゲノム医療法が成立 差別や不利益につながる懸念も

 遺伝情報に基づき患者に応じた治療を推進することや、差別の防止などを掲げる「ゲノム医療法」が、参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。

 ゲノム医療は、個人によって異なる遺伝情報を詳しく解析することで病気の診断や患者に最適な治療法や薬の選択を行う医療で、特にがんや難病などについて研究や治療への応用が進んでいます。

 ゲノム医療法は240以上の団体や患者会が連名で、早期の法整備を求め、超党派の議員連盟が取りまとめたもので、「幅広い医療分野で世界最高水準のゲノム医療を実現する」としていて、国がゲノム医療に関する基本計画を定めて、研究開発を推進し、個人のゲノムや健康に関する情報を管理・活用するための基盤を整備するなどとしています。

 また、遺伝情報によって病気のなりやすさなどがわかることで、保険の加入や雇用、結婚などで差別や不利益な取り扱いにつながる恐れがあると懸念されることから、ゲノム医療法では遺伝情報の適切な管理が行われ、不当な差別が行われないよう、国に対して、医師や研究者などが守るべき事項に関する指針を作り、差別や遺伝情報の利用が広がることで起き得る課題に適切な対応をとるよう求めています。

 ゲノム医療では遺伝情報を調べることで患者の最適な治療薬の選択につながる一方、病気のリスクがわかるため、医療保険の加入や就職、結婚などで差別や不利益を受けることにつながるのではないかという懸念があると指摘されています。

 国は、ゲノム医療の研究体制や拠点医療機関を整備するとともに、差別につながらないような施策を講じます。また、ゲノム情報の取得、管理、開示などについて、医師や研究者らが守るべき指針を策定します。

 2023年6月12日(月)

🟧超過死亡、3月20日~5月14日は統計的な差なし 厚労省発表

 厚生労働省の研究班は9日、3月20日~5月14日の死者数が例年の水準をどれだけ上回ったのかを示す「超過死亡」について、統計的な差がなかったと明らかにしました。

 新型コロナウイルス感染症の死者数は、5月8日に感染症法上の位置付けが5類に移行されてから、毎日公表されなくなりました。ただ、感染の動向を迅速に把握する必要があるとして今回、超過死亡のデータが5類移行後に初めて発表されました。

 鈴木基・国立感染症研究所感染症疫学センター長が代表研究者を務める研究班は、17自治体で新型コロナが流行する前の2018~2022年の死者数などから、2023年の死者数を予測し、3月20日~5月14日に集計した死者数と比べました。

 鈴木センター長は「定点医療機関の感染者数などを含めて総合的に判断し、新型コロナが大きく拡大はしていないだろう」と話しました。

 超過死亡は感染症流行などによる社会全体への直接・間接的な影響を調べる指標で、世界保健機関(WHO)が1973年、インフルエンザの感染動向の監視のために提唱しました。新型コロナの流行規模を推測するため、海外でも使われています。

 また、厚労省の研究班は9日、新型コロナウイルスが感染症法上の「5類」に移行した5月前半について、「平年を大きく上回る超過死亡は観測されなかった」と発表しました。同省はコロナの死亡数を毎日公表していたものの、移行後は研究班が一部の自治体からのデータを分析して約1カ月後に公表します。今回が初公表となりました。

 研究班は調査に協力した全国17市区で5月1〜14日の総死亡数(コロナ以外の死因を含む)を集計し、過去5年間のデータから予測値を算出したところ、実際の死亡数と大きな差はありませんでした。

 鈴木センター長は「5類移行後に見えていない流行や死亡数の急激な増加は起きていないとみられる」と話している。

 2023年6月12日(月)

2023/06/11

🟧30歳代患者の健康な臓器を誤って摘出、宮城県大崎市民病院が解決金1200万円支払いへ

 宮城県大崎市は8日、大崎市民病院で2015年3月、県内在住の30歳代(当時)の患者の正常な臓器の一部を腹腔(ふくくう)鏡手術で誤って摘出する医療事故があり、患者側に1200万円の解決金を支払うと発表しました。15日開会の市議会定例会に関連議案を提出します。

 同病院が8日の市議会全員協議会で報告しました。同病院によると、手術担当者らの思い込みや確認漏れなどが原因といいます。同病院は治療費や定期健診費なども負担する方針。患者の性別や摘出された臓器などは「患者側の意向」として明らかにしていません。

 大崎市民病院の担当者は、「ご迷惑をかけ、おわびする。再び同様の医療事故が起きないよう努めている」と話しています。

 2023年6月11日(日)

🟧塩野義製薬、コロナ飲み薬「ゾコーバ」の本承認申請 予防効果の治験も開始

 塩野義製薬は9日、同社が開発し昨年11月に緊急承認された新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」について、本承認取得に向けた製造販売承認申請を8日付で厚生労働省に行ったと発表しました。本承認期限は緊急承認から1年。また、新たに発症予防の効果を検証する臨床試験(治験)を開始しました。塩野義製薬によると、新型コロナ飲み薬で予防効果が確認されれば世界初。

 ゾコーバは軽症・中等症患者向けで、せきや発熱などの症状を改善する効果を確認。最終段階の第3相試験の速報データなどから有効性を「推定」して、緊急承認されていました。

 本承認は有効性が「確認」される必要があり、提出できていなかった治験データをそろえて申請しました。ゾコーバの緊急承認は期限が1年で、最大1年の延長が認められています。

 一方、発症予防の治験は新型コロナ患者と同居する家族を対象に、ゾコーバを5日間投与した際の有効性と安全性を検証します。日本、アメリカを中心に2200人の被験者が参加する見通し。

 2023年6月11日(日)

🟧RSウイルスワクチンの製造・販売、欧米企業が厚労省に申請

 発熱やせきなどいわゆる風邪の症状が出て肺炎になることもあるRSウイルス(呼吸器合胞体ウイルス)感染者が、増加傾向にあります。インフルエンザなど新型コロナウイルス以外の感染者も多く、専門家は手洗いなどの基本対策を求めています。そんな中、欧米企業は高齢世代や妊婦向けに、RSウイルスワクチンの製造販売を相次いで厚生労働省に承認申請。早期実用化への期待が高まっています。

 RSウイルスは接触や飛沫などにより、ほとんどの人が幼いうちに一度は感染します。通常は発症から1週間ぐらいでよくなるものの、乳幼児や免疫の働きが弱い高齢者では肺炎を引き起こし重症化することもあります。

 新型コロナウイルスの影響が出始めた2020年は感染報告数が少なかったものの、2021年の春から夏に例年を上回る流行が起きました。

 国立感染症研究所の集計では、今年も増える兆しが出ています。5月28日までの1週間の報告数は1医療機関当たり1・95人で、2021年の水準に近付いています。

 イギリスの製薬大手グラクソ・スミスクラインは60歳以上が対象のワクチンを開発し、昨年日本で承認申請しました。アメリカの製薬大手ファイザーも申請中。

 すでにグラクソ・スミスクラインのRSウイルスワクチンは、5月2日にアメリカの食品医薬品局(FDA)に承認されました。ヨーロッパの保健当局も4月下旬、このワクチンの承認を勧告しています。同社は、アメリカで次のRSウイルスの流行シーズンが始まる前に同ワクチンが利用可能になることを期待しています。

  グラクソ・スミスクラインのワクチンは60歳以上の成人を対象とした後期臨床試験で、RSウイルス感染に対して82・6%の有効性を示したことが、昨年10月に公表されています。

 ファイザーのRSウイルスワクチンも、5月31日にアメリカの食品医薬品局(FDA)から、60歳以上の成人への使用を承認されました。

 後期臨床試験によると、このワクチンのRSウイルス感染による疾患の発症を予防する有効性は、RSウイルス感染の1つか2つの症状を持つ60歳以上の患者の間で67%、3つないし4つの症状を持つ重症患者の間では85・7%でした。

 ファイザーは、アメリカ疾病対策センター(CDC)がワクチンの使用を承認後、次のRSウイルス流行前の今年第3・四半期中に利用できるようにする見通し。ワクチンの価格については明らかにせず、推奨される年齢層を対象にした定期的な予防接種を支える価値に基づいた価格になるとしました。

 同社は同ワクチンの妊婦への接種でも、FDAの承認を求めています。それにより乳幼児の感染が予防できます。承認されれば、重症化のリスクが最も高いグループの1つである乳児向けの初めてのRSウイルスワクチンとなります。

 2023年6月11日(日)

🟧アメリカFDAの諮問委員会、「レカネマブ」の本承認推奨 エーザイのアルツハイマー病新薬

 日本とアメリカの製薬会社が共同で開発したアルツハイマー病の新薬について、アメリカの食品医薬品局(FDA)の外部の専門家でつくる諮問委員会は、治療薬としての承認を全会一致で推奨しました。FDAはすでに「迅速承認」という仕組みで承認しており、今後、完全な本承認をするか判断します。

 FDAは9日、外部の専門家を集めた諮問委員会を開き、日本の製薬大手「エーザイ」とアメリカの医薬品大手「バイオジェン」が共同で開発を進めてきたアルツハイマー病の新しい治療薬「レカネマブ」について話し合いました。

 この薬はアルツハイマー病の患者の脳にたまる「アミロイドβ」という異常なたんぱく質を取り除くことで、症状の進行を抑えることが期待されています。

 諮問委員会では、製薬会社側が約1800人が参加した臨床試験の最終的なデータを示し、投与開始から1年半後の時点で、薬効のない偽薬を使った人に比べ、認知症状の進行を27%遅らせる効果があったと説明しました。

 出席した6人の専門家は全会一致で「患者への効果が確認できた」とする結論をまとめ、FDAに対し薬の承認を推奨しました。

 FDAはこの薬について、今年1月、深刻な病気の患者に対し、より早く治療を提供する仮免許に当たる「迅速承認」という仕組みでいったん承認しており、今回示された臨床試験の最終的なデータをもとに、完全な本承認をするか7月6日までに判断します。

 2023年6月11日(日)

🟧1回接種のJ&J新型コロナワクチン、緊急使用許可を取り消し アメリカ食品医薬品局

 アメリカ食品医薬品局(FDA)は7日までに、アメリカのジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の依頼を受け、新型コロナウイルスワクチンの緊急使用認可を取り消しました。安全性への懸念などから接種需要が低迷していました。アメリカ政府の購入した在庫は5月中に使用期限を迎え、配布をやめていました。

 J&J傘下でワクチン事業を手掛けるヤンセン・バイオテックがFDAに変異型対応ワクチンを手掛ける計画がないことを伝え、緊急使用認可の取り消しを依頼しました。

 J&Jのワクチンはこれまでに100カ国以上で承認を受けています。日本では2022年に製造販売承認を取得したものの、公費での予防接種には使われていません。アメリカ以外の地域では「今後も最も必要とされる地域にワクチンを届ける」と説明しました。

 J&J製ワクチンは2021年2月に、FDAから緊急使用の承認を得ました。アメリカのファイザー製など2回接種が必要なメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンに比べ、J&Jワクチンは1回の接種ですむ特徴があり、利便性から接種率の向上につながる期待がありました。

 だがその後、このワクチン接種後に血栓症を発症した患者の事例が報告され、安全性への懸念が浮上。FDAは2022年5月、特別な理由がない限りJ&J製よりmRNAワクチンの接種を推奨する方針を打ち出し、直近ではJ&Jワクチンの接種がほぼなくなっていました。

 アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、アメリカで追加接種を含めたワクチン接種は累計で6億8000万回となっています。その大部分をファイザーやアメリカのモデルナのmRNAワクチンが占め、J&J製は1900万回にとどまります。J&Jが4月に発表した直近2023年1〜3月期の決算では、コロナワクチンのアメリカでの販売はゼロでした。

 2023年6月11日(日)

🟧エーザイ、アルツハイマー病新薬「レカネマブ」を韓国でも承認申請

 エーザイは8日、アメリカの医薬品大手バイオジェンと共同開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、韓国食品医薬品安全処(MFDS)に新薬承認を申請したと発表しました。レカネマブはアメリカですでに、条件付きの承認に相当する「迅速承認」を取得しています。

 日本やヨーロッパ、中国、イギリスなどでも、承認を申請しています。エーザイは「韓国に続き、アジア各国での新薬承認の申請をしていく」としています。

 レカネマブは早期アルツハイマー病の患者を対象としており、症状の悪化を27%抑えるとされます。病気の原因物質の一つといわれるたんぱく質「アミロイドベータ」を脳内から除去する効果があるといいます。

 2023年6月11日(日)

2023/06/10

🟧国内初の民間精子バンクが活動中止 法整備の遅れや経済面での維持困難を理由に

 精子がない病気などで不妊のカップルに対して安全に第三者の精子を提供しようと、独協医科大学の医師らが設立した国内初めての民間精子バンクが、今年3月末で活動を中止していたことがわかりました。精子提供を巡る法整備が進んでいないことや、経済面で施設の維持が難しくなったことが理由としています。

 第三者から提供された精子を使う不妊治療は、3年前の段階で日本産科婦人科学会の登録施設で年間約2000件行われ、77人の赤ちゃんが生まれています。

 近年、精子の提供者が減少し、患者の受け入れを停止している施設も多く、SNSなどで知り合った個人から精子を購入するケースもあることから、独協医科大学の岡田弘特任教授などは安全な治療ができるよう、一昨年国内初となる第三者からの精子を保存する民間精子バンク「みらい生命研究所」(埼玉県越谷市)を設立し、昨年からは国内の2カ所の医療機関に提供していました。

 しかし、岡田特任教授によりますと、精子バンクは今年3月末で活動を中止したということです。

 その理由について、第三者からの精子や卵子の提供で生まれた子供の出自を知る権利や、精子バンクの位置付けについての法整備が進まないことや、精子の検査や施設の維持費で赤字が続いたことなどがあるとしています。

 これまでに提供された精子は大学で保管し、今後、活動を再開させたいとしていますが、具体的なめどは立っていないということです。

 岡田特任教授は「生殖補助医療は不妊に悩むカップルだけでなく生まれてきた子供の権利が保証されるものでなければならない。精子バンクは管理しなければならない情報が多く、民間の一機関が単独で成り立たせるのは難しいとわかったので、事業を援助する法整備は必要だ」と話しています。 

 2023年6月10日(土)

🟧海外臓器移植あっせん、仲介NPOを新たに提訴 死亡患者遺族が4000万円返還を求める

 NPO法人「難病患者支援の会」(東京都目黒区)の仲介でベラルーシに渡航し、肝臓と腎臓の同時移植を受けた後に死亡した患者男性(当時45歳)の遺族がNPOを相手取り、費用の一部約4000万円の返還を求める訴訟を東京地裁に起こしていたことがわかりました。提訴は、NPOが臓器移植法違反容疑で2月9日に警視庁に摘発される前の1月29日付。

 訴状によると、男性は肝臓と腎臓を患い、NPOに仲介を依頼してベラルーシで臓器移植を受けることを決意。昨年5月ごろ、医師の診断書の手配や現地での滞在支援などの名目でNPOと契約を交わし、計約8500万円をNPOの口座に振り込みました。

 男性は同月中にベラルーシに入国し、臓器提供者(ドナー)が見付かるのを待ったものの、同7月下旬、NPOの滞在支援などは不要になったとして契約解除をNPOに伝えました。一方で、現地での滞在は続け、同9月1日に病院で肝臓と腎臓の移植手術を受けましたが、手術後に腹膜炎を起こし、同28日に現地で死亡しました。

 遺族は訴状で、男性が支払った費用のうち4000万円は使われておらず、NPOの不当利得に当たるとして返還を求めています。5月に第1回口頭弁論があったものの、NPO理事長の菊池仁達(ひろみち)被告(63)(臓器移植法違反で起訴)は勾留中で出廷せず、6月27日に次回弁論が予定されています。

 菊池被告は、男性とは別の患者2人にベラルーシでの臓器移植をあっせんしたとして臓器移植法違反(無許可あっせん)で東京地裁に起訴されています。

 NPOを巡っては、中央アジア・キルギスなどでの移植を依頼した別の男性(59)も昨年12月、手術を受けられなかったなどとしてNPOに約1841万円の返還などを求める訴訟を東京地裁に起こしています。

 2023年6月10日(土)

🟧海外で臓器移植の543人、国内で通院中 渡航先はアメリカ最多227人、仲介団体関与は25人

 海外で臓器移植を受けた後、帰国して国内医療機関に通院している患者が3月末時点で543人に上ることが、厚生労働省の実態調査で明らかになりました。渡航先はアメリカが227人で最多、移植仲介団体が関与していたのは25人。調査結果は8日の参院厚生労働委員会で、加藤勝信厚労相が報告しました。

 臓器移植を巡っては、国内では臓器提供者(ドナー)不足が深刻で、無許可あっせん団体の仲介で海外に渡航し、トラブルに遭う患者も目立ちます。

 調査はNPO法人「難病患者支援の会」(東京都目黒区)による臓器あっせん事件を受け、厚労省研究班が実施。4~5月に日本心臓移植研究会や日本臨床腎移植学会など関係学会を通じ、医療機関203施設の計280診療科から回答を得ました。

 543人のうち、生体からの移植は42人、死体からは416人、不明が85人でした。臓器ごとの内訳は、腎臓250人、心臓148人、肝臓143人、肺2人。国別ではアメリカのほか、中国175人、オーストラリア41人、フィリピン27人、ドイツ13人、コロンビア11人、ベラルーシ5人など。

 国内移植をへて医療機関を受診している患者は3万1141人でした。

 加藤厚労相は「渡航して移植を受けた患者が一定数通院している実態が明らかとなった」とし、「各国が臓器提供と移植の自給自足の達成に努めるべきだという国際的な原則に基づき、臓器移植を国内で完結できるような体制の構築に努めていく」と表明しました。

 調査では、NPOのような移植仲介団体の関与の有無や、団体の名称などについても尋ねており、厚労省は調査結果を踏まえ、団体に対する規制の在り方についても検討します。

 2023年6月10日(土)

2023/06/09

🟧タウリン欠乏が老化の要因、摂取した動物は長生き アメリカ・コロンビア大が発表

 貝類やイカ・タコといった軟体動物に多く含まれる物質「タウリン」の補充が、老化防止に有望であることを動物実験で確かめたと、アメリカのコロンビア大学などの国際チームが8日、アメリカの科学誌「サイエンス」で発表しました。ただ、人への効果は臨床試験で検証するまで不明といい、チームは「老化防止目的で過剰摂取しないでほしい」としています。

 タウリンは人間の体内でも作られ、コレステロールを減らしたり、肝機能を強化したりする効果があるとされます。栄養ドリンクの成分としても知られます。

 チームは、血中のタウリンの量を調べ、乳幼児に比べ60歳の人は8割減ることを確認しました。マウスやアカゲザルでも加齢に伴い大幅に減少していたといいます。

 中年期のアカゲザルに1日1回、半年間にわたってタウリンを投与したところ、投与しなかったグループに比べ、骨密度と骨量が増加。さらに、膵臓(すいぞう)や肝臓の機能低下を示す物質が減るなど、加齢に伴う体の衰えが改善しました。マウスで同様の実験を行うと、投与したグループは寿命の中央値が10~12%増加したといいます。

 人に補充した場合の効果は未解明。ヨーロッパの中高年約1万2000人のデータでは、血中のタウリン濃度が高いと肥満や糖尿病が少なくなりました。チームは「毒になるとも考えられず、口から補える。臨床試験をする価値はある」としました。

 チームは人で効果のある摂取量を1日3~6グラムと推計し、ヨーロッパ食品安全機関が安全な摂取量の上限とする1日6グラムの範囲内としています。

 福井県立大の伊藤崇志教授(食品機能科学)は、「人に近いサルで、タウリンが老化防止にかかわることを明らかにした重要な成果だ。ただ、人で効果のある量などは、今後の検証が必要だ」と話しています。

 2023年6月9日(金)

🟧全国の新型コロナ定点把握、前週の1・25倍で9週連続増加 沖縄県は最多で「注意必要」

 新型コロナウイルスの全国の感染状況は、6月4日までの1週間では1つの定点医療機関当たりの平均の患者数が4・55人で、前の週の1・25倍となっています。増加は9週連続です。

 厚生労働省は「比較的低い水準だが全国的に緩やかな増加傾向が続いているほか、沖縄県では感染が拡大しているとみられ、今後の感染状況を引き続き注視したい」としています。

 厚労省によりますと、5月29日~6月4日までの1週間に全国約5000の定点医療機関から報告された新型コロナの患者数は前の週から4568人増えて、2万2432人となりました。

 また、1つの定点医療機関当たりの平均の患者数は4・55人で、前の週の1・25倍となりました。前の週から増加が続くのは9週連続となります。

 都道府県別では多い順に、沖縄県が15・8人、石川県が6・98人、北海道が6・71人、千葉県が6・66人、岩手県が6・44人。少なかったのは島根県2・29人、高知県2・45人、滋賀県2・47人など。42の都道府県で前の週より増加しています。中でも沖縄県は前週比1・53倍と突出して多く、注意が必要といいます。

 このほか、6月4日までの1週間に新たに入院した人は全国で4003人で、前の週と比べて768人の増加となりました。

 2023年6月9日(金)

🟧食品ロス量、2021年度の推計約523万トン 前年度比1万トン増

 消費者庁・農林水産省・環境省の3省が9日発表した2021年度の食品ロス量(推計値)によると、事業系・家庭系を合わせた食品ロス量は前年度から1万トン増の約523万トンとなりました。コロナ禍の影響により、製造業や小売業で需要の見通しが立たず、事業系の食品ロス量が増加しました。

 2021年度の食品ロス量の内訳は、事業系(製造・卸・小売・外食)が前年度から4万トン増の279万トン。家庭での食べ残しや消費期限・賞味期限切れによる廃棄といった家庭系が3万トン減の244万トン。合計で1万トン増の523万トンと推計されます。国民1人当たりに換算すると、1日に茶わん1杯の量に近い約114グラム、年間で約42キログラムの食品ロスが発生しています。

 事業系については、コロナ禍に伴う行動制限を背景に、事業者側の需要予測が困難だったことから、前年度から製造業が4万トン増、小売業が2万トン増となりました。

 製造業では、大学の休校が繰り返されて注文が取り消されたことや、内食の需要が拡大した影響も考えられるといいます。小売業については、内食需要の変化を読み切れなかったことが主な原因とみられます。

 外食産業は営業自粛や客足が遠のいたため、市場の縮小に伴って食品ロス量も1万トン減少しました。

 家庭系の詳細をみると、未開封のまま捨てる「直接廃棄」は、前年度と同じ105万トンで推移。食材の皮をむきすぎるといった「過剰除去」は1万トン増の34万トン、「食べ残し」は4万トン減の105万トン。

 このうち「直接廃棄」はここ数年、横ばいで推移。削減に向けて、「消費期限」「賞味期限」に対する消費者の理解を深める取り組みなどが課題に上っています。

 政府は、2000年度比で2030年度までに食品ロス量を半減させるという目標を掲げています。2000年度は事業系547万トン、家庭系433万トンで、2021年度時点の削減率はそれぞれ約49%、約44%となりました。

 目標達成にはさらに30万トン余りの削減が必要ですが、今後の経済状況の改善によっては食品ロス量が増加する懸念もあり、国は引き続き周知や啓発活動に力を入れたいとしています。

 河野太郎内閣府特命担当大臣(デジタル改革、消費者及び食品安全)は、「2030年度までに半減させるという目標を着実に達成するにはさらなる努力が必要で、達成に向けて消費者庁として施策のパッケージを年末までに策定したい」と話していました。

 2023年6月9日(金)

2023/06/08

🟧熱中症で救急搬送3647人、歴代3位の昨年上回るペース 6月は「第2のピーク」、湿度に警戒

 熱中症シーズンが本格的に到来し、総務省消防庁によれば、今年5月の熱中症での救急搬送人数は前年同月を上回りました。新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが変わり、人流や活動がコロナ禍前へと戻りつつあるのも一因です。湿度も高まる6月は熱中症リスクも高くなるとして、専門家も注意を呼び掛けています。

 今年5月の全国の救急搬送人数(速報値)は3647人と、前年同月比1・37倍。消防庁が5~9月の調査を始めた2008年以降で年間歴代3位だった昨年を上回るペースです。

 今年5月の天候は平年より気温が高めで、中旬には岐阜県で今年初の猛暑日(35度以上)、東京都も連日の真夏日(30度以上)を観測、下旬には北海道でも真夏日となりました。

 熱中症に詳しい済生会横浜市東部病院の谷口英喜・患者支援センター長は、「季節外れの高温に身体も衣食住の環境も対策ができていなかった中で、観光やスポーツ、学校行事など、コロナ禍から解放されて活動量自体が増えたことも要因」と話しています。

 一方、コロナ禍前の2019年5月(4448人)比では18%減。この年は5月の最高気温歴代1位の39・5度を観測するなど高温続きで、月間の「多照・高温・少雨」記録を更新した天候で熱中症が続出。2019年は5~9月でも歴代2位と異例ずくめの年でした。

 一般的に6月は入梅で雨や曇りの日が多くなり、今年6月も平年と比べて高温が予想されています。谷口医師が「熱中症の起こりやすさは夏場が第1のピークで、梅雨時期の6月こそ第2のピーク」というように、暑さで体温が上昇すると体温を下げようとして汗をかくものの、湿度が高いと汗が乾きにくくなります。同温のドライサウナとスチームサウナではスチームサウナのほうが体にきついのと同じで、同温なら多湿のほうが発症率も高くなります。

 熱中症対策として谷口医師は、自宅でエアコン空調が使えるなら除湿機能を活用して「湿度は50%以下」、「室温は27、28度程度」を勧めます。暑さに慣れるため汗をかく練習も重要で、「朝や夕方など気温が低い時のウォーキングやお風呂など、汗ばむ程度でいい」と話します。汗をかいたら「ハンカチやタオルで拭いて。そのほうが次の汗が出て体温は下がる」といいます。適切な水分補給に加え、体温調節機能をつかさどる自律神経のバランス維持のため、今日の疲れを明日に持ち越さない睡眠、食生活を推奨しています。

 2023年6月8日(木)

🟧インフルエンザやRSウイルスなど感染症患者が増加 感染対策徹底で免疫低下か

 全国各地の学校で季節性インフルエンザの集団感染による休校や学級閉鎖が、相次いでいます。

 国立感染症研究所によりますと、5月28日までの1週間に全国約5000カ所の医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は7975人で、1医療機関当たりの患者数は1・62人でした。

 インフルエンザは通常12月から3月にかけて流行しますが、5月下旬に1医療機関当たりの患者数が流行の目安となる「1人」を超えるのは2013年以来10年ぶりとなります。この1週間で休校や学年・学級閉鎖をしたのは、小学校が246、中学校が40、高校が25など、全国で325カ所となっています。

 5月は大分市と宮崎市の高校でそれぞれ500人近い集団感染で休校したほか、6月に入ってからも福岡市の中学校と高校でも合わせて200人ほどが新型コロナやインフルエンザに感染するなどして休校となっています。

 また、子供を中心に例年夏から秋にかけて流行する「RSウイルス感染症」や、乳幼児に多くみられる夏風邪の代表的なウイルス性の感染症の「ヘルパンギーナ」の患者数も増加しています。

 5月28日までの1週間に約3000カ所の小児科の医療機関から報告された1医療機関当たりの患者数は「RSウイルス感染症」で1・95人、「ヘルパンギーナ」で1・33人と、いずれも3週連続で増加しました。

 5類移行前の1週間と比較すると、「RSウイルス感染症」は2倍に、「ヘルパンギーナ」は5倍に増加しています。

 厚生労働省は、「社会経済活動が日常に戻る中で、季節的な要因もあり、一定の流行を起こす感染症が今後も出てくるとみられるのでさまざまな感染症の流行状況を注視していきたい」としています。

 森内浩幸・長崎大教授(小児科)は、「コロナ禍の感染対策の徹底で、多くの感染症で流行が少なかったため、免疫が低下し感染が広がりやすくなっている」と指摘。子供は本来、乳幼児期にさまざまなな感染症にかかって免疫をつけていくことから、「感染を過度に恐れる必要はないが、重症化するケースもあるので、いつもと様子が違う場合は、迷わずかかりつけ医を受診してほしい」と話しています。

 2023年6月8日(木)

🟧大阪市で2人がはしかに感染、2020年以来 1人は「天王寺ミオ」に滞在

 感染力が非常に強いはしか(麻疹)について、大阪府内の今年の感染者数は8日までに4人となっていて、大阪府はワクチンの接種を呼び掛けています。

 はしかは、発熱やせき、発疹が出るウイルス性の感染症で、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症し、肺炎や脳炎を引き起こして重症化したり、死亡したりする場合もあります。

 大阪府によりますと、今年の府内の感染者数は8日の時点で4人となっています。地域ごとにみると、大阪市で2人、豊能地区で1人、泉州地区で1人となっていて、4人は今年4月から6月にかけて感染が確認されました。

 このうち大阪市の医療機関で感染が確認された20歳代の女性は、5月22日の午後6時半から午後8時まで、同市天王寺区にある商業施設「天王寺ミオ」の本館7階に滞在していたということです。翌23日に発熱し、26日に医療機関を受診。その後はしかと診断され、医療機関が6日に届け出ました。

 大阪府などは同じ時間帯に商業施設を利用した人が、22日から3週間以内に症状が出た場合は、事前に医療機関に連絡した上で速やかに受診するよう呼び掛けています。

 大阪市のもう1人は5月30日に診断の届け出があったものの、市保健所は不特定多数への感染リスクが低いとして詳細を明らかにしていません。

 はしかの感染者数は、新型コロナウイルスの感染拡大以降、海外との往来が減った影響などから減少し、大阪府内では一昨年と昨年は感染者はいませんでした。

 大阪府は、過去にはしかに感染したことがなく、2回のワクチン接種を受けていない人は早めに接種するよう呼び掛けています。 

 2023年6月8日(木)

🟧新型コロナ「5類」移行から1カ月、感染状況は緩やかな上昇傾向続く

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に移行してから8日で1カ月ですが、「定点把握」による全国の感染状況は、4月以降、緩やかな上昇傾向が続いています。

 厚生労働省は「今は比較的低い水準だが、夏に懸念される感染拡大に備え、今後の感染状況を注視するとともに、場面に応じて必要な感染対策をとってほしい」と呼び掛けています。

 新型コロナウイルスの「5類」移行後、厚労省は全国約5000の医療機関からの週1回の報告をもとにした「定点把握」で流行状況を把握しています。

 それによりますと、1つの医療機関当たりの平均の患者数は、5月14日までの1週間では2・63人、5月21日までの1週間では3・55人、5月28日までの1週間では3・63人と増加が続いています。

 「定点把握」で集計し直した昨年10月から6月7日までの感染状況と合わせて推移をみてみると、「第8波」のピーク時だった昨年12月が29・80人で、その後は減少傾向となりましたが、4月以降、8週連続で前の週を上回っています。

 また、流行状況についての新たな指標として発表している「新規入院患者数」では、昨年12月の「第8波」のピーク時は1週間に新たに入院した人が2万人を超えていましたが、5類移行後は2000人から3000人台で推移しています。

 厚労省は、「今は比較的低い水準だが、夏に懸念される感染拡大に備え今後の感染状況を注視するとともに、場面に応じて必要な感染対策をとってほしい」と呼び掛けています。

 舘田一博・東邦大教授(感染症学)は、「定点把握になり、正確な感染動向が見えにくくなったのは確かだ。把握できている感染者は氷山の一角にすぎない」と強調し、「医療現場ではクラスターの増加もみられ、注意すべき状況だ」との見解を示しています。

 2023年6月8日(木)

🟧沖縄県、コロナ感染者前週比約1・5倍 54定点医療機関で853人

 沖縄県は8日、新型コロナウイルス感染者数の定点把握状況を発表しました。5月29日〜6月4日の1週間に、県内54定点医療機関で計853人の感染者が確認されました。1定点当たり15・80人で、前週(10・35人)に比べて約1・5倍に増えました。感染者の総数(推計値)は4000人に上ります。

 県内で1定点当たりの感染報告が10人を超えるのは3週連続。インフルエンザは1定点当たり「10人」を超えると流行注意報が発令されるものの、新型コロナは現時点で注意報などを発令する基準が定まっていません。

 重点医療機関に入院している患者も増えており、5月29日は281人でしたが6月4日は353人でした。

 病床使用率は県全体で42・5%。圏域別では本島42・5%、宮古34・6%、八重山50・0%でした。

 感染者報告数の年齢別では40歳代が121人と最多で、続いて80歳以上108人、30歳代97人、50歳代88人などでした。

 全国の5月22日~28日の1定点当たり感染報告は3・63人で、都道府県別で沖縄県が3週連続の最多でした。

 2023年6月8日(木)

🟧北極海の氷、2030年代の夏の時期に消失も 国際研究チームが分析

 地球温暖化がこのまま進むと、北極海の氷が早くて2030年代の夏の時期に溶けてなくなる可能性があることが最新の研究でわかり、研究チームは「人間社会や生態系にも大きな影響を与える」として警鐘を鳴らしています。

 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新予測では、北極海の夏の海氷は2050年までになくなる可能性が高いとされていましたが、今回の分析は早期に消失する恐れを指摘しました。

 この研究は、韓国・浦項工科大学などの国際研究チームが6日、科学雑誌の「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表しました。

 研究チームは、北極海の氷が人間の活動によってどのような影響を受けるのか調べようと、1979年から2019年までのおよそ40年間に観測されたデータを用いてシミュレーションを行いました。

 北極海の氷は季節によって変動し、例年、夏の時期に最も少なくなりますが、シミュレーションの結果、早ければ2030年代の9月には溶けてなくなる可能性があることがわかりました。

 氷はいったんなくなっても、冬の時期になれば、またできるということですが、一時的にでも氷がなくなる事態が起きれば、温暖化がさらに加速することも指摘されています。

 さらにシミュレーションでは、氷の量が人間の活動で排出される温室効果ガスによって大きな影響を受けていることも確認されたということです。

 北極海の氷は2000年以降、特に大きく減少していて、研究チームは「北極海の氷がなくなれば、人間社会や生態系にも大きな影響を与える」として警鐘を鳴らしています。

 2023年6月8日(木)

2023/06/07

🟧感染対策、発熱などの症状がある宿泊客に要請可能に 改正旅館業法が成立

 旅館やホテルが発熱などの症状がある客に感染対策を求められるようにする改正旅館業法が7日の参院本会議で賛成多数で可決、成立しました。エボラ出血熱を始め、感染症法上の位置付けが1類や2類などの感染症が国内で発生している間、宿泊施設での感染拡大を防ぐため、検温やマスクの着用、部屋での待機といった対応を要請します。客に医療機関の受診や診察結果の報告を求めることも可能になります。年内に施行します。

 従来、客の感染防止策は任意でした。新型コロナウイルス禍では発熱のある宿泊客が旅館の求める対策に応じず、従業員や他の客の安全確保に支障を来すケースがありました。

 対策に法的な根拠を定めることで、従業員の負担の軽減や客の感染不安の払拭につなげます。症状のある客が医療機関を受診し、感染が発覚した場合には宿泊を拒めるようにもします。

 当初の改正案では、症状のある客が正当な理由なく検温や感染対策に応じない場合に宿泊拒否できるとしていました。ハンセン病の元患者団体が「差別を助長する」と反対、障害者団体も「一方的な判断で宿泊拒否されるのではないか」と懸念の声を上げたため、衆院の厚生労働委員会で宿泊拒否に関する項目は削除されました。厚労省が宿泊拒否や感染対策の目安を示す指針を作成することも盛り込まれました。

 感染症の流行にかかわらず、「迷惑客」の宿泊を拒めるようにもします。従業員の業務を妨害する行為を繰り返した場合を想定し、具体的な要件は今後詰めます。

 2023年6月7日(水)

🟧98%の日本人が「ビタミンD不足」に該当 植物由来はほぼ検出されず、東京慈恵医大が調査

 東京都内で健康診断を受けた人の血液を調べたところ、98%がビタミンD不足に該当していたとの調査結果を東京慈恵会医科大学などの研究チームが5日、発表しました。特にシイタケなどのキノコ類から取れる植物由来のビタミンDはほとんど検出されませんでした。若い人ほど不足している傾向があり、食生活の変化が原因の可能性があるとみています。

 調査は2019年4月~2020年3月までの期間に、東京都内で健康診断を受けた成人男女5518人を対象に実施。島津製作所と新開発の液体クロマトグラフィー・質量分析法システムを使用して、血中ビタミンD濃度を算出した結果、全体の98%が必要とされる値を下回りました。検出されたビタミンDの種類を調べると、動物あるいは日光由来のビタミンD5であり、シイタケなどの植物由来のビタミンD2はほぼ検出されなかったといいます。また、年齢が低いほどビタミンD不足の割合が高くなりました。

 今回の研究結果から、日本人の食生活の変化によって、現代社会では特に植物由来のビタミンDが摂取されなくなったことが推察されます。

 ビタミンDはカルシウムの吸収を促す働きがあり、不足すると骨粗しょう症や骨折するリスクが高まる恐れがあります。

 越智小枝・東京慈恵会医科大学教授は、「都市部の生活では日光を十分に浴びるのは難しい。食生活も欧米化しており、不足している場合はサプリメントで取り入れてほしい」と話しました。

 2023年6月7日(水)

🟧受精卵の選択ミスで流産 不妊治療受けた夫婦が大阪市のクリニックを提訴

 体外受精した受精卵の染色体に異常がないかを調べる「着床前検査」のミスにより流産したとして、横浜市に住む40歳代の夫婦が7日、不妊治療専門のクリニックを大阪市北区で運営する医療法人などに約1000万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こしました。

 訴状によると、体外受精を希望していた夫婦は2019年2月からクリニックへの通院を始め、着床前検査を受けました。医師が勧めた受精卵を子宮に戻して同年10月に妊娠したものの、翌月に流産しました。

 2020年6月、再び受けた着床前検査の結果について詳しい説明を求めたところ、担当医が前回検査で流産の可能性が高い受精卵を選んでいたことが判明しました。

 クリニック側はミスを認めて謝罪しましたが、夫婦が担当医らの対応について改善を求めると、その後の診療を拒否されたといいます。

 夫婦側は、担当医らが検査結果を十分に確認して適切な説明をしていれば、夫婦は再度の採卵を望んだ可能性が高く、流産を回避できたと訴えています。

 夫婦は別の医療機関を受診して、2021年7月に第1子が生まれました。妻は代理人弁護士を通じ「流産の悲しみ、つらさ、絶望感を忘れることはありません。患者は人生と命を賭けて不妊治療に臨んでいる。このようなずさんなことがあっていいのか」とコメントしました。

 クリニック側は、「訴状を見ていないのでコメントできない」としています。

 2023年6月7日(水)

2023/06/06

🟧胃潰瘍で死亡し労災認定された男性の遺族が会社を提訴 富山市

 2021年に富山市の電気設備工事会社に勤める当時62歳の男性が出血性胃潰瘍で死亡したのは長時間労働などが原因だとして労災と認定され、遺族は6日、「会社が業務の管理を怠り過重な業務に従事させた」などとして、損害賠償を求める訴えを裁判所に起こしました。

 訴えを起こしたのは、東証プライム上場の北陸電気工事の社員で、2021年12月に死亡した当時62歳の男性の遺族です。

 訴状などによりますと、男性は4年前の8月に定年を迎えた後、再雇用され、放送局の新局舎建設事業で現場責任者を務めていましたが、2021年10月以降、工事日程が過密になって長時間労働が目立つようになり、12月に自宅で倒れ、搬送先の病院で出血性胃潰瘍により死亡したということです。

 男性の時間外労働は、死亡前の直近1カ月が約176時間、その前の1カ月が約145時間に上っていたとしています。

 男性の死亡について富山労働基準監督署は5月、現場責任者としての長時間労働やストレスが原因だとして労災と認定しました。

 遺族は6日、「業務の管理を怠り再雇用した後も強い心身の負荷が生じることが明らかな過重な業務に従事させ死亡させた」などとして、会社に約7300万円の損害賠償を求める訴えを富山地方裁判所に起こしました。

 厚生労働省によりますと、消化器系の病気が労災と認められるケースは極めて少ないということで、記者会見した原告の代理人で過労死弁護団全国連絡会議代表幹事の松丸正弁護士は「国が定める過労死の基準には消化器系の病気は定められていない。今回の労災認定や訴訟を切っ掛けに消化器系の病気についても過労死の認定基準を大きく広げてほしい」と話しました。

 提訴について、北陸電気工事は「訴状が届いてから内容を確認して判断します」と話しています。

 また、男性が労災認定を受けたことについてはコメントで、「事実を大変重く受け止めております。亡くなられた従業員のご冥福を深くお祈り申し上げます。再び同様のことを起こさないよう、今後も健康経営の推進に努めてまいります」としています。

 2023年6月6日(火)

🟧子供の予防接種、コロナ禍を経て日韓など52カ国で信頼感低下 ユニセフが「世界子供白書」で警鐘

 世界の多くの国で、はしかやポリオなど子供の予防接種への信頼感が低下しています。新型コロナウイルスのワクチン接種に関連して、インターネット上に真偽不明の情報が広まったことも一因です。接種率の低下で、感染症の流行の懸念が高まっています。

 国連児童基金(ユニセフ)が4月に発表した「世界子供白書」によると、調査対象の55カ国中52カ国で、子供のワクチン接種を「重要」と考える人が新型コロナの流行前と比べ大幅に減少しました。

 韓国やパプアニューギニアで40ポイント以上の大幅減となり、ガーナ、セネガルのほか、日本も30ポイント以上減りました。途上国で減少が著しくなっています。

 他方、重要と考える人の割合が変わらない、もしくは増加したのは、中国、インド、メキシコのわずか3カ国にとどまりました。また、白書はほとんどの国で、35歳未満の年齢層と女性の間で、子供へのワクチンの信頼感に低下傾向がみられたと報告しています。

 背景にはインターネット上での誤情報の増加、専門知識に対する信頼の低下、政治的偏向などが挙げられるといいます。

 ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長は声明で、「あらゆるワクチンへの恐怖と誤情報がウイルス同様に広まった」としました。はしかやジフテリアなど、予防接種で防げる感染症で子供の死者が出ることに懸念を示しました。

 南アフリカでは2022年末からはしかが流行し、5月中旬までに970人超が感染しました。日本でも2023年に入り、はしか患者が報告されています。国連によれば、東アフリカのブルンジで3月、ワクチン未接種の4歳児のポリオ感染が明らかになりました。同国で約30年ぶりの感染報告だといいます。

 感染症研究に取り組む大阪公立大学大学院の城戸康年教授は途上国での予防接種への信頼感の低下について、「ワクチン開発の実験台にされているのではないかという懸念が根強いことも一因だ」と指摘。将来のリスクを回避する考え方を身に着けるため、予防接種や自分の健康について正しく理解する機会を広げる必要が大切だと話しています。

 予防接種が子供の命を救うことは各国の接種プログラムの実績でも明らかで、アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、世界で毎年約400万人の命が子供の定期接種によって守られているといいます。

 ユニセフは新型コロナ禍での医療体制の逼迫により、2019〜2021年に世界で6700万人の子供が定期接種の機会を逃したと推計しています。同期間に112カ国で接種率が低下したことについて、ユニセフは「過去30年間で最大の後退だ」と警鐘を鳴らしています。

 2023年6月6日(火)

🟧新型コロナ前より自宅で食事増加が38・5% 2022年度食育白書、食生活改善へ期待

 政府は6日、2022年度版の食育白書を閣議決定しました。白書は、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年11月ごろと比べた食生活に関する調査結果を報告。食生活の変化について尋ねたところ、「自宅で食事を食べる回数」が増えたとの答えが38・5%に上り、20~30歳代に限ると51・3%となりました。白書は、「食生活の改善に取り組む切っ掛けになることが期待される」としました。

 調査は2022年11月に、全国の20歳以上を対象に郵送やインターネットで実施しました。「自宅で料理を作る回数」が増えたと回答した割合は27・9%で、「持ち帰りの弁当や総菜の利用」が増えたのは21・1%でした。

 一方、「家族以外の誰かと食事を食べる回数」は67・0%が減ったと回答。「朝食を食べる回数」は87・0%が変わらないとしました。

 また、白書では、食料安全保障と食育の推進について言及。食料自給率向上の意義を理解する機会を持つことなどの重要性を指摘しました。

 2023年6月6日(火)

🟧マウスピース歯列矯正治療で追加提訴 請求総額は4億5900万円規模に

 マウスピースを使った歯列矯正治療が「実質無料で受けられる」と勧誘されて高額なローン契約を結んだ後、施術が受けられなくなったとして、男女約150人が6日、歯科医院を運営する医療法人「デンタルオフィスX」などを相手取り、約2億6200万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしました。

 この医療法人を巡っては今年1月にも患者らが集団訴訟を起こしており、原告数は合計312人、請求総額は約4億5900万円に上ります。原告側は詐欺罪などで医療法人の理事長らを警視庁に刑事告訴しています。

 訴状によると、原告らは東京都、京都府、福岡県にある医療法人などが経営する歯科クリニックと治療の契約を結ぶ一方、別会社とモニター契約を締結。SNSなどで宣伝をすれば「毎月モニター報酬が支払われるので実質的に無料で治療が受けられる」と説明を受けていたというものの、昨年3月以降、報酬の支払いが停止しました。

 原告側は追加提訴後に会見。代理人の加藤博太郎弁護士は、原告側にはローン返済が残ったほか、健康被害も生じているとし「破綻することが明らかな詐欺的なモニター商法だった」と指摘しました。原告の20歳代女性は、「マウスピースを作るために歯を削ったが、治療は途中で終わってしまった。歯がしみることもあり、これからどうなるのか心配だ」と話しました。

 歯科クリニック側は、「弁護士と相談しながら対応していきたい」などとコメントしています。

 2023年6月6日(火)

🟧「インフルエンザに効く」とうたってミネラルウォーターを2リットルあたり1万円で販売 76歳会社社長ら4人逮捕

 「インフルエンザウイルスを1分で99・99%以上不活性化させる」などとうたったミネラルウォーターをインターネットで広告し、販売したとして、男女4人が医薬品医療機器法違反(未承認医薬品の広告など)容疑で逮捕されました。

 千葉県警に6日、逮捕されたのは「有限会社ミネラル総研」(東京都文京区)の社長・野島洋子容疑者(76)(千葉市稲毛区)ら4人で、昨年3月から6月までの間、医薬品の承認を得ずに「超ミネラル水 岩の力」と称したミネラルウォーターをインターネット上で広告し、販売した疑いがもたれています。

 「超ミネラル水 岩の力」について、「インフルエンザウイルスを1分で99・99%以上不活性化させる」などとうたっていましたが、実際の中身はほとんどが「ただの水」だったということです。

 千葉県警によりますと、野島容疑者らはこの水を2リットルあたりおよそ1万円で販売し、昨年までの5年間で4億円以上を売り上げていたということです。

 千葉県警は野島容疑者らの認否を明らかにしていません。

 2023年6月6日(火)

2023/06/05

🟧希少な網膜疾患、遺伝子レベルで解析  シスメックスと神戸アイセンターが検査システムを共同開発

 医療用検査機器・試薬メーカーのシスメックス(神戸市中央区)は5日、目の網膜の働きが損なわれて見えにくくなる「遺伝性網膜ジストロフィー」の原因を遺伝子レベルで解析できる検査システムの製造販売承認を国内で初めて取得したと発表しました。神戸市立神戸アイセンター病院(同)と共同開発。2023年度中の保険適用を目指し、厚生労働省や関連学会と作業を進めます。

 遺伝性網膜ジストロフィーは、4000~8000人に1人がかかる希少疾患の総称。代表的な「網膜色素変性症」は国内に約3万人の患者がいます。暗い所で物が見えにくくなったり、視野が狭くなったりする症状に始まり、進行すると失明することもあります。

 今回の検査システムは、同社と同病院が2020年に開発に着手。1回の血液検査で82種類の遺伝子変異を調べ、原因遺伝子を特定できます。

 遺伝性網膜ジストロフィーは根本的な治療法がなかったものの、欧米で一部の原因遺伝子に対する治療法が確立されました。遺伝子を特定できれば適切な治療に早く取りかかれ、症状の進行を予測できるといいます。

 シスメックスは、「検査結果を新薬の開発に生かせる可能性もあり、早期の販売開始を目指したい」としています。

 2023年6月5日(月)

🟧東京都以外で初、国内3カ所目の母乳バンクを開設 愛知県・藤田医科大学病院

 愛知県豊明市の藤田医科大学病院は5日、母乳が出ない母親の代わりに別の母親の母乳を保存・提供する「母乳バンク」を開設しました。低体重で臓器が未発達な赤ん坊が対象で、粉ミルクなどに比べ病気のリスクを低減できるといいます。国内で3例目、東京都以外では初の設置となり、地震や台風など災害時の供給元としての役割も担います。

 母乳バンクは別の母親から提供された母乳(ドナーミルク)を殺菌処理し、必要な赤ん坊に提供する仕組みです。1500グラム未満の赤ん坊が主な対象で、消化器が未発達だと粉ミルクではうまく消化吸収ができないとされます。母乳には免疫成分も含まれ、生死にかかわる「新生児壊死(えし)性腸炎」などのリスクも減らせるといいます。

 国内の母乳バンクには現在、約600人がドナー登録し、2022年度は800人以上の赤ん坊が利用しました。日本では、年間約7000人の赤ん坊が1500グラム未満で生まれ、うち約5000人がドナーミルクを必要としているといいます。

 藤田医科大学病院の母乳バンクには、約2週間分(約50リットル)のドナーミルクが保存できる施設を整備。通常時は東海地方の新生児集中治療室(NICU)へ提供し、災害などで東京都のライフラインが停止した際には当バンクから全国の新生児集中治療室に発送します。

 藤田医科大学病院に運営委託する日本財団母乳バンクは、「ドナーミルクは出産直後など母乳が出にくい時期に命をつなぐ役割がある。使う際には医療機関での倫理審査が必要になり、啓発活動を通じて利用を広げていきたい」と話しました。利用量の拡大には衛生管理や品質検査体制の整備なども課題になります。

 ドナーミルク需要の高まりを受け、2019年12月には厚生労働省が母乳バンクを全国に整備する方針を発表。2020年度より医学的効果や衛生基準についての調査研究が進められています。

 2023年6月5日(月)

🟧インフルエンザ、10年ぶりに5月下旬まで流行継続 コロナ禍で免疫低下の見方も

 通常の流行期は12~3月とされる季節性インフルエンザが長期化して、季節外れに流行しています。5月28日までの1週間に、全国約5000カ所の定点医療機関から報告された患者数は7975人で、1医療機関当たり1・62人。流行の目安(1人)を年末に超えてから、5月下旬まで継続するのは10年ぶりです。

 専門家は、「コロナ禍に入った2020年以降の2シーズンは流行がなく、インフルエンザワクチンの接種も減り、免疫が低下したことが原因」とみています。

 厚生労働省が2日に公表したインフルエンザの定点報告を都道府県別にみると、宮崎県の1医療機関当たり7・07人が最多で、長崎県の同4・14人、愛媛県の同3・67人、新潟県の同3・35人が続きました。

 この1週間に休校や学年・学級閉鎖をした小中高校や幼稚園などは、全国で325カ所。10年前の2013年も5月下旬まで流行が続いたものの、その年の同時期(157カ所)の2倍を超える多さです。

 今年5月は100人を超える大規模な集団感染も相次ぎました。大分市と宮崎市の高校では、それぞれ500人近く感染し、体育祭で広がった可能性も指摘されています。東京都調布市の小学校でも100人を超えました。

 今回のインフルエンザの長期化について、感染症に詳しい菅谷憲夫・慶応大客員教授は、「多くの人の免疫が低下しているぶん、感染が一気に広がりやすい。新型コロナの感染症法上の分類が5類に移行し、人の動きが活発化したことも影響している。今後もせきなどの症状があれば、マスク着用など適切な対策をとってほしい」と話しています。

 2023年6月5日(月)

🟧全日空、関空発着の国際線運航を3年ぶりに再開

 関西空港で5日午前、新型コロナウイルスの影響で休止していた全日空の上海(浦東)定期便が3年ぶりに運航を再開しました。関空からの同社の国際線再開はコロナ禍後初。まずは週に往復3便を運航します。

 コロナ禍前、全日空は関西空港から中国各都市への便を週に往復49便運航していましたが、2020年3月からすべての国際線を運休していました。全日空の宮坂純子関西空港支店長は、「今日は国際線再開の第一歩。たくさんご搭乗いただいて、夏の海外旅行シーズンに向けて便を増やしていきたい」と期待を込めました。

 関西空港発着の国際線の便数は、6月時点でコロナ禍前の5割超まで回復。ただ国際線の4割を占めていた中国便は、コロナ禍前の2割ほどの再開にとどまっています。

 全日空は今後、中国から日本への団体旅行が解禁されて、日本人がビザなしで中国に渡航できるようになれば、中国方面への便数を増やしていくとしています。

 コロナ禍前は上海便を毎週利用していたという奈良県斑鳩町の会社役員、増田隆さん(60)は、「これから仕事での行き来が増える。定期運航はありがたい」と話しました。現地法人に中国の顧客を案内する予定といいます。

 関空では、上海吉祥航空が7月1日、2019年に開港した北京大興空港への新規就航を予定しています。

 2023年6月5日(月)

2023/06/04

🟧パーキンソン病の治療薬でALSの症状抑制 慶応大の研究チーム

 慶応大学の研究チームは全身の筋肉が徐々に衰える筋委縮性側索硬化症(ALS)について、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った研究で見付けた治療薬候補を患者に投与した臨床試験(治験)の結果をまとめました。病気の進行を約7カ月遅らせる効果などを確認しました。2024年にも規模を拡大した最終段階の治験を始め、治療薬として実用化を目指します。iPS創薬による治療薬の実用化は、世界初となる見通しといいます。

 アメリカの科学誌「セル・ステム・セル」に2日、治験の結果が掲載されました。慶大の岡野栄之教授らはALS患者のiPS細胞から病気の神経細胞を再現し、既存の薬剤の中からパーキンソン病の薬「ロピニロール塩酸塩」を治療薬の候補として見出しました。20人の患者が参加した医師主導治験で、運動機能の低下など病気の進行を推定約7カ月遅らせる効果があることや安全性を確認しました。

 治験に参加した患者全員のiPS細胞を使い、細胞実験でもロピニロール塩酸塩の効果を調べました。細胞実験で高い効果がみられた患者は、実際の治験でも効果が高い傾向がありました。iPS細胞を活用して、ロピニロール塩酸塩の効果を事前に予測できる可能性があるといいます。

 慶大発スタートアップのケイファーマ(東京都港区)が中心となり、最終段階となる第3相治験を2024年にも始めます。より多くの患者が参加する治験で有効性などを調べ、ALSの治療薬としての承認申請を目指す方針です。岡野教授は「確実性の高い治験を計画して1回で決着させたい」と話しました。

 ALSは運動神経の障害で筋肉が徐々に衰える進行性の難病で、国内の患者数は約1万人。歩行困難や言語障害などの症状が出て、生活やコミュニケーションが非常に難しくなります。、根本的な治療薬はなく、個人差はあるものの、発症から数年で呼吸器の装着が必要になるか、亡くなります。病気の進行を遅らせることが、生活の質を保つために重要となっています。

 2023年6月4日(日)

🟧今春の平均気温、過去最高 気象庁、25年ぶり記録更新

 気象庁は1日、今春(3~5月)の平均気温は、基準値(1991年から2020年までの30年平均値)を1・59度上回り、統計を開始した1898年(明治31年)以降、最も高かったと発表しました。これまでの平均気温の最高は、基準値を1・24度上回った1998年春で、25年ぶりの更新。

 高緯度帯の偏西風「寒帯前線ジェット気流」が日本付近で平年より北を流れることが多く、寒気がほとんど南下しなかったため、暖かい空気に覆われやすくなりました。

 特に3月が西高東低の冬型の気圧配置になりにくかったため、基準値より2・75度高く、春の気温を押し上げました。

 2023年6月4日(日)

🟧出血性胃潰瘍で死亡の男性を労災と認定 富山労基署が消化器系疾患では「異例」の判断

 富山市の電気設備工事会社に勤める男性(当時62)が2021年、出血性胃潰瘍(かいよう)を発症して死亡したのは長時間労働などが原因だとして、富山労働基準監督署が5月、労働災害と認定したことが、明らかになりました。消化器系の疾患で過労による労災が認められるのは異例。国の労災認定の基準が脳・心臓疾患と精神障害・自殺に限られている現状への課題を指摘する声もあります。

 遺族や代理人の松丸正弁護士(大阪弁護士会)によると、男性は1986年から技術者として勤務し、2020年8月の定年退職後にも再雇用され、嘱託で働き続けていました。大手ゼネコンから受注した放送局の電気設備工事の現場責任者を務めていたものの、徐々に長時間勤務となる日が増え、2021年12月に自宅で出血性胃潰瘍を発症して倒れ、病院に搬送されたものの死亡しました。

 男性の時間外労働は、死亡前の直近1カ月が約122時間、その前の1カ月が約113時間に上りました。国が定める労災認定の目安は消化器系の疾患にはなく、脳・心臓疾患は「月100時間、または2~6カ月間平均でおおむね月80時間」などとされます。労基署は、男性が現場責任者として、ゼネコンとの打ち合わせや部下への指示、工期や仕様の変更への対応などもあり、長時間労働やストレスで胃潰瘍を発症したと認定しました。

 消化器系の疾患で労災が認められるケースは極めて少なくなっています。国は2001年、脳・心臓疾患について労災の認定基準を策定。2010年改正の労働基準法施行規則には、精神障害・自殺を加えた3種類を、長時間労働や、業務による心理的負担との因果関係が医学的に確立したものとして明記しました。労基署の認定業務の迅速化につながり、2017~2020年度、計2989件の労災が認定されました。

 一方、これら以外の疾患は「その他」と分類されて認定基準がなく、同じ期間中の労災認定はわずか2件。厚生労働省の検討会で5年に1回ほど、追加すべき疾患があるかが議論されるものの、消化器系は「過去10年ほど逆上ったが議論になっていない」と同省はいいます。

 認定基準がない疾患は労災認定のハードルが高いとみられ、労働者や家族らが申請自体を控える事例もあるとみられます。申請しても労基署で労災と認められず裁判で争い、十二指腸潰瘍を発症した貿易会社員の男性をストレスが原因の労災として認めた最高裁判決(2004年)があります。

 男性の勤務先の電気設備工事会社は、「労災認定の事実確認ができておらずコメントは差し控えます」としています。

 島田陽一・早大名誉教授(労働法)は、「認定基準のない消化器系の疾患で労災が認められた意義は大きい。今後、過労による消化器系疾患についても認定基準が設けられる可能性があり、行政はすでに基準のある心臓・脳疾患、精神障害以外でも起こり得ることを前提に丁寧に認定業務に当たるべきだ。また、定年後の再雇用は1年更新などと短い場合が多く、その不安定さや賃金の安さが労働者のストレスになるリスクもある。国や企業は「労働力を安く使う制度」となっていないか、働き手の保護策が十分か見詰め直す必要がある」と話しています。

 2023年6月4日(日)

🟧秋田県の自殺率、3年ぶり全国ワースト 10万人当たり22・6人

 厚生労働省が2日発表した2022年の人口動態統計(概数)で、秋田県の「自殺率」(人口10万人当たりの自殺者数)が前年から3・8ポイント増の22・6となり、2019年以来、3年ぶりに全国ワーストとなりました。全国平均の17・4を大きく上回っています。

 自殺者数は前年比32人増の209人でした。秋田県の自殺率は1963年以降、全国平均を上回っており、2003年は44・6に達しました。民間団体と行政、大学が連携して相談窓口の充実や啓発、居場所づくりを展開して、自殺率は徐々に下がり、2020年には初めて20・0を切りました。2021年も18・8となっていました。

 秋田県は大学と連携して自殺予防に取り組む相談員向けの講習会を充実させたり、経営者向けのストレスマネジメント研修を強化したりするとしています。

 一方、出生数の減少も深刻で、1人の女性が生涯に産む子供の推計人数「合計特殊出生率」は、前年から0・04ポイント減の1・18と過去最低を記録しました。

 2022年の1年間に生まれた子供の人数(出生数)は3992人で、前年から343人減り、過去最も少なくなりました。人口1000人当たりの出生数を示す出生率は前年から0・3ポイント減の4・3、死亡率は前年から1・6ポイント増の18・6で、いずれも全国ワーストを記録しました。出生率から死亡率を差し引いた「自然増減率」はマイナス14・3でした。

 婚姻数も前年比171組減の2447組。婚姻率は前年比0・2ポイント減の2・6で、23年連続で全国最下位。

 秋田県の自殺率について佐竹敬久知事は「全国以上の増加率となっており年代や原因に応じた対策を強化し、支援を更に充実させる」とし、少子化対策については「若年女性の県内定着と回帰の促進や賃金水準の向上に一層力を入れて取り組む」とコメントしています。

 このほか、がんと脳血管疾患の死亡率が全国で最も高く、新型コロナウイルスの死亡率は全国で3番目に高くなりました。県は高齢化率の高さが原因としています。

 2023年6月4日(日)

2023/06/03

🟧富山化学開発の「アビガン」、希少疾病用医薬品に指定へ マダニ感染症の治療に期待

 富士フイルム富山化学(東京都中央区)の開発した抗ウイルス薬「アビガン」が、5月29日の厚生労働省薬事・食品衛生審議会の部会で、薬事承認申請の優先審査など優遇措置を受けられる「希少疾病用医薬品」への指定を認められました。アビガンはマダニが媒介する致死率の高いウイルス感染症に効果があるとされ、実用化に向けた試験開発の加速化が期待されます。 

 希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)は、国内の対象患者数が5万人未満で、医療上、特に必要性が高いなどの条件に合う医薬品として、厚労相が指定します。アビガンは6月にも指定される見通し。

 アビガンは新型コロナウイルスの治療薬としては承認を得られなかったものの、マダニにかまれて感染するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群」 (SFTS)に効果がある医薬品として関係者から注目されていました。

 SFTSは重症化すると死亡することがあり、致死率31%とする研究もあります。国内では昨年、過去最多の118人(速報値)、今年も5月14日時点で43人が感染しています。ワクチンや有効な治療薬はありません。富山県内では昨年5月、犬2匹が感染し、11月には60歳代女性の陽性が確認されました。

 過去の臨床研究では、アビガンを投与した患者23人のうち19人が回復し、致死率が17・4%まで低下しました。

 希少疾病用医薬品の指定を受けると、研究開発促進に向けた国の支援が受けられます。助成金の交付、試験開発の指導・助言を受けることができ、他の製品より先に承認審査が行われます。

 アビガンの共同開発者で富山大名誉教授の白木公康氏は、「死亡率が30%のSFTSに対し、富山発のアビガンが使用されることはよいニュースだ」と話しています。

 2023年6月3日(土)

🟧「国立健康危機管理研究機構」創設へ コロナを教訓に感染症研究と臨床の融合

 今後の新たな感染症に備え、アメリカの疾病対策センター(CDC)をモデルにした「国立健康危機管理研究機構」を創設する法律が、参議院本会議で可決・成立しました。

 成立した法律は、新型コロナ対応を教訓に、新たな感染症の発生に備えて、基礎研究などを行う「国立感染症研究所」と臨床医療を行う「国立国際医療研究センター」を統合し、新たに「国立健康危機管理研究機構」を創設するものです。

 厚生労働省によりますと、患者の診療とウイルスなどの分析を同時に行うことで、感染症が流行した初期段階で、患者の待機期間やワクチン接種の考え方などを政府に示すことができるとしています。

 5月31日の参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決・成立しました。

 一方、立憲民主党や共産党、れいわ新選組は、「統合しただけでは実効性が不十分だ」などとして反対しました。

 新機構は「特殊法人」となり、理事長は厚生労働大臣が任命します。政府は、2025年度の創設を目指しています。

 2023年6月3日(土)

🟧味の素、「Cook Do」約11万個を自主回収 社内基準以上の水が含まれる

 味の素は2日、合わせ調味料の「『Cook Do きょうの大皿』〈肉みそキャベツ用〉3~4人前」の一部製品が社内の品質基準を満たしておらず、自主回収すると発表しました。

 製造工程で使用する水が規定以上に含まれ、品質基準を満たしていないためといいます。水は飲料水で、食べても健康被害はないとしています。

 同社によると、回収対象は3月16日に製造され、商品記載の賞味期限が2024年9月で、横に「/HN+A」と記載されている商品で、11万2360個が対象となります。消費者からの指摘で判明しました。

 同社は「お客さま、取引先に深くおわびする」としています。

 着払いで送付すると、商品代金相当のクオカードが送られます。問い合わせ先はフリーダイヤル(0120)394010で、午前9時半~午後4時半に受付。  

 2023年6月3日(土)

🟧東京都の補助金不正請求は11事業者で計183億円に コロナのPCR検査数を水増し

 東京都で新型コロナウイルスの無料PCR検査事業を行っていた事業者が不正に補助金を請求していたとして、都は一部の事業者に対する補助金約183億円の交付を取り消し、そのうちすでに交付された17億円については返還を求める命令を出しました。

 東京都は2021年12月末から今年5月7日まで、無症状の都民を対象に無料PCR検査を実施していて、医療機関などの事業者には検査数に応じた補助金を交付していました。

 しかし、検査が適切に行われていなかったとして、東京都は2日、2022度に検査を行っていた588の事業者のうち11の事業者に対し、合わせて183億円の補助金の交付を取り消したと発表しました。このうち5つの事業者に対しては、すでに合わせて約17億円の補助金が交付されていて、都の要請で6億3000万円は返還されました。都は引き続き返還を求めていくといいます。

 11の事業者は美容外科や医療検体の輸送会社、薬局など。所在地は都内のほか、埼玉、神奈川、大阪、和歌山の4府県。最高額は美容外科「medical(メディカル)4 men clinic(メン クリニック)」(東京都中野区)の69億円でした。実際の検査数の8〜9倍を申請した事業者もいました。

 都は感染者数が減少傾向にある時期でも検査数が減らないなど、不正が疑われる事業者への交付を保留してきました。

 東京都によりますと、事業者へのヒアリングや現地調査で、検査数の水増しや、患者の検体採取の際に事業者が立ち会わない、などの不正が確認されたということです。

 都の担当者は、「今年度の実績報告についても徹底的に調査し、不正があった場合は厳正に対処していく」としています。

 2023年6月3日(土)

2023/06/02

🟧マイナンバーカードと健康保険証が一体化へ、改正法可決・成立 健康保険証は来年秋に廃止

 マイナンバーカードと健康保険証の一体化や、マイナンバーの利用範囲の拡大などを盛り込んだ改正マイナンバー法など改正関連法が、2日の参議院本会議で賛成多数で可決・成立しました。

 改正法の成立によって健康保険証は来年秋に廃止され、マイナンバーカードと一体化されます。

 一方で、カードをなくした人なども保険診療を受けられるように、健康保険組合などが「資格確認書」を提供し、現在の健康保険証も廃止後、最長1年間は有効にする経過措置を設けることなどが盛り込まれています。

 マイナンバーは法律により、社会保障と税、それに災害対策の3分野に利用できる範囲が限定されていますが、今回の改正法によって自動車にかかわる登録、国家資格の更新、外国人の行政手続きなどの分野にも、範囲が広がります。

 例えば、自動車の登録では引っ越しで住所が変わり、車の保管場所の証明などを申請する際、マイナンバーカードを使ったオンライン申請が可能になり、住民票の写しを取得する必要がなくなります。

 美容師や建築士などの国家資格では、資格を更新する際にオンラインでの申請が可能になります。

 これまでは法律でマイナンバーを使える行政機関やその内容などが規定され、新たに追加する場合は、その都度、法律の改正が必要でした。

 今後は法律で規定されている3つの分野と、今回新たに定められる分野では、すでに法律に規定されている事務に「準ずる事務」であれば、法律の改正をしなくても省令などで定めれば利用の範囲を拡大できるようになります。

 マイナンバーの改正法などの成立を受けて河野太郎デジタル大臣は、閣議後の会見で、「今回の法改正によって各種の事務手続きや添付書類の省略など、マイナンバーカードの利用の促進が実現され、国民生活の利便性の向上につながっていくと思います」と述べました。

 2023年6月2日(金)

🟧全国の新型コロナ感染者数、前週比1・02倍 4月から緩やかな増加傾向が続く

 新型コロナウイルスの全国の感染状況は、5月28日までの1週間では1つの医療機関当たりの平均の患者数が3・63人で、前の週の1・02倍となっています。

 厚労省によりますと、5月22~28日の1週間に全国約5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数は、前の週から411人増えて1万7864人となりました。

 また、1つの医療機関当たりの平均の患者数は3・63人で、前の週の1・02倍となりました。前の週から増加が続くのは、8週連続となります。

 都道府県別では多い順に、沖縄県が10・35人、岩手県が5・97人、山梨県が5・78人、北海道が5・72人、石川県が5・58人と続きます。少なかったのは島根県1・47人、香川県1・60人、滋賀県1・77人など。東京都は3・96人、愛知県は4・76人、大阪府は2・75人、福岡県は3・08人。25の都道府県で前の週より増加しています。

 このほか、5月28日までの1週間に新たに入院した人は全国で3235人で、前の週と比べて117人の減少とほぼ横ばいとなっています。

 厚労省は全国の流行状況について、「比較的低い水準にあるものの、4月以降緩やかな増加傾向が続いていて、今後も感染状況を注視したい」としています。

 新型コロナウイルス対策に当たってきた政府分科会のメンバーで、東邦大学の舘田一博教授は、現在の感染状況について「感染者の数は全国的には横ばいになっているが、検査を受けていない人も大勢いるとみられる。私が所属する大学の病院でもコロナの入院患者が増えたり、クラスターが発生したりしているので、面会を再び取りやめるなど、対策を検討しているところだ。発表された数字よりも、さらに多くの感染者がいる可能性に注意する必要があり、警戒レベルを上げて対応していくことが重要になっている」と話しています。

 その上で、「5類移行に伴って人々の動きが盛んになっていて、感染が広がるリスクは高まっている。子供たちの間では、コロナ以外にもインフルエンザやRSウイルスなどに感染する患者も増えている。気温が上がってきている中で、対策の徹底は難しいかもしれないが、重症化リスクが高い人を守るために、マスクを効果的に使い、換気を徹底すること、密を避けるなど、日常生活の中で警戒感を高めてほしい」と話しています。

 2023年6月2日(金)

🟪インフルエンザの患者数が注意報の基準を超える 新型コロナと同時に流行ピークの恐れも

 インフルエンザの感染状況について、厚生労働省は20日、全国約5000の定点医療機関から9〜15日の1週間に報告された感染者数が1医療機関当たり19・06人だったと発表しました。前週(9・03人)と比べ2・11倍に急増し、「注意報」の基準の10人を超まし た。  都道府県別では...